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「高岡愛美です。子供の頃からの心臓の病気で、昨年手術をしました。出席日数が足りなくて、もう一度三年生をやり直す事になりました。体育の授業とか運動会とかは参加出来ませんが、この一年はいろんな事に挑戦したいと思っています。ご迷惑をかける事もあると思いますが、どうぞよろしくお願いします」
朝のホームルーム、愛美が席を立って、自己紹介をしている。
クラスの反応はビミョーだ。特に女子が。
一応拍手で、歓迎の意思表示を示したものの、ゴシップ好きなお喋りの今井からも質問が飛び出す事もなく、重い空気のままホームルームの時間は終わった。
既にクラス内ではグループが出来上がっている。
一コ上の、しかも重い病気持ち。
同情する気持ちはあるものの、声をかけてわざわざ厄介者を抱え込むようなマネはしたくないし、もっと言えば自分達のグループに向こうから声を掛けて来たらどうしようと戦々恐々としている。
クラス全体がどうやって接していけばいいのかと困惑している状況を、おそらく本人は分かっているのだろう、愛美は申し訳なさそうな顔をしていた。
切なくて、胸がギュッと締め付けられる。
俺は愛美にそんな顔をさせたくなかった。
「愛美、俺達クラスの厄介者同士仲良くしようぜ」
図星をつかれたクラスメイト達がギョッとしたように、俺を見る。
「ちょ、ちょっと、大和くん、ヘンな事言わないでよ! あの、高岡さん、私達高岡さんの事、厄介者なんて思ってませんから」
慌てたように、副委員長の川越がフォローに入る。
「そうか、厄介者は俺だけか。良かったな、愛美」
「ちょっと、さっきから高岡さんの事を愛美愛美って呼び捨てにして、失礼でしょ! やめなさいよ!」
「や・め・ねぇ。一つ年上だからって同じクラスメイトなのに、高岡さんなんて他人行儀過ぎるじゃないか。お前、クラス全員に川越さんって呼ばれたいか?」
副委員長は、黙った。
「俺と愛美は今朝から友達になったんだ。何の問題もない」
「えっと、あの、愛美さん、私の名前は川越鈴で、このクラスの副委員長です。大和くんが何かしたら、私に言って下さいね」
「あ、ありがとう、す、鈴ちゃん」
川越は一瞬驚いた顔をしたが、にっこり微笑んで、また授業の後で、と席についた。
「大和くんもありがとう」
笑って俺に礼を言う愛美は、可愛かった。
不細工ではないけど、特に美人というわけでもない。
地味だし、青白い顔でガリガリだし。
でも、笑った顔は可愛いかも。
真剣な顔で、一生懸命になってる姿も可愛い。
嬉しい時は目がキラキラして俺まで嬉しくなる。
困った顔をしていれば、助けてやりたくなるし、喜ぶ顔が見れるなら何だってしてやりたいと思う。
朝の一件で、川越は愛美の面倒をみると決めたようだった。
グループの仲間のところへ愛美を連れて行って、メンバーを紹介している。
川越とは小学校が同じだから、よく知っている。
優等生タイプで、面倒見もいい。
こいつに任せておけば、安心だ。
クラスに溶け込めるよう上手く立ち回ってくれるだろう。
俺は男だし、素行の悪い不良だし、女の川越が傍にいた方が、ずっと心強いに決まっている。
そう思っているのに、どうにも気になる。
その日は一日中、目が勝手に愛美を探して、困っていないか、安心して笑っているかと確認していた。
いったい俺はどうしちまったんだ!?
朝のホームルーム、愛美が席を立って、自己紹介をしている。
クラスの反応はビミョーだ。特に女子が。
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同情する気持ちはあるものの、声をかけてわざわざ厄介者を抱え込むようなマネはしたくないし、もっと言えば自分達のグループに向こうから声を掛けて来たらどうしようと戦々恐々としている。
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慌てたように、副委員長の川越がフォローに入る。
「そうか、厄介者は俺だけか。良かったな、愛美」
「ちょっと、さっきから高岡さんの事を愛美愛美って呼び捨てにして、失礼でしょ! やめなさいよ!」
「や・め・ねぇ。一つ年上だからって同じクラスメイトなのに、高岡さんなんて他人行儀過ぎるじゃないか。お前、クラス全員に川越さんって呼ばれたいか?」
副委員長は、黙った。
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「えっと、あの、愛美さん、私の名前は川越鈴で、このクラスの副委員長です。大和くんが何かしたら、私に言って下さいね」
「あ、ありがとう、す、鈴ちゃん」
川越は一瞬驚いた顔をしたが、にっこり微笑んで、また授業の後で、と席についた。
「大和くんもありがとう」
笑って俺に礼を言う愛美は、可愛かった。
不細工ではないけど、特に美人というわけでもない。
地味だし、青白い顔でガリガリだし。
でも、笑った顔は可愛いかも。
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そう思っているのに、どうにも気になる。
その日は一日中、目が勝手に愛美を探して、困っていないか、安心して笑っているかと確認していた。
いったい俺はどうしちまったんだ!?
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