14 / 39
12、巨人
しおりを挟む
ロッキー山脈西部 ー 旧ネバダ州 ー
2199年12月11日
頑丈な岩盤の下に作られた施設は連邦統制軍が管理する研究エリアである。
入り口のゲートパネルの前には武装した兵士たちが厳重に警備している。
周囲の森林にはカモフラージュを施した対空ミサイルが配備されていて防空対策も万全だ。
さらには入り口を監視するように数人のスナイパーが配置されていた。
その厳重な基地に一台の車が近づいていた。
もちろん車は、十数キロ前から把握されている。
車が入り口まで来ると警備兵が呼び止めて許可証の提示を求めた。険しい顔つきの警備兵は運転席から差し出された許可証のコードをスキャンする。異常のないことが確認されるとゲートパネルを開ける合図を出した。
トンネル状の通路を進むと車両用の大型エレベーターに誘導された。中に入り停車させるとエレベーターが降下し始めた。
「さすがに軍の施設は厳重だな」
後部座席に陣取る上等なスーツを着た男の言葉に正面に座るボディーガードが頷く。
エレベーターが目的の階まで来て停止すると研究責任者ベン・ゴールドバーグが出迎えた。
「ミスター・ミュラー。お待ちしていました」
「博士、あれの調査は順調かね?」
「はい、様々な事が判明しています」
「歩きながらでいいから聞かせてもらおうか」
その地下には火星から運び込まれたあるものが厳重に隠されていた。
通称“火星の巨人”。火星の古代遺跡で発見されたミイラ化した生物の死体だ。
「骨格はチタンに似た合金、構成は専門部署で分析中です」
「時間がかかり過ぎじゃないか?」
「何しろ未知の元素も発見されましたので」
「未知の? それはいい」
「それから干からびた脳にはチップらしきものが埋め込めれています。つまり、この生き物は……」
「一種のサイボーグみたいなものか?」
「ええ、そのとおり」
「興味深いが、要するに“彼ら”ではないのだな。要するに“彼ら”の労働用とか、なんとか……」
「そうとは言い切れませんが、可能性はあります」
カサーン・ベイ社の重役であるミュラーは科学者を質問を続けた。ミュラーがいう“彼ら”とは火星のテクノロジーを生み出した知的生物のことを言っている。
「そのチップというのは取り出せるのか?」
「はい、もちろん」
「優先させろ。データが入っているかもしれないからな」
「わかりました……それと、新しい発見もあります」
通路が研究エリアに入ると強化ガラス越しに横たわる“火星の巨人”が横たわっていた。
10mを超える巨人の周囲には防護服を着た科学者たちが検査器具を使って何かを調べている。
科学者はコンピュータ端末のボードを見せた。ディスプレイにはなにかの細胞の拡大画像が映し出されていた。
「これはなんだ?」
「細胞膜の拡大画像です。“火星の巨人”の」
ミュラーは、博士の顔を見た。
「ある時期を境に細胞の活性化が始まっています。原因は調べている最中ですが」
ゴールドバーグ博士は真剣な顔つきで言った。ミュラーは強化ガラスの先に横たわる“火星の巨人”を見上げた。
「つまり、これは生き返り始めてるのか?」
2199年12月11日
頑丈な岩盤の下に作られた施設は連邦統制軍が管理する研究エリアである。
入り口のゲートパネルの前には武装した兵士たちが厳重に警備している。
周囲の森林にはカモフラージュを施した対空ミサイルが配備されていて防空対策も万全だ。
さらには入り口を監視するように数人のスナイパーが配置されていた。
その厳重な基地に一台の車が近づいていた。
もちろん車は、十数キロ前から把握されている。
車が入り口まで来ると警備兵が呼び止めて許可証の提示を求めた。険しい顔つきの警備兵は運転席から差し出された許可証のコードをスキャンする。異常のないことが確認されるとゲートパネルを開ける合図を出した。
トンネル状の通路を進むと車両用の大型エレベーターに誘導された。中に入り停車させるとエレベーターが降下し始めた。
「さすがに軍の施設は厳重だな」
後部座席に陣取る上等なスーツを着た男の言葉に正面に座るボディーガードが頷く。
エレベーターが目的の階まで来て停止すると研究責任者ベン・ゴールドバーグが出迎えた。
「ミスター・ミュラー。お待ちしていました」
「博士、あれの調査は順調かね?」
「はい、様々な事が判明しています」
「歩きながらでいいから聞かせてもらおうか」
その地下には火星から運び込まれたあるものが厳重に隠されていた。
通称“火星の巨人”。火星の古代遺跡で発見されたミイラ化した生物の死体だ。
「骨格はチタンに似た合金、構成は専門部署で分析中です」
「時間がかかり過ぎじゃないか?」
「何しろ未知の元素も発見されましたので」
「未知の? それはいい」
「それから干からびた脳にはチップらしきものが埋め込めれています。つまり、この生き物は……」
「一種のサイボーグみたいなものか?」
「ええ、そのとおり」
「興味深いが、要するに“彼ら”ではないのだな。要するに“彼ら”の労働用とか、なんとか……」
「そうとは言い切れませんが、可能性はあります」
カサーン・ベイ社の重役であるミュラーは科学者を質問を続けた。ミュラーがいう“彼ら”とは火星のテクノロジーを生み出した知的生物のことを言っている。
「そのチップというのは取り出せるのか?」
「はい、もちろん」
「優先させろ。データが入っているかもしれないからな」
「わかりました……それと、新しい発見もあります」
通路が研究エリアに入ると強化ガラス越しに横たわる“火星の巨人”が横たわっていた。
10mを超える巨人の周囲には防護服を着た科学者たちが検査器具を使って何かを調べている。
科学者はコンピュータ端末のボードを見せた。ディスプレイにはなにかの細胞の拡大画像が映し出されていた。
「これはなんだ?」
「細胞膜の拡大画像です。“火星の巨人”の」
ミュラーは、博士の顔を見た。
「ある時期を境に細胞の活性化が始まっています。原因は調べている最中ですが」
ゴールドバーグ博士は真剣な顔つきで言った。ミュラーは強化ガラスの先に横たわる“火星の巨人”を見上げた。
「つまり、これは生き返り始めてるのか?」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
【SF短編】エリオの方舟
ミカ塚原
SF
地球全土を襲った二一世紀の「大破局」から、約二〇〇年後の世界。少年エリオ・マーキュリーは世界で施行された「異常才覚者矯正法」に基づいて、大洋に浮かぶ孤島の矯正施設に収容された。無為な労働と意識の矯正を強いられる日々の中で、女性教官リネットとの出会いが、エリオを自らの選択へ導いてゆく。
【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部
山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。
これからどうかよろしくお願い致します!
ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
我らの輝かしきとき ~拝啓、坂の上から~
華研えねこ
歴史・時代
講和内容の骨子は、以下の通りである。
一、日本の朝鮮半島に於ける優越権を認める。
二、日露両国の軍隊は、鉄道警備隊を除いて満州から撤退する。
三、ロシアは樺太を永久に日本へ譲渡する。
四、ロシアは東清鉄道の内、旅順-長春間の南満洲支線と、付属地の炭鉱の租借権を日本へ譲渡する。
五、ロシアは関東州(旅順・大連を含む遼東半島南端部)の租借権を日本へ譲渡する。
六、ロシアは沿海州沿岸の漁業権を日本人に与える。
そして、1907年7月30日のことである。
【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ
海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。
衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。
絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。
ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。
大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。
はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?
小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。
カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる