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第三話: 出会い

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 俺はいつものように父さんと木剣でつまらない稽古をしていた。

「アーサー、ユナが来てくれたわよ。」

 お母様が知らない女性と一緒にこちらへ歩いてきた。

「ユナか。久しぶりだな。」

 父さんとお母様の知り合いのようだが、この村では見ないような格好をしていた。

「ヤミと会うのは初めてだよね?この子が私の息子のヤミだよ。」

「初めまして。ヤミです。」

 お母様が俺の紹介をしてくれたので、俺は頭を下げて挨拶をした。

「初めまして。よく出来た良い子だな。」

「まぁ、私が育てたんだから当たり前よ。ヤミ紹介するわね。この人はラヴィーナ・ユナ。私の昔からの友人で、冒険者よ。」

 お母様と話しているところを見るとかなり仲が良さそうだ。
 しかし、俺は、冒険者という言葉が気になった。

「なんで冒険者でお母様の友人なのに村を襲う魔獣を退治してくれないの?」

 俺はふと疑問に思ったことを口走ってしまった。

「私も魔獣の退治に来たいところなんだけどね、王都で色々とやることが多くてなかなか抜け出せないんだよ。久しぶりに時間が空けられたからここに来たのだけどまたすぐに帰らなくてはならないんだよ。」

 ユナは俺と目線を合わせるようにしゃがんで話してくれた。

「こら、ヤミ。失礼だぞ。ユナは冒険者の中でもランクが最上位だから大変なんだぞ。」

 父さんが少し怒った顔をして話に割り込んできた。

「ごめんなさい。」

「気にするな、少年。私だって少年と同じ立場ならそう思う。冒険者なんてただ権力が欲しいだけの奴等ばっかなんだって。」

 俺は自分が間違っていたと思い、謝るとユナは優しく頭を撫でてくれた。

「そういえばマリア。この子魔法使えるんだよね?」

「そうよ。私の遺伝かしらね。」

「少年よ、この本をやろう。」

 ユナはそう言ってかなり古い本を俺に渡してきた。

「これは?」

「これは私が使ってきた魔法について書かれている本だ。魔法の基礎から使い方など、魔法について多くのことを知れるだろう。」

「ありがとう!魔法についてもっと勉強したかったから嬉しいよ。」

「きっとマリアみたいに良い魔法使いになれるよ少年なら。」

 ユナは優しく温かい目でこちらを見ながら立ち上がった。

「さてと、マリアとアーサーにも会えたし、少年の顔も見れたからそろそろ私は王都に戻るよ。」

「もう帰っちゃうの?お茶でも飲んで行けばいいのに。」

「本当は時間が空いていないんだけど無理言ってここに来ちゃってるからすぐに戻らないいけないんだ。」

「そうなのか。俺たちが王都に行ければ一番いいんだけどな。」

「アーサーは村を守んなきゃいけないし、マリアも医者として村を支えないといけないからダメだよ。またこうしてたまに私が顔を見せにくるさ!」

 三人の時間を邪魔しないように俺はそっと離れ、本に目を通した。

「ヤミ。ちょっとそこで待っててくれ。ユナを村の門のとこまでマリアと送ってくる。」

 俺は三人が見えなくなるまで手を振り、また本に目を通した。
 ユナから貰った本には魔法について詳しく書いてあり、この世界での魔法を知ることが出来た。
 この世界での魔法は属性というものが存在していて、火、水、雷、土、風、毒、光、闇、治癒、強化の十属性が基本の属性となり、誰もが使える防御魔法や属性同士の組み合わせ次第で無限に属性が存在しており、基本的に一人一属性だが、稀に二属性や三属性が使えるものがいるらしい。
 この本には自分が何の属性を使えるか知るための方法が載っていた。

「まず、葉っぱを一枚用意して…。それを両手で挟んで…。頭の中で一つの属性を思い浮かべて…。両手を開くと…。魔法が発動しているかで分かると。」

 俺は本に書かれた内容を一人でぶつぶつ読みながら準備を始めた。

「まずは火…。それから水…。雷…。土…。風…。毒…。光…。闇…。治癒…。強化…。」

 俺は全部の属性を試してみることにしたのだが、結果に驚かされた。

「全部使える…?あれ?多い人でも三属性じゃなかった?んん?これってもしかして…転生したからなのか?」

 俺は困惑しながらも必死に考えたが転生したからとしか考えられなかった。
 遺伝だと考えてもお母様が治癒魔法以外を使っているところ見たことがないため違うだろう。

「魔法が使いたいとは言ったが…。これは流石に…。」

 魔法を全部使えること自体は嬉しいものの、基本的に一人一属性の世界で十属性も使えるとなると、流石にヤバすぎる。
 魔法の練習は出来るだけバレないようにこっそりとしていこうと心に決めた。


 
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