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十二月二十四日

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「どうだ?緊張しているか?」
 夜奈が走り出した直後、俺の背後から声をかけられた。
 一瞬びっくりしたが、よくよく声を当てはめると、神田である事が分かった。
「何しに来た?」
「見学だよ。この生き返りプロジェクトは、俺が考えたモノ。結果がどうであろう確認しておくに越した事はないだろ?」
「…………好きにしてくれ」
「ああ」
 神田がそう言った直後、神田の表情が怒りに満ちた。
 急な表情の変化に少々驚いた俺は、神田に問いかけた。 
「……どうした?」
「気付かないか?よく見て見ろ。核が二つに増えてやがるんだよ!」
「んなっ!?」
 俺は、神田の言葉の真相を見るべく、スコープから目を離し、直接魔物を見た。
「嘘……だろ…?」
 神田の言葉は嘘では無かった。
 二つの核が縦横無尽に動き回っていたのだ。
「一体……どうなっているんだ?」
 意味がわからない。
 前の人生で、(死ぬ直前にしか見てないが)確認出来たのは一つだけであった。
 どういう事だ?
 頭が混乱する。
 そんな中、隣にいる神田がボソリとこう呟いた。
「アイツらめ……!」
 俺は其れを聞き逃さなかった。
「アイツら?何で核が二つに増えているのか、理由を知っているのか?」
 俺は神田に問いかけた。
 神田は俺の方をチラリと見てこう言った。
「俺たち神々は、人間などの感情ある生物の憎悪などによって魔物が現れると、数千年前に神々の間で結論が出された。戦や裏切りなどで負の感情を持ったまま死んでしまうケースが増え、魔物はどんどんと数を増やし、神々の中で強く問題視され始めた。そんな中、俺は生き返りで、その問題が解決するのでは無いかと、神々の前で提案した。最初は全員の神々が其れを拒否した。しかし、次第にその考え方が最善なのでは?と議会で上がり、数十年前に可決され、生き返りの実験が始まった。そこで対象として選ばれたのが、霊力値の高い六霊夜奈だ。しかし、六霊夜奈は負け、強大な霊力と憎悪によって物凄い魔物へと……。まあ、其れはさておき、そこでお前が選ばれた。六霊夜奈が唯一、心を開いた人物として。これが成功し生き返りで負の感情が少しでも減れば魔物の脅威は無くなる。だが、其れを良く思わない者もいる。生き返りとは、時の歯車を狂わせる可能性がある為だ。恐らく、この状況が良くないと判断した者が、魔物に手を加えたのだと、確証は無いが、俺はそう思っている」
「……難しい話だな。だが要は、魔物を減らすか、時を正常にしたいか、だろ?だとしたら、コイツを倒せばどちらも叶うと俺は思っている」
「どう言う意味だ?」
「分からないか?……じゃあ、逆に質問する。お前が思う正しい時間軸はどれだ?夜奈が負ける時間軸か?其れとも俺が殺される時間軸か?其れとも夜奈が魔物を倒す時間軸か?」
「其れは当然、六霊夜奈が死ぬ時間軸だろ?」
「違うな。よくよく思い出してみろ。与那が未来予知してたろ?夜奈が倒すと」
「……ッ!?そうか!数十年前に可決された生き返り魔物減少プロジェクトを約千二百年前の人間が知る訳無い。つまり、六霊夜奈が勝つ未来が本当の時間軸で、今まで負けていた時間軸が逸脱した時間軸だと言う事か」
「そうだと思う。俺は普通の人間だから、そう言う憶測しか言えないが」
「俺たち神も時間と言うものは、未知の事が多いんだ。だが、もし其れが正しいなら……今回魔物に手を貸した神は、罰せられるだろう」
「其れはそうと、アイツを倒すのが、先決だ」
 俺はトリガーに持っていっていた右手の人差し指を一度離し、イヤホン型無線機へ手を持っていった。
「夜奈、聞こえるか?」
