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漂流、そして出会い
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私の搭乗したAN127便は、原因不明のトラブルで37,000フィートから一気に急降下を始め太平洋上へ墜落した。
何とか救命ボートにしがみつき、灼熱の太陽にさらされながら3日間の漂流の末、赤道近くの無人島に漂着した。
同乗していた何人かは遺体で流れ着いたが、それ以外の者はどうなったかわからない、まして生存者がいたかどうかは見当もつかない。ここから私の孤独なサバイバル生活が始まった。
◇◇◇
見渡す限りにコバルトブルーの静かな海面が広がり、私の全ての気力を吸い尽くそうとしている。空からはジリジリと太平洋の鋭い日差しが肌を尽突き刺している。
目的もなく歩き出すとすぐにも大粒の汗が滝のように滴り落ち、喉が悲鳴を上げ始めたのはそう時間もかからぬ頃であった。口唇の皮がボロボロとこぼれ落ち、心臓の音がドクンドクンと聞こえるようになってきた。
どうやら脱水症状のようだ。漂流中からの体力の衰えもあり、私の体では無いような違和感を覚え始めている。
きっと何かがあるだろうと島の高台を目指して、とにかく無心で歩き続けた。しばらくし、中腹に差し掛かったところで黄色い野球ボール大の果実が目に入った。その時はまだ、私に運が残っていると錯覚したのであった。
一目散に黄色い柑橘類をむしりとり、分厚い皮を向いて口に放り込んだ。
「うっ、」
想像していたのとは別次元の苦さと酸っぱさが口の中を襲うが、それと同時に糖分とミネラルの何とも言えぬ旨味に包まれ、私は一瞬で生気を呼び戻すことが出来た。
しかし、ここでは今後水の確保が問題となることを痛感せざるを得ない出来事となった。
高台の上から見渡す景色は、私の心を離さなかった。東京では一生得られないような解放感が私の五感に絶え間なくアクセスしてくる。
西の海に太陽が落ち始め、辺りを夕闇が包み込み始めると、私は急いで海辺に戻り、テレビの真似事をしながら火を起こした。火打ち石の原理で石をぶつけ、乾いた樹皮に火花を飛ばすとすぐに着火した。テレビのようにガチガチとぶつけるのでは無く擦り合わせるようにぶつけると案外簡単に火花が飛び散った。
ろくに動く気力も無いため、そこらに落ちている貝を火の中に突っ込み、とにかく胃袋に突っ込んだ。
──その時何かに私の意識が吸い寄せられた
草むらの茂みがゴソゴソと葉を揺らしながら、静かに何かが近寄って来る。私は咄嗟に火打ち石を握りしめ、茂みに向かって身構えている。
黒い物体がゆっくりと近づいてくると同時に私は手に汗を握りながら一点を凝視し続けていた。
その黒い物体は残り火の薄明かりに徐々に近づいてくると共に、私の不安とは真逆の姿が浮かび上がってきた。
そこには長い黒髪に整った顔立ちをした若い女性が震えながら立っていた。その女性は太平洋の海よりも透き通った瞳で私の方をじっと見つめており、右腕からは出血なのか、どす黒くなった血糊のようなものが確認できる。
「すぐにこちらで休んで下さい」
私はそう優しく声を掛けると、緊張の糸がほどけたかのようにその場に跪いてしまった。すぐに私は彼女を横にすると女性はウトウトと深い眠りについていった。
私は透き通るような白い肌を横目に、隣で火種を絶やさぬようチビチビと薪をくべながら天を仰ぐ。
そこには無数の淡い光に彩られる天の川が浮いており、水平線上に輝く南十字星が黙って私を見つめ返していた。
To be continued.
何とか救命ボートにしがみつき、灼熱の太陽にさらされながら3日間の漂流の末、赤道近くの無人島に漂着した。
同乗していた何人かは遺体で流れ着いたが、それ以外の者はどうなったかわからない、まして生存者がいたかどうかは見当もつかない。ここから私の孤独なサバイバル生活が始まった。
◇◇◇
見渡す限りにコバルトブルーの静かな海面が広がり、私の全ての気力を吸い尽くそうとしている。空からはジリジリと太平洋の鋭い日差しが肌を尽突き刺している。
目的もなく歩き出すとすぐにも大粒の汗が滝のように滴り落ち、喉が悲鳴を上げ始めたのはそう時間もかからぬ頃であった。口唇の皮がボロボロとこぼれ落ち、心臓の音がドクンドクンと聞こえるようになってきた。
どうやら脱水症状のようだ。漂流中からの体力の衰えもあり、私の体では無いような違和感を覚え始めている。
きっと何かがあるだろうと島の高台を目指して、とにかく無心で歩き続けた。しばらくし、中腹に差し掛かったところで黄色い野球ボール大の果実が目に入った。その時はまだ、私に運が残っていると錯覚したのであった。
一目散に黄色い柑橘類をむしりとり、分厚い皮を向いて口に放り込んだ。
「うっ、」
想像していたのとは別次元の苦さと酸っぱさが口の中を襲うが、それと同時に糖分とミネラルの何とも言えぬ旨味に包まれ、私は一瞬で生気を呼び戻すことが出来た。
しかし、ここでは今後水の確保が問題となることを痛感せざるを得ない出来事となった。
高台の上から見渡す景色は、私の心を離さなかった。東京では一生得られないような解放感が私の五感に絶え間なくアクセスしてくる。
西の海に太陽が落ち始め、辺りを夕闇が包み込み始めると、私は急いで海辺に戻り、テレビの真似事をしながら火を起こした。火打ち石の原理で石をぶつけ、乾いた樹皮に火花を飛ばすとすぐに着火した。テレビのようにガチガチとぶつけるのでは無く擦り合わせるようにぶつけると案外簡単に火花が飛び散った。
ろくに動く気力も無いため、そこらに落ちている貝を火の中に突っ込み、とにかく胃袋に突っ込んだ。
──その時何かに私の意識が吸い寄せられた
草むらの茂みがゴソゴソと葉を揺らしながら、静かに何かが近寄って来る。私は咄嗟に火打ち石を握りしめ、茂みに向かって身構えている。
黒い物体がゆっくりと近づいてくると同時に私は手に汗を握りながら一点を凝視し続けていた。
その黒い物体は残り火の薄明かりに徐々に近づいてくると共に、私の不安とは真逆の姿が浮かび上がってきた。
そこには長い黒髪に整った顔立ちをした若い女性が震えながら立っていた。その女性は太平洋の海よりも透き通った瞳で私の方をじっと見つめており、右腕からは出血なのか、どす黒くなった血糊のようなものが確認できる。
「すぐにこちらで休んで下さい」
私はそう優しく声を掛けると、緊張の糸がほどけたかのようにその場に跪いてしまった。すぐに私は彼女を横にすると女性はウトウトと深い眠りについていった。
私は透き通るような白い肌を横目に、隣で火種を絶やさぬようチビチビと薪をくべながら天を仰ぐ。
そこには無数の淡い光に彩られる天の川が浮いており、水平線上に輝く南十字星が黙って私を見つめ返していた。
To be continued.
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