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高校生編
第23話 劇
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◇テスト前日 七谷家
「いやぁ...!こりゃ今までにないくらい自信がありますわ!!」と、テスト前日の勉強会にて自信満々にそんなことを宣言する清人くん。
「清人のそれは信用なんないんだよなー。2年の最後のテストも同じようなこと言って赤点じゃなかった?」と、煽る本庄さん。
「あれは回答する場所がずれててあぁなっただけだ!」
そんな二人のやり取りと見て笑っていると、碧くんと目が合う。
いつもより少しだけぎこちなく笑うと、いつものように笑いかけてくれる。
本当に優しくて...。その優しさが少しだけ痛かった。
「てか、碧は今回どうなん?自信のほどは?」
「まぁまぁかな。いっつも中盤くらいだし、今回も同じくらいならOKって感じ」
「ふーん。じゃあ海ちゃんは?今回こそ打倒天使様!みたいな感じ?」
「いやいや!私なんて全然だよ...」
「でも前回も結構惜しかったよね?まぁ、天使様はいつも全教科満点だけど、海ちゃんもほとんど満点でしょ?すげーよな、本当。てか、天使様もだけど海ちゃんもなんでうちの高校に来たん?天使様は家から近いとか聞いたけど...。海ちゃんに関してはさほど家から近いってわけでもないし」
「えっと...その...校風...?」
「なにそれwそんなんで入ってくる人まじでいんのww」と、爆笑する本庄さん。
「いや、うちの高校の校風はいいぞ。私服ではないにしろある程度の自由が認められてるし、学習のカリキュラムも独特で他にはないからな」
「うわ!碧が急に教師みたいなこと言いだしたw」
言い淀んでしまった私を何とかカバーしてくれる碧くん。
本当に...優しいな。
でも、その優しさが今の私には少し痛かった。
「夏休み終わったら修学旅行とー10月には学祭かー。そんで冬休みからの受験...。本当、高校三年間ってあっという間だったよなー...」
「まだ夏休み前だからw卒業式の後みたいなノリで話すのやめてくんない?w」
「いいだろー、別に。てか、うちのクラスは学祭何やるんだろうなー」
「うちわぁ~1年の時は出店で、2年は教室発表やったねー」
「俺たちは1、2年どっちも教室発表だったな」
「私は...どっちも出店だった...」
「てことは全員ステージ発表したことないのか。それなら最後はパーッと楽しくステージ発表でもやりたいもんだな!」
「ステージ発表ねぇ~。ダンスとか?」
「俺にダンスなんて踊れないんだが!?」
「じゃあなにすんのさー。劇でもやっちゃう?w」
「劇ねぇ...悪くないかも。な、碧」
「...そうだな」
そんな話をしていると、突然部屋の扉が開いた。
「ちょっとまったー!!」
「お、お父さん!?」
それに続くように妹たちも「「「ちょっとまったー」」」と言いながら入ってくる。
「ちょ、な、何してんの!?」
「うわー!かわいい!なにあのちびっこ三人!」
「劇をやるならお勧めしたいのがあってね...!」
そうして、一つのDVDを渡される。
それは俺の処女作の監督だった【安藤幸三さん】の作品だった。
「学園もので割と短いし、学園祭の劇にはぴったりだと思うんだ。それにこれは君にぴったりだと思うんだ」と、熱心に碧くんに語り掛ける父。
「いや...自分は主役とかはもう...」
「いや...お父さん。盛り上がってるところ申し訳ないけど...私たちだけで決められることじゃないから...」
「あー!また来てる!お姉ちゃんの彼氏!」と、何故か清人くんに群がる三人と「おう!また来てるぜ!みんな元気だねぇ!」と、ノリノリの清人くん。
「あぁん!可愛すぎ!食べたいよぉ!」と、妹の頬にすりすりする本庄さん。
完全に収拾がつかない状況にため息をつくしかなかった。
◇
「劇?」
「そう。学祭の話になってね。なんか劇がやりたいって本庄さんと清人が言い始めて」
「へぇ!いいじゃん!やろ?」
「真凛ちゃんがその気なら...できそうだね」
そうして、借りてきたDVDを見始める。
物語のあらすじはとある高校生を主役にした復讐の物語だった。
元々はすごいお金持ちだった家がとある事件に巻き込まれたことでその財を失った。しかし、犯人は捕まることなく10年が経過し、警察もとっくに捜査をやめていたなか、その家の長男である主人公のみは一人で事件を追っていた。
そして、事件に深い関りがある人間を突き止める。
それは同級生の女の子だった。
主人公は彼女に言い寄りなんとかその事件の真相を知ろうと奔走するのだが、それから数日後、彼女は不審死してしまう。
そして、彼女が残した最後の手紙で事件のすべてが明かされるという内容だった。
「いい映画だったね」と、真凛ちゃんがつぶやく。
「...そうだね」
「碧くんはもちろん主役やるんだよね」
「...いや...俺は...」
「逃げちゃだめだよ。お母さんに...見せてあげなよ。18歳になった自分をさ。きっと喜ぶよ?」
「...」
やりたいという気持ちはあった。
けど、できるかどうかはわからない。
もうあの頃のような純粋な自分はどこにもいない。
いるのは...汚い自分だけだ。
