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田宮 1
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Chapter 0
午前5:30
初夏が迫り、朝焼け薄らぐ街の目覚めも近い刻
"人"状態で錘(オモリ)をつけた木刀を背負って走る青年がいる。
名は田宮。その正体は、人間社会に紛れて生きる剣を振るしか能のない侍妖怪である。
剣術であればほぼ右に出る者が居ない。ただ、その本質は裏人格が使え、現在の"人"状態は多少丈夫ではあるものの人と変わらない、それだけの存在である。
△▼△▼△▼△
毎朝の日課である近所の境内までわざわざ遠回りして軽くランニング。境内には猫が屯し、その傍で素振りを行う。仮想敵を相手に足元をなるべく動かずに、剣戟のやり取りを幻視し、剣筋を限り無く二次元へ落とし込むつもりでひたすら整え身体にその動きを染み付ける。
思考せずともその動きが完璧に再現出来るように。
柄で相手の攻撃を受け、左上方へ流し、落としながら振り被り、袈裟斬り
それに没頭するが、ふと手を止めると思い出してしまう、半年前のボスネコの"蛮虎"を。
△▼△▼△▼△
Chapter 1
この猫の集会所、足を踏み入れると逃げて行く猫達をまるで庇う様にゆっくりと近付いて来た。
まるでその佇まいは化け猫であるが如く、小さな身体つきにも拘らずまるでオーラを放ち巨体を思わせる様な気配すら感じさせる仕草だった。
「これは、なかなかの気迫を放つ猫であるな」
じーーーー
猫はその場で座るとタミヤを見続けた。
「む、ここを使いたければショバ代を出せと?
ふむ、朝食用に買ったモノしかないのでござるが、果たして猫に良いものでござろうか?」
疑問を持ちつつコンビニで買った、食べ易くまとめられた携帯食を取り出す。
ものすごく無防備且つ、考えなしな動作に隙ありと、目にも止まらぬ早さで猫が携帯食へ牙を剥いた。
「おっと」
携帯食自体にかかりそうな牙をパッケージの端へ誘うように噛ませて、携帯食から手を離して前脚と後脚を纏めて掴んで抱いてやる。
「フーッ!!」
「そんなに怒るな、それは分けてやるから、待つでござる」
猫の前脚と後脚を自由にし、パッケージを力任せに開くと中身の1/4に齧り付くと残りを手にして猫から距離をとる。
「シャーッ!!」
着地し、俺のモノを食ったなと威嚇してくる猫。元々は田宮の物で奪われてもいないなど猫には通じない。
田宮はその場でしゃがみ込み出来るだけ小さくなってから、1/4辺りをモギって目の前の猫へ、残りを細かく千切っては境内へ投げた。
その動作は緩慢にも見えた。
今度は猫が困惑する。
投げられた餌を匂いを嗅ぎ、危険はなさそうだとその一連の行動を見越した田宮のゆっくりとした動作だが、物陰でそれらを見ていた猫は警戒を解くことなく見ていた。
「ハムッシャグウゥゥ、ハムウゥゥ」
「食べるか、威嚇するかどちらかにするでござる」
「シャグッ、ムッチャムッチャムッチャ」
「逞しい……でござるな」
田宮は微笑んで食べ終わるのを待っていた。
この日より猫の分の少量の魚肉ソーセージを献上する事で境内の隅を使う事を猫のグループから許された。
午前5:30
初夏が迫り、朝焼け薄らぐ街の目覚めも近い刻
"人"状態で錘(オモリ)をつけた木刀を背負って走る青年がいる。
名は田宮。その正体は、人間社会に紛れて生きる剣を振るしか能のない侍妖怪である。
剣術であればほぼ右に出る者が居ない。ただ、その本質は裏人格が使え、現在の"人"状態は多少丈夫ではあるものの人と変わらない、それだけの存在である。
△▼△▼△▼△
毎朝の日課である近所の境内までわざわざ遠回りして軽くランニング。境内には猫が屯し、その傍で素振りを行う。仮想敵を相手に足元をなるべく動かずに、剣戟のやり取りを幻視し、剣筋を限り無く二次元へ落とし込むつもりでひたすら整え身体にその動きを染み付ける。
思考せずともその動きが完璧に再現出来るように。
柄で相手の攻撃を受け、左上方へ流し、落としながら振り被り、袈裟斬り
それに没頭するが、ふと手を止めると思い出してしまう、半年前のボスネコの"蛮虎"を。
△▼△▼△▼△
Chapter 1
この猫の集会所、足を踏み入れると逃げて行く猫達をまるで庇う様にゆっくりと近付いて来た。
まるでその佇まいは化け猫であるが如く、小さな身体つきにも拘らずまるでオーラを放ち巨体を思わせる様な気配すら感じさせる仕草だった。
「これは、なかなかの気迫を放つ猫であるな」
じーーーー
猫はその場で座るとタミヤを見続けた。
「む、ここを使いたければショバ代を出せと?
ふむ、朝食用に買ったモノしかないのでござるが、果たして猫に良いものでござろうか?」
疑問を持ちつつコンビニで買った、食べ易くまとめられた携帯食を取り出す。
ものすごく無防備且つ、考えなしな動作に隙ありと、目にも止まらぬ早さで猫が携帯食へ牙を剥いた。
「おっと」
携帯食自体にかかりそうな牙をパッケージの端へ誘うように噛ませて、携帯食から手を離して前脚と後脚を纏めて掴んで抱いてやる。
「フーッ!!」
「そんなに怒るな、それは分けてやるから、待つでござる」
猫の前脚と後脚を自由にし、パッケージを力任せに開くと中身の1/4に齧り付くと残りを手にして猫から距離をとる。
「シャーッ!!」
着地し、俺のモノを食ったなと威嚇してくる猫。元々は田宮の物で奪われてもいないなど猫には通じない。
田宮はその場でしゃがみ込み出来るだけ小さくなってから、1/4辺りをモギって目の前の猫へ、残りを細かく千切っては境内へ投げた。
その動作は緩慢にも見えた。
今度は猫が困惑する。
投げられた餌を匂いを嗅ぎ、危険はなさそうだとその一連の行動を見越した田宮のゆっくりとした動作だが、物陰でそれらを見ていた猫は警戒を解くことなく見ていた。
「ハムッシャグウゥゥ、ハムウゥゥ」
「食べるか、威嚇するかどちらかにするでござる」
「シャグッ、ムッチャムッチャムッチャ」
「逞しい……でござるな」
田宮は微笑んで食べ終わるのを待っていた。
この日より猫の分の少量の魚肉ソーセージを献上する事で境内の隅を使う事を猫のグループから許された。
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