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1章
Episode.4
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「お父さんとお母さんが逮捕されました。」
心をえぐられたものの心のどこかでは「安心」の言葉が浮かび上がっていた。
やっと解放される。
妹と2人で幸せに暮らせる。
そう思っていたのもつかの間、今度は病院の先生が慌てた様子でやってきて少し落ち着いた後、まじめな声で私にこう伝えた。
「この度はご愁傷さまです。」
先生はいったい誰が亡くなったのかわからなかった私の手をそっと引いてどこかに案内してくれた。
ついた部屋のような場所は質素だった。
唯一そこにあったのは台の上に白い着物を着て顔に白い布を一枚かけている小さな子供のような人だった。
目の前に移る光景で私はようやく何が起こっているのか理解することができた。
そして先生に
「この布めくってもいいですか?」
と聞き、承諾を得たうえで布をめくった。
その顔を見た瞬間、私は腰を抜かした。
美聖だったのだ。
見間違いかもしれない。
でも名前には「美聖」という字があったのだ。
涙があふれて止まらなかった。
ガラス越しに妹を見た時よりも衝撃が大きかった。
「妹の死因は何ですか?」
「睡眠薬の多量接種です。」
「えっ、病気じゃなかったんですか?」
「でもご遺体からバルビツール酸系の睡眠薬が検出されているんです。身に覚えはないですか?」
「いえ、全く。」
私の返事をする声は震えていた。
まず睡眠薬を何かしらのタイミングで飲んでしまっていたこと。
自分よりも妹の方がその睡眠薬を多く摂取していたこと。
極めつけは睡眠薬で妹が亡くなったこと。
そのすべてがわからず、私は現実を受け入れることができなかった。
その後病室に戻り私は尋問とまではいかなかったがいくつか質問された。
「妹さんの死因はご存じですね?」
「はい。」
「誰の意志で妹さんが亡くなったかは?」
「それは、わかりません。私は先ほど先生から睡眠薬の多量接種で亡くなったとだけ聞かされました。」
「…では、すべてお話ししましょう。」
「お願いします。」
「妹さんは妹さん自身で死を選んだ、つまり自殺だったわけです。」
「それはどういうことですか?私が妹を寝かしつけた後、妹がこっそり起きて睡眠薬を飲んだということですか?」
「違います。睡眠薬はあなた方が食べたお菓子の中に入っていたんです。」
「…お菓子ですか?」
「はい。睡眠薬が検出されたのはタブレット菓子のヨーグルト味とラムネの2つです。実行日の一か月前から妹さんが書かれたと思われる日記が家宅捜査で出てきてどのように小細工をしたのか、なんで死のうと思ったのか、一番多く書かれていたのはお姉さんへの謝罪の文でした。日記の最後には必ず「ごめんね、おねーちゃん」と書いてあったと現場の者が言っていました。」
謝らないでよ。
自殺の計画を立てていたのなら初めから謝らないでよ!
パパとママは逮捕されちゃって、美聖は死んで、じいじとばあばももういない。
私、一人ぼっちになっちゃうんだよ?
家族がだれもいなくなっちゃうんだよ?
…なんで死んだの?
一番死にたかったのは姉ちゃんなのに!
美聖を独りにしたくなくて、歯を食いしばって毎日生きていたのに。
私を放っておいて自分は楽になろうとでも思ってたわけ?
それに美聖はまだ小学2年生じゃん!
人生これからなのになんで死んじゃったのよ。
…姉ちゃんも死にたいよ、美聖。
「美聖…あんたはほんとにバカだねぇw あーしがまだ天界にいたとき聞いた話だけどあんたは天界のブラックなところで無休暇労働させられてるみたいじゃないw 姉ちゃんを置いてった罰だねぇ。それにもうあんたなんか妹だなんて思ってない。私より格下のバカな亡者だよww 」
そうやって1人で笑っていると後ろから声がした。
「お前、際にいないと思ったらここにいたのか。」
「おぉ!魔野っちじゃん!つーかよくあーしのいる場所が分かったねぇ。」
「天界で監視されているからな。要注意人物として。」
「…魔野っちはひどいこと言うなぁ。」
「そもそも俺はこんなこと言いに来たわけじゃない。転生手続きの書類を届けに来たんだ。もう冥土の最低限滞在年数は過ぎてるしお前はなんてったって要注意人物だからとっとと転生した方がこっちも楽なんだよ。」
「転生?ふっ、アハハハハッww」
「何笑ってるんだ。」
「何って、私は転生する気はさらさらないよってこの前言ったよね。まだこの世界に飽きてないし復讐だって終わってない。今を生きてるやつらは生きてるだけで幸せなのにつらいってだけで簡単に命を投げ捨てるような馬鹿な奴らなんだよ。そんな面白いやつらをこのまま放っておいて、転生して、また命をもらって、同じ立場になるなんて、死んでるけどごめんだね。」
「復讐ってなんだ?やることによってはお前の今の身分が180度変わるぞ。」
「えーっ!…じゃあ、何やってるか教えてあげる。それはね…」
「命を軽んじている奴らを際で見極めて生きるに値するなら助言する。死ぬに値するなら殺す。でも大体が死に値するんだよ。それもそうで楽しいんだけど一番は命を軽んじている身で殺される立場になると命乞いをする奴らを笑いものにすることかなぁ。」
「お前ってやつは…」
「あれ?見逃してくれるの?」
「無差別に殺ってるわけじゃないからな。殺す1つにも肉体的死だけじゃなくて社会的死もあるからすべての悪人を殺しているというわけでもない。暇つぶしにはちょうどいいんじゃないのか?」
「死神様はわかってるねぇ。」
「俺は殺しているんじゃない。死んだ生者の魂を回収しているだけだ。」
「あっそ。」
「じゃあ、俺は戻るからな。お前も早いうちに際に帰れよ。」
「はーい!お疲れちゃんでーす!」
さ、まだ復讐は始まったばっか。
これからどんどん楽しくなるんだから。
To be continued…
心をえぐられたものの心のどこかでは「安心」の言葉が浮かび上がっていた。
やっと解放される。
妹と2人で幸せに暮らせる。
そう思っていたのもつかの間、今度は病院の先生が慌てた様子でやってきて少し落ち着いた後、まじめな声で私にこう伝えた。
「この度はご愁傷さまです。」
先生はいったい誰が亡くなったのかわからなかった私の手をそっと引いてどこかに案内してくれた。
ついた部屋のような場所は質素だった。
唯一そこにあったのは台の上に白い着物を着て顔に白い布を一枚かけている小さな子供のような人だった。
目の前に移る光景で私はようやく何が起こっているのか理解することができた。
そして先生に
「この布めくってもいいですか?」
と聞き、承諾を得たうえで布をめくった。
その顔を見た瞬間、私は腰を抜かした。
美聖だったのだ。
見間違いかもしれない。
でも名前には「美聖」という字があったのだ。
涙があふれて止まらなかった。
ガラス越しに妹を見た時よりも衝撃が大きかった。
「妹の死因は何ですか?」
「睡眠薬の多量接種です。」
「えっ、病気じゃなかったんですか?」
「でもご遺体からバルビツール酸系の睡眠薬が検出されているんです。身に覚えはないですか?」
「いえ、全く。」
私の返事をする声は震えていた。
まず睡眠薬を何かしらのタイミングで飲んでしまっていたこと。
自分よりも妹の方がその睡眠薬を多く摂取していたこと。
極めつけは睡眠薬で妹が亡くなったこと。
そのすべてがわからず、私は現実を受け入れることができなかった。
その後病室に戻り私は尋問とまではいかなかったがいくつか質問された。
「妹さんの死因はご存じですね?」
「はい。」
「誰の意志で妹さんが亡くなったかは?」
「それは、わかりません。私は先ほど先生から睡眠薬の多量接種で亡くなったとだけ聞かされました。」
「…では、すべてお話ししましょう。」
「お願いします。」
「妹さんは妹さん自身で死を選んだ、つまり自殺だったわけです。」
「それはどういうことですか?私が妹を寝かしつけた後、妹がこっそり起きて睡眠薬を飲んだということですか?」
「違います。睡眠薬はあなた方が食べたお菓子の中に入っていたんです。」
「…お菓子ですか?」
「はい。睡眠薬が検出されたのはタブレット菓子のヨーグルト味とラムネの2つです。実行日の一か月前から妹さんが書かれたと思われる日記が家宅捜査で出てきてどのように小細工をしたのか、なんで死のうと思ったのか、一番多く書かれていたのはお姉さんへの謝罪の文でした。日記の最後には必ず「ごめんね、おねーちゃん」と書いてあったと現場の者が言っていました。」
謝らないでよ。
自殺の計画を立てていたのなら初めから謝らないでよ!