いや...汚い時分だからこそ...この役はぴったりなのかもしれない。
「いやぁ...!こりゃ今までにないくらい自信がありますわ!!」と、テスト前日の勉強会にて自信満々にそんなことを宣言する清人くん。
「清人のそれは信用なんないんだよなー。2年の最後のテストも同じようなこと言って赤点じゃなかった?」と、煽る本庄さん。
「あれは回答する場所がずれててあぁなっただけだ!」
そんな二人のやり取りと見て笑っていると、碧くんと目が合う。
いつもより少しだけぎこちなく笑うと、いつものように笑いかけてくれる。
本当に優しくて...。その優しさが少しだけ痛かった。
「てか、碧は今回どうなん?自信のほどは?」
「まぁまぁかな。いっつも中盤くらいだし、今回も同じくらいならOKって感じ」
「ふーん。じゃあ海ちゃんは?今回こそ打倒天使様!みたいな感じ?」
「いやいや!私なんて全然だよ...」
「でも前回も結構惜しかったよね?まぁ、天使様はいつも全教科満点だけど、海ちゃんもほとんど満点でしょ?すげーよな、本当。てか、天使様もだけど海ちゃんもなんでうちの高校に来たん?天使様は家から近いとか聞いたけど...。海ちゃんに関してはさほど家から近いってわけでもないし」
「えっと...その...校風...?」
「なにそれwそんなんで入ってくる人まじでいんのww」と、爆笑する本庄さん。
「いや、うちの高校の校風はいいぞ。私服ではないにしろある程度の自由が認められてるし、学習のカリキュラムも独特で他にはないからな」
「うわ!碧が急に教師みたいなこと言いだしたw」
言い淀んでしまった私を何とかカバーしてくれる碧くん。
本当に...優しいな。
でも、その優しさが今の私には少し痛かった。
「夏休み終わったら修学旅行とー10月には学祭かー。そんで冬休みからの受験...。本当、高校三年間ってあっという間だったよなー...」
「まだ夏休み前だからw卒業式の後みたいなノリで話すのやめてくんない?w」
「いいだろー、別に。てか、うちのクラスは学祭何やるんだろうなー」
「うちわぁ~1年の時は出店で、2年は教室発表やったねー」
「俺たちは1、2年どっちも教室発表だったな」
「私は...どっちも出店だった...」
「てことは全員ステージ発表したことないのか。それなら最後はパーッと楽しくステージ発表でもやりたいもんだな!」
「ステージ発表ねぇ~。ダンスとか?」
「俺にダンスなんて踊れないんだが!?」
「じゃあなにすんのさー。劇でもやっちゃう?w」
「劇ねぇ...悪くないかも。な、碧」
「...そうだな」
そんな話をしていると、突然部屋の扉が開いた。
「ちょっとまったー!!」
「お、お父さん!?」
それに続くように妹たちも「「「ちょっとまったー」」」と言いながら入ってくる。
「ちょ、な、何してんの!?」
「うわー!かわいい!なにあのちびっこ三人!」
「劇をやるならお勧めしたいのがあってね...!」
そうして、一つのDVDを渡される。
それは俺の処女作の監督だった【安藤幸三さん】の作品だった。
「学園もので割と短いし、学園祭の劇にはぴったりだと思うんだ。それにこれは君にぴったりだと思うんだ」と、熱心に碧くんに語り掛ける父。
「いや...自分は主役とかはもう...」
「いや...お父さん。盛り上がってるところ申し訳ないけど...私たちだけで決められることじゃないから...」
「あー!また来てる!お姉ちゃんの彼氏!」と、何故か清人くんに群がる三人と「おう!また来てるぜ!みんな元気だねぇ!」と、ノリノリの清人くん。
「あぁん!可愛すぎ!食べたいよぉ!」と、妹の頬にすりすりする本庄さん。
完全に収拾がつかない状況にため息をつくしかなかった。
◇
「劇?」
「そう。学祭の話になってね。なんか劇がやりたいって本庄さんと清人が言い始めて」
「へぇ!いいじゃん!やろ?」
「真凛ちゃんがその気なら...できそうだね」
そうして、借りてきたDVDを見始める。
物語のあらすじはとある高校生を主役にした復讐の物語だった。
元々はすごいお金持ちだった家がとある事件に巻き込まれたことでその財を失った。しかし、犯人は捕まることなく10年が経過し、警察もとっくに捜査をやめていたなか、その家の長男である主人公のみは一人で事件を追っていた。
そして、事件に深い関りがある人間を突き止める。
それは同級生の女の子だった。
主人公は彼女に言い寄りなんとかその事件の真相を知ろうと奔走するのだが、それから数日後、彼女は不審死してしまう。
そして、彼女が残した最後の手紙で事件のすべてが明かされるという内容だった。
「いい映画だったね」と、真凛ちゃんがつぶやく。
「...そうだね」
「碧くんはもちろん主役やるんだよね」
「...いや...俺は...」
「逃げちゃだめだよ。お母さんに...見せてあげなよ。18歳になった自分をさ。きっと喜ぶよ?」
「...」
やりたいという気持ちはあった。
けど、できるかどうかはわからない。
もうあの頃のような純粋な自分はどこにもいない。
いるのは...汚い自分だけだ。
いや...汚い時分だからこそ...この役はぴったりなのかもしれない。
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