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ウィルス・スピリッツ
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魂の存在を信じるかどうかは、生物が生きていたかどうかで信じざるを得ない。例え科学的に魂を観測出来なくても、状況証拠として太古の時代から我々の中に刻まれ続けてきたのだから。
肉体から解放された魂は度々、生きている者を妬み悪さをする。そんな話がまことしやかに現代でも人々の口に上る。躾として寝る時間に寝ない子供を脅すネタとして『オバケ』と称したり、悪霊と称して悪い事が起きた時に人の悪意に影響された総念の顕現や、神の意志や神秘として幽霊もまたそこに序列した存在と認識されている。
『〇〇の祟りだ!』などと言われるのがいい証拠で。
その一つのいい例として、ウィルスや細菌は目に見えないが故に、死神として扱われた時代があった。今も未開の地では悪霊の仕業として扱われ、シャーマンは生業として成立する社会もある。
◆
01/24 06:50
「ダリィ、喉も痛い。畜生め。どこで感染された? 」
目が覚めて気怠さを感じ、次に喉が痛みを感じ、誰とも無しに毒突いた。
オレは、楠井 和臣。高校二年の勉強も運動も中より下で取り柄の無いオカルト研究会所属のただのオカルトマニアだ。
「こら! カスゴミ! さっさと起きろ! みんなもう下に集まってんだぞ!」
その時、ドアが勢い良く開かれて寮母さんの娘、綾式 香澄 一四歳が嵐の如く入ってきた。
「全国のカズオミさんに謝れ。後、スマンが怠くて今日は起きれん。感染させてくれたら、直ぐに起きれるようになるかも知れん」
酷いガラガラ声だった。ええ。コレは誰がどう見ても風邪です。
「はー? バッカじゃないの? 風邪ってのはね! ちゃんと病原菌があって、そんな江戸時代だかの迷信は未開地のシャーマンと同じで全く意味のないマユツバなんだよーだ!」
「な、ん……だと!? バカじゃない証拠じゃないのか!」
「細胞核しかないけど、確実に実在してるのに幽霊や悪霊の類と同列に考えてるチンパンジーね。貴方みたいなのが毒と病気の区別のつかないゴチャ混ぜなパンデミックを解毒薬で解決する様な三文シナリオ作るのよ!」
「ちょっと酷くね?」
「残念ながら、事実よ。事実! あぁ、後、細胞核と細胞膜の違いも分からないから風邪菌が勝手に繁殖すると思ってるのよね。お生憎ね。細胞核しかないから他の生物の細胞に遺伝子流し込んでアンタの食べた血肉になるはずのものを使って増えてるんでしたー。人に感染させても、治りませんでした~。バーカバーカ!」
バタンッ
激しくドアを閉じて行ってしまった。まさに嵐。
「腹立つわ~。なんで中二がそこまで知ってんねん。理科ではまだ単細胞位だったよなぁ」
悔しいので、一応調べる事にした。バイトでやっと契約出来たスマホを使って、インターネット検索する。『ウィルス 細菌』とキーワード検索っと。『ウィルス 細菌 違い』が検索予測に出た。そのまま選んで検索するとなかなか興味深い事が書いてあった。
細胞に寄生し、8塩基しかない遺伝情報を流し込んで代謝機能を利用して増やさせる……シロアリより気持ち悪い。
こんなんが勝手に増えてるのか。なんだかムカついたので、早い治療法を更に検索する。風邪ヒットした検索結果のページを適当に読み漁った。
睡眠と水分とバランスの取れた栄養とある。風邪だから体力つけてとステーキやカツ丼は逆にタンパク質過多で原因菌の材料になりやすいって事か。
ん? むやみに抗生物質を使うと耐性菌を増やす事になる? ヤバくね? あぁ8塩基しかないから進化も容易いのか。
『風邪の症状が起こるしくみ?』免疫力が高いと起こらないのか……。免疫力って笑うと高まるとか病は気からって話に繋がるアレだよなぁ。オレの好きなオカルトっぽいじゃないか。
……これ実験に使えんじゃね?
◆
01/24 10:08
結局、熱が上がり始め学校は休んだ。熱はあるがちょくちょく目がさめる。寮母である綾式 玲子さんがたまに看病に来てくれた。ビバ美魔女。マジ感謝。ガキとは大違いだな。あぁ、さっき思いついた実験をちゃんと考えをまとめて、実践してみなきゃなぁ。
植物に好意的感情で接した時と嫌悪的感情で接して育てるとその結果が違うと言う実験結果がある。科学的には解明されない何かもそこにはあるように思える。感情物質の電子か磁場かその両方かまたは単に感情を植物の魂が感じ取るのかそれで結果が変わるのならば、微レ存な感情念動とオレは仮定しよう。
例えば、例えばだ。現実には難しいけどステータスを数値化するなど、ある程度可能なパラメータとして神がこの箱庭で手を出す事なく遊んでいるとしたらだ。オレはワクワクする。
その神の領域をこの微レ存念動で弄れたら? 運なんてパラメータを操作できるとしたら? 実際のステータスをウィルスや細菌で強化出来たらなんと素敵な事だろう!!
科学では説明できない実験をウイルスに語りかけて行うのだ細菌だって構わない。魂に重さはないとか言われるけれど、オレは『魂には観測出来ないほどの質量がある』と考えた方が理解しやすい。人間と単細胞の魂の価値が同等とも納得がいかないし。
今は丁度、風邪も引いてるしコイツらに我がステータスの糧になって貰う。嘘か本当か分からないけど分からないからこそ、オカルトぱぅあー!
"このウィルスを食べた免疫細胞はフェロモンの発散する手助けをして一生強いフェロモンを出せるようになる!"
これだ! これでオレはモッテモテだ!!
『なるほど、緩やかに我々を増やすための苗床が増える可能性があるのか。乗ってやろう』
「ん? 今の声なんだ?」
誰も居ないと分かりきった部屋でオレは思わず周りを見回した。うん。オレの部屋だ。誰も居ない。
「空耳か」
◆
01/28 07:05
四日後、熱が下がり、体の調子が戻った。香澄が何故か入れ替わりの様に風邪を引いた。寮母さんは引いていないのに。日頃の行いだな。寄れば触れば喧嘩する仲だが、寮母さん似で可愛いトコがまたムカつく。
「御免ね、和臣くん。これ香澄のとこに持っててくれない?」
「イエス! マム!」
しまった! つい。
「イヤだ。和臣くんたら、お義母さんだなんて、香澄がちゃんとと大人になって、プロポーズを受けてからにしてね」
「あ、いえ、そうではなく……」
「照れちゃって、可愛い」
昨日、例の映画を見てた所為だ。しかし! しかしだ! 玲子さんは微笑んでいた! 出来るなら愛人候補とかが良いけど、百戦錬磨の難攻不落と謳われる美人が相手では、まぁ、釣合というか……そんな意気地あるわけがない。玲子さんは、息子としてはありなのか……。
などと、考えながら、手渡された盆のお粥と味噌汁を運ぶ。宿敵としか思えない中二の香澄の部屋の扉の前に着いた。両手持ち用の盆だからノックは不可能。従って声をかける。
「おい、飯だ。ここに置いとくぞ」
あまり顔を見たくない。また喧嘩になることを予測すると、とてもじゃないが恋愛感情なんて芽生えるわけがない。盆を置こうと腰を屈めると部屋から声がした。
『中まで持って来て……』
は? 普通嫌ってる男子に入って欲しくないだろう。余程辛いのか。仕方ない。扉をどうにかして開け、中へ盆を運ぶ。
「……ありがと」
「あぁ、ここに置けばいいか?」
「うん。ありがと」
その後、咳き込んでしばらく辛そうだった。
「大丈夫か?」
首を振る香澄。くそ。狡いぞ。人に散々罵倒しておいて逆の立場になったらコレって。
「背中、さ、さするぞ」
何故だか分からない。あんなに小憎らしかった香澄が色っぽく見えたのか、触りたくなった。普段なら絶対に感じない衝動に違和感を覚えつつ、自らそんなことを口走った。
彼女はただ、咳をしながら頷いた。よし。許可が出た。優しくさすった。近くのティッシュ箱を目の前に出してやる。彼女はそれを二、三枚引き出して改めて咳をする。なかなか痰が切れないようだ。
「医者行って来た方が良くないか?」
「うん。ママは?」
「まだ下にいるよ、そろそろオレも食べたいから戻るぞ」
立ち上がろうとしたら、ブレザーの袖を掴まれてた。心なしか熱の所為で赤い顔がまさかの展開の紅潮に見える。
「……フーフー、アーンして……」
「は?」
……おいおい、まさか、あのウィルス捕食効果じゃないよな?
◆
人物紹介
楠井 和臣(♂15) 高一 綾式寮に在住のオカルトマニア。特段取り柄のないフツメン。あるのはオカルトに対する熱意と眼鏡。
綾式 香澄(♀14) 中二 綾式寮を経営する綾式家の娘。手放しで可愛いと言える何処(の物語)にでもいる標準ヒロイン。勝気、貧乳、伸び代期待なヒロインでもある。
綾式 玲子(女性 不詳) 綾式寮 寮母。旦那はなんとベンチャー貿易をしているとか言うなんとも形容し難い家族です。半離婚状態とも言える。旦那は養育費と男除けの為に繋ぎとめられてる感じっすね。美男美女カップルにありがちな本命にモテればいい美女とモテるから漁る美男の拗れた結果である。
_____
お読みいただきありがとうございます。
肉体から解放された魂は度々、生きている者を妬み悪さをする。そんな話がまことしやかに現代でも人々の口に上る。躾として寝る時間に寝ない子供を脅すネタとして『オバケ』と称したり、悪霊と称して悪い事が起きた時に人の悪意に影響された総念の顕現や、神の意志や神秘として幽霊もまたそこに序列した存在と認識されている。
『〇〇の祟りだ!』などと言われるのがいい証拠で。
その一つのいい例として、ウィルスや細菌は目に見えないが故に、死神として扱われた時代があった。今も未開の地では悪霊の仕業として扱われ、シャーマンは生業として成立する社会もある。
◆
01/24 06:50
「ダリィ、喉も痛い。畜生め。どこで感染された? 」
目が覚めて気怠さを感じ、次に喉が痛みを感じ、誰とも無しに毒突いた。
オレは、楠井 和臣。高校二年の勉強も運動も中より下で取り柄の無いオカルト研究会所属のただのオカルトマニアだ。
「こら! カスゴミ! さっさと起きろ! みんなもう下に集まってんだぞ!」
その時、ドアが勢い良く開かれて寮母さんの娘、綾式 香澄 一四歳が嵐の如く入ってきた。
「全国のカズオミさんに謝れ。後、スマンが怠くて今日は起きれん。感染させてくれたら、直ぐに起きれるようになるかも知れん」
酷いガラガラ声だった。ええ。コレは誰がどう見ても風邪です。
「はー? バッカじゃないの? 風邪ってのはね! ちゃんと病原菌があって、そんな江戸時代だかの迷信は未開地のシャーマンと同じで全く意味のないマユツバなんだよーだ!」
「な、ん……だと!? バカじゃない証拠じゃないのか!」
「細胞核しかないけど、確実に実在してるのに幽霊や悪霊の類と同列に考えてるチンパンジーね。貴方みたいなのが毒と病気の区別のつかないゴチャ混ぜなパンデミックを解毒薬で解決する様な三文シナリオ作るのよ!」
「ちょっと酷くね?」
「残念ながら、事実よ。事実! あぁ、後、細胞核と細胞膜の違いも分からないから風邪菌が勝手に繁殖すると思ってるのよね。お生憎ね。細胞核しかないから他の生物の細胞に遺伝子流し込んでアンタの食べた血肉になるはずのものを使って増えてるんでしたー。人に感染させても、治りませんでした~。バーカバーカ!」
バタンッ
激しくドアを閉じて行ってしまった。まさに嵐。
「腹立つわ~。なんで中二がそこまで知ってんねん。理科ではまだ単細胞位だったよなぁ」
悔しいので、一応調べる事にした。バイトでやっと契約出来たスマホを使って、インターネット検索する。『ウィルス 細菌』とキーワード検索っと。『ウィルス 細菌 違い』が検索予測に出た。そのまま選んで検索するとなかなか興味深い事が書いてあった。
細胞に寄生し、8塩基しかない遺伝情報を流し込んで代謝機能を利用して増やさせる……シロアリより気持ち悪い。
こんなんが勝手に増えてるのか。なんだかムカついたので、早い治療法を更に検索する。風邪ヒットした検索結果のページを適当に読み漁った。
睡眠と水分とバランスの取れた栄養とある。風邪だから体力つけてとステーキやカツ丼は逆にタンパク質過多で原因菌の材料になりやすいって事か。
ん? むやみに抗生物質を使うと耐性菌を増やす事になる? ヤバくね? あぁ8塩基しかないから進化も容易いのか。
『風邪の症状が起こるしくみ?』免疫力が高いと起こらないのか……。免疫力って笑うと高まるとか病は気からって話に繋がるアレだよなぁ。オレの好きなオカルトっぽいじゃないか。
……これ実験に使えんじゃね?
◆
01/24 10:08
結局、熱が上がり始め学校は休んだ。熱はあるがちょくちょく目がさめる。寮母である綾式 玲子さんがたまに看病に来てくれた。ビバ美魔女。マジ感謝。ガキとは大違いだな。あぁ、さっき思いついた実験をちゃんと考えをまとめて、実践してみなきゃなぁ。
植物に好意的感情で接した時と嫌悪的感情で接して育てるとその結果が違うと言う実験結果がある。科学的には解明されない何かもそこにはあるように思える。感情物質の電子か磁場かその両方かまたは単に感情を植物の魂が感じ取るのかそれで結果が変わるのならば、微レ存な感情念動とオレは仮定しよう。
例えば、例えばだ。現実には難しいけどステータスを数値化するなど、ある程度可能なパラメータとして神がこの箱庭で手を出す事なく遊んでいるとしたらだ。オレはワクワクする。
その神の領域をこの微レ存念動で弄れたら? 運なんてパラメータを操作できるとしたら? 実際のステータスをウィルスや細菌で強化出来たらなんと素敵な事だろう!!
科学では説明できない実験をウイルスに語りかけて行うのだ細菌だって構わない。魂に重さはないとか言われるけれど、オレは『魂には観測出来ないほどの質量がある』と考えた方が理解しやすい。人間と単細胞の魂の価値が同等とも納得がいかないし。
今は丁度、風邪も引いてるしコイツらに我がステータスの糧になって貰う。嘘か本当か分からないけど分からないからこそ、オカルトぱぅあー!
"このウィルスを食べた免疫細胞はフェロモンの発散する手助けをして一生強いフェロモンを出せるようになる!"
これだ! これでオレはモッテモテだ!!
『なるほど、緩やかに我々を増やすための苗床が増える可能性があるのか。乗ってやろう』
「ん? 今の声なんだ?」
誰も居ないと分かりきった部屋でオレは思わず周りを見回した。うん。オレの部屋だ。誰も居ない。
「空耳か」
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01/28 07:05
四日後、熱が下がり、体の調子が戻った。香澄が何故か入れ替わりの様に風邪を引いた。寮母さんは引いていないのに。日頃の行いだな。寄れば触れば喧嘩する仲だが、寮母さん似で可愛いトコがまたムカつく。
「御免ね、和臣くん。これ香澄のとこに持っててくれない?」
「イエス! マム!」
しまった! つい。
「イヤだ。和臣くんたら、お義母さんだなんて、香澄がちゃんとと大人になって、プロポーズを受けてからにしてね」
「あ、いえ、そうではなく……」
「照れちゃって、可愛い」
昨日、例の映画を見てた所為だ。しかし! しかしだ! 玲子さんは微笑んでいた! 出来るなら愛人候補とかが良いけど、百戦錬磨の難攻不落と謳われる美人が相手では、まぁ、釣合というか……そんな意気地あるわけがない。玲子さんは、息子としてはありなのか……。
などと、考えながら、手渡された盆のお粥と味噌汁を運ぶ。宿敵としか思えない中二の香澄の部屋の扉の前に着いた。両手持ち用の盆だからノックは不可能。従って声をかける。
「おい、飯だ。ここに置いとくぞ」
あまり顔を見たくない。また喧嘩になることを予測すると、とてもじゃないが恋愛感情なんて芽生えるわけがない。盆を置こうと腰を屈めると部屋から声がした。
『中まで持って来て……』
は? 普通嫌ってる男子に入って欲しくないだろう。余程辛いのか。仕方ない。扉をどうにかして開け、中へ盆を運ぶ。
「……ありがと」
「あぁ、ここに置けばいいか?」
「うん。ありがと」
その後、咳き込んでしばらく辛そうだった。
「大丈夫か?」
首を振る香澄。くそ。狡いぞ。人に散々罵倒しておいて逆の立場になったらコレって。
「背中、さ、さするぞ」
何故だか分からない。あんなに小憎らしかった香澄が色っぽく見えたのか、触りたくなった。普段なら絶対に感じない衝動に違和感を覚えつつ、自らそんなことを口走った。
彼女はただ、咳をしながら頷いた。よし。許可が出た。優しくさすった。近くのティッシュ箱を目の前に出してやる。彼女はそれを二、三枚引き出して改めて咳をする。なかなか痰が切れないようだ。
「医者行って来た方が良くないか?」
「うん。ママは?」
「まだ下にいるよ、そろそろオレも食べたいから戻るぞ」
立ち上がろうとしたら、ブレザーの袖を掴まれてた。心なしか熱の所為で赤い顔がまさかの展開の紅潮に見える。
「……フーフー、アーンして……」
「は?」
……おいおい、まさか、あのウィルス捕食効果じゃないよな?
◆
人物紹介
楠井 和臣(♂15) 高一 綾式寮に在住のオカルトマニア。特段取り柄のないフツメン。あるのはオカルトに対する熱意と眼鏡。
綾式 香澄(♀14) 中二 綾式寮を経営する綾式家の娘。手放しで可愛いと言える何処(の物語)にでもいる標準ヒロイン。勝気、貧乳、伸び代期待なヒロインでもある。
綾式 玲子(女性 不詳) 綾式寮 寮母。旦那はなんとベンチャー貿易をしているとか言うなんとも形容し難い家族です。半離婚状態とも言える。旦那は養育費と男除けの為に繋ぎとめられてる感じっすね。美男美女カップルにありがちな本命にモテればいい美女とモテるから漁る美男の拗れた結果である。
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