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ナーベ・カルシュの失踪

第35話 ナーベ・カルシュ奪還編

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「...ふぁ...」と、大きなあくびをしながら体を起こすとそこにはリベルとアインちゃんが気持ちよさそうに寝ていた。

「おはよー。俺より起きるのが遅いなんて珍しいね」と、2人の頭を撫でる。

 ナーベは当然...もう起きてるのか。

 そうして、二人を置いて部屋を出て朝日を浴びているとマッドさんに話しかけられる。

「おはようございます、ラン様」

「おはよー」

「...私の仲間のウィッドが見当たらないんじゃが、見かけてないじゃろか?」

「ん?いや、知らないけど?」

「...部屋にもトイレにもお風呂にも見当たらなくて...」

「...逃げたとか?今はセバスがいないからセキュリティガバガバなんだよなー」

「...とりあえずもう一度探してみるわい」

 そうして、他の執事やメイドも集め総動員で探したものの見つからなかった。

「...逃げたと言っても彼一人では森を抜けるのは無理なはずなんじゃが...。今や逃げる祖国もないわけじゃからな」

「...ナーベは?」

「ん?ナーベ?第一妃の?」

「...あいつも朝から見てないんだが」と、血の気が引いてしまう。

 今度はナーベの捜索を行うもやはり見つからないのであった。

「...おいおい、一体どうなってる?」

「ご、ご主人様!これ!」と、ナーベのベッドに置かれた一枚の紙。

【ナーベ・カルシュとウィッド・ルクマナスは預かった。返してほしくば、明日の夜2時に北の森の奥にある小さな小屋に一人で来い。もし来なかったり、仲間を連れてきた場合には即座に二人を殺す】

 そんな置き手紙に思わず殺気を発してしまう。

 その場にいた全員がピリつき始める。

「...悪い」と呟き、俺はすぐに部屋に戻る。

 すると、そんな姿を心配してリベルとアインが部屋にやってくる。

「...本当に一人で行く気?これは罠よ?」

「...罠かどうかは関係ない。助けに行かなきゃいけないのだから行く。それだけだ」

「そ、それなら...私も...」

「手紙に書いてあったろ?1人で来いって言ってる。そんな小細工はできない。それにこの城に侵入できている時点でそこそこの実力者であることは間違いない。起きている時ほどではないが寝ている時もある程度の異変は察知できる。それができない時点で...な。とりあえず、至急セバスに戻ってくるように伝える。他の柱の悪魔達にも協力してもらって...それから...」と、思わず立ちくらみのようにフラフラとしてしまう。

「ちょっと!大丈夫?」と、リベルに支えられる。

「...悪い。自分が情けなくて...。大丈夫だ」

「どうみても大丈夫じゃないでしょ。全く...。大したことは出来ないけど、なんだって協力するから...少しくらい頼りなさいよ」

「...おう」

「私もです!こういう時のために...魔法の練習をしてきたんですから」

「...うん。ありがとな」と、頭を撫でる。


 ◇

「...すぐに戻ります」と、告げて私は帰国の準備を進める。

「あれ~?サバス様もうお帰りですか~?」

「少し予定が変わりましてね。あとのことは頼みますよ、アモン。それでは、私はここで」

「はい。任せてください」

 そうして、荷物をまとめて魔法を使って即座に帰還するのだった。


 ◇

 城についたセバスと俺とマッドさんの3人である一室で会議を始める。

「何があったのですか?」

「俺もまだわかってない。分かってることは二人が拐われたことだけだ」

「...そうですか。しかし、妙ですね」

「妙?」

「えぇ、タイミングについてです。まるで私がいないことを察して...知っていてこのタイミングでさらったように見受けられます。つまりは、その事実を知っていた人間...この城内にスパイがいたと考えるのが自然かと」

「...スパイか。仲間内の騙し合いは争いを生むだけなんだがな」

「...マッドさん。ウィッドさんに怪しい行動は見つけられませんでしたか?」

「ウィッドは仲間を売るようなやつじゃないわい」

「このままでは敵の思う壺だよ。とりあえず、俺が一人で交渉に向かう。それで異論はないな?」

「...危険では?」

「そりゃ承知の上だっての。それでもやらねーといけねぇことってあんだろ。城の警備はマッドさん、セバス、そして動員できる悪魔全員で頼む」

「...かしこまりした」

 そうして、部屋を出ていこうとしたところで、怒りと悲しさを合わせた横顔が目に入る。



 こうなったラン様は止まらないことは知っている。だからこそ、私は止めない。
しかし、できるだけのご助力はさせていただきます。
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みんなの感想(3件)

さばこ
2024.06.30 さばこ

一夫多妻というかハーレム系は好きじゃないんだけど、この作品のヒーローは良き 一気読みしました

田中又雄
2024.06.30 田中又雄

ありがとうございます!面白いものを提供できるように頑張りますので応援よろしくお願いします!

解除
白龍
2024.06.29 白龍

主人公が 強くて いいですね 面白いです

田中又雄
2024.06.29 田中又雄

ありがとうございます!励みになります!

解除
kouki
2024.06.29 kouki

面白い!1日でここまで読んだ!

田中又雄
2024.06.29 田中又雄

ご覧いただいたうえで感想までいただき誠にありがとうございます!
今後とも毎日更新頑張りますので、応援よろしくお願いします!

解除

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