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第6話 襲撃の秘密教団
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未冬たちは身支度を整えると早々にモーテルを出た。
詳しい事は教えてもらえなかったが約束の場所は市場の何処かだと説明される。
「これを持っていて」
そう言って凜夏は未冬にペンダントを手渡す。
「ありがとう……ございます」
未冬はアンティーク風なペンダントを受け取った。
「変わったデザインですね」
「魔除けだからね」
「魔除け?」
そう言われてあらためてペンダントをよく見てみた。
「私たちを追う敵も魔法を使うんだ。だから魔法を使って私達を探そうとするはず。それを妨害する為のアイテムだよ。持って入れは魔法では探知できないはずだから」
「へえ……魔法、本当なんですね」
「つけてあげる」
「あ……はい」
凜夏は手を未冬の首に回してペンダントをつけてやった。
「あ、ありがとうございます」
「あとは……あれ?」
「どうしました?」
「スマホが見当たらないんだ」
「だったら私の使います?」
「いや、君のは使えない」
「ひっどーい、最新機種ですよ!」
「そうじゃないんだ……ああ、あった」
凜夏はスマホを取り出すとアプリを起動させた。
「もう! 凜夏さんひどいんだから」
「ごめん。これには特別なアプリを入れてあるから」
「特別なアプリですか?」
未冬は画面を覗き込んだ。
「この地図アプリは監視カメラの死角のルートを表示するマップなんだよ」
「監視カメラ?」
「街中に設置してある監視カメラも連中の手中にあるからね」
§
ホテルを出た二人はスマホ片手に約束の場所を目指す。
マップを辿っていくと市場に入ると様々な屋台が道に並んでいた。
出店に並んだ品物に未冬は目を輝かす。
「凜夏さん、あれ、あれ見てくださいよ。かわいい!」
珍しい品物に未冬は篆書が上がりっぱなしだ。
「君ねえ……一応、私達は逃亡中なんだけど」
「かわいーっ!」
「聞いてる? 未冬」
子供のようにはしゃぐ未冬を見ているとなぜだかほっとする。
「あのさ……未冬」
その時、市場で凜夏は、何かの気配に気づく。
凜夏は周囲の建物の窓を見上げた。
何かいる……。
ポケットから折りたたみ式のステンドグラスを取り出しすとあらためて上を見渡した。レンズに特殊な呪術を施したものだ。このレンズを通して見えるものは人にあらざる者なのだ。そしてそのグラスで見るとビルの上に鳥のような何かが止まっているのが見える。
夜鬼……ナイトゴーントか
それは異界の化け物だった。
魔法使いたちの中では特定の呪文スペルを用いて使役する。その魔法はドルイドの流れを組まない稀有なものだ。持っていた魔除けのペンダントが効力を発揮するのはヨーロッパで主流となっている魔法からだ。しかし、夜鬼を使役する魔法は違う。より古い忘れられた時代の魔法なのだ。
凜夏が知る魔法使いの中にもこれを用いる者がいる。
それは凜夏と同じ不死の呪いを受けた魔女だ。
「凜夏さん、見て見て!」
感じる不穏な空気を気にしている凜夏に未冬が強引に腕を引っ張る。
「これ、可愛くないですか?」
未冬が見せようとしたのは出店に並ぶキャラクター人形だった。が、パチもん感が半端ない。
「未冬、そんな場合じゃ……」
「いいじゃないですか」
未冬が凜夏を見上げて微笑む。
「だって、凜夏さん、顔が怖いし。気分転換しないとね」
「そ、そうかな」
「そうですよ」
「凜夏さん、美人なんだからもっと笑顔でいないと」
「笑うのは得意じゃない」
「でも、昨夜は、私に笑いかけてくれたじゃないですか? あんな感じで……」
「あれは仕事だから」
「仕事?」
「ああ……そういった訓練をして相手を油断させる技術」
「本当の笑顔じゃないんだ……」
「そういうこと」
それを聞いた未冬は悲しそうな顔で凜夏を見つめている。それを見ると凜夏もどういうわけか罪悪感のような気持ちが芽生える。
人を欺くのは任務上、いつものことだった。いつものことのはずなのに……だが。
「あの未冬さ、あの時は……」
「ねえ、あれ買ってくださいよ」
未冬の態度が急に変わる。
「えっ?」
「あれです」
「自分で買いなよ」
「だって、お金、ほとんど残ってないんですよ」
「それより、まずいことが起きそう」
「どうしました?」
「何かおかしいんだ」
凜夏は未冬を引き寄せた。
「り、凜夏さん?」
「周辺に、誰かが使役した異形の存在が飛び回ってる。見つかる前にここから離れないと」
「使役?」
ビルの上や屋上に集まっていた夜鬼たち
ある合図を受けが夜鬼たちが実体化していった。
「何あれ?」
通行人の何人かが、夜鬼に気づき始めた。
「でかい鳥じゃないの?」
「それにしてはデカすぎない?」
スマホを取り出して撮影を始める者。怯え始める者と様々だ。
騒ぎが大きくなり始めたころを見計らったのかよる鬼の一匹が不気味な叫び声を上げた。群れは通行人たちに襲いかかり始める。
市場はパニックになる中、凜夏も未冬の手を引いて逃げた。
「やっぱり見つかっていた!」
逃げていく人たちと逆方向から誰かが歩いてきた。
黒衣のマントの身を包み異様な仮面の女だ。
「ヴェスナ・ヴェージマ……」
「えっ?」
ヴェスナって……凜夏さんが寝言で言っていた人じゃ……?
そのヴェスナの両手にはナイフが握られていた。
「未冬、下がっていて」
「は、はい」
促された未冬は物陰に身を隠した。
「見つけたよ。不死の魔女」
「ヴェスナ……昨夜のお礼はさせてもらうわ」
「礼ならあんたの命で贖って」
「命で償うって? 私たちにかけられた呪いを忘れていない? 私たちは死ねない呪いがかけられている」
「もちろん覚えている。私たちにかけれた"不死の呪い"……愛する人と想いが通じ合えた時……お互いを愛しい人だと思えた時、"呪い"の効力は消える。けれど……」
ヴィスナは、凛夏に鋭い視線を向ける。
「凛夏。あんた、本当にまだ不死なの?」
「……何が言いたい?」
「まあ、いいさ。それより盗んだ魔導書を返してもらおうか、裏切り者」
「ここにはない」
「だろうね。では、在り処を教えてもらう」
「素直に言うと思う?」
「思わないよ。でもこれならどうだろうね?」
凜夏とヴェスナとの対決を見守っていた未冬の頭上に夜鬼が群がる。
「えっ?」
夜鬼が未冬を捕まえて空中に抱え上げていく。
「な、なに?」
それに気づいた凜夏は、銃を抜き、飛び去ろうとする夜鬼をに狙いをつける。
「sagittam!(矢よ!)」
短い呪文を唱えながら矢を放つ仕草をすると空気の矢が放たれた。矢は、未冬を捕らえた夜鬼の翼を貫いた。
夜鬼は奇怪な叫び声を上げて高度を下げていった。捕まえていた未冬をいまにも落としそうだ。それを別の夜鬼が代わりに未冬を奪い去った。
「ちっ!」
もう一度狙いをつけようしていると眉間めがけてナイフが飛んできた。
それを既のところで避ける凜夏だったが、その間に未冬を掴まえた夜鬼は飛び去ってしまう。
凜夏は、ナイフを投げたヴェスナの方を向く。
ヴェスナは、小首をかしげながら手を広げた。
「さて、これでも魔導書を渡す気はないと?」
仮面の下は笑っているに違いない。
凜夏はヴェスナを睨みつけた。
「女の命と引き換えだよ。魔導書を持ってくるんだ」
そう言い残すとヴェスナ黒い霧になってその場から消えてしまう。
同時に空を飛び回っていた夜鬼たちもいなくなっていた。
ひとり残った凛夏は悔しそうに空を見つめた。
詳しい事は教えてもらえなかったが約束の場所は市場の何処かだと説明される。
「これを持っていて」
そう言って凜夏は未冬にペンダントを手渡す。
「ありがとう……ございます」
未冬はアンティーク風なペンダントを受け取った。
「変わったデザインですね」
「魔除けだからね」
「魔除け?」
そう言われてあらためてペンダントをよく見てみた。
「私たちを追う敵も魔法を使うんだ。だから魔法を使って私達を探そうとするはず。それを妨害する為のアイテムだよ。持って入れは魔法では探知できないはずだから」
「へえ……魔法、本当なんですね」
「つけてあげる」
「あ……はい」
凜夏は手を未冬の首に回してペンダントをつけてやった。
「あ、ありがとうございます」
「あとは……あれ?」
「どうしました?」
「スマホが見当たらないんだ」
「だったら私の使います?」
「いや、君のは使えない」
「ひっどーい、最新機種ですよ!」
「そうじゃないんだ……ああ、あった」
凜夏はスマホを取り出すとアプリを起動させた。
「もう! 凜夏さんひどいんだから」
「ごめん。これには特別なアプリを入れてあるから」
「特別なアプリですか?」
未冬は画面を覗き込んだ。
「この地図アプリは監視カメラの死角のルートを表示するマップなんだよ」
「監視カメラ?」
「街中に設置してある監視カメラも連中の手中にあるからね」
§
ホテルを出た二人はスマホ片手に約束の場所を目指す。
マップを辿っていくと市場に入ると様々な屋台が道に並んでいた。
出店に並んだ品物に未冬は目を輝かす。
「凜夏さん、あれ、あれ見てくださいよ。かわいい!」
珍しい品物に未冬は篆書が上がりっぱなしだ。
「君ねえ……一応、私達は逃亡中なんだけど」
「かわいーっ!」
「聞いてる? 未冬」
子供のようにはしゃぐ未冬を見ているとなぜだかほっとする。
「あのさ……未冬」
その時、市場で凜夏は、何かの気配に気づく。
凜夏は周囲の建物の窓を見上げた。
何かいる……。
ポケットから折りたたみ式のステンドグラスを取り出しすとあらためて上を見渡した。レンズに特殊な呪術を施したものだ。このレンズを通して見えるものは人にあらざる者なのだ。そしてそのグラスで見るとビルの上に鳥のような何かが止まっているのが見える。
夜鬼……ナイトゴーントか
それは異界の化け物だった。
魔法使いたちの中では特定の呪文スペルを用いて使役する。その魔法はドルイドの流れを組まない稀有なものだ。持っていた魔除けのペンダントが効力を発揮するのはヨーロッパで主流となっている魔法からだ。しかし、夜鬼を使役する魔法は違う。より古い忘れられた時代の魔法なのだ。
凜夏が知る魔法使いの中にもこれを用いる者がいる。
それは凜夏と同じ不死の呪いを受けた魔女だ。
「凜夏さん、見て見て!」
感じる不穏な空気を気にしている凜夏に未冬が強引に腕を引っ張る。
「これ、可愛くないですか?」
未冬が見せようとしたのは出店に並ぶキャラクター人形だった。が、パチもん感が半端ない。
「未冬、そんな場合じゃ……」
「いいじゃないですか」
未冬が凜夏を見上げて微笑む。
「だって、凜夏さん、顔が怖いし。気分転換しないとね」
「そ、そうかな」
「そうですよ」
「凜夏さん、美人なんだからもっと笑顔でいないと」
「笑うのは得意じゃない」
「でも、昨夜は、私に笑いかけてくれたじゃないですか? あんな感じで……」
「あれは仕事だから」
「仕事?」
「ああ……そういった訓練をして相手を油断させる技術」
「本当の笑顔じゃないんだ……」
「そういうこと」