『うん!聞こえるよ!』
「残念な話がある」
『残念な話?』
「ああ。当初予定していた作戦を大幅に狂わせる程だ」
『そこまでなの?』
「……核が二つある」
『核が二つ?一つじゃなくて?』
「二つだ。隣に神田の奴がいるんだが、恐らく俺たちの生き返りに反対した神の仕業の可能性があるらしい」
『え!?どう言う意味?全く話が分からないんだけど……』
「詳しくは、この戦闘が終わったら話す。それより、俺の指示を聞いてくれ!まず、縦に斬りつけてくれ!」
『了解!』
 俺の指示の元、夜奈は走り出し、刀を上段から振り下ろした。
 スパン!と斬られた魔物は、一瞬何が起こったのか分からなかったのか、複数ある目をキョロキョロと見回したのち、夜奈を見つけた魔物は複数ある触手で夜奈に襲いかかった。
 しかし、驚異的速さで夜奈は魔物の攻撃を躱していく。
「すげえ……」
 俺は夜奈の驚異的速さに暫し見惚れてしまった。
「国井!」
 神田の一言で我に返り、トリガーに人差し指をかけた。
 その時、ある事に気づいた。
 縦に斬られた魔物は、右半身と左半身に核が一つずつ分けられていた。
「夜奈!右半身と左半身に核が一つずつ分かれている。取り敢えず、右半身にある核から破壊する。三秒後に魔物の真ん中くらいの位置で水平に斬ってくれ!いくぞ!一、二!今!」
 夜奈は完璧なタイミングで、水平になぎ払った。
 チョロチョロと動いていた核の一つが真っ二つに斬られた。
 夜奈に負けてられないな。
 俺は深く深呼吸をし、スコープを覗き、タイミングを見てトリガーを引いた。
 完璧なタイミングであった。
 撃ち出された弾丸は一直線に魔物の核へと飛んでいき、見事に核を破壊した。
 よし!これで終わった。
 そう思いながら、スコープから目を離した。
 あとは魔物が消えるのを見守るだけ。そう思っていた。しかし、現実は残酷であった。
「嘘だろ……?」
 魔物は死んではくれなかった。何故なら、先程夜奈が斬ったはずの核が復活していたからだ。
「どう言う事だ!?」
 勝ったと思った矢先の出来事に、動揺が隠せない。
 そんな俺の隣にいた神田が口を開いた。
「1.95秒。あの核が回復するまでの時間だ。……つまり、その1.95秒という時間内にもう片方の核を壊さないと倒せないって事だ」
「因みに俺の攻撃が当たったのは、夜奈が壊してからどれくらい経った時だ?」
「八秒後だ」
 つまり、夜奈の核を斬ったのを確認して約二秒後までに、もう一つの核を俺が放った銃弾で破壊しなければいけないって事か……。
 無理じゃね!?勝てるイメージが思い浮かばん。
 俺は取り敢えず弾を装填し、魔物に向けて構えた。
 そうこうしている内に魔物は完全に復活し、出てきた時と同じ姿へとなっていた。
『たっくん!ねえ、これってどういう事?もしかして核に当たってなかったの?』
 この状況が分からない夜奈は、無線機でそう問いかけてきた。
「すまん。実は…」
 俺は今起きている出来事を説明した。
『なるほど。つまり、勝つにはたっくんと私がほぼ同じタイミングで攻撃しないといけないんだね!』
「そういう事だ……」
『もしかして、たっくん。緊張してる?』
「当たり前だろ。夜奈の方は体力が無くならない限り魔物に攻撃出来るかも知れないが、俺に関しては残り二発しか残ってないからな!そりゃあ、緊張もするし、不安もある」
『そうだね。でも私は、たっくんなら出来ると信じているの』
「何の根拠も無いだろ?それ……!」
『根拠か……。確かに無いかも知れないね。けど、私の知っている国井拓真は、最後の最後には決めてくれると信じているの。其れに、明日のクリスマスデート楽しみにしてるんだから!』
 そうだ。こんな所で悩んだり絶望したり緊張したり不安がったりしている暇は無いんだ。
 俺は明日のクリスマスに夜奈とデートするんだ!
