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2章
Episode.6
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「やばっ…もうこんな時間じゃん明日会議あるからいつもより早く会社行かなきゃなのに!!」
正直ちょっとイライラしてた。
清恵さんにではなく、自分にだ。
そもそもなんでブラック企業に入ってしまったのか。
見る目がなかったからか、過去の行いがよくなかったのか。
「……オムライスも食べれずじまいだしー!」
あたりはすっかり暗くなり街灯が少なめの裏路地を通って近道をしようとしたところ…背中に衝撃が走った。
何かが刺さるような感覚だった。
そして私はその場に座り込んでしまった。
そしてそのまま走り去る音がした。
そうか、あの通り魔にあったんだ…。
痛いなぁ……。
これたぶん結構刺さってるわ…。
未練がありすぎるけどこんなところじゃ助かりもしないし……私、ここで死ぬのか…。
必死に刺された部分から流れ出てくる血を手で押さえて止めようとしたけど私の行動とは裏腹に血は止まることを知らず、ただ抑えている手に生ぬるい感触が残るだけだった。
だんだん手の感覚がなくなってきて傷口を抑えるのも困難になってきた。
そんなとき私を呼ぶ声が後ろから聞こえてきた。
「おねーさん、だいじょぶそ?w」
声からして通りすがりのギャルかなんかかと思った。
でもそれはまったくもって見当違いだった。
顔をふと上げるとそこには見覚えのある顔があった。
「……あなた今日、清恵さんと窓辺で話してた……。」
「あーしはイヴ。おねーさん、あんたもう長くないねぇw」
「しつ、、れいでしょ。」
「なーんだぁ、まだしゃべれるのかぁw ずいぶんしぶといお姉さまだことw」
こんな状況だがあまりにも腹が立ち私は彼女のことをずっと睨みつけていた。
でも彼女はそこに触れることはなかった。
にしても清恵さんと話をしていた時とは口調も様子もしぐさも何もかもが違った。
昼間の彼女の殻を被った悪魔のようだった。
「ってかさぁ、あんたそのままで大丈夫なわけ?w……ってだいじょーぶじゃないかぁw」
「何したいわけ……その、あんたはさ…。」
「あっ!そーだ!忘れてた忘れてたw」
そして彼女は私に合わせて中腰になりこう言った。
「あんたさぁ、生きたい?」
「……そりゃ、生きたいにきまってるでしょ!!こんなとこで死んでたまるかよ!誰にも知られず、友達とも遊べず、ブラック企業からやめられず、結婚できず、、、オムライス食べれず死ねるわけないでしょ!!」
「…」
彼女は黙ったまま私の話を聞き、何も反応しなかったが私はそのまま続けた。
「…生きたいよ。こんなクソみたいな死に方なんて嫌だよ…」
次の瞬間、彼女は立ち上がり無言のまま手をたたくとカチッと何かが止まるような音がした。
そしてしばらくたった後、彼女は口を開いた。
「……今更命乞いかよ。」
「…は?意味わかんな……」
「お前覚えてもいないのかよ!あーしが転入してきたとき、あんたのクラスに転入してきたとき!……お前はあーしのことをなんて言ったよ…『カルト』って言ったよなぁ…。毎日毎日、『豚はインチキ聖書でも読んでろ』とか『集団自決とかマジやめてねw』とか、授業中に大声で指さして『崇拝の時間じゃないんですかぁ?wさっさと出てけよ!』とか、、、人の命を粗末にしたやつが今更命乞いなんて……おふざけが過ぎてるだろ!」
「…あんた、まさか『聖良』なの…?」
「……あーしはもう『イヴ』なんだよ。その名前で呼ぶんじゃねえよ。」
「これも全部、あんたが仕組んだの…?……だとしたらマジ最低なんですけど。」
「まだ人に擦り付ける癖は治ってなかったのかよ?それに、今更遅すぎる善意の行動も。……全部作りものすぎるんだよ。通り魔遭ったおばあちゃん助けていい気になってたの?」
「でもさ、あんた死んだってことはあたしのこと助けて…」
「だから助けるわけねえだろって言ってんだよ。誰が好き好んでいじめてたやつのこと助けなきゃいけないんだよ。」
「…助けてよ。何でもするから。」
「何でもってその状態で何でもできるとでも思ってんの?……でも、この状態でこいつ死なせるのもちょっともしろくないなぁw」
「…」
「あっ!じゃあさ、あんたのそのICカード、残高いくら?」
「……150円。」
「ふふっ、世の中は『time is money』だからねぇw…『1円1分』っていうことであんたにそれだけの時間をあげるわw」
「えっ!」
「ただし条件付きでーすw」
「何よ。」
「あんたさっき何でもするって言ったから今からあげるこの150分間であんたと清江ばあちゃん、あとその他もろもろを刺した通り魔の正体を突き止めてよ。」
「……できなかったら何する気…?」
「あんたが一番いやな死に方で死なせてあげるw まっ、どちらにせよあげるのは150分間だからそれ過ぎれば死ぬんだけどねーw」
「じゃあ何でこんなこと…」
「あんた誰にも知られず死ぬのは嫌って言ってたっしょw だ・か・ら通り魔を捕まえたのがあんただってわかれば…うーん、まあ、意味合いはちょっと違うかもだけど『殉職』って形で名誉ある死には変えられるからいいかなーってww」
「あんた、つくづく性格悪すぎ。」
「お前ほどじゃねーから安心しなってw」
