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碧とアオ
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真っ青な空に突き刺すような眩しい太陽の光がギラギラと照りつけている。
辺りは白い塊を除きまるで廃墟の様に何もなくなり地下への入り口も埋もれてしまった。きっと巨人を呼び起こしたあの男たちもこの中に埋もれてしまったのだろうか。
◇◇◇
アオの鎧の胸のところに空いた穴からはバチバチと音をたてて激しく火花が飛び散っており、アオは今にも息途絶えそうに見える。それでもアオは私たちの方に歩み寄って何かを伝えに来ようとしていた。
「アオ、動いちゃダメだよ」
ハルは駆け寄ってきてアオの手を取ると、ギュッと手を握った。アオの冷たくなった手に僅かな温もりが伝わるのがわかる。
「この島はもう住めない。2人は直ぐにこの島から脱出するんだ」
そういうとアオは自分の後頭部の下の方から3cm程の光る物体を取り出してハルの手の中に入れた。そして私の手を取り、ハルの手の光をそっと包み込んだ。
「マカ(愛しい人)」
アオが叫ぶと私とハルの体が少しづつ消えていった。アオの「感情」がプログラミングされている量子チップが取り外され、最後のエネルギーが量子テレポーテーションを始めたのだ。
「アオ」
私とハルが口を揃えて必死に名前を呼ぶが、アオは反応しない。頭を地面につけながら優しい笑顔をこっちに向けてじっとしている、そしてアオの大きくてつぶらな瞳から一筋の水滴が流れ落ちた。
私たちはお互いの目をじっと見つめ合いながら少しづつ身体が消えていくのを感じた。それでもアオの潤んだ瞳をただただ真っ直ぐに見ていた、そしていつしか私たちはこの場所からいなくなった。
1分後、アオのメモリーは完全に停止し、私たちとの記憶は完全に消え去られた。
◇◇◇
「碧、次のプロジェクトは東都大学との量子コンピュータ開発計画だ」
私の生活は以前と変わらない忙しい日常に戻っていた。
「はい課長、私に任せて下さい」
しかし、ただ一つの違いは私の掌の中には現代の科学技術では到底成し得ない量子チップの一部が埋まってることだ。私にはこれがこれから何の役に立つのかわからないが、時々この手の中が光を放つ時がある。
私は渋谷のビルの屋上に上がると、そこには視界のかぎり真っ青に広がる夏空が広がっていた。
「碧」
後ろから長い黒髪に真っ白なワンピース姿の女性が碧の方に歩いてくると、お互いは無言でキスした。そして2人はお互いの手を握り締め手のひらの中から放出される2つの光を感じ取っていた。
女性の透き通るような白い肌と肩を並べながら、私たちはいつまでも南の方角をじっと眺めていた。
完
辺りは白い塊を除きまるで廃墟の様に何もなくなり地下への入り口も埋もれてしまった。きっと巨人を呼び起こしたあの男たちもこの中に埋もれてしまったのだろうか。
◇◇◇
アオの鎧の胸のところに空いた穴からはバチバチと音をたてて激しく火花が飛び散っており、アオは今にも息途絶えそうに見える。それでもアオは私たちの方に歩み寄って何かを伝えに来ようとしていた。
「アオ、動いちゃダメだよ」
ハルは駆け寄ってきてアオの手を取ると、ギュッと手を握った。アオの冷たくなった手に僅かな温もりが伝わるのがわかる。
「この島はもう住めない。2人は直ぐにこの島から脱出するんだ」
そういうとアオは自分の後頭部の下の方から3cm程の光る物体を取り出してハルの手の中に入れた。そして私の手を取り、ハルの手の光をそっと包み込んだ。
「マカ(愛しい人)」
アオが叫ぶと私とハルの体が少しづつ消えていった。アオの「感情」がプログラミングされている量子チップが取り外され、最後のエネルギーが量子テレポーテーションを始めたのだ。
「アオ」
私とハルが口を揃えて必死に名前を呼ぶが、アオは反応しない。頭を地面につけながら優しい笑顔をこっちに向けてじっとしている、そしてアオの大きくてつぶらな瞳から一筋の水滴が流れ落ちた。
私たちはお互いの目をじっと見つめ合いながら少しづつ身体が消えていくのを感じた。それでもアオの潤んだ瞳をただただ真っ直ぐに見ていた、そしていつしか私たちはこの場所からいなくなった。
1分後、アオのメモリーは完全に停止し、私たちとの記憶は完全に消え去られた。
◇◇◇
「碧、次のプロジェクトは東都大学との量子コンピュータ開発計画だ」
私の生活は以前と変わらない忙しい日常に戻っていた。
「はい課長、私に任せて下さい」
しかし、ただ一つの違いは私の掌の中には現代の科学技術では到底成し得ない量子チップの一部が埋まってることだ。私にはこれがこれから何の役に立つのかわからないが、時々この手の中が光を放つ時がある。
私は渋谷のビルの屋上に上がると、そこには視界のかぎり真っ青に広がる夏空が広がっていた。
「碧」
後ろから長い黒髪に真っ白なワンピース姿の女性が碧の方に歩いてくると、お互いは無言でキスした。そして2人はお互いの手を握り締め手のひらの中から放出される2つの光を感じ取っていた。
女性の透き通るような白い肌と肩を並べながら、私たちはいつまでも南の方角をじっと眺めていた。
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