「夜奈、ありがとう!絶対に勝とう!」
『私はずっと前からそのつもりだよ!』
 夜奈は再び走り出した。
「まずは、魔物の体を十字に斬ってくれ!」
『了解!』
 夜奈は右から左に一刀。そして、上から下に一刀。
 魔物の体は見事に四当分になった。
 えっと、核は……。
「夜奈!核は右上と右下にある。その二ブロックを更に斬れるか?」
『任せて!』
 夜奈は、光の如く速さで右側の二ブロックを更に十字に斬った。
『で、核はどこにあるの?』
「ちょっと待ってくれ!………上ブロックの左上だ!」
『了解!』
 夜奈は、核がある部位まで軽く跳び、刀を上段に構えた。
 その姿を捉えた俺は、スコープを覗き込み、トリガーに指を添えた。
 その時、斬った左半身にある触手が夜奈に襲い掛かった。
「夜奈!」
 俺は無意識に叫んだ。
 狙いを触手に変え、躊躇うことなく、トリガーを引いた。
 撃ち出された弾は、魔物の触手を破壊し、触手から夜奈を守った。
『たっくん…!ありがとう!』
「礼は後だ。其れより前の的に集中しろ」
 俺は再びライフル銃を構え、狙いを定めて最後の一発を放った。
 夜奈は銃声を聞いたと同時に上段に構えていた刀を振り下ろした。
 俺が放った銃弾は、核を破壊し、夜奈が振り下ろした刀は、核を真っ二つに斬った。
 一秒程差があったが、許容範囲内だ。
 つまり勝った。俺たちの勝利だ。
 俺は魔物の消滅をこの目で見るためにスコープから目を離し、魔物の姿を見て絶望した。
「どうして……!」
 魔物はゆっくりだが、斬られた部位同士が元の体へ戻ろうとしており、その中心には破壊したはずの二つの核が存在していた。
「確実に核は破壊したはずだ……」
 俺のこの疑問に、隣にいた神田が、怒りの表情をあらわにしながら答えてくれた。
「さっきより早いスピードで元に戻りやがったんだ。恐らく、一度目の回復速度は、俺たちを騙す為の偽りの速度で、二度目の回復速度が本来の……このプロジェクトに反対する神が仕組んだ速度だ。その速度0.2秒」
「0.2秒……!それって、ほぼ同じタイミングで破壊しないといけないって事じゃないか!夜奈一人で、そんな事は到底無理じゃないか!」
 くそっ!
 どうすればいい……。
 また、戻って……いや、これで終わりにしておきたい。
 もう夜奈が死ぬところを見たくないし、俺自身も死ぬなんて、まっぴらごめんだ。
 しかし、一体どうやって……
『たっくん』
 無線機から聞こえてくる夜奈の声。
 今の会話、聞こえていたのだろう。夜奈はおっとりした声でこう言った。
『大丈夫。私、やるよ』
「夜奈……。やるって言ったって、 二つの核を同時に斬らないといけないんだよ!」
『知ってるよ。だから、その二つの核が同じ場所に存在し、動かなくなるまで、斬ればいいんだよ』
「そうかも知れないが……」
「六霊夜奈。確かにこの状況であの魔物を倒す為には、その方法しか無い。しかし、その作戦には危険もある。斬った魔物の半身、もしくは斬った魔物の一部が君を無防備な君を襲う可能性があるんだ。其れでもやるかい?」
『当たり前!今までだって、そうやって来たんだもの!今更、そんな事に屈したりしない!』
「夜奈……」
 俺は無力だ。ただ、夜奈に指示をする事しか出来ない。
「なあ、神田。お前の力を使ってアイツを倒す事は出来ないのか!」
「……すまない。神が人界で力を使うには決まりがあって、人々や動物、植物に手を貸すのは許可されているが、殺したりする事は禁止されているんだ」
「だったら、俺に力を与えてくれ!そして夜奈と一緒に戦う!」
「其れは出来ない。もし、国井に六霊夜奈と同じ霊力を渡したとした場合、君は霊力を抑え切れず、死ぬからだ」
「…………」
 くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!!
 俺は無意識に地面を殴っていた。
 手から血が出ていようとも、自分の無力さに怒りと悲しみの方が苦しかった。
「国井。あとは君が六霊夜奈を指示し、守りながら戦え!其れが君が出来る唯一の方法だ」
 そうだ。この自称神の言う通りだ。
 無力な俺だが、まだ夜奈の助けになるはずだ。
 俺は両手で頬を叩き、気を引き締めた。
 その時だ!
