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高校生編
第69話 そうして歩み始める
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◇卒業式の夜
「...いやー卒業しちゃったね」
「そうだね」
みんなでカラオケに行き、これでもかと卒業ソングや別れの歌を歌いまくりすでに喉が痛くなり始めていた。
そうして、ソファに座り込みながらテレビを眺める。
何となく最初の頃を思い出す。
ここから見える景色も見慣れたものだ。
「...外に何かある?」
「あー、いや...この景色も見慣れたなーと思って」
「そうだねー。うんうん」
「...」「...」
沈黙も今はもう気まずくはならない。
すると、俺の肩に真凜ちゃんの頭が乗る。
「...昔はね、こうしたかったんだよ?妄想の中では地下鉄の中でーとかを想定してたんだけど、碧くんは徒歩の通学だったから残念ながらその夢は叶わなかったけどね?」
「...そっか。じゃあ...今から地下鉄に行こう」
「え?」
「シチュエーションは全然関わりがない男女2人。だけど、お互いすごく意識してるっていう設定で」と、言いながら俺は真凜ちゃんの手を掴んで連れ出した。
◇
私の名前は汐崎真凜。
学校では三天美女なんて呼ばれている結構人気の女の子だ。
告白されることなんて日常茶飯事で、それでも誰かと付き合うことはなかった。
理由は一つ。
私には好きな人がいたからだ。
それが今、隣に座っている彼である。
名前は山口碧。
いつもローテンションで少し達観していて大人しい男の子である。
小学校の後半から高校までずっと同じ...というより私が合わせていたのだが、残念ながらあまり同じクラスになることなく、同じクラスになっても何を話しかけていいか分からず、微妙な距離感を保っていた。
しかし、そんなことをしていたら既に3年生も始まってしまい、未だにその距離は埋まることのなかった。
そうして、本日...。
学校帰りの地下鉄で偶然にも彼の隣の席に座ることができたのだった。
お互い多分気づいてはいるが声をかけるタイミングを失ってしまい、そのまま無言で地下鉄に乗っていた。
これは大チャンスなのは分かっている。
だけど...ビビリな私は何も出来ずにいた。
このままじゃ...ダメだ!
私はそう思いようやく行動に移すことにした。
目を瞑り少しフラフラしながら眠いですよアピールをして、彼の肩に頭を乗せる。
正直、心臓は張り裂けそうなほどドキドキしていた。
聞こえてしまっているのではないかと思いながら、それでと私は寝たふりを続ける。
「あの...汐崎さん?」と、声をかけてくれるがあえて無視を決め込む。
というより、寝たふりを続行する。
しかし...彼は私に肩を貸してくれたまま特に動くことがない。
私自身もこの後の流れを何も考えておらず、ただそんな幸せな時間が流れる。
彼の温もりが私に伝わる。
すると、いつの間にか本当に寝てしまい、終点のアナウンスで目を覚ます。
ゾロゾロと降りていく足音...。
バッと目を覚ますと私の口の横から何かが出ていることに気づく。
そう...私は涎を垂らして寝てしまっていたのだった。
「...あっ!!えっと...その!!ご、ごめんなさい!」
最悪だ。絶対嫌われた。涎を垂らすキモ女だって思われてた...。終わった...。
「ごめん...。本当は途中で起こそうと思ったんだけど...すごい熟睡してたから...肩のこれは気にしなくて大丈夫だよ?全然気にしてないから」
「わ、私の方こそごめん...!そ、それ、クリーニング出さないと...」
「だ、大丈夫だよ?」
「大丈夫じゃないよ!//私のよだれがついちゃってるし...!」
「...じゃあ...そのクリーニング代の代わりに...その...」
「...?」
「俺と...で、デート...してくれませんか?」
そんな言葉に私は完全に思考が停止する。
何?なんて言ったの?デート?嘘?何それ?ドッキリ?
