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第一話 異世界転生というか異世界転移?
しおりを挟むいつもの帰り道
雨の中、傘を差して歩いていると眼の前にヘッドライトの光が迫って来た!
あっと思った瞬間、意識が途切れた。
気がつくと雨は止み、見たこともない森の中にいた。
僕の名前は茨城亮平。
ごく普通の高校生だ。
ひょんなことから異世界に転移してしまう
これは、僕の異世界での記録だ
辺りを見渡すと、開いたままの傘が転がっている。それを拾い上げると、もう一度、廻りを見渡した。
さっきまでは駅に近い商店街を歩いていたはずなのに、目の前に車のヘッドライトの光が迫ってきたかと思ったら、突然こんなところにいる。
さらに、ここはどうみても森なのだが、草や木もなにか様子が違う。
何か植物というより、動物のような雰囲気がある。息づかいのようなものさえ感じるのだ。
奇妙に思っていると、その中でもひと際目立つ大きな木が目についた。
いくつもの根っこが、腕のように土の上からはみ出していて周辺に伸びている。葉の形も見たこともない奇妙な形だった。
不気味なその木を見上げていた時だった。
突然、ツルが伸びてきて僕の足に巻き付いた!
すごい力で体がひっぱられ、あっという間に持ち上げられてしまう。
下を見ると、鋭い牙を生やした化け物が、恐ろしい口を開けて待ち構えていた。
明らかに僕を食べようとしている!
悲鳴をあげる僕。するとなにかが光った
と、同時にツルが切り裂かれ、僕はその場に転げ落ちた。
怪物は、火につつまれていて、あっという間に燃え尽きてしまった。
「君、大丈夫か?」
僕をだれかが見下ろしていた。どうやら、その人が僕を助けてくれたらしい。
「あ、ありがとうございます」
礼を言って起き上がると、あらためて恩人の姿を見る。
その姿を見て、僕は驚いた。
「え? エルフ?」
そこにいたのは長い白金の髪を持つ美しい女の人だった。
一瞬、自分の目を疑う。
なぜなら彼女の耳は長く尖り、服装もどこか変わっている。
その姿の一番ピッタリな形容は”エルフ”。
まさにファンタジー映画や漫画、それにRPGに登場するエルフそのものだった。
こ、コスプレの人なのか?
それにしても完成度たかい。
そして美人さん。
エルフは小首を傾げて僕を見つめる。
「君、こんなところで何をしている?」
そう言われて、自分に起きた事を思い出そうとしたが、目の前にヘッドライトが迫ってきた事しか、思い出すことができなかった。
「いや、それが僕にもよくわからなくて……」
「ここは、人を襲うマンドラキという植物がよく生えている、危険な森だ。なんとなくで来る場所ではないと思うけどね」
「マンドラキ? さっき僕を襲ったやつですか? なんなんですかあれは!」
動く肉食植物の森に、エルフ?
もしかしてここは本当に異世界なのか?
ということは、僕は異世界転移をしたのか?
受け入れがたい、そして、某ジャンルでありがちな状況に僕は困惑する。
「命拾いしたな、たまたまボクが通らなかったら、今頃、マンドラキに消化されてたよ」
「えっまじで!」
「んっ? ところで君は奇妙な服装をしているな。そうか、もしかしたら異世界から来た人間なのかな?」
異世界?
むしろここの方が異世界では……いや、異世界の人からみたら僕のいた世界の方が異世界か。
少しややっこしい事を考えていると、エルフは頭を掻きながらめんどくさそうに言う。
「おおかた、トラックとやらにはねられたとか、電車とかいう物のホームから落ちて轢かれたとかそんな理由だろ」
「たぶんその通りですけど、なんでわかるんですか?」
「この辺に現れる奇妙な服装の奴らは、みんなそんなカンジだからな。じゃあね」
そう言ってエルフさんはどこかへ行こうとする。
「ちょちょちょちょっとまって!」
「んっ、なに?」
「このまま置き去りですか! それはあんまりです!」
自慢じゃないが、非力な僕が、こんな危険な森に放り出されたら生き延びる気が全然しない。
ここでボクっこエルフさんに見捨てられるわけにはいかないのだ!
「なんで? ボクには関係ないじゃないか」
「お願いです! 助けてください!」
僕は土下座してエルフさんに助けを乞う。
「うんっ? 何だそのポーズは? キミの世界の運動か?」
エルフさんは土下座の事を知らないようだ。しまった!
土下座の意味を知らなければアピールの効果がないじゃないか!。
「僕はこの世界の事を全く知らないただの学生なんです。チートな能力も授かっていません。ここでエルフさんに見捨てられたら飢え死にするか、モンスターに食われるか盗賊に殺されてお終いです!」
僕は必死に窮地を訴える作戦に切り替えた。
なんとか同情を誘えば、もしかしたら助けてもらえるかもしれない。
「どうか助けてください! お願いします!」
必死な僕の態度にエルフさんは少し考える様子をみせた。これは作戦成功かもしれない!
「ふむ……いつも高慢な人間がここまで無様に頼み込むのも興味深いな」
おっ! なんか反応がいいぞ!
「おい人間。お前、学生と言ったな」
「は、はい!」
「ということは、多少は学問の知識があるわけだ」
「ええまあ……成績はあれですけど」
「少し手伝ってもらいたい事がある。人間の学生よ、ついてこい」
エルフさんはそう言って歩き出した。
僕は慌ててその後を追った。
だがその時、僕はエルフさんの意味ありげな笑みに気づいていなかった。
まさか、この先あんなことになるとは……。
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