天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄

文字の大きさ
上 下
63 / 69
高校生編

第63話 許し

しおりを挟む
「は?...え?何言ってるんですか?」と、思わず顔が引き攣る。

「...犯人の名前は大塚《おおつか》平《たいら》。動機は俺に対する逆恨みだったらしい」

「...何ですか...それ」

「碧くんの主演の作品...冬館の夜。俺の作品の中でも1番評価されたのがあれだからな。今でも何度も見返しているくらい俺のお気に入りだ。けど、それを気に食わない奴がいてな。それが同じ映画監督だった大塚平だ。すげー努力家だったけど、映画監督としては3流以下だった。そもそも監督には向いてなかったと思うしな」

 B級映画界の巨匠を呼ばれ始めた俺と、一生売れない作品をやり続ける大塚。

 そんなある日、俺は大塚にあることを言ってしまった。

 ◇PM11:30 Bar

「いい映画だったよ。冬館の夜」

「...ありがとう。そっちはどうだ?」

「...俺やっぱ映画監督には向いてないのかも」

「なんかあったか?」

「いや、何にもないんだよ。何も起きない」

「...そっか。まぁ、俺と役者に救われただけだ。特に子役のあの子、ありゃ売れるぞ」

「...お前はいいな。いつも恵まれて...」

「そうかもな」

「...その子、名前なんて言うんだっけ?」

「ん?山口碧だけど」

「東京住み?」

「そうだよ。なんだ?お前も出演オファーするのか?」

「...いや、そうじゃない。そうじゃない」と、どこか虚な目つきで店を出て行ったのだった。

 その言葉の意味を知ったのはとあるニュースを見た時のことだった。

「...山口...秋葉《あきは》?」

 俺は急いで病院に向かったが、時すでに遅し。犯人は逃走、碧くんは重体、お母さんも集中治療室にいるとのことだった。

 犯人はすぐにピンときた。
急いで連絡するが当然電話に出ることはなかった。

 それから俺はできるだけ碧くんのサポートをしようと思った。
しかし、部外者の俺は立ち入ることは許されず、それどころか母親殺しの責任をなんの責任もない子供に押し付ける異常な家族に苦しめられていると聞いた時心が裂けそうになった。

 それから少し経った日のこと。
お悔やみ欄の中に大塚平と名前が掲載されているのを偶然見かけるのだった。

 ◇

「...間接的に俺が殺したようなものなんだ。黙っていてすまなかった!!」と、俺は椅子から降りて地面に額を擦り付けながら謝った。

 許してほしいからではなく、吐露することで楽になろうとしたわけでもなく、俺という明確に恨む対象を碧くんに作ってあげようとしたわけでもない。
ただ...謝るという方法以外何もなかったのだ。

「...そう...だったんですね。土下座なんてやめてください。間接的に殺したなんて言わないでください。監督は何も悪くないです」

 そうしてゆっくりと顔を上げるとそこにはまるで聖母のような笑顔を浮かべた彼がいた。

「...本当にすまなかった」

「母が生きていたら確かに俺の人生は変わっていたかもしれないです。もしかしたら子役として大躍進して...それはそれで幸せだったかもしれません。けど、そんな想像できる幸せより、俺は真凜ちゃんといるこの時間のほうが...ずっと幸せだと思うんです」

「碧くん...」という言葉とともにあふれ出す。

「ずっと苦しかったでしょ、監督。大丈夫です。もう...大丈夫ですよ」と、優しく俺を抱きしめてくれた。

 その姿は子役時代の...あの幼かった山口碧くんそのものであった。

 ◇

「...みっともない姿を見せてしまったね」

「何を言ってるんですか。監督はいつだってかっこいいですよ」

「...うれしいね...本当...。...そうだ。もう一つの話というのがね...。これなんだ」と、カバンから一つの資料を取り出す。

 それはとある専門学校の冊子だった。

「...俳優の専門学校...ですか?」

「あぁ、まだこういうのに興味があったらと思ったんだが...。一応知り合いがやっている学校だからカリキュラムとか将来性とかは保証する。俳優じゃなくても脚本家とか、映像系も学べるから何かしらの形で映画にかかわれると思うんだ。もちろん、もう行く大学が決まってるとかならあれなんだが...。まぁ、ゆっくり考えてくれて構わないから」

「...」

 それから昔話や最近のこと、劇の裏話をして一通り盛り上がったところで監督が時計をちらっと見る。

「あぁ...もうこんな時間か。いや...時が経つのは早いね」

「そうですね」

「じゃあ、この後仕事があるから行くよ。今帰るなら送っていけるけど?どうする?」

「いや、俺たちも帰ります」

 そうして、監督の車で家に帰るのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...