 ふと、背後に気配を感じ、俺は振り向いた。
 神田も感じたのか、神田も後ろを振り向いた。
「どうや?刀の調子は?」
「夜奈ちゃんは、大丈夫ですか?」
 そこにいたのは、金髪に眼鏡をかけた関西弁の青年と、夜奈より小さい小柄な黒髪ストレートの巫女服を着た少女がそこにいた。
「関谷に神宮寺……!」
「お久しぶりです。心配になって見に来ちゃいました!」
 明るく振る舞う神宮寺に、俺は同じように振る舞う事は出来なかった。
「心配になってって……よくそれだけでここまで来れたな」
 と言う俺の言葉に、神宮寺は微笑みながらこう言った。
「もちろん、それだけではありません。あなたにこれを渡しに来たんです」
 神宮寺は、花柄の手提げのがま口の鞄から赤い七センチ程の巾着袋を取り出し、俺に渡して来た。
 俺は其れを受け取り、巾着袋の口を開け逆さまにし、中のモノを出した。
 硬く冷たい其れを見て、俺は驚きを隠せなかった。
 何故なら、巾着袋から出て来たのは、黄金色に輝く、一発の銃弾であった。
「これって、本物なのか!?」
「はい。本物ですよ。しかもあの魔物を倒すだけの霊力を込めてますので」
 さらりと霊力の込めた本物の銃弾宣言をする神宮寺に、神である神田が反論した。
「そんな筈はない!普通の人間があの魔物に太刀打ち出来るほどの霊力を込めるには、最低でも千年はかかる。千年も昔に人類は銃弾を作れるとは思えない」
 確かに、神田は前にもそんな事を言っていた。神で一年。人で千年はかかると。
 神田の言葉に全く動じる事はない神宮寺は、こう続けた。
「確かに、人間がやれば千年はかかると、与那様直筆の書物にも書いてありました。しかし、其れは一人でやった場合です。もうお分かりだと思いますが、我々は一人ではなく、数百人という人数で霊力を溜めました。これがカラクリです」
 ……なるほど。
 つまり、霊力は人を集めれば強くなると言う事と、神である神田の言う一年は、一人での場合であり、神田にはそう言った神の友達がいない為、一年という話をした訳か……。
「おい、国井!全部聞こえているぞ!俺にも神の友達は居るからな!……少ないけど……」
「勝手に人の心を読むな!其れとお前が友達と思っている奴は、お前を友達と思っていない可能性があるんじゃないか?」
「だとしても、お前に其れは言われたく無いし、わざわざ本人の前で言うか!?俺、泣いちゃうぞ!」
「言ってないし、思っているだけだし、泣きたければ泣けば?」
 神田は、俺にそう言われ、後ろの方で体育座りで拗ねた。
 これが神だと言うのだったら、俺は神を一生信じたくはない。
 ……そうだ!夜奈の事を忘れていた。
 俺はすぐさま無線機で夜奈に問いかけた。
「すまない。夜奈、大丈夫か!?」
『うん。こっちは大丈夫だけど、どうしたの?何か良い方法見つかった?』
「ああ。最後の一発が今届いた」
『其れってどう言う意味?』
 夜奈がそう言うので、俺は神宮寺に無線機を渡した。
「夜奈ちゃん。久しぶり!」
『聖ちゃん!?どうしてここに?』
「心配だから見に来たんだよ。其れと今から国井さんに変わり、私が核の場所を指示するから。国井さんは夜奈ちゃんとは違う核を狙ってもらうから。つまり狙撃に専念してもらう。まずは、二つの核を分けて欲しいので、魔物を二つに斬ってくれる?」
『わ、分かった。けど、一つ聞いて良い?銃弾が一発届いたって言っていたけど、聖ちゃんが?』
「うん。詳しいことは後で話そう。今は目の前の敵に集中して!」
『…了解!』
 夜奈は地面を蹴り、瞬く間に魔物の懐に入り込み、縦半分に斬った。
「夜奈ちゃん。次は横半分に斬って!」
『了解!』
 神宮寺の指示の元、右から左へ水平に斬った。
「じゃあ、側面に周って、縦に斬って!」
『了解!!』
 夜奈は一度地面に足をつけ、すぐさま魔物の側面に周り、縦半分に斬った。