「...ご、ごめんなさい...!調子乗りました...!ほら、た、たまに目があったりしたり...その時笑いかけてくれたりとか...き、きもい勘違いしちゃって...。汐崎さんみたいな人気者が俺なんか相手にするわけないのに...ははは」
目があった時、照れた顔してくれていたのは...私の勘違いじゃなかったんだ。
嬉しい。私もずっと好きだったって言いたいのに、何から言えばいいかわからなくて...言葉が出ない。
「じゃあ、俺はこれで」と、言った彼の手を私は握った。
「しお...ざきさん?」
「...私も...私もずっと好きだった。山口くんのこと...ずっと見てた」
「...」と、驚いた顔をする山口くん。
私はそのまま無理やりキスをする。
「...!!//」と、顔を赤くしながらも抵抗はせずに少しだけ幸せな時間が流れる。
「...好き...だよ?」
「...俺も...だよ」
「お客さん」と、駅員さんに声をかけられて我に帰り2人ともいそいそと退散するのだった。
「...ドキドキしたね?」
「...うん。てか...すげー恥ずかしかった//」
「...うん//」
「...でも...やっぱらしくないっていうか...やっぱ俺たちの出会い方はあれで良かったと思う」
「...うん。そうだね」
そうして、私は碧くんの手を握る。
「大好きだよ...碧」
「...俺もだよ。真凜」
こうして、俺たちの高校生活を終えるのだった。
「...いやー卒業しちゃったね」
「そうだね」
みんなでカラオケに行き、これでもかと卒業ソングや別れの歌を歌いまくりすでに喉が痛くなり始めていた。
そうして、ソファに座り込みながらテレビを眺める。
何となく最初の頃を思い出す。
ここから見える景色も見慣れたものだ。
「...外に何かある?」
「あー、いや...この景色も見慣れたなーと思って」
「そうだねー。うんうん」
「...」「...」
沈黙も今はもう気まずくはならない。
すると、俺の肩に真凜ちゃんの頭が乗る。
「...昔はね、こうしたかったんだよ?妄想の中では地下鉄の中でーとかを想定してたんだけど、碧くんは徒歩の通学だったから残念ながらその夢は叶わなかったけどね?」
「...そっか。じゃあ...今から地下鉄に行こう」
「え?」
「シチュエーションは全然関わりがない男女2人。だけど、お互いすごく意識してるっていう設定で」と、言いながら俺は真凜ちゃんの手を掴んで連れ出した。
◇
私の名前は汐崎真凜。
学校では三天美女なんて呼ばれている結構人気の女の子だ。
告白されることなんて日常茶飯事で、それでも誰かと付き合うことはなかった。
理由は一つ。
私には好きな人がいたからだ。
それが今、隣に座っている彼である。
名前は山口碧。
いつもローテンションで少し達観していて大人しい男の子である。
小学校の後半から高校までずっと同じ...というより私が合わせていたのだが、残念ながらあまり同じクラスになることなく、同じクラスになっても何を話しかけていいか分からず、微妙な距離感を保っていた。
しかし、そんなことをしていたら既に3年生も始まってしまい、未だにその距離は埋まることのなかった。
そうして、本日...。
学校帰りの地下鉄で偶然にも彼の隣の席に座ることができたのだった。
お互い多分気づいてはいるが声をかけるタイミングを失ってしまい、そのまま無言で地下鉄に乗っていた。
これは大チャンスなのは分かっている。
だけど...ビビリな私は何も出来ずにいた。
このままじゃ...ダメだ!
私はそう思いようやく行動に移すことにした。
目を瞑り少しフラフラしながら眠いですよアピールをして、彼の肩に頭を乗せる。
正直、心臓は張り裂けそうなほどドキドキしていた。
聞こえてしまっているのではないかと思いながら、それでと私は寝たふりを続ける。
「あの...汐崎さん?」と、声をかけてくれるがあえて無視を決め込む。
というより、寝たふりを続行する。
しかし...彼は私に肩を貸してくれたまま特に動くことがない。
私自身もこの後の流れを何も考えておらず、ただそんな幸せな時間が流れる。
彼の温もりが私に伝わる。
すると、いつの間にか本当に寝てしまい、終点のアナウンスで目を覚ます。
ゾロゾロと降りていく足音...。
バッと目を覚ますと私の口の横から何かが出ていることに気づく。
そう...私は涎を垂らして寝てしまっていたのだった。
「...あっ!!えっと...その!!ご、ごめんなさい!」
最悪だ。絶対嫌われた。涎を垂らすキモ女だって思われてた...。終わった...。
「ごめん...。本当は途中で起こそうと思ったんだけど...すごい熟睡してたから...肩のこれは気にしなくて大丈夫だよ?全然気にしてないから」
「わ、私の方こそごめん...!そ、それ、クリーニング出さないと...」
「だ、大丈夫だよ?」
「大丈夫じゃないよ!//私のよだれがついちゃってるし...!」
「...じゃあ...そのクリーニング代の代わりに...その...」
「...?」
「俺と...で、デート...してくれませんか?」
そんな言葉に私は完全に思考が停止する。
何?なんて言ったの?デート?嘘?何それ?ドッキリ?
「...ご、ごめんなさい...!調子乗りました...!ほら、た、たまに目があったりしたり...その時笑いかけてくれたりとか...き、きもい勘違いしちゃって...。汐崎さんみたいな人気者が俺なんか相手にするわけないのに...ははは」
目があった時、照れた顔してくれていたのは...私の勘違いじゃなかったんだ。
嬉しい。私もずっと好きだったって言いたいのに、何から言えばいいかわからなくて...言葉が出ない。
「じゃあ、俺はこれで」と、言った彼の手を私は握った。
「しお...ざきさん?」
「...私も...私もずっと好きだった。山口くんのこと...ずっと見てた」
「...」と、驚いた顔をする山口くん。
私はそのまま無理やりキスをする。
「...!!//」と、顔を赤くしながらも抵抗はせずに少しだけ幸せな時間が流れる。
「...好き...だよ?」
「...俺も...だよ」
「お客さん」と、駅員さんに声をかけられて我に帰り2人ともいそいそと退散するのだった。
「...ドキドキしたね?」
「...うん。てか...すげー恥ずかしかった//」
「...うん//」
「...でも...やっぱらしくないっていうか...やっぱ俺たちの出会い方はあれで良かったと思う」
「...うん。そうだね」
そうして、私は碧くんの手を握る。
「大好きだよ...碧」
「...俺もだよ。真凜」
こうして、俺たちの高校生活を終えるのだった。
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