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第26話 衝撃の正体

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「あらぁ、もしかしていよいよ覚悟が決まった?」と、相変わらずの笑みでそんな言葉を吐くナーベ。

「...とりあえず...ちょっと座ってくれ」

「何よその雰囲気。まるで望まない子供の存在が発覚した時の夫の悲壮感ね」





「...単刀直入に聞く...。ナーベ...。お前も転生者...なのか?」

 その言葉に少しだけ驚いたように瞳孔が開く。
しかし、すぐに何事もないかのように冷静に「そうよ」だけ言うのだった。

「...実は俺も...なんだ」

「知ってるわよ」

「...まぁ...やっぱりそうだよな。ちょこちょこそういう言葉を使っていたのは...俺に気づかせようとしていたってことなのか?」

「まぁ、そうね」

「...でもなんでわかった?」

「あなた馬鹿なの?あんな本を作っておいて転生者じゃないなんてありえないでしょ。転生者どころか同人誌好きのエロ日本人ってところまですぐ分かったわ」


 確かにそりゃそうか。あんなの見れば一発で俺が転生者だとわかるに決まっている。まさかあんなところでボロを出す羽目になるとは...。


「...この異世界については知ってるのか?」

「『異世界少女を歪ませたい』でしょ」

「...よくご存じで」

「よくご存じでじゃないわよ。当たり前でしょ?あの作品のシナリオライターエロ 工《たくみ》こと、通称エロエって私のことなんだから」

「...ええええええええええ!!!!!!」と、大絶叫する。
エロ工ってエロゲー界隈では有名なシナリオライターであった。
純粋な女の子をヒロインにした感動作品や、とんでもなく抜けるエロシチュの作品をだったり、究極な鬱ゲーを描いたり、と作品ごとに変幻自在なシナリオを展開するエロゲー界の巨匠的な存在であった。


 まじかよ!この人が作ったってことかよ...!!だとしたら結構ドン引きだわ!なんちゅー作品を作ってんだよ!!

 さて、冒頭でちらっと触れていたが改めてこの世界について説明するとしよう。


『異世界少女を歪ませたい』は良作がたくさん生まれた2023年のエロゲー界隈で物議を醸した作品であった。

 基本的なストーリーの展開や、主人公のTUEEEE!!や、美少女達のグラフィックは、そして出演している声優の演技もとても良い。しかし、ENDはどのルートも最悪も最悪...悲惨も悲惨...ヒロインの彼女たちの最後はいつも目を覆いたくなるものばかりであり、むしろ声優陣の演技の良さが俺からしてみれば悪い方向に出てしまっていたのだ...。

 確かにNTR鬱ゲーとしては素晴らしい作品なのかもしれないが、なんとなく人気だし買ってみるかと思った程度の安易な気持ちで購入した俺にとって、続けるのがとても苦痛なゲームであった。

 それでも続けたのはもしかして全員が幸せになるTRUE ENDがあるのでは思い続けたが、結局そんなものはなかった。そして、隠しルートで分かったことは全ては地方貴族であり最強の裏ボスのラン・ルーズベルトが仕組んだ罠だということだけだった。

 そしてある日、俺はそんな18禁クソNTR鬱ゲーの裏ボス悪役貴族として転生したわけだが...。


「まったく...まさか自分の作った作品の中に転生するなんてね...。自分で作っておきながらヒロイン達が救われるルートを作らなかったことを後悔する時がくるなんて思いもしなかったけど。一応、できる限りの手を尽くしたつもりだったのに結局奴隷小屋にぶち込まれて、黒幕であるあなたに買われたときはすべてを諦めた...つもりだったんだけどね。まさか、その黒幕が転生者だなんて思いもしなかったけど」

「...なるほど」

「それで?聞きたいことはある?あぁ、ちなみにあなたのムーブは全部原作にないものだから、既に私の知る世界ではないからこの後どうしたらいい?と聞かれても答えられないから」

「...一個いいでしょうか?」

「何かしら?」

「...エロ工さんは...女の方だったですか?」

「...どっちだと思う?」と、いやらしく笑う。

「...女性であってほしいです」

「ふふっ、最初に聞く質問がそれ?」

「いや、めっちゃ大事でしょ!」

「...安心しなさい。女よ。ちなみに享年は28歳」

「...まさかの同い年ですか」

「あら、これは気が合いそうね」


 そうして、俺たちは昔話に花を咲かせながら作品では描かれることのなかった裏設定について色々聞かせてもらえるのだった。
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