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第10話 倉科麗華は負けず嫌い
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「ま、マジ...はっ...し...死ぬ...」
「ちょっと運動不足すぎない?」
「はっ...!は...ッ!いや...万年...っはッ!...帰宅部だから...そりゃ...なぁ...!」
たった1時間程度の練習で過呼吸を起こすのではないかと思うほど、息が上がる。
「とりあえず、今日はこんなもんかな。私は一人で練習してから帰るから。先帰っていいよ」
「いや...すぐは動けないし...待ってるよ...」
「そう?じゃあ、そこのベンチで横になってれば?」
「...そうさせていただきます...」
死ぬ...。マジで...。
俺より動いていないとは言え、ほとんど息が上がってないな...。倉科の奴すごすぎだろ...。
そのままぼーっと倉科の練習を眺める。
素早いドリブル、滑らかなシュートフォーム、身のこなしからして、素人ではないことが素人にも分かるほど、上手い。
どうやら彼女は陸上ではなく、バスケをやっていたらしい。
やっぱり、噂は当てにならないな。
それから30分ほど経つと荷物を片付け始める。
すると、「何してたんだお前ら?」と、声をかけられる。
声の主は菅原先生だった。
「菅原先生。何してるんですか?」
「そりゃこっちのセリフだよ」
「いや、こっちのセリフですよ!」
「そうか。確かに。俺、実は大学までバスケやってたんだよ。こう見えて、高校では全国にも行ったことあるんだぜ?」
「まじっすか!?」
「マジマジ、おーまじ。ここの体育館には昔よく通ってたからなー。いわゆる思い出の場所って奴だな。てか、なんでお前らあっちの体育館でやってねーんだよ」
「あずましくないので」と、倉科がつぶやく。
「ほーん?体育祭に向けて特訓か?気合い入ってんなー!よし、いっちょ俺と勝負してみるか!」
「いえ。おじさんとは勝負したくないです。加齢臭がすごそうなので」
「おい!俺まだ33だぞ!女子高生の言葉はどんな刃より鋭利なんだぞ!気をつけろよ!」と、泣くそぶりを見せる
「いや、俺たちもう帰るところだったので!」
「ほーん?逃げるのか?」と、見え見えの挑発をする。
「いやいや、そういう「先生。負けたら何してくれます?」と、まさかの倉科が飛びついた。
「いいぜ。何でもいうことを聞いてやる」
「何でも...。言いましたね」
「おう。かかってこい」
こうして、まさかの1対1が始まった。
「悪いがちょっとだけウォーミングアップさせてくれ」
「どうぞ」
よくわからない独自のルーティン的なものを10分程度行うと「おっけー。やるぞ!」と、声をかけられる。
「ルールはどうします?」
「先に10P取った方の勝ちってことにしよう」
全国大会に出場したとはいえ、今はただのおじさん。
さぁ、どうなる。
そして、ゲーム開始したその瞬間だった。
先生の気迫が変わる。
直接対峙していない俺ですら分かる。
これは...やばい。
「くっ!」と、ほぼ自分のバスケットをさせてもらえない倉科。
そして、苦し紛れにはなったボールはリングに当たることもなく外れる。
容赦ねぇー...てか、このおっさんやばすぎだろ。33の動きじゃねーぞ。
「攻守交代だな」と、ほとんど息も上がってない。化け物か?
そうして、徐々にポイントに差がついていく。
2:0⇨4:0⇨4:2⇨7:2⇨9:2
「美作も入っていいぞ?」
「いやいや、俺なんて入っても足手纏いになるので...」
「まだ...はっ...はっ...勝負は...終わってない!」
「そうだな。まだ終わってない」
しかし、現実は何とも現実である。
11:2
「お疲れさん。はい俺の勝ち」と、女子相手に勝って余裕の笑みを浮かべる菅原先生は最高にダサくて、かっこよかった。
そのまま帰りは先生の車に乗せてもらった。
「先生、バスケ超うまいですね」
「だろ?」
「プロみたいでした!」
「やだなー照れちゃう!」
「...」
横からとてつもない嫌悪に満ちたオーラを感じる...。
「先生はよくあの体育館に行ってるんですか?」
「本当にたまにな。けど、今日きたのは、あそこが2ヶ月後に潰れることが決定したからだなら。そういえば倉科、なんでバスケ部に入らなかったんだ」
「別に。バスケにいい思い出ないですし。そんなにうまくもないですし」
「いやいや、相当うまかったぞ」
「...結局勝てなかったじゃないですか」
「そりゃまぁ、歴が違う」
「私器用貧乏なんで。なんでも70点くらいは簡単に取れるんです。けど、どれだけ努力しても85点がいいところ。結局それ以上にならないことはわかってますから。私はマイケルジョーダンにはなれないことも」
勉強も簡単に70点取ってくれると助かるがな。
けど、確かにそうかもしれない。
確かにそうかもしれないが...。
「確かに...僕も倉科さんも、マイケルジョーダンになれないけど、体育祭で優勝すれば学校で1番にはなれるじゃん。それは世間から見れば、ちっぽけなものかもしれないけど、例え井の中と分かっていても、その井の中で1番を目指すその姿勢が無駄だとは僕は思わないけどね」
「...何?かっこつけ?」
「...悪いかよ」
いうんじゃなかったと後悔。
「倉科の家はここら辺か?」
「えぇ、ありがとうございます、先生。あと、ありがとうね、美作くん。そういうかっこつけ私は嫌いじゃないよ」と、彼女は笑った。
彼女の本当の笑顔を初めて見た気がした。
