天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄

文字の大きさ
上 下
2 / 69
高校生編

【動画投稿】第2話 子供は男の子と女の子どっちがいい?

しおりを挟む
【動画URL】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093075180811886
https://youtu.be/pbyMshsXRUw?si=nGBfPC_jG8ZCUB0E

 ◇翌朝

 必要なものを確認し、いつもより少し遅めに家を出て役所に向かう。

 学校がある日にバスに乗るのは、なんだかちょっと悪いことをしている気分になる。
いや、さぼっているということに変わりはないのだから悪いことは悪いことなんだろうが。

 そうして役所に到着し、番号札を発行してくれる機械のボタンを押して、椅子に座って待っていると携帯電話がバイブする。

『ビックニュース!あの汐崎さんが誰かと結婚したらしいぞ!!』と、清人から連絡が来ていた。

 結婚?あぁ、そういや女の子も18歳にならないと結婚できなくなったんだっけ?
つまりは元々付き合っている男の子がいて、この18になるタイミングを見計らって結婚したということか。なるほど。

 しかしながら、あの天使様が誰かと付き合っているという信憑性のある噂など一度も流れたことがない。
...少なくてもうちの高校の人間ではないだろう。もしそうなら何かしらを見ている人間がいるだろうし。

 まぁ、よく分からないので『誰かって誰だよ』と返信すると、俺の番号が呼ばれる。

 そのまま受付の椅子に座ると「本日のご用件は?」と、受付のきれいなお姉さんが言う。

「えっと...分籍届を出したくて...」

 一瞬、ビックリしたような顔をする。

 分籍とは、今いる戸籍から抜けて届出人を筆頭者とした新戸籍を作る手続きのことだ。
まぁ、簡単に言えば家族との縁を断ちたいとき、もしくは親に頼らないようにする手続きと考えてくれればいい。

 俺の希望は前者である。
もちろん、それでも家族というものを完全に断ち切れるわけではないが...。
この日本では家族というものを完全に断ち切る方法がない。一生付きまとうそれはまるで呪いのようにすら感じた。

 しかし、これで俺が大学に入ってから一人暮らしをしても、どこに住んでいるかなどももう調べようがない。
そもそもあの人たちがそんなことを調べるとは思えないが...。何かの濡れ衣を着せられたりということもなくなるので安心ではある。

「お客様?」

「あっ、す、すみません。もう一度言ってもらえますか?」

「戸籍謄本と本人確認書類...あと分籍届はありますか?」

「はい」と、用意してきたものを手渡す。

 まぁ、こんなことをしても卒業するまではあの家に居ないといけないのだが。
大学に入ったら奨学金を借りて小さいアパートで一人暮らしをする予定だ。

 書類を受け取ると、パソコンをいじり始める受付のお姉さん。
そして、数分後何やら首をかしげると奥の方に行ってしまう。

 分籍の手続きなんてそんな頻繁にやるようなことでもないだろうし、手こずっているのだろうと思っていた。

 すると、席に戻って来て何やら電話を始めて、あわただしくしている。

 まさか手続きができないのか?と思っていると、お姉さんの上司的な人もやってきてパソコンを見ながら何やらヒソヒソ話をしていた。

 そして、それから更に5分ほど経ってからようやくお姉さんが少し首を傾げながら話し始める。

「えっと...結論から申し上げますと、こちらの手続きは不要ですね」と言われる。

 不要?出来ないならまだわかるが...不要とはどういう意味だ?

「...え?どういうことですか?」

「お渡しいただいた戸籍謄本は2週間前の情報となっておりますので...昨日、婚姻届を出されているので既に親御様とは別の戸籍が作られています。そのため、こちらの戸籍から抜けたいということであればそのお手続きは不要になります」

 突然、身に覚えのない高額請求をされたかのように唖然とする。婚姻届?誰の?親の?

「...はい?婚姻届?何の話ですか?」

「...え?昨日、婚姻届を出されてますよね?」

「いや...出してないですよ。そもそも彼女もいないのに...俺が誰と結婚したって言うんですか?」と、余計なことを口走ってしまうほど焦っていた。

「えっと...こちらの方です」と、新しい戸籍謄本を渡される。

 そこの婚姻の欄には一人の女の子の名前が書いていた。

 それはよく知っている人間の名前だった。

【婚姻 汐崎真凛】

 その瞬間、俺の目は点と点になり、次の瞬間線になった。

 俺の誕生日を知っていたこと、毎年プレゼントをくれていたこと、汐崎さんが誰かと結婚したこと、昨日の誕生日プレゼントの中身が指輪だったこと、彼女の貰ったという発言...。
その全てがつながった気がした。

「...」と、手を口に当てて唖然とする俺。

 そうして、結局分籍の手続きができないまま俺はトボトボと学校に向かうのだった。

 ◇6月13日(木) AM10:56 清人目線

「ね、誰と結婚したの!?」「てか、いつから付き合ってたの!?」「うちの学校の人!?」「イケメン!?写真とかないの!?」と、普段にも増して彼女の周りには人だかりができていた。

「本人が嫌がると思うから誰かとは言えないなー//」と、少し照れながらそんなことをいいながら手をパタパタさせている。
その左手の薬指には銀に輝く指輪が嵌められていた。