「これで八当分になったのは分かる?」
『其れくらい分かるよ』
「じゃあ今見ている視点から右上奥と左手前下に核は存在しているの。ここから核を狙撃に向いているのは、左手前下になるの。だから、夜奈ちゃんは、右上奥に向かって!そして夜奈ちゃんは、着いたら出来るだけその部位を細かく斬って!」
『うん!了解!』
「国井さんは、夜奈ちゃんが斬ったのを確認してから撃って欲しいですが、其れだとまた再生してしまうので、夜奈ちゃんが核を斬ると予測した上で撃って下さい」
「めっさ難しい事を言っていますけど!?」
「無理ですか?」
 と、心配する神宮寺に関係ない関谷がこう答えた。
「大丈夫だろ!お前なら出来るやろ?其れに外そうが、ビビって撃たなかろうが、当たったがタイミングが合わんが結果は同じや。けど、何もせんよりする方がええに決まっとる!」
 関谷め!言ってくれる。
 動いている核を捉えつつ、夜奈が核を破壊する手前で残り一発の銃弾を撃ち込むか……。
 すげー、緊張するが……
「ああ!大丈夫だ。問題は無い!神宮寺は出来るだけ夜奈のサポートを頼む」
「分かりました」
「関谷、サンキュー」
「礼はええ。其れより、前の敵に集中せいや。俺は何も出来ひんが、ちゃんと見届けてやる」
「ああ!」
 俺はスコープを覗き込んだ。
 落ち着け……。落ち着け……。大丈夫だ。俺ならやれる。
 俺はゆっくりと息を吐き、新しい空気を取り入れる為、ゆっくりと息を吸い込んだ。そして、再びゆっくりと息を吐いた。
 夜奈!夜奈!夜奈!!
 絶対にこの負の運命から脱出しよう!

 ……うん!信じてる。私はたっくんを信じてる。
 だから、大丈夫。必ず、タイミングは合うよ。だって、そう言う運命だもの!

 其れは無線機からの言葉だったのか、其れとも夜奈が心に直接話しかけて来たのか、はたまた俺の気のせいなのか…。
 いや、今はどうでもいい。
 俺は、夜奈を
 私は、たっくんを
「「信じてる!!!」」
 俺は引き金を引いた。最後の一発が魔物の核へと向かった。
 夜奈は、神宮寺の指示の元、霊刀五月雨を振り下ろした。
 俺の放った弾丸は、核を貫いた。
 夜奈が放った霊刀は、核を真っ二つに斬った。
 俺と夜奈が核を破壊した誤差、0.1秒。
 故にこの戦い、俺たちの勝利となった。
 核を破壊された魔物は、全ての目が見開き、そしてゆっくりと目を閉じた。
 その直後、魔物はサラサラと崩れ落ちた。
「これで勝ったんだよな?」
 俺は神田に問いかけた。
「ああ。間違いなく、お前たちの勝利だ」
「お疲れ様です」
「お疲れ様」
「二人ともお疲れ様。助かったよ。わざわざここまで来てもらって感謝しかない」
「礼なんていらんわ。俺何もやってへんし」
「そうですね」
「神宮寺さん?俺に対して冷たくないか?」
「気のせいですよ。其れより、もう一人の英雄が来たみたいですよ?」
 神宮寺はそう言うと、魔物が居た方を見た。
「たーーーーーーっくーーーーん!!」
 鞘に収めた刀を右手に持ち、勢いよく走ってくるオッドアイの少女は、大声で俺の名前を呼び、減速する事なく俺の胸に飛び込んできた。
 俺は其れをしっかり受け止めれなかった。
 何故なら、飛び込んできた衝撃が思っていた以上だったからだ。
 俺はオッドアイの少女を抱きしめながら、仰向けで倒れた。
「夜奈……終わったな」
「……うん。ようやく終わった。皆んなのおかげでようやく勝てた」
「その通りだな。じゃあこれから祝勝会でもするか!感謝の気持ちを込めて」
「そうだね。旅行費も少し残っているし」
「よし、決まり!早速行こうか!」
「うん!」
 俺は起き上がると夜奈の手を握り、皆んなのところへ走って向かった。
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