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世界統一編

それぞれの生き方8

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 会合が終わった翌日。サリアは、マヤへの引き継ぎが行われていた。
 正直なところ、マヤには其れが必要無かった。と言うのも、全ての問題を把握しており、更にその解決策も考えていたからだ。そんなマヤだが、サリアの引き継ぎを拒まず、素直にうんうんと聞いていた。
 終わった頃には夕方になっていた事に、サリアは少し驚いた。
 サリアは引き継ぎが終わると、自室へ行き、鞄に衣服などを詰め込み始めた。
 楽しみなのだ。新しい世界、新しい生活、新しい文化。ワクワクが止まらない。
 泰斗曰く、帰るのは一週間後との事だが、其れでもワクワクで眠れないのだ。まるで、遠足前の子供のように。
「これでよし!」
 鞄を部屋の端へ置き、この日は眠りについた。

 泰斗は、帰るまでの一週間、色んな所を見て回った。
 まずは魔界へ。魔界では、枯れた大地に草木を生やす植林が行われていた。
「泰斗、よく来たな」
 太く低い声が特徴的なサタンが、くわを持って土を耕している姿は、泰斗にとって異様に見えた。
「サタン。別にお前がやらなくてもいいんじゃ無いのか?」
 とサタンに話しかけると横から久しぶりに会ったザラキがこちらに来て話しかけてきた
「お久しぶりです、泰斗さん」
「久しぶりだな。元気だったか?」
「ええ、まあ。それより、魔王様を説得して下さいよ。実は私も魔王様にやる必要は無いとそう言ったのですが、聞く耳持たないと言いますか、全然話を聞いてくれなくて・・・」
「俺は、俺のやりたいようにやる。其れにこんな大変な時に座ってられるか!」
「なるほどな。其れはそうと、さっきから気になっているんだが、ちらちらとエルフの姿が見えるんだが?」
「ああ。エルフが住むユグドラシルは木々が生い茂る領地。植林の方も盛んに行われており、教えてもらっておるのだ」
「そうなのか」
「因みに、おーい。ユルシア!」
 サタンの呼び掛けに、一人の女性のエルフが向かってきた。
「どうしたの?」
「ユルシア。紹介するよ。こいつが泰斗だ」
「貴方があのシヴァを倒した、泰斗さん!?」
「う、うん・・・まあ」
「もう少しゴツい体の方かと思っていましたが・・・」
「ははは・・・。ところで、サタン。このエルフさんがどうしたと言うんだ?」
「実はな、今度このユルシアと結婚をだな、するんでな。お前が元の世界へ帰る前に報告をな」
「其れはおめでとさん。ユルシアさんだったかな?こいつとは知り合ってまだ短いが、魔界の領主に相応しい男だ。それを支えるのは、とても大変だと思うが、どうか一緒に居てやって欲しいんだ」
「はい」
 ユルシアはにっこりと微笑んで、そう答えた。隣では、顔が赤くなったサタンが視線を逸らし、頭を掻いた。
「さてと、んじゃそろそろ行くわ」
「もう行くのか?」
「ああ。他にも挨拶するところがあるしな」
 泰斗はそう言うと、次の場所へとむかった。
 次に向かったのは、ユグドラシルであった。
「本当に自然が多い場所なんだな」
 辺りには木々が生い茂り、あちこちで鳥が鳴いているのが聞こえる。
「さてと、ユグドラシルに着いたはいいが、メメは何処にいるのだろうか?」
 泰斗にとってユグドラシルは初めて来る場所であった。更に、メメにそちらに行くとは伝えてなどおらず、完全に迷子状態である。
「とりあえず、進んで見るか」
 泰斗は辺りを見回しながら、前へ進んでいく。すると、
「ん?」
 何かが居る気配を感じた。姿は見えない。音もしない。だが、何かが居る。
 泰斗は悟られないようにそのまま進んでいく。すると・・・
 増えた?
 気配が一から二へ。二から三へと増えて行った。
 しかも、泰斗を囲んでいる。
 泰斗はピタリと足を止めた。
「誰だ?居るのは分かっているんだ!」
 泰斗は大きな声で、そう言った。しかし、姿は見せない。
「仕方ないか」
 泰斗は足に力を入れた。
 二時の方向に一人。十時の方向に一人。六時の方向に一人か・・・。まずは、二時の方向にいる奴だな!
 泰斗はぐっと足の力を解き放った。
「みーつけた!」
 あっという間に、二時の方向にいる奴の背後に回った泰斗は、そいつが持っていた弓矢をはたき落した。
「あっ!」
 弓矢を地面に落とされたそいつの顔は汚い茶色のフードを被っていて分からないが、身長は約百四十センチメートルくらいで、先程の「あっ!」と言う声を聞くに恐らく子供の可能性が出てきた。
 すると、そのフードの奴は腰に携えていた短刀で切り掛かってきた。
 しかし、泰斗はビビることなく、人差し指と中指で短刀を受け止め、更にくいっと奪い取った。そして其れを、十時の方向の奴へと投げた。
「きゃっ!」と言う声が遠くの方から聞こえてきた。
 最高は、と。
 泰斗は再び足に力を入れて、六時の方向にいるもう一人の元へ向かった。
「わあ!いつの間に!」
 とりあえず、これで全員捕まえたかな。
 泰斗は最後の一人を抱え上げて、残り二人の所へ向かい、三人を一ヶ所に集めた。
「で、お前達は誰なんだ?」
 三人ともフードを被っていて顔は分からないが、恐らく子供だろう。
「おい、聞いているのか?」
「お前こそ誰なんだ!ここへ何しに来たんだ!」
 三人の中で、最初に捕まえた奴が立ち上がって、そう言ってきた。その際、パサっとフードがめくれ、顔が見えた。
 ツンと長い耳に予想通りの幼顔。間違い無い。エルフの子供だ。
「どうした?なんか言えよ!」
 威勢の良いエルフの子供は、泰斗にそう言い放った。
「まあ、落ち着け。名前を言う前にどうして俺を付けてきたんだ?」
「決まっているだろ!お前が侵入者だからだよ」
「なるほどな。其れはすまなかった。実はメメに会いに来たんだが、道が分からなくてな」
「んな!お前、メメ様を呼び捨てなんて!」
「落ち着けって!」
 まるで、気性の荒い犬のようだ。
「とにかく、お前達に居場所を教えて貰いたいのだが?」
「誰がお前なんかに!」
「分かった。じゃあ最後に教えてくれ。メメが住んで居るところは、大きな所か?」
「ああ。そうだよ。メメ様が住んで居るのは、ラフレと言うこのユグドラシル最大の街だ。近くにユグドラシル最大の木ギスモンジョウの根元に街はある。まあ、ここからなら周りの木々が高くて見えないがな」
「つまり、この木々の上へ行けば一目瞭然で分かると・・・」
 泰斗は其れを聴くと、三人の子供のフードを握って高く飛び上がった。
「あっ!飛び過ぎた」
 泰斗は木々の上に乗るだけなのに、その倍ほど飛んでしまったが、幸運にもギスモンジョウが目の前に現れた。
「あそこだな」
 泰斗は木々の上に上手いこと着地したのち、木々と木々の上を走ってラフレと言う街へ向かった。
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