黒の文明 ─無人島からのメッセージ─

あす

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逃避

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褐色の肌に、頭布を被り長い黒髪を左に結んだ男が目の前に立っている。その後ろには2人の頭布を被った男たちが並んでおり、右側の大きな一人が銃を持って構えている。

「絶体絶命だ」恐ろしさで体の震えが止まらないなか、私はハルのいるところにそっと視線を落とす。

ハルは真っ白な砂の上に仰向けに倒れながら、懸命にもがいている。

「生きている」

ただただハルを助けたい、それだけを思った。私は、無我夢中でそこからのことをほとんど覚えていない。

咄嗟に右手で砂を掴み、銃を持った男の顔めがけて撒き散らした。一瞬怯んだ隙に手元に落ちてる平たい小石を長髪の男の顔に投げつけた。ヒュルヒュルと音を立てながら美しい弧を描くと男のこめかみに鈍い音を立てながら突き刺さった。

彼らのうめき声が聞こえ二人が悶えている隙に
ハルを抱え上げた。何処にこんな力があったのか不思議な位のエネルギーで肩に載せ、一目散に駆け出した。非現実的な出来事が私の頭の中を混乱させ何処に向かっているのかさえ全くわからなかった。

もう一人の背の低い男が全速力で追い掛けてくるが、片方の足を引き摺っている。幸い走るのは速く無いようで、私との距離は縮まっていない。

「待て、止まるんだ」

男は叫びながら追い掛けてくるが徐々に距離は離れていった。気が付けば二人は遺跡の石畳に横這いになって息をゼイゼイとさせながら身悶えている。

すぐにハルを寝かし、草むらでドクダミのような植物の葉を集めてきた。幸いハルの銃弾は肩を貫通しており、命には別状は無さそうだ。しかし、こんな何も無いところではすぐに傷口が化膿してしまう。

ドクダミにはペニシリンを凌ぐほどの殺菌作用があり、黄色ブドウ球菌などの繁殖を防いでくれる。私は葉を揉みながらハルにそう話した。

「アオ、ありがとう。助かったわ」

ハルは寝ながら顔だけをこちらに向けて、か細い声で伝えてきた。しかし、いつまでもこうして居られないだろう、きっと奴らがすぐにやって来るはずだ。

ハルは冷静にあの時の状況を分析していた。男たちの履いていた長靴には泥が付いていたことや小柄の男がスコップを持っていたことからも、彼らは盗掘をしているのでは無いかと言っている。私はハルの鋭い勘に、ただ驚きを隠せないでいた。

彼らはきっとこのポリネシアの海に浮かぶ太古の遺跡が目当てなんだろう。そして、ここには何か重大な秘密が隠されているに違いないと二人は考えた。

私は再び地下の「彼女」を思い出しながら、澄んだ空を見つめている。

To be continued.
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