天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄

文字の大きさ
上 下
23 / 69
高校生編

第23話 劇

しおりを挟む
 ◇テスト前日 七谷家

「いやぁ...!こりゃ今までにないくらい自信がありますわ!!」と、テスト前日の勉強会にて自信満々にそんなことを宣言する清人くん。

「清人のそれは信用なんないんだよなー。2年の最後のテストも同じようなこと言って赤点じゃなかった?」と、煽る本庄さん。

「あれは回答する場所がずれててあぁなっただけだ!」

 そんな二人のやり取りと見て笑っていると、碧くんと目が合う。

 いつもより少しだけぎこちなく笑うと、いつものように笑いかけてくれる。
本当に優しくて...。その優しさが少しだけ痛かった。

「てか、碧は今回どうなん?自信のほどは?」

「まぁまぁかな。いっつも中盤くらいだし、今回も同じくらいならOKって感じ」

「ふーん。じゃあ海ちゃんは?今回こそ打倒天使様!みたいな感じ?」

「いやいや!私なんて全然だよ...」

「でも前回も結構惜しかったよね?まぁ、天使様はいつも全教科満点だけど、海ちゃんもほとんど満点でしょ?すげーよな、本当。てか、天使様もだけど海ちゃんもなんでうちの高校に来たん?天使様は家から近いとか聞いたけど...。海ちゃんに関してはさほど家から近いってわけでもないし」

「えっと...その...校風...?」

「なにそれwそんなんで入ってくる人まじでいんのww」と、爆笑する本庄さん。

「いや、うちの高校の校風はいいぞ。私服ではないにしろある程度の自由が認められてるし、学習のカリキュラムも独特で他にはないからな」

「うわ!碧が急に教師みたいなこと言いだしたw」

 言い淀んでしまった私を何とかカバーしてくれる碧くん。
本当に...優しいな。
でも、その優しさが今の私には少し痛かった。

「夏休み終わったら修学旅行とー10月には学祭かー。そんで冬休みからの受験...。本当、高校三年間ってあっという間だったよなー...」

「まだ夏休み前だからw卒業式の後みたいなノリで話すのやめてくんない?w」

「いいだろー、別に。てか、うちのクラスは学祭何やるんだろうなー」

「うちわぁ~1年の時は出店で、2年は教室発表やったねー」

「俺たちは1、2年どっちも教室発表だったな」

「私は...どっちも出店だった...」

「てことは全員ステージ発表したことないのか。それなら最後はパーッと楽しくステージ発表でもやりたいもんだな!」

「ステージ発表ねぇ~。ダンスとか?」

「俺にダンスなんて踊れないんだが!?」

「じゃあなにすんのさー。劇でもやっちゃう?w」

「劇ねぇ...悪くないかも。な、碧」

「...そうだな」

 そんな話をしていると、突然部屋の扉が開いた。

「ちょっとまったー!!」

「お、お父さん!?」

 それに続くように妹たちも「「「ちょっとまったー」」」と言いながら入ってくる。

「ちょ、な、何してんの!?」

「うわー!かわいい!なにあのちびっこ三人!」

「劇をやるならお勧めしたいのがあってね...!」

 そうして、一つのDVDを渡される。
それは俺の処女作の監督だった【安藤幸三さん】の作品だった。

「学園もので割と短いし、学園祭の劇にはぴったりだと思うんだ。それにこれは君にぴったりだと思うんだ」と、熱心に碧くんに語り掛ける父。

「いや...自分は主役とかはもう...」

「いや...お父さん。盛り上がってるところ申し訳ないけど...私たちだけで決められることじゃないから...」

「あー!また来てる!お姉ちゃんの彼氏!」と、何故か清人くんに群がる三人と「おう!また来てるぜ!みんな元気だねぇ!」と、ノリノリの清人くん。

「あぁん!可愛すぎ!食べたいよぉ!」と、妹の頬にすりすりする本庄さん。

 完全に収拾がつかない状況にため息をつくしかなかった。

 ◇

「劇?」

「そう。学祭の話になってね。なんか劇がやりたいって本庄さんと清人が言い始めて」

「へぇ!いいじゃん!やろ?」

「真凛ちゃんがその気なら...できそうだね」

 そうして、借りてきたDVDを見始める。
物語のあらすじはとある高校生を主役にした復讐の物語だった。

 元々はすごいお金持ちだった家がとある事件に巻き込まれたことでその財を失った。しかし、犯人は捕まることなく10年が経過し、警察もとっくに捜査をやめていたなか、その家の長男である主人公のみは一人で事件を追っていた。

 そして、事件に深い関りがある人間を突き止める。
それは同級生の女の子だった。

 主人公は彼女に言い寄りなんとかその事件の真相を知ろうと奔走するのだが、それから数日後、彼女は不審死してしまう。

 そして、彼女が残した最後の手紙で事件のすべてが明かされるという内容だった。

「いい映画だったね」と、真凛ちゃんがつぶやく。

「...そうだね」

「碧くんはもちろん主役やるんだよね」

「...いや...俺は...」

「逃げちゃだめだよ。お母さんに...見せてあげなよ。18歳になった自分をさ。きっと喜ぶよ?」



「...」

 やりたいという気持ちはあった。
けど、できるかどうかはわからない。
もうあの頃のような純粋な自分はどこにもいない。
いるのは...汚い自分だけだ。
いや...汚い時分だからこそ...この役はぴったりなのかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...