パパとママは逮捕されちゃって、美聖は死んで、じいじとばあばももういない。
私、一人ぼっちになっちゃうんだよ?
家族がだれもいなくなっちゃうんだよ?
…なんで死んだの?
一番死にたかったのは姉ちゃんなのに!
美聖を独りにしたくなくて、歯を食いしばって毎日生きていたのに。
私を放っておいて自分は楽になろうとでも思ってたわけ?
それに美聖はまだ小学2年生じゃん!
人生これからなのになんで死んじゃったのよ。
…姉ちゃんも死にたいよ、美聖。
「美聖…あんたはほんとにバカだねぇw あーしがまだ天界にいたとき聞いた話だけどあんたは天界のブラックなところで無休暇労働させられてるみたいじゃないw 姉ちゃんを置いてった罰だねぇ。それにもうあんたなんか妹だなんて思ってない。私より格下のバカな亡者だよww 」
そうやって1人で笑っていると後ろから声がした。
「お前、際にいないと思ったらここにいたのか。」
「おぉ!魔野っちじゃん!つーかよくあーしのいる場所が分かったねぇ。」
「天界で監視されているからな。要注意人物として。」
「…魔野っちはひどいこと言うなぁ。」
「そもそも俺はこんなこと言いに来たわけじゃない。転生手続きの書類を届けに来たんだ。もう冥土の最低限滞在年数は過ぎてるしお前はなんてったって要注意人物だからとっとと転生した方がこっちも楽なんだよ。」
「転生?ふっ、アハハハハッww」
「何笑ってるんだ。」
「何って、私は転生する気はさらさらないよってこの前言ったよね。まだこの世界に飽きてないし復讐だって終わってない。今を生きてるやつらは生きてるだけで幸せなのにつらいってだけで簡単に命を投げ捨てるような馬鹿な奴らなんだよ。そんな面白いやつらをこのまま放っておいて、転生して、また命をもらって、同じ立場になるなんて、死んでるけどごめんだね。」
「復讐ってなんだ?やることによってはお前の今の身分が180度変わるぞ。」
「えーっ!…じゃあ、何やってるか教えてあげる。それはね…」
「命を軽んじている奴らを際で見極めて生きるに値するなら助言する。死ぬに値するなら殺す。でも大体が死に値するんだよ。それもそうで楽しいんだけど一番は命を軽んじている身で殺される立場になると命乞いをする奴らを笑いものにすることかなぁ。」
「お前ってやつは…」
「あれ?見逃してくれるの?」
「無差別に殺ってるわけじゃないからな。殺す1つにも肉体的死だけじゃなくて社会的死もあるからすべての悪人を殺しているというわけでもない。暇つぶしにはちょうどいいんじゃないのか?」
「死神様はわかってるねぇ。」
「俺は殺しているんじゃない。死んだ生者の魂を回収しているだけだ。」
「あっそ。」
「じゃあ、俺は戻るからな。お前も早いうちに際に帰れよ。」
「はーい!お疲れちゃんでーす!」
さ、まだ復讐は始まったばっか。
これからどんどん楽しくなるんだから。
To be continued…
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