「はぁ...しっかし、あの天使様が結婚ねぇ。とんでもないイケメン御曹司とかなんだろうなー」

「だとしたら間違いなく他校の人間だな」

「そりゃそうだろ。うちの学校にイケメン御曹司なんていねーからなー」

「いいなー。天使様は超尽くしてくれそうだもんなー」

「俺は認めんぞー!」と、クラスの男子としゃべっていると碧が教室に入ってくる。

「おっ、碧~。遅かったなー。碧は誰だと思う?天使様と結婚した人」

「...」と、ちらっと天使様に視線を向けて何かを言いたそうな顔をしていた。

「...ん?どした?」

「いや...何でもない」

「それで?手続きは終わったん?」

「...分籍はできなかった」

「マジ!?なんで!?」

「いや...できなかったというか、必要がなかったというか...」

「え?どういうこと?」

「悪い...。ちょっと俺も色々と整理したいから。また今度話すわ」

「お、おう...」

 すると、チャイムが鳴るのだった。

 ◇同日 PM4:30

「碧~、帰ろうぜ?」と、清人が声をかけてくる。

「ごめん...。今日はちょっと用事あるんだよね」

「ほーん。そっか。OK~。んじゃ、また明日な」

「...うん」

 彼女のほうに目をやるが、いつも通り周りには人だかりができていて、そのまま数人の女子たちと一緒に教室を出ていく。

 そもそも彼女の連絡先も家も知らない俺は仕方なく彼女たちの後を追うことにした。

 いつも通り楽しそうに笑いながら帰宅する汐崎さん。

 クラスメイトの女子を尾行するのはなんだかすごく悪いことをしてるような気になった。しかし、事情を聴かないと始まらないので尾行を続ける。

 すると、一人、また一人と女の子たちがそれぞれの家に帰っていく。
そして、最後の友達と別れたところで彼女に近づく。

 そして、もう少しで追いつくといったところで国道の大きな道から住宅街の方に曲がる汐崎さん。

 足早に俺もその角を曲がると「わっ!」と、無邪気な顔で脅かしてきたのだった。



 ビクン!?となった俺を見てクスクスとかわいらしく笑う。

「...びっくりした」

「あはははwかわいい~ww」

 てか、追いついたのはいいけどなんて言えばいいんだ。
まずは事情を...なんで俺と汐崎さんが結婚してることになっているのかを...聞くべきなのか?

「あの...」

「もう気づいちゃったんだー。そっかー。思ってたより早かったなー」と、少し小悪魔的な笑みを浮かべる。

 その言葉であれが事実であることを改めて認識する。

「あの...どういうこと?」

「立ち話でする内容じゃないし、とりあえずいこっか!」

「...どこに?」

「分かってるくせに~」と言いながら、耳元に近づくと「私たちの愛の巣にだよ?」と言った。

 そして、国道の方に小走りで戻ると手を挙げてタクシーを捕まえる。
そのまま俺の手を引いてタクシーに乗り込み、駅前の高級なタワマンの名前を告げる。
それは俺の新しい本籍に書かれていた住所でもあった。

「...汐崎さん...あんなところに住んでるの?」

「ん?いやいや、違うよ?あそこはお父さんの趣味の家的な?実家は別にあるよ!私が一人暮らししたいって言ったらここを使いなさいって言ってくれてねー」

 ...タワマンの一室を趣味部屋に使うとか...。
住んでいる世界の違いに絶句する。

 タワマンに到着すると、コンシェルジュの前を顔パスで通り、エレベーターを使い最上階のボタンを押して上がる。

「そういえば昨日ね、瑞希《みずき》...って言って分かる?」

「...うん。溝口《みぞぐち》さんだよね」

「そうそう!瑞稀が私のこと間違えてお母さんって呼んでさw」

「へ、へぇ...」

 何事もないかのように当たり前に会話を続ける汐崎さんに徐々に恐怖を感じつつ、エレベーターを出ると、3408号室と書かれた家に入っていくのだった。

 流石はタワマンの最上階。
そこには最高の絶景と綺麗な装飾品が飾られていた。

 リビングに案内されると「座ってていいよ?」とソファに案内され、「何か飲む?」と聞かれる。

 確かにのどは乾いていた。

「それじゃ...お茶を」

「はーい!」と、学校と変わらないテンションの彼女は冷蔵庫からお茶を取り出していた。

 改めて見渡すと...なんともすごい家だった。
窓から駅前を見渡せる景色はまさに絶景といって差し付けなかった。

 そして、ふと一つの部屋に目をやると俺は言葉を失った。

 そこには【あおいとまりんのへや♥】という手書きのネームプレートが飾られていたのだ。

「...あの」

「ん?どうしたの?」

 俺は気づくのが遅すぎた。
これは誰がどう考えても異常事態だ。
彼女に事情を聞いて『はい、おしまい』なんてことになるわけがない。
一旦仕切り直して...。と、鞄を握りしめたタイミングで「ね、碧くん。碧くんは最初は男の子がいい?それとも女の子がいい?」と言われる。

「...何が?」

「決まってるじゃん!私たちの子供♥」

「...」

「これからはずっーと一緒だよ?」

 それはあの手書きのハートの如く、黒く歪んだ愛だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?

みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。 普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。 「そうだ、弱味を聞き出そう」 弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。 「あたしの好きな人は、マーくん……」 幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。 よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

処理中です...