104 / 292
第百四話
しおりを挟む倒れたサンドドラゴンの首に食い込んだハルバート。オリエッタは渾身の力を込めてハンマーを振るう。
「ツーベースヒットだ! 続けろホームランバッター!」
「ツーベースヒットって何ですか~」
聞くな! いいから殴ってくれ! せっかくのチャンスなんだから。オリエッタが叩き付けたハルバートは外皮を破り肉に食い込んだが致命傷には至ってない。
「オラ~ オラ~ オラ~ オラ~」
人のセリフを奪うなら正確に頼む。殴り付けてるハンマーの側には危なくて寄れないぐらい激しく、もうハルバートを食い込ませる為に殴っているのか、殴る為に殴っているのか分からないほどだ。
小さな傷からダムが決壊するように、オリエッタはハルバートで付けた傷からサンドドラゴンの首を殴り千切った。
「オラです~」
千切られた首から出る大量の出血にオリエッタの装甲服は真っ赤になる。最後の「オラ~」は血で濡れた地面を叩いて僕の方まで飛んで来た。
「団長~、終わりました~。血だらけですけどケガでもしたんですか~」
いえ、違います。幸いな事に無傷ですよ、僕は。右手が少々、痛みますが。僕達は平然としていたが、周りは違った。
「ウオォォー、やったぜ!」
「倒した。やったんだー!」
サンドドラゴンを倒した者を見ようとしてか、死にざまを見ようとしてか、僕達がいる千切れた首の回りに集まり嵐のような歓声が上がり始める。
まあ、ここで…… あるんじゃないかと思ったんだけど…… 僕と装甲服に帰り血を浴び巨大なハンマーを持っているオリエッタの、どちらに注目が集まるか……
戦いに参加した者達はオリエッタの周りに集まり、ときの声を上げ始める。オリエッタも調子に乗ったみたいで深紅に染まった装甲服の上に乗り上げ右手の拳を空に向かって高々と掲げた。
純白のスク水で可憐なオリエッタは、きっと天使にでも見えたのだろう。見いる冒険者からは感嘆の声が聞こえた。
「ドラゴンスレイヤーだ」
「竜殺しだ」
「可愛い……」
僕は完璧に蚊帳の外に追いやられ、オリエッタを中心に野球の優勝したチームみたいだった。お前ら調子に乗ってオリエッタを胴上げとかして触ったら殺す。見ているだけでもムカつくのに。
「……終わりましたね。お疲れ様です」
コアトテミテスからも駆け付けた人だかりの中で、クリスティンさんは僕を見つけて優しい言葉を掛けてくれた。オリエッタがいなかったら勝てなかったかも知れないが、一番槍は僕だからね。それなりに誉めてくれてもいいのに。
クリスティンさんは項垂れている僕の頬に軽いキスをしてくれた。単純な僕はそれでもいいと思った。
喜んでばかりもいられない。コアトテミテスの北側の城門は破壊され、城壁さえも三割くらいは魔岩の為に崩壊している。これを直すのにどれ程の人材とお金が掛かるか、領主様は大変だね。
このサンドドラゴンの魔石やら素材は領主の物になるらしい。実質、白百合団が狩ったのだから、報償金として一割くらいは欲しい。そのお金で新しい服を買って、オリエッタにはスク水じゃない服で装甲服に乗り込んでもらいたい。暗部だから。
コアトテミテスから来たクリスティン軍団の生き残りと、後から来て一緒に戦った冒険者達はサンドドラゴンの解体を始めてしまっているが、まだトロールやオーガが襲って来るかもしれないのに、そんな事をしててもいいのだろうか。
きっと明日の…… もう今日になるけど朝御飯はドラゴンステーキとか出るのかな。焼き方はミディアムでお願いしたい。
しかし、トロールやオーガは何処に行ったんだ? もしかしてサンドドラゴンに恐れてをなして森に逃げ帰ってくれたらと思うが、ハーピィの様に戦術を考えて来る魔物がいる以上、油断は出来ないよ。油断が出来ないんだから解体なんかしてんじゃねぇ。
最近は忙しくて寝不足気味。この後の事を考えると気が重くなってくる。確かオーガを一と考えて戦時報酬を出すんだよね。サンドドラゴンはオーガの何倍あるんだろう。 ……考えたくない。
僕とクリスティンさん、オリエッタは着替えてゴスロリ姿でコアトテミテスに帰った。オリエッタの召喚する錬金術は、巨大なハンマーも装甲服も取り出せるし送還して戻す事も出来るが、いったい何処に戻るんだろう? その先には拷問器具もあるのだろうか。
解体が終わってコアトテミテスに帰るまで、オリエッタは腕を組んで離れなかった。ぶら下がられたり、いけない所に手を誘導されたりオリエッタの戦いの高揚が見て取れる様だった。
これも戦時報酬の一貫か。冒険者達からの羨望と嫉妬の眼差しを一身に受け、僕達はコアトテミテスに戻った。……クリスティンさんの視線が一番痛かった。
北門の指揮官に報告を済ませ、今日は休んでくれと言う言葉に僕はやっと眠れる訳でもなく、昼頃まで二人を相手に戦時報酬に明け暮れ最後には寝ながらヤってたような気がする。
クリスティンさんは思いのほかオリエッタの白い服を気に入ったようで…… いや、気に入ったのとは違うか。僕が気にしているのを見ていた様で、自分も着てみたいと言いだす始末だ。是非! と、言いたいが僕の暗部には蓋をしておこう。
ミカエルは「寝ながらでもヤれる」を覚えた。
メリット :寝れる
デメリット:気付かれたら往復ビンタ
「あ………あぁ…っんん!気っ持…!ち……いっ!いぃい…い…い…で………すぅ…ぅっ」
いったい何時から腰を振り続けていたのだろう。隣ではクリスティンさんが、裸で眠っていた。オリエッタは僕が腰を振る度に揺れる、小振りな胸を揺らしていた。
羨ましい…… すやすやと寝息を立てているクリスティンさんは横になって寝ているものだから、胸が押し潰されいつもよりバストアップしていた。
オリエッタは目隠しを手を縛りベッドにくくりつけられている。今ならクリスティンさんの胸に触れてもオリエッタも気が付きはしまい。
そっと手を伸ばし胸に触れる。柔らかい…… 起こさないか心配だけどもう少し触ってみたい。腕で隠れてしまった乳首は何処かと、腕を動かせばピンクのイチゴさんが。
舐めてしまいたい。その衝動はオリエッタに入れていれば体勢的に無理だ。そこまで身体は柔らかくないんだよ。
「団長のが… 中をっ かきまぁ…わすぅでぇすっ!」
いかん、いかん。オリエッタに集中しよう。首筋を舐めようと覆い被さると暖かいオリエッタの温もり。段々と眠くなる……
クリスティンさんは団内、最弱の力の持ち主。オリエッタは団内、最高の力持ち。オリエッタの往復ビンタでサンドドラゴンがどんな気持ちで首を千切られて逝ったのか、少しだけ知ったよ。
午後には回復魔法使いを探して顔の腫れと首の痛みを取ってもらい、気持ち悪さが少し残っただけだった。本当なら僕の中の悪魔の血で多少の怪我なら治るけれど脳挫傷は怖いからね。
影の三人のうちジビル村に向かったユイナちゃんは昼前には戻って来た。帝都に向かったニイナちゃんと後方の街に向かったシイナちゃんは無事に着いてくれるといいけど。
僕達は北門で何か手伝いをと考えていたが、到着早々オリエッタを見つけたら人から「ドラゴンスレイヤーだ」と言っている声が聞こえた。
中には握手を求める人がオリエッタを囲み、一時は騒然としたのだか、クリスティンさんの頑張りで皆さん地面に倒れ込んだ。
僕の頑張りはオリエッタの影に消えたみたいだけど、これでオリエッタにも二つ名が付いてくれたら嬉しいね。
北門には待ち人がいた。男。コアトテミテスの領主が会いたいと使用人が待っていたんだ。僕を名指しで呼ぶなら、女の子を寄越せよ。
だが都合がいい。一度、会って今回の魔物件に付いて話をしたかった。それに向こうから会いたいなんてサンドドラゴンを倒した報償金でもでるのかな。
領主への館の道すがら使用人さんに領主の話を聞いてみたが、無口な男で愛想がない。使用人として雇い主の事を話すより立派なんだろうが、最初の用向き以外は話さないのは照れ屋なんだろうか。
コアトテミテスの街中は閑散として、初めて来た日とは思えないくらい寂しくなってる。それでも残ってる人達がいる。ここはもうダメかも知れないのに。
領主の館は鉄の柵があるくらいで簡単に引き倒せそうな簡素なもので、ここまで攻められるなんて考えもしていないのだろう。城壁がボロボロの今となっては立て籠るより逃げた方がいい。
僕達は報償金に期待しながら屋敷の門をくぐった。
0
お気に入りに追加
401
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
強さがすべての魔法学園の最下位クズ貴族に転生した俺、死にたくないからゲーム知識でランキング1位を目指したら、なぜか最強ハーレムの主となった!
こはるんるん
ファンタジー
気づいたら大好きなゲームで俺の大嫌いだったキャラ、ヴァイスに転生してしまっていた。
ヴァイスは伯爵家の跡取り息子だったが、太りやすくなる外れスキル【超重量】を授かったせいで腐り果て、全ヒロインから嫌われるセクハラ野郎と化した。
最終的には魔族に闇堕ちして、勇者に成敗されるのだ。
だが、俺は知っていた。
魔族と化したヴァイスが、作中最強クラスのキャラだったことを。
外れスキル【超重量】の真の力を。
俺は思う。
【超重量】を使って勇者の王女救出イベントを奪えば、殺されなくて済むんじゃないか?
俺は悪行をやめてゲーム知識を駆使して、強さがすべての魔法学園で1位を目指す。
【R18 】必ずイカせる! 異世界性活
飼猫タマ
ファンタジー
ネットサーフィン中に新しいオンラインゲームを見つけた俺ゴトウ・サイトが、ゲーム設定の途中寝落すると、目が覚めたら廃墟の中の魔方陣の中心に寝ていた。
偶然、奴隷商人が襲われている所に居合わせ、助けた奴隷の元漆黒の森の姫であるダークエルフの幼女ガブリエルと、その近衛騎士だった猫耳族のブリトニーを、助ける代わりに俺の性奴隷なる契約をする。
ダークエルフの美幼女と、エロい猫耳少女とSEXしたり、魔王を倒したり、ダンジョンを攻略したりするエロエロファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる