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納得できない2(2)
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最終的にリンチ事件は、空手有段者の俺が手を出したことにより、加害者となってしまった。
つまり、怪我を負った上級生の保護者に訴えられたのだ。
しかし、一年の野球部員の証言と学校の隠蔽体質のおかげで公にはされず不問となったのだが、結局それを不服に思った誰かが協会に通報したのだろう、俺は全国大会への出場停止処分を受けた。
そればかりか、学校の裏サイトにあることないこと書き込まれて、喧嘩をふっかけられる事が多くなり、結果的に、俺は野球部も空手もやめざるを得なくなった。
貴史が康平を連れて来て、俺が悪かったと謝ると康平は泣いて抱き付いてくる。
「お前のせいじゃないってあれほど言ったのに、まだ気にしてたのかよ」
「気にするよ。グレて、誰とも口をきかなくなって、みんな、どんなに心配したか、・・・功ちゃんは分かってない」
確かに理不尽だと憤慨していたのは事実だが、事件はきっかけに過ぎなかったと、今ならはっきり分かる。
俺は既に虚無に侵されていた。
全ては虚無が原因なのに、状況的には事件のせいみたいになって、なんか悪いことをしたなと反省する。
「本当に悪かったよ。ごめんな、心配かけて」
「約束だよ? 俺・・・もう、いやだからな・・・」
デカい図体の男にぎゅうぎゅう抱きしめられて、苦しい。
「分かったから、もう泣くなよ。康平は相変わらず泣き虫だな。お前、野球部の主将なんだろ? しっかりしろよ」
康平の腕から逃れて、ポケットから清潔なハンカチを出し、涙を拭いてやる。
ちなみに、ポケットの中にはオキシドールとバンドエイドも入っている。
愛美はしょっちゅう転ぶから、いつでも処置できるように常備しているのだ。
「好きでやってるんじゃない! 功ちゃんが勝手にやめちゃうからじゃないか!」
康平が怒って文句を言う。
俺と康平は、小学三年生の時からずっとバッテリーを組んでて、俺はこいつの女房役だった。
こいつの面倒をずっとみてきたから、一から十まで癖も性格もよく知っている。
普通、ピッチャーは俺が俺がっていう自信家タイプが多いのに、こいつは気が優し過ぎて。
確かに、野球は上手いけどリーダータイプではないんだよな。
「わかった! わかったから! 俺が悪かった! 済まなかったから、泣きやんでくれよ、な?」
「ねぇ、野球部に戻って、俺の球受けてくれよ! また、一緒にやろう? 功ちゃん、俺、うんって言うまで、離さないよ!」
そう言って、康平は俺の右腕にしっかりしがみついた。
「「「そうだよ! それがいいよ!」」」
「それ、いい考えだな!」
「大和なら、すぐに勘を取り戻せるよ」
「最後の大会、一緒に出ようぜ!」
「俺、功ちゃんとまた野球やりたい」
「なぁ、一緒にやろうぜ、大和」
康平を宥めてる間に、いつやって来たのか野球部の連中に取り囲まれていた。
イラついてひどい態度をとった俺に、温かい言葉をかけてくれる。
素直に嬉しいと感じた。
「ありがとう。そんなふうに言ってもらえて、本当に嬉しいよ」
「「「功ちゃん!!」」」
「「「大和!!」」」
すると突然、河合が野球部の囲いを破って入って来た。
「どうした?」
ムッとした顔をして、俺の目の前に仁王立ちする。
ああ、こいつらがクラスを騒がせたのを怒っているのか。
俺もまさかこんな事態になるとは、思ってなかった。
悪いなと謝ろうとしたその時、河合は無言で俺の左腕に巻き付いた。
・・・・・・
「なんで?」
「・・・なんとなく?」
つまり、怪我を負った上級生の保護者に訴えられたのだ。
しかし、一年の野球部員の証言と学校の隠蔽体質のおかげで公にはされず不問となったのだが、結局それを不服に思った誰かが協会に通報したのだろう、俺は全国大会への出場停止処分を受けた。
そればかりか、学校の裏サイトにあることないこと書き込まれて、喧嘩をふっかけられる事が多くなり、結果的に、俺は野球部も空手もやめざるを得なくなった。
貴史が康平を連れて来て、俺が悪かったと謝ると康平は泣いて抱き付いてくる。
「お前のせいじゃないってあれほど言ったのに、まだ気にしてたのかよ」
「気にするよ。グレて、誰とも口をきかなくなって、みんな、どんなに心配したか、・・・功ちゃんは分かってない」
確かに理不尽だと憤慨していたのは事実だが、事件はきっかけに過ぎなかったと、今ならはっきり分かる。
俺は既に虚無に侵されていた。
全ては虚無が原因なのに、状況的には事件のせいみたいになって、なんか悪いことをしたなと反省する。
「本当に悪かったよ。ごめんな、心配かけて」
「約束だよ? 俺・・・もう、いやだからな・・・」
デカい図体の男にぎゅうぎゅう抱きしめられて、苦しい。
「分かったから、もう泣くなよ。康平は相変わらず泣き虫だな。お前、野球部の主将なんだろ? しっかりしろよ」
康平の腕から逃れて、ポケットから清潔なハンカチを出し、涙を拭いてやる。
ちなみに、ポケットの中にはオキシドールとバンドエイドも入っている。
愛美はしょっちゅう転ぶから、いつでも処置できるように常備しているのだ。
「好きでやってるんじゃない! 功ちゃんが勝手にやめちゃうからじゃないか!」
康平が怒って文句を言う。
俺と康平は、小学三年生の時からずっとバッテリーを組んでて、俺はこいつの女房役だった。
こいつの面倒をずっとみてきたから、一から十まで癖も性格もよく知っている。
普通、ピッチャーは俺が俺がっていう自信家タイプが多いのに、こいつは気が優し過ぎて。
確かに、野球は上手いけどリーダータイプではないんだよな。
「わかった! わかったから! 俺が悪かった! 済まなかったから、泣きやんでくれよ、な?」
「ねぇ、野球部に戻って、俺の球受けてくれよ! また、一緒にやろう? 功ちゃん、俺、うんって言うまで、離さないよ!」
そう言って、康平は俺の右腕にしっかりしがみついた。
「「「そうだよ! それがいいよ!」」」
「それ、いい考えだな!」
「大和なら、すぐに勘を取り戻せるよ」
「最後の大会、一緒に出ようぜ!」
「俺、功ちゃんとまた野球やりたい」
「なぁ、一緒にやろうぜ、大和」
康平を宥めてる間に、いつやって来たのか野球部の連中に取り囲まれていた。
イラついてひどい態度をとった俺に、温かい言葉をかけてくれる。
素直に嬉しいと感じた。
「ありがとう。そんなふうに言ってもらえて、本当に嬉しいよ」
「「「功ちゃん!!」」」
「「「大和!!」」」
すると突然、河合が野球部の囲いを破って入って来た。
「どうした?」
ムッとした顔をして、俺の目の前に仁王立ちする。
ああ、こいつらがクラスを騒がせたのを怒っているのか。
俺もまさかこんな事態になるとは、思ってなかった。
悪いなと謝ろうとしたその時、河合は無言で俺の左腕に巻き付いた。
・・・・・・
「なんで?」
「・・・なんとなく?」
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