その笑顔は間違いなく、世界で一番かわいいかった。
「ちょっと運動不足すぎない?」
「はっ...!は...ッ!いや...万年...っはッ!...帰宅部だから...そりゃ...なぁ...!」
たった1時間程度の練習で過呼吸を起こすのではないかと思うほど、息が上がる。
「とりあえず、今日はこんなもんかな。私は一人で練習してから帰るから。先帰っていいよ」
「いや...すぐは動けないし...待ってるよ...」
「そう?じゃあ、そこのベンチで横になってれば?」
「...そうさせていただきます...」
死ぬ...。マジで...。
俺より動いていないとは言え、ほとんど息が上がってないな...。倉科の奴すごすぎだろ...。
そのままぼーっと倉科の練習を眺める。
素早いドリブル、滑らかなシュートフォーム、身のこなしからして、素人ではないことが素人にも分かるほど、上手い。
どうやら彼女は陸上ではなく、バスケをやっていたらしい。
やっぱり、噂は当てにならないな。
それから30分ほど経つと荷物を片付け始める。
すると、「何してたんだお前ら?」と、声をかけられる。
声の主は菅原先生だった。
「菅原先生。何してるんですか?」
「そりゃこっちのセリフだよ」
「いや、こっちのセリフですよ!」
「そうか。確かに。俺、実は大学までバスケやってたんだよ。こう見えて、高校では全国にも行ったことあるんだぜ?」
「まじっすか!?」
「マジマジ、おーまじ。ここの体育館には昔よく通ってたからなー。いわゆる思い出の場所って奴だな。てか、なんでお前らあっちの体育館でやってねーんだよ」
「あずましくないので」と、倉科がつぶやく。
「ほーん?体育祭に向けて特訓か?気合い入ってんなー!よし、いっちょ俺と勝負してみるか!」
「いえ。おじさんとは勝負したくないです。加齢臭がすごそうなので」
「おい!俺まだ33だぞ!女子高生の言葉はどんな刃より鋭利なんだぞ!気をつけろよ!」と、泣くそぶりを見せる
「いや、俺たちもう帰るところだったので!」
「ほーん?逃げるのか?」と、見え見えの挑発をする。
「いやいや、そういう「先生。負けたら何してくれます?」と、まさかの倉科が飛びついた。
「いいぜ。何でもいうことを聞いてやる」
「何でも...。言いましたね」
「おう。かかってこい」
こうして、まさかの1対1が始まった。
「悪いがちょっとだけウォーミングアップさせてくれ」
「どうぞ」
よくわからない独自のルーティン的なものを10分程度行うと「おっけー。やるぞ!」と、声をかけられる。
「ルールはどうします?」
「先に10P取った方の勝ちってことにしよう」
全国大会に出場したとはいえ、今はただのおじさん。
さぁ、どうなる。
そして、ゲーム開始したその瞬間だった。
先生の気迫が変わる。
直接対峙していない俺ですら分かる。
これは...やばい。
「くっ!」と、ほぼ自分のバスケットをさせてもらえない倉科。
そして、苦し紛れにはなったボールはリングに当たることもなく外れる。
容赦ねぇー...てか、このおっさんやばすぎだろ。33の動きじゃねーぞ。
「攻守交代だな」と、ほとんど息も上がってない。化け物か?
そうして、徐々にポイントに差がついていく。
2:0⇨4:0⇨4:2⇨7:2⇨9:2
「美作も入っていいぞ?」
「いやいや、俺なんて入っても足手纏いになるので...」
「まだ...はっ...はっ...勝負は...終わってない!」
「そうだな。まだ終わってない」
しかし、現実は何とも現実である。
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「お疲れさん。はい俺の勝ち」と、女子相手に勝って余裕の笑みを浮かべる菅原先生は最高にダサくて、かっこよかった。
そのまま帰りは先生の車に乗せてもらった。
「先生、バスケ超うまいですね」
「だろ?」
「プロみたいでした!」
「やだなー照れちゃう!」
「...」
横からとてつもない嫌悪に満ちたオーラを感じる...。
「先生はよくあの体育館に行ってるんですか?」
「本当にたまにな。けど、今日きたのは、あそこが2ヶ月後に潰れることが決定したからだなら。そういえば倉科、なんでバスケ部に入らなかったんだ」
「別に。バスケにいい思い出ないですし。そんなにうまくもないですし」
「いやいや、相当うまかったぞ」
「...結局勝てなかったじゃないですか」
「そりゃまぁ、歴が違う」
「私器用貧乏なんで。なんでも70点くらいは簡単に取れるんです。けど、どれだけ努力しても85点がいいところ。結局それ以上にならないことはわかってますから。私はマイケルジョーダンにはなれないことも」
勉強も簡単に70点取ってくれると助かるがな。
けど、確かにそうかもしれない。
確かにそうかもしれないが...。
「確かに...僕も倉科さんも、マイケルジョーダンになれないけど、体育祭で優勝すれば学校で1番にはなれるじゃん。それは世間から見れば、ちっぽけなものかもしれないけど、例え井の中と分かっていても、その井の中で1番を目指すその姿勢が無駄だとは僕は思わないけどね」
「...何?かっこつけ?」
「...悪いかよ」
いうんじゃなかったと後悔。
「倉科の家はここら辺か?」
「えぇ、ありがとうございます、先生。あと、ありがとうね、美作くん。そういうかっこつけ私は嫌いじゃないよ」と、彼女は笑った。
彼女の本当の笑顔を初めて見た気がした。
その笑顔は間違いなく、世界で一番かわいいかった。
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