それを聞いた未冬は悲しそうな顔で凜夏を見つめている。それを見ると凜夏もどういうわけか罪悪感のような気持ちが芽生える。
人を欺くのは任務上、いつものことだった。いつものことのはずなのに……だが。
「あの未冬さ、あの時は……」
「ねえ、あれ買ってくださいよ」
未冬の態度が急に変わる。
「えっ?」
「あれです」
「自分で買いなよ」
「だって、お金、ほとんど残ってないんですよ」
「それより、まずいことが起きそう」
「どうしました?」
「何かおかしいんだ」
凜夏は未冬を引き寄せた。
「り、凜夏さん?」
「周辺に、誰かが使役した異形の存在が飛び回ってる。見つかる前にここから離れないと」
「使役?」
ビルの上や屋上に集まっていた夜鬼たち
ある合図を受けが夜鬼たちが実体化していった。
「何あれ?」
通行人の何人かが、夜鬼に気づき始めた。
「でかい鳥じゃないの?」
「それにしてはデカすぎない?」
スマホを取り出して撮影を始める者。怯え始める者と様々だ。
騒ぎが大きくなり始めたころを見計らったのかよる鬼の一匹が不気味な叫び声を上げた。群れは通行人たちに襲いかかり始める。
市場はパニックになる中、凜夏も未冬の手を引いて逃げた。
「やっぱり見つかっていた!」
逃げていく人たちと逆方向から誰かが歩いてきた。
黒衣のマントの身を包み異様な仮面の女だ。
「ヴェスナ・ヴェージマ……」
「えっ?」
ヴェスナって……凜夏さんが寝言で言っていた人じゃ……?
そのヴェスナの両手にはナイフが握られていた。
「未冬、下がっていて」
「は、はい」
促された未冬は物陰に身を隠した。
「見つけたよ。不死の魔女」
「ヴェスナ……昨夜のお礼はさせてもらうわ」
「礼ならあんたの命で贖って」
「命で償うって? 私たちにかけられた呪いを忘れていない? 私たちは死ねない呪いがかけられている」
「もちろん覚えている。私たちにかけれた"不死の呪い"……愛する人と想いが通じ合えた時……お互いを愛しい人だと思えた時、"呪い"の効力は消える。けれど……」
ヴィスナは、凛夏に鋭い視線を向ける。
「凛夏。あんた、本当にまだ不死なの?」
「……何が言いたい?」
「まあ、いいさ。それより盗んだ魔導書を返してもらおうか、裏切り者」
「ここにはない」
「だろうね。では、在り処を教えてもらう」
「素直に言うと思う?」
「思わないよ。でもこれならどうだろうね?」
凜夏とヴェスナとの対決を見守っていた未冬の頭上に夜鬼が群がる。
「えっ?」
夜鬼が未冬を捕まえて空中に抱え上げていく。
「な、なに?」
それに気づいた凜夏は、銃を抜き、飛び去ろうとする夜鬼をに狙いをつける。
「sagittam!(矢よ!)」
短い呪文を唱えながら矢を放つ仕草をすると空気の矢が放たれた。矢は、未冬を捕らえた夜鬼の翼を貫いた。
夜鬼は奇怪な叫び声を上げて高度を下げていった。捕まえていた未冬をいまにも落としそうだ。それを別の夜鬼が代わりに未冬を奪い去った。
「ちっ!」
もう一度狙いをつけようしていると眉間めがけてナイフが飛んできた。
それを既のところで避ける凜夏だったが、その間に未冬を掴まえた夜鬼は飛び去ってしまう。
凜夏は、ナイフを投げたヴェスナの方を向く。
ヴェスナは、小首をかしげながら手を広げた。
「さて、これでも魔導書を渡す気はないと?」
仮面の下は笑っているに違いない。
凜夏はヴェスナを睨みつけた。
「女の命と引き換えだよ。魔導書を持ってくるんだ」
そう言い残すとヴェスナ黒い霧になってその場から消えてしまう。
同時に空を飛び回っていた夜鬼たちもいなくなっていた。
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