幼妻と中年

善良な男と強かな女5

　風呂場から出てきた美咲をベッドに押し倒し、美咲の意思を確認するために聞く。
　もう俺の肚は決まっているから、否と答えたところで逃しはしないが。
　言いくるめるくらいの力量はある。

「今も、俺と本物の家族を作りたいか？」

　美咲の将来について話した時に、美咲は俺と本物の家族を築くことが夢だと言った。
　美咲は、母親の記憶はおぼろげで、父親とも十歳で死別し、その後は父方の親族の元で厄介者扱いされながら育った。
　子供の頃は好かれたくて、家族の機嫌ばかりとっていたという。

　美咲は真っ直ぐな眼差しを俺に向けて、コクンと頷いた。
　俺もまた真剣だった。

「俺は直ぐにジジイになるぞ。その覚悟はあるか？」

　不測の事態にでもならない限り、俺は確実に美咲より先に逝く。
　若い美咲と同じ様に生きられる時間は短い。
　そんな俺が今この瞬間、美咲の人生を奪おうとしている。

「子ができたら、離婚してやれないぞ」

「うんっ、いいよっ」

　飛びついてきた美咲を抱きしめる。

「本物の家族になろう」

　



　ティッシュで拭いて、パンツとスラックスを急いで穿き、カバンを持って玄関へと向かう。

「ごめんな」

　こんな手抜きの５分エッチで。
　朝出勤前で時間が無いというのに、もよおしてしまって美咲に付き合わせてしまった。

「どうして？　私は嬉しいよ？」

　俺の妻は天使か！
　身勝手な欲望に付き合わせたのに、こんなに可愛い事を言う。
　溜まっていた疲れがいっぺんに吹き飛ぶようだ。

「今夜はなるべく早く帰って来るから！」

　キスをして、玄関を飛び出した。

　子作りを開始した矢先、急に仕事が忙しくなってしまい、
今朝したような手抜きセックスは別にして、全然愛し合えていない。
　不甲斐ないが、愛し合っている途中で寝てしまうこともあった。

　美咲には無理しないでと言われるが、心が通じ合った今こそ、美咲を極上の悦びで満たしてもっと俺に惚れさせたい。

　今日は絶対早く帰って子作りするぞと、決意を固めて駅へと走った。