幼妻と中年

Arara

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嫉妬1

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 昼過ぎになって、のろのろと起きる。
 今日は土曜で、仕事が休みで助かった。

 昨日は随分と美咲に世話をかけてしまった。
 あの程度の酒で、まさか酔い潰れるとは。
 疲れがたまっていたのだろうか。
 
 タクシーの運転手と美咲に肩を借りて、帰って来たのはなんとなく覚えている。

 美咲があの時現れたのは、位置共有アプリのおかげらしい。
 俺が駅からずっと動かないから、おかしいと気付いて見に来たと言っていた。
 そう言えば、そんなアプリを美咲が入れていたなと思い出した。
 説明を受けた時に、美咲のいる場所がわかれば安全の担保になると思った記憶がある。

 なんというか、今ドキの子なんだろうけど、すごいなと感心する。

 田中さんには姪だと自己紹介したらしい。
 美咲を連れて帰った日に、アパートの大家さんやご近所さんに会ったらそう言うようにと設定した仮の間柄だ。

 子供だとばかり思っていたのに。



 美咲は運送業の倉庫アルバイトを始めていて、今日は出勤していた。
 迷惑をかけてしまったお詫びに、外食してショッピングにでも連れて行くか。
 
 美咲は親戚の家で苦労してきたからか、金銭面ではシビアで、俺に甘えようとはしない。
 通販サイトの俺のアカウントも自由に使っていいぞと言ってあるが、使った形跡はないし、食費の他に欲しい物が買えるよう現金も渡してあるが、それも殆ど手を付けないでいる。
 使ったのは、先日の美容院代くらいじゃないだろうか。

 何か良い物をプレゼントしたいと思った。


 驚かせようと思って、会社の前で待つ。
 すると、若い男女二人組が倉庫から出て来た。

 仲が良さそうにふざけ合っている。

 彼が美咲がよく話題に出す二つ年上の中川君だなと思った。
 母子家庭で、奨学金を借りて法学部に通っている苦学生らしい。
 身なりは質素だったが、背は高く、遠目からでも好青年に見えた。
 
 美咲が俺に気づいて、手を振る。
 彼は俺に向かって帽子をとってペコリと頭を下げた。
 
 
「驚いた! 迎えに来てくれたの?」

「外でメシでもどうかなと思ってさ。昨日のお詫びに」

「じゃ、美咲ちゃん、またね!」

「うん、バイバイ」

 美咲は中川君に手を振って見送ると俺の腕を取って嘆く。

「どこに行くの? ああもう、ショック。隼人さんとのデートなのに、こんな恰好なんて!」


「美咲は、」

「なに?」

「いや、なんでもない」

 美咲は自分の恰好が気になるようだったが、俺は美咲が彼に俺の事をなんと紹介したのかがずっと気になっていた。





 
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