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第8話 正体判明のための魔道具

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 貴族会の開催地は毎回異なる。
今回は割と近くの城である【ミーハ邸】が会場だった。

 そして、来年の開催地は...俺の城だ。
まぁ、貴族らしいといえばそれまでだが、自分の豪華な城に招き入れて見せびらかす...というのが目的なのは言うまでもなかった。


「割と早く着いちまったな」

「15分前よ。ギリギリもいいとこじゃない」


 そうして、門兵に招待状を渡して城の中に入る。

 その後は城の中で受付を行う。


「お名前は?」

「ラン・ルーズベルト」

「...っぷ」と笑いながら、50番の番号をもらう。

「おいおい...あれってランか?見ない間にあんな可愛いお嫁さんもらってたんか」
「っち、地方貴族かいきりやがって」「お金だしゃ譲ってもらえるんじゃねーの?」


 そんな影口を無視しながら城の廊下を歩く。


「私のような美しい女の子を隣に置けて、あなたもさぞ鼻が高いでしょうね」

「...悪目立ちだろ。完全に」

「そういえばなんで笑われていたの?あなた」

「あぁ、この番号っていうのは貴族会の中の序列を指しているからな。50番は...その中でも最下位。つまりはドベ。最も貢献していない貴族ってこと」

「まぁ、あなたはこういうのに貢献するタイプではないものね」

「おー、わかってんじゃん。その通り」


 ほぼ時間ぴったりに到着した。

 そこにはすでにほとんどの貴族が席についていた。

 円卓のように選べられた50個の椅子。
妃がいる人は自身の横にその奥様を立たせている。
比べているのだ。自分の奥さんを...まるで商品のように。

 全員の視線を受けながら俺は50番の席に座る。
苦笑するものや嘲笑うものばかりの中、49番の男が俺に話しかけてくる。


「僕はサンジュ・ボルト!最近貴族になったものでね!お隣になったのも何かの縁ってことで、よろしく!」と、さわやかな笑顔で手を出してきた。


 ...こいつ。


「すまんが、男と握手するのは嫌いでな」と、断る。

「そっか!それは残念だな!そちらは君の奥さん!随分かわいらしい人だねぇ...。こんなかわいい人なら僕が知らないわけないんだけど!どこの出身?」

「そんなことを聞いてどうする?」

「いやだなぁ、なんでそんなに喧々してるんだい?僕はただ仲良くなりたいだけなのに!」

「だとしたらその薄汚い作った笑顔を...左手につけている気味の悪い魔道具を外すんだな」

「あー...すごいね、君」

「...下らん詮索は俺には通用しないぞ」

「そうみたいだね」


 そんなやり取りをしていると貴族会が始まる。


「えーそれでは今回の議題ですが、いくつか興味深いものをピックアップしました。まずは...こちらの議題から...先日業火の龍を倒したとされる【X】という男の正体について...。この議題は...おう、君だったのか。新入りだよね?じゃあ、挨拶も含めてどうぞ」


 その議題に思わず少し反応してしまった俺。


 すると、隣に座っていたサンジュ・ボルトという男はゆっくりと立ち上がり、
「初めまして皆さま。サンジュ・ボルトと申します。この貴族会という由緒正しき会に参加を許していただき心から感謝いたします。今後ともよろしくお願いいたします。
と、挨拶はここまでで皆さん気になっているのは【X】についてだと思います。
高難易度ダンジョンを単独でクリアするようなとんでもない実力者であり、おそらく全世界のギルドの中でも3本の指に入るほどの実力者...なんて言われていましたが、ここ数年はぱったりと姿を消していました。
しかし、ご存知の通りつい先日彼が現れたと...。
噂にはなっていますがその際に左手に炎呪を受けたとのことでした。
そこで...私はふと思いついてしまったのです。
もし、炎呪を受けた人間が分かる方法があれば...【X】を特定できるのでないかと!」


 そういうことか...。それがこいつの左手についていた魔道具ということか。


「もし、【X】を特定し国の戦力とできれば他国へのけん制にもなりますし、今後のダンジョン攻略も楽になるというものです!なので、見せたいのだがこちらなんです!」と、左手を天高らかに上げる。


「この魔道具は対炎呪専用の魔道具であり、触れたものは炎呪を受けたかどうかが分かる仕組みになっています!」


 ざわざわする貴族ども。


「なので、私は今から全員に触れていきたいと思います。もし、それでこの魔道具が赤く光ったのなら...これは炎呪の持ち主、つまりは【X】だということが分かるのです!!」


 っち、余計なものを作りやがって...。


「それじゃあ、さっそく始めたいと思います。まずは隣の席のラン様からよろしいですか?」


 貴族の視線が一気に集まる。
まずい...これは非常にまずい...。


「どうしました?ラン様?まさか【X】はラン様なのですか?」

「...そんなわけねーだろ...」

「では、よろしいですね」と、奴は俺の左腕を触った。


 その瞬間、魔道具は赤く光ってしまうのだった。
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