天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄

文字の大きさ
上 下
34 / 69
高校生編

第34話 漏れる

しおりを挟む
「まさかバレちゃうとはね...ごめんね」

「...いや、ちゃんと気を遣わなかった俺も悪いし」

「...私は別にバレてもあれだけどさ...。これから周りに色々言われるかもだし、それに...清人くんのことも...さ」

「...うん。まぁ、いずれバレることだと思うし。仕方ない」

 つらそうな顔をしている碧くん。
本当に申し訳ないし、また迷惑をかけてしまったと思っている一方で、ようやく公でイチャイチャできるなんて考える私は本当に最低だ。

「あ、あのさ!今日は碧くんの好きなハンバーグを作ろうと思うんだけどさ!その...一緒に作らない?」

「...うん。作ろう」と、無理に笑ってくれる。

 私はまた無理をさせてしまった。
また嫌な思いをさせてしまった。
本当は...私のことどう思ってるの?

「チーズ乗っけちゃうね」

「うん」

 ◇

「やーまーぐーちー!んで、天使様とはどこまで進んでんだよ」

「どこまでって...別に...」

「まさか夫婦なのにやってないのか!」

「夫婦だからって必ずやるわけじゃないだろ...」

「いやいやいや!それはないしょ!てか、いつから付き合ってんだよ!馴れ初めを教えろよー」と、朝から複数の男子に絡まれる。

 いつもなら仲裁に入ってくれるはずの清人は自席に座ったままである。

「...」

 そして、真凜ちゃんもクラスの女子に囲まれていた。
普段絡まない連中からも色々と聞かれているようで、別のクラスからわざわざ俺を見にきて、ヒソヒソと笑いながら会話する人もいた。

 大方、予想通りの反応ではあったが、人から注目されたりするのが嫌いな俺にとってはそこそこの苦痛であったが、何より親友が離れてしまったことが1番な苦痛だった。

「はーい座れ座れー。来月の修学旅行についてある程度固まってきたと思うが、まだバスとか飛行機の席とかそこらへん決めてなかったから今日決めるぞー。基本は班の人間で固めるから、話し合いしてくれー。俺は眠いから寝る」と、机に突っ伏してそのままマジで寝る先生。

 そうして、4人集まるが当然最悪の空気である。

「...流石にこれは俺と海ちゃんの方がいいよな。あと、自由行動も...俺と海ちゃんに変えたほうがいいよな」と、清人が呟く。

「清人...ごめん。俺本当にそんなつもりじゃなくて...」

「いいよ。今は聞きたくない。真実も嘘も言い訳も。何を聞いても...多分ムカつくから」

 すると、海ちゃんが首を横に振る。

「私は...嫌。碧くんと...周りたい」と、いつになくまっすぐな目でそういった。

「でも...2人は...結婚してて「そんなの関係ない!...そう言ったのは清人くん...だよ」

 元々は黙っていることを条件に自由行動は2人で周るなっていたが、バレてしまった以上当然その約束も意味をなさなくなった。

 そんなことは分かりきっていても、海ちゃんは迷うことなくはっきりとそう言った。

 別に海ちゃんが漏らしたわけでもないし、俺の中のけじめをつけるためにも、出来れば2人で回りたかった。しかし、そんなことを俺から提案することはできなかった。

「いいよ。このままで。私は清人くんと周って、碧くんは海ちゃんと周る。そこは変えなくていい。それでいいよね?碧くん」

「...うん。いい」

 周りの楽しそうな声の中で、まさに葬式のような鬱々とした空気が流れる。
いや、こうなることはわかっていた。
最初に打ち明けなかった時点で最後まで打ち明けない以外、避けることのできない必然の結果だ。

「...それじゃあバスと飛行機の席は俺と海ちゃん。自由行動だけは変わらずって感じで」と、早々締めると清人は席に戻ってしまった。

 暴言を吐かれるわけでも、嫌がらせをされるわけでもなく、ただ距離を置かれる感じがすごく心に響いた。

 たった1人の友達で、たった1人の親友。
何度も助けられて、何度も救われた。
結局、何も返せないままこの関係が終わってしまうのか。

 そんなことを考えながらその日も学校は終わるのだった。

 ◇土曜日

 いつもより遅く朝、目が覚める。
携帯に目をやるが来ているのはアプリからの通知だけだった。

 そのままのそのそと起き上がり、「おはよう」と声をかけながらソファに座ると「おはよう!」といつも通りの元気な真凜ちゃんが笑いながら挨拶を返した。

「...あんまり寝れてない?」

「ん?いやそんなことないよ。ちゃんと寝てる」

「そっか...。あっ、そうだ!肩揉んであげるよ!最近夜も結構勉強頑張ってるし、肩とか凝ってるでしょ!」

「え?大丈夫だよ?そんな凝ってないし」

「まかせんしゃいまかせんしゃい!」と、肩を回しながら自信満々にキッチンから出てくる。

 そのまま肩を揉んでもらうがこれがなかなかに上手かった。

「あー、気持ちいい...」

「やっぱ結構凝ってますよー?お客さーん」

「...まじですか」

 すると、そのまま俺の背中に抱きつく真凜ちゃん。

 そして、俺の肩に頭を乗せ「私がいるから」と言った。

「...うん」

「ごめんね。私なんかじゃ代わりにならないよね」と、そのまま離れようとする真凜ちゃんの腕を掴んだ。

「え?」

「...キスしたい」

 俺はそんなことをぽろっと言ってしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...