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第二十六話
しおりを挟む仕事が見つかるまで、女性を連れて野宿する訳にはいかない。宿屋に部屋を取れば、お金がかかる。 プリシラさんの暴れるのではないか、ルフィナ、オリエッタの二人が良からぬ事をするのではないかとヒヤヒヤして夜も眠らせてくれない。
ルフィナ、オリエッタのコンビがソフィアさんを連れて中庭に出たのを見た時は悪寒が走った。僕も神速で走った。
「みんな揃って何をしてるんですか?」
「実験の成果を見るのである。少し前からソフィアに新魔術を教えていたのである」
「新魔術」とてもいい響きだが、どうしても嫌な予感しかしない。黒魔術から白魔術に何を教えるのだろうか。
「元々は団長の記憶の欠片にあったものをオリエッタが考察し私が手を加えソフィアが具現化するのである」
オリエッタが絡んでくるとますます危なくなって来そうだ。僕の記憶はオリエッタが主導してルフィナが読み取ってる時がある。その代わり、輪番は寝てれば終わるのが楽でいい。
「論ずるより見た方が早いである。ソフィア、やってみるのである」
「少しは出きるようになってますからね。見ていて下さい。 ■■■■、レーザー」
えっ!? レーザー!? ソフィアさんの右の手指の先から、無慈悲にふむ、光の線が放たれて行く様は、正にレーザー光線。
「指一本なら五十センチくらいの長さになります。」
五指から伸びた光は十センチほど伸びて目映いプラチナ色の光を放っていた。光に手を近付けると熱く感じた。
「かなりの高温になるんでプレートアーマーくらいなら切れますよ。もう少し慣れて来れば、私も前に出られます」
何でこの世界にレーザーなんてあるの? 変だろ絶対。第一、僕の記憶にレーザーの作り方なんて無いはず。
「団長の記憶を読んだとき、分からない事が多かったであるが、オリエッタに協力してもらって色々な事が出来そうである」
「団長は凄いです~。色々な事を知っていて物知りです~」
「僕はこんな物の作り方なんて知りませんよ」
「はい~。なので黒魔術や錬金術を駆使してみたらソフィアさんには出来そうだなって思ってやってみたのです~。簡単に言うと光の圧縮です~」
光を圧縮したってレーザーにはならねえだろ。光の圧縮なんて出きるのか。ファンタジーにもほどがある。この悪魔のコンビめ。
「ほ、他にも色々な事を知ってるのかな?」
「当然である。前回の屋敷での事もそうである」
「あの思い出したくない衆道のことかな」
「そうです~。ルフィナちゃんから教えてもらった事を参考に霧状にして広範囲に撒く事が出来たのです~。霧状にしても効果が薄れないのがポイントです~」
「ちなみに何を参考にしたか聞いてもいいかな?」
「生物兵器です~。他にも大量に殺せる生物兵器も聞いたので完成も間近です~」
貧乏人の核兵器と言われる生物化学兵器。これはやったらダメなやつだろ。今回は人死にがないけどオリエッタならやりかねない。が、前世では魔族との戦いで押されていた連合国に戦果をもたらせたのも事実だ。
「それは使用禁止ね。少なくとも許可なく使うのはダメ」
「せっかく作ったのに使わないのは勿体無いです~。完成はさせたいです~」
「完成はいいよ。ただし実験も使用も僕に許可を取ってからにして下さい」
「分かったです~。完成を急ぐです~」
急がなくていいよ。まだ時間はあるはずだし使わないで済むなら、使いたくない。ジュネーブ条約に怒られたくない。
「他にもどんな記憶を読んだのかな」
「ふむ、後は団長の個人的な記憶を少し…… 団長の童貞を捨てた相手とかである」
思い出す童貞を捨てた相手…… それは死ぬまで話さないで。墓場まで持って行って死んでくれ。
「これは面白くもないので話してはいないのである。団長との二人だけの秘密にするのである」
偉いぞルフィナ。秘密にしてくれるなら、血ぐらいなら分けてやってもいいぞ。少しなら……
ルフィナが言い終わると同時にソフィアさんが風の様に駆け抜けルフィナの首を握り締めていた。今の速さ、僕より速くないか?
「ルフィナ、団長と二人きりの秘密なんて良くないですよ」
握り締めている右手からはレーザーは出ていないが強く握られているルフィナは苦悶の表情にうめき声を出していた。
「ソ、ソフィア放すのである。く、苦しい…… 」
「話すのはルフィナでしょ。このまま手からレーザーを出してもいいんですよ。ネクロマンサーは首が飛んでも生きているのでしょうかね」
止められない。止めるのが怖い。ソフィアさんの迫力は何度が味わっているが、日々精進しているようだ。
「あんまり黙っているとこうですよ」
ソフィアさんの左の人差し指から小さなレーザーが出で、ルフィナの服を喉元から焼き切っていった。止められない。止めたくない。もう少し見たいから。ソフィアさんの左手が下がる度に切られていくルフィナの服。
あぁ、もうお腹の下の方まで…… ここで風がブワァ~と吹けばいいものが見れるのに。
「分かった。分かったである。言うから止めるのである」
あぁ、ルフィナよ。もう少し頑張って欲しい。もう少し下まで…… せめて風よ吹け。
「最初からそうすれば良かったんですよルフィナちゃん。で、誰ですか?」
ルフィナが口にした人物に満足したのかソフィアさんは笑顔とも残念とも複雑な表情をしていた。 ……教えねえよ。オリエッタの耳を塞いだくらいなんだから誰にも教えねぇ。
ソフィアさんは何事もなかったかの様に「フフフ」と笑って去って行った。久し振りに見たソフィアさんの嫉妬パワーに腰が引けたけどナイフの次はレーザーか。治癒の魔法で治るのかな。
「さすがソフィアである。もう使いこなすとは、さすがである」
半分に切り裂かれた服を引き寄せる様にして白く美しい体を隠す仕草は色っぽい。服を切り裂かれても答えなかったらと考えるとドキドキしてしまう。
ルフィナの柔肌と怯える顔も可愛い、ソフィアさんの今までに無い位のパワーも怖い。オリエッタは腰を抜かしているし意外とチキンなのね。
何にせよ、今日は新しい一面が見れた。ソフィアさんのレーザーは有効だし記憶から読んだ事はきっと役に立つだろう。正し、僕に向かわなければね。
「団長。一つ頼みがある」
ルフィナの頼みで録な事はないが、珍しいので聞いてみよう。
「ソフィアの機嫌を取って欲しいのである。たぶん大丈夫であろうが、さすがに先程の殺気は不味いのである」
「僕にどうしろと……」
さっきの殺気はさすがに怖い。僕としては時間が解決してくれるように見守りたかった。係わり合いたく無かった。
「今日は私の番である。それをソフィアに変わる。なんとか機嫌を取ってもらいたいのである」
その位なら頑張りましょう。ソフィアさんの巨乳に埋まれて眠るのは好きだから。
「いいですよ。その代わり今後、刺すのも切るのも毒を盛るのも禁止でお願いします。その他に仕事に差し支える様な事も禁止で」
「ムムムッ。 分かったである。取り引き成立である。必ずやソフィアの機嫌をとるである」
服を切り裂かれながら悶えるルフィナも見たいが仕方がない、僕は団長だからね。後はオリエッタを何とかすれば乗り越えられそうな気がする。色んな意味で。
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