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暗殺
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こずえのマンションを出るとリョウガは梶山に電話を掛けた…50メートルほど電話で誘導されると梶山の車を見つけ乗り込む。
「聞いてましたか…」
「あぁ、何かに反応していたようだけど…」
「そうです…詳しい話はあたしの家でしませんか?」
梶山は、リョウガの誘いに乗ってマンションまで車を走らせる…
2人は人形に囲まれたリビングで話し出した。
リョウガ
「警部に言われて作った地図で発信元の周辺を2人で調べてたんです…そしたらこずえが急に動かなくなった場所があったんです…」
梶山
「あぁ、聞いてたが福富町のどの発信元で固まったかまでは分からない…」
「はい…でも、警察で怪しい場所を2つピックアップしてたのでどちらかだと思います」
「その2つは?」
「ブルービルと日本語学校」
「なるほど日本語学校か、不法滞在の温床だな…ブルービルは半グレの溜まり場だ」
「あと、何となくですけど体調が悪いって言ってたけど何かこずえがソワソワしてたように感じたんです…」
「…ドラッグマンの居場所に当たりがついてソワソワし出した…その後、仮病でリョウガ君を帰らせる…」
「ドラッグマンを捕まえたいなら協力者は多い方が良いはず…だけどこずえは、あたしが邪魔だった…」
「リョウガ君に…いや、他人に知られたくないって事か…」
「秘かに何かを調べたい…」
「気になるな…今からこずえのマンションを張り込んで見るよ、何か動きが有るかも知れない」
梶山はリョウガの家を後にすると車でこずえのマンションに向かった…
マンションの入り口が見えて目立たない場所に車を止め張り込みを始める。
こずえは部屋でPCを使い日本語学校を調べていた…
学校の設立からオーナーや関連団体、学校への出資者など細かく検索している…こずえは、日本語学校の背景から何かを見付けようとしているようだ。
こずえの部屋の遮光カーテンから漏れる僅かな灯りが消えた、梶山は30分ほど様子を見ていたが、出て来ないのでしばらくは動かないと思い、一旦仮眠を取りに警察本部に戻った。
本部で梶山を見付けると佐藤巡査部長が嬉しそうにやって来た…
佐藤
「お疲れ様です。何か進展はありましたか?」
「多少はね、そっちは嬉しそうだが何か収穫が?」
「えっ? 特に無いですけど…嬉しそうなのは今まで1人で矢野口警部と接していたので仲間と言うか、勿論大先輩なんですがそれが嬉しくて」
「そうか、でも矢野口さんは言われてる程の変人では無い見たいじゃないか」
「う~ん…そう何ですが、あの人わざと自分の事を名前で呼ばないで巡査部長巡査部長ってお前は俺より格下だぞって感じで言われるので嫌い何です」
「…縦社会の警察で上司の悪口は止めといた方が良いと思うよ」
そう言うと佐藤の後ろを指差した、反射的に佐藤が振り返ると後ろから矢野口がこちらに向かって来るところだ。
矢野口
「梶山さんお疲れ様です」
「もしかしたら、こずえが動くかも知れません」
「そうですか…張り込むつもりですか」
「はい…」
「分かりました、こっちは目ぼしい進展はありませんが、ドラッグマンは普通に仕事を続けているようです」
「そうですか」
「私はこれで帰りますが、巡査部長…余り人の悪口は言わないように」
どうやら矢野口は地獄耳のようだ…
言い訳をする佐藤を無視して矢野口は帰宅する。
梶山
「私は少し仮眠するから」
佐藤
「仮眠…また張り込みですか?」
「そうだ…」
3人が話している所を背を向けて聞き耳を立てていた谷口…日本語学校の校長と繋がる組織のイヌだ…谷口は本部を出て自分の車に乗り込み電話を掛ける…
日本語学校 校長室
: 悪い話だ、新しく配属された矢野口って警視が来月特捜を立ち上げる…
: それで…
: その特捜で俺達の事を嗅ぎ回るつもりみたいだな…
: ……
: ドラッグマンにやっきになってる捜査本部とは違う…矢野口は女の敵討ちのつもりで俺達を前から追ってるデカだ…
: 例の、新宿のバイヤーが一般人を轢き殺した事件か…
: かなり頭がキレるらしい…ヤツが城山を使ったらヤバい事になるな、ボスに伝えといてくれ…
谷口がわざわざ転属してまで調べてる時点で今回の捜査が組織にとって不味い事態だと言う事だが、その谷口がボスに連絡を頼むとはいよいよ本気でヤバいと理解する校長だが、谷口の要求を拒否する…
: まだいい、俺が直接動く…ボスにはその後だ…
: おい、もう店じまいの準備を始める頃合いだぞ…
: 何度も言わせるな…俺が動く…
校長は声で谷口を威圧して電話を切ると警察の捜査を自分で終わらそうと考えを巡らせる。
23:06
日本語学校 校長室
ドラッグマンは校長の指示で、欲に目が眩んだ馬鹿な男を殺して捨てた… 警察は薬物中毒のイザコザなど本気で調べない…
ドラッグマンを指名手配するが見付からず、未解決のまま終る事件…
校長はそう考えていた… ところが突如現れたハッカーの協力によって、組織の一角を崩されそうになる。
追い込まれた校長は自ら動いて解決を試みようとする。
校長
「お前には悪い事をしたな、こんな事になるとは…」
カルロ(ドラッグマン)
「どうするんだ…」
校長
「不測の事態だが、俺のミスだ…」
カルロ
「俺のって、現役の頃の言葉遣いだな…まさか?」
校長が麻薬の売買をカルロに任せる様になってから数年が経つ…その間に校長は言葉遣いから普通の学校長らしくふるまっていて闇の仕事からは手を引いていた。
校長
「あぁ、俺が動く」
腐ってもタイ、校長がその気になれば人間の一人や二人簡単に殺せるだろう。
カルロ
「フッ、無理するなオレがやるよ」
校長
「いや、俺の責任だからな…大丈夫だ、俺はまだまだ現役だからな」
カルロ
「…念のためだが、誰を殺るか教えといて貰えるかな」
校長
「俺の計算を狂わせた、城山リョウガだ」
カルロ
「珍しいな、感情的になるなんて…」
校長
「そうだな…だが警察が俺達にたどり着いたら組織もヤバい事になる、厄介な警視も現れたし悪いが城山には消えて貰う」
カルロ
「城山に同情するよ、まさか自分の才能が裏目に出るとはな…」
校長は、カルロを帰すとリョウガ殺害の準備を始めた。
0:51 校長室
ブリーフケースに揮発性の高い睡眠液をしまう校長はニット帽を被り伊達メガネとマスク、服は紺色のジャージを着ていて一見では誰も校長だと気付かない姿だ。
日本語学校が入ってる雑居ビルの裏口では谷口が車で待っている、変装した校長は無言で車に乗り込む。
谷口
「頼まれた物だ」
谷口はバックパックを渡して車を走らせた…
校長はリョウガのマンション近くで車を降りる、谷口は軽く手で挨拶して車を走らせた…
校長はリョウガの住んでるマンションのオートロックドアを紐のような物を差し込んで開けると防犯カメラに顔が映らないように非常階段に向かう。
階段の扉を谷口に用意させた合カギで開けるとリョウガの住む最上階ではなく屋上に行く…
屋上から校長は、リョウガの部屋の位置の確認を始めた…
今から1時間前…
こずえのマンション近くに戻って張り込みを再開する梶山、車のエンジンを切ってこずえの部屋に目を向けると遮光カーテンから僅かに灯りが漏れた…
梶山の読み通り情報を与えた事でこずえが動くようだ、その為に何か用意してるのだろう…冷静な梶山も興奮を隠せないでいる…
30分ほどすると窓の灯りが消える〝こずえが動く〟と梶山の勘がざわめく…マンションの出入口に神経を集中させる梶山、こずえは何らかの変装をしてると考えられるので見逃さない為だ…
しばらくしてこずえが出てきた黒のパンツに白のジャンパーを着てバックパックを背負っている…特に変装はしてないようだ、梶山はタクシーに乗り込んだこずえを尾行する。
こずえを乗せたタクシーが止まったのは関内の駅前だ。
タクシーから出たこずえは黒のニット帽を被る、丁寧に茶色い髪を隠すとリバーシブルのジャンパーを脱いで白から黒にして着た、この行動に梶山は何かこずえが犯罪を犯すと確信する…
もし何らかの捜査をされても、警察はニット帽を被った黒尽くめの人物を見たかと聞き込みをするから、タクシーの運転手から証言を引き出すことはまず出来ない…要するに警察に捜査されても困らないようにだんどってる
夜に溶け込む姿で駅には向かわず、深夜の繁華街に進むこずえ…梶山は細心の注意を払って尾行を続ける。
こずえが進む方向で目的地を予想するとその先には日本語学校がある警察が怪しいと考えた2つの内の1つだ。
案の定こずえは日本語学校のある雑居ビルに入った、梶山はビルに入るかこのまま車で待つか迷ったが車で待つことにした。
ビルに入ったこずえは非常階段から5階に向かう…
5階の日本語学校の扉は当然鍵が掛かっていた、こずえは赤外線カメラで辺りを観察するとピッキングで扉を開けた…中に入り静かに扉の鍵を掛ける。
繁華街の灯りを便りに教室を見渡すと、机が20個ほど黒板の前に並んでいる…
PCが5台置かれたスペースがパーテーションで区切られていて応接室らしき扉と校長室と書かれた扉がある…こずえはまた赤外線カメラを取り出し防犯装置のチェックをするが防犯らしい物はなかった。
こずえは校長室の扉に手を掛け開けようとしたが動かない…
開かないではなく動かないと言うのが感想だ、その扉の異常な違和感にこずえは驚いた、普通カギが掛かっていても多少は動いてガチャガチャする…なのにこの扉は微動だにしない…カギ云々の前に扉が特殊だ、そこまで厳重にするのは秘密がある証だが今は中に入る手立てが無い…
校長室を諦めたこずえは応接室の扉に手を掛ける、カギが掛かって要るが校長室とは違い普通のシリンダー錠だ器用にピッキングで開けると中に入る。
こずえは室内を調べる…特に気になる物は無かったようだが部屋のPCを調べだすとリョウガの事件の閲覧履歴があった、暫く何かを考えるとこずえは潜入の痕跡を残さないように日本語学校を出る。
交差点まで歩くとタクシーに乗り込む、梶山はこずえが乗ったタクシーを尾行する…
タクシーはリョウガのマンション近くで止まり、タクシーを降りたこずえはリョウガの部屋辺りを物陰から眺めている…
梶山は、ドラッグマンが居そうな日本語学校を探ってからこずえがリョウガを張り込むのは何故か考えた…
ドラッグマンとリョウガに繋がりはない、リョウガを見張る事はドラッグマンと何か関係があるのか?それともこずえは何らかの理由でもともとリョウガを見張っていたのか?
梶山にはこずえがリョウガを見張る理由が分からない…なのに梶山の心の中には得たいの知れない不安が広がる…
嫌な予感しかしない梶山は矢野口に電話を掛けた。
: 良かった、出てくれましたね…
: 私は刑事ですからね…
刑事ですからね、と言う不可解な返しはスルーして梶山はこずえを張り込んでからの出来事を矢野口に説明して助言を求めた。
: ドラッグマンを追って日本語学校に潜入…そしてドラッグマンの情報を日本語学校で見付けた…
: 私は嫌な予感しかしないのですが、このままこずえを見張るだけで良いものか…
こずえはドラッグマンを探している…なのに、リョウガのマンションを見張るのはドラッグマンが現れると言う何かを日本語学校で見付けたのではと矢野口は考えた…
しかし、ドラッグマンがリョウガに会う目的は何か? リョウガに何故興味があるのか?
ドラッグマン捜索が急激に進展してるのでそれを阻止する為にリョウガに接触しようとしてるとは考えられるが、そうなると警察内部にスパイが居ることになる…なんにしても憶測に過ぎない、しかし間違いなく今すべきはリョウガの保護だと矢野口は考えた。
: 直ぐに、リョウガ君を保護して下さい!
: 了解!
梶山は返事と同時に車を出てマンションに走った。
矢野口は佐藤に連絡して現場に向かうように指示をした。
梶山は走りながらリョウガに電話をする…
: リョウガ君!良かった起きてたか、今マンションの下に居るロックを解除してくれ!
: はい、でもどうしたんですかこんな時間に?
: 君が狙われてる可能性が高い…
: あたしが!?
: 今、エレベーターに着いた…
: あれえ? 何か…めまいが…
: どうした…? おい!リョウガ君どうした!
エレベーターがリョウガの住む12階に着くとドアをこじ開けるようにエレベーターから飛び出しリョウガの部屋のドアを開けようとしたがカギが掛かっている…
インターホンを鳴らしても、ドア越しに怒鳴っても何の反応もない。
「くそっ! 何が起きてる…」
いら立つ梶山のスマホが鳴った着信は矢野口だ。
: 警視!襲われてる可能性が高いが部屋に入れない!
: 落ち着いて下さい! 今、佐藤が合カギを持って向かってます…
: 分かりました…
電話を切った梶山の心を不安が締め付ける…佐藤を待つ1秒がとてつもなく長く感じる。
リョウガが危険に巻き込まれる可能性は最初からあった筈だ彼に何かあれば責任は自分にあると自責の念にかられながら佐藤を待った。
「梶山さん!」
佐藤が合カギを持って走って来た梶山はカギを奪い取るとドアを開け中に飛び込んだ!
「聞いてましたか…」
「あぁ、何かに反応していたようだけど…」
「そうです…詳しい話はあたしの家でしませんか?」
梶山は、リョウガの誘いに乗ってマンションまで車を走らせる…
2人は人形に囲まれたリビングで話し出した。
リョウガ
「警部に言われて作った地図で発信元の周辺を2人で調べてたんです…そしたらこずえが急に動かなくなった場所があったんです…」
梶山
「あぁ、聞いてたが福富町のどの発信元で固まったかまでは分からない…」
「はい…でも、警察で怪しい場所を2つピックアップしてたのでどちらかだと思います」
「その2つは?」
「ブルービルと日本語学校」
「なるほど日本語学校か、不法滞在の温床だな…ブルービルは半グレの溜まり場だ」
「あと、何となくですけど体調が悪いって言ってたけど何かこずえがソワソワしてたように感じたんです…」
「…ドラッグマンの居場所に当たりがついてソワソワし出した…その後、仮病でリョウガ君を帰らせる…」
「ドラッグマンを捕まえたいなら協力者は多い方が良いはず…だけどこずえは、あたしが邪魔だった…」
「リョウガ君に…いや、他人に知られたくないって事か…」
「秘かに何かを調べたい…」
「気になるな…今からこずえのマンションを張り込んで見るよ、何か動きが有るかも知れない」
梶山はリョウガの家を後にすると車でこずえのマンションに向かった…
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こずえは部屋でPCを使い日本語学校を調べていた…
学校の設立からオーナーや関連団体、学校への出資者など細かく検索している…こずえは、日本語学校の背景から何かを見付けようとしているようだ。
こずえの部屋の遮光カーテンから漏れる僅かな灯りが消えた、梶山は30分ほど様子を見ていたが、出て来ないのでしばらくは動かないと思い、一旦仮眠を取りに警察本部に戻った。
本部で梶山を見付けると佐藤巡査部長が嬉しそうにやって来た…
佐藤
「お疲れ様です。何か進展はありましたか?」
「多少はね、そっちは嬉しそうだが何か収穫が?」
「えっ? 特に無いですけど…嬉しそうなのは今まで1人で矢野口警部と接していたので仲間と言うか、勿論大先輩なんですがそれが嬉しくて」
「そうか、でも矢野口さんは言われてる程の変人では無い見たいじゃないか」
「う~ん…そう何ですが、あの人わざと自分の事を名前で呼ばないで巡査部長巡査部長ってお前は俺より格下だぞって感じで言われるので嫌い何です」
「…縦社会の警察で上司の悪口は止めといた方が良いと思うよ」
そう言うと佐藤の後ろを指差した、反射的に佐藤が振り返ると後ろから矢野口がこちらに向かって来るところだ。
矢野口
「梶山さんお疲れ様です」
「もしかしたら、こずえが動くかも知れません」
「そうですか…張り込むつもりですか」
「はい…」
「分かりました、こっちは目ぼしい進展はありませんが、ドラッグマンは普通に仕事を続けているようです」
「そうですか」
「私はこれで帰りますが、巡査部長…余り人の悪口は言わないように」
どうやら矢野口は地獄耳のようだ…
言い訳をする佐藤を無視して矢野口は帰宅する。
梶山
「私は少し仮眠するから」
佐藤
「仮眠…また張り込みですか?」
「そうだ…」
3人が話している所を背を向けて聞き耳を立てていた谷口…日本語学校の校長と繋がる組織のイヌだ…谷口は本部を出て自分の車に乗り込み電話を掛ける…
日本語学校 校長室
: 悪い話だ、新しく配属された矢野口って警視が来月特捜を立ち上げる…
: それで…
: その特捜で俺達の事を嗅ぎ回るつもりみたいだな…
: ……
: ドラッグマンにやっきになってる捜査本部とは違う…矢野口は女の敵討ちのつもりで俺達を前から追ってるデカだ…
: 例の、新宿のバイヤーが一般人を轢き殺した事件か…
: かなり頭がキレるらしい…ヤツが城山を使ったらