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絶体絶命
しおりを挟む「これは大物だ、ハル手伝ってくれ」
アオは、昨晩セットした仕掛けを引き上げると体長80cmはある真っ青なブダイが掛かっていた。30分以上格闘し、ようやく引き揚げた頃には腕がプルプルして自分で持ち上がらない程に疲れが出た。
早速食事の準備を始めるのだが、当然ここは食事の時間などは決まっていない。採れたらすぐに食べるだけである。すぐに肝臓を切り取り二人で半分に分け、ペロリと飲み込むように食べる。ここでは十分な栄養が採れないため魚の肝臓は貴重だ。ビタミンAに加え脂肪酸が豊富に含まれているので体力を維持するためにも重要だ。半分は刺身にし、残りは焼いて食べたが、ただただ旨かった。ここに来て初めて満腹感を感じることが出来た。
──ここでの生活が始まって既に一週間が過ぎた
ある程度の生活基盤は整い何とか生き抜くことは出来ている。水を除いては魚や果物などの食料も豊富で幸い餓えることはなかった。
まるで昔話のように私は海に漁に行き、ハルは山で果物や野草を探ししてくるという分担を見事にこなしてきた。
最近ではハルの口数も増え冗談も言えるようになってきた。きっと心の傷も少しずつ癒えてきたのだろう。私も以前のような寂しさを感じることは少なくなり、ハルと二人でなら何とか暮らしていけるのでは無いかとも考えるようになってきた。
しかし、水が無いのは致命的な問題であった。今は雨水と果物から水分を補給出来ているがいずれ枯渇するのでは無いかという不安を感じていた。だからと言ってあの地下には行こうとは思わない。何かあそこには、あまりにも近寄り難い恐怖のようなものが存在し私の心を頑なに遠ざけていた。
あの日以来遠くの海面からはブクブクと泡は出続けているのだが、ちょっとずつ泡の量が増えているようにも思えて仕方がない。
◇◇◇
「アオ、ちょっとこっちに来て」
ハルが、ねぐらの横を指差しながら叫んでいる。食事を終えてハルがねぐらに戻ると石器のナイフが無くなっていることに気づいた。ハルが山に行く時にいつも持ち歩いているものなのだが、何処を探しても見つからない。
動物が持っていったんだろうと声を掛けるのだが、単なる気休めにしか聞こえなかったようだ。
その時、背後から静寂を打ち砕くような銃弾がしたと同時にハルがスローモーションのように真っ直ぐ後ろに倒れていく。ハルは真っ青な空を仰ぎながら血しぶきを太陽の光に向けてあげた。
「ハル...」
私の頭が真っ白になりながらも、ハルの名を呼び続けた。
To be continued.
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