そして私は背中に傷を残しながらもあいつからもらった150分間で通り魔の犯人探しをすることになってしまった。
To be continued…
正直ちょっとイライラしてた。
清恵さんにではなく、自分にだ。
そもそもなんでブラック企業に入ってしまったのか。
見る目がなかったからか、過去の行いがよくなかったのか。
「……オムライスも食べれずじまいだしー!」
あたりはすっかり暗くなり街灯が少なめの裏路地を通って近道をしようとしたところ…背中に衝撃が走った。
何かが刺さるような感覚だった。
そして私はその場に座り込んでしまった。
そしてそのまま走り去る音がした。
そうか、あの通り魔にあったんだ…。
痛いなぁ……。
これたぶん結構刺さってるわ…。
未練がありすぎるけどこんなところじゃ助かりもしないし……私、ここで死ぬのか…。
必死に刺された部分から流れ出てくる血を手で押さえて止めようとしたけど私の行動とは裏腹に血は止まることを知らず、ただ抑えている手に生ぬるい感触が残るだけだった。
だんだん手の感覚がなくなってきて傷口を抑えるのも困難になってきた。
そんなとき私を呼ぶ声が後ろから聞こえてきた。
「おねーさん、だいじょぶそ?w」
声からして通りすがりのギャルかなんかかと思った。
でもそれはまったくもって見当違いだった。
顔をふと上げるとそこには見覚えのある顔があった。
「……あなた今日、清恵さんと窓辺で話してた……。」
「あーしはイヴ。おねーさん、あんたもう長くないねぇw」
「しつ、、れいでしょ。」
「なーんだぁ、まだしゃべれるのかぁw ずいぶんしぶといお姉さまだことw」
こんな状況だがあまりにも腹が立ち私は彼女のことをずっと睨みつけていた。
でも彼女はそこに触れることはなかった。
にしても清恵さんと話をしていた時とは口調も様子もしぐさも何もかもが違った。
昼間の彼女の殻を被った悪魔のようだった。
「ってかさぁ、あんたそのままで大丈夫なわけ?w……ってだいじょーぶじゃないかぁw」
「何したいわけ……その、あんたはさ…。」
「あっ!そーだ!忘れてた忘れてたw」
そして彼女は私に合わせて中腰になりこう言った。
「あんたさぁ、生きたい?」
「……そりゃ、生きたいにきまってるでしょ!!こんなとこで死んでたまるかよ!誰にも知られず、友達とも遊べず、ブラック企業からやめられず、結婚できず、、、オムライス食べれず死ねるわけないでしょ!!」
「…」
彼女は黙ったまま私の話を聞き、何も反応しなかったが私はそのまま続けた。
「…生きたいよ。こんなクソみたいな死に方なんて嫌だよ…」
次の瞬間、彼女は立ち上がり無言のまま手をたたくとカチッと何かが止まるような音がした。
そしてしばらくたった後、彼女は口を開いた。
「……今更命乞いかよ。」
「…は?意味わかんな……」
「お前覚えてもいないのかよ!あーしが転入してきたとき、あんたのクラスに転入してきたとき!……お前はあーしのことをなんて言ったよ…『カルト』って言ったよなぁ…。毎日毎日、『豚はインチキ聖書でも読んでろ』とか『集団自決とかマジやめてねw』とか、授業中に大声で指さして『崇拝の時間じゃないんですかぁ?wさっさと出てけよ!』とか、、、人の命を粗末にしたやつが今更命乞いなんて……おふざけが過ぎてるだろ!」
「…あんた、まさか『聖良』なの…?」
「……あーしはもう『イヴ』なんだよ。その名前で呼ぶんじゃねえよ。」
「これも全部、あんたが仕組んだの…?……だとしたらマジ最低なんですけど。」
「まだ人に擦り付ける癖は治ってなかったのかよ?それに、今更遅すぎる善意の行動も。……全部作りものすぎるんだよ。通り魔遭ったおばあちゃん助けていい気になってたの?」
「でもさ、あんた死んだってことはあたしのこと助けて…」
「だから助けるわけねえだろって言ってんだよ。誰が好き好んでいじめてたやつのこと助けなきゃいけないんだよ。」
「…助けてよ。何でもするから。」
「何でもってその状態で何でもできるとでも思ってんの?……でも、この状態でこいつ死なせるのもちょっともしろくないなぁw」
「…」
「あっ!じゃあさ、あんたのそのICカード、残高いくら?」
「……150円。」
「ふふっ、世の中は『time is money』だからねぇw…『1円1分』っていうことであんたにそれだけの時間をあげるわw」
「えっ!」
「ただし条件付きでーすw」
「何よ。」
「あんたさっき何でもするって言ったから今からあげるこの150分間であんたと清江ばあちゃん、あとその他もろもろを刺した通り魔の正体を突き止めてよ。」
「……できなかったら何する気…?」
「あんたが一番いやな死に方で死なせてあげるw まっ、どちらにせよあげるのは150分間だからそれ過ぎれば死ぬんだけどねーw」
「じゃあ何でこんなこと…」
「あんた誰にも知られず死ぬのは嫌って言ってたっしょw だ・か・ら通り魔を捕まえたのがあんただってわかれば…うーん、まあ、意味合いはちょっと違うかもだけど『殉職』って形で名誉ある死には変えられるからいいかなーってww」
「あんた、つくづく性格悪すぎ。」
「お前ほどじゃねーから安心しなってw」
そして私は背中に傷を残しながらもあいつからもらった150分間で通り魔の犯人探しをすることになってしまった。
To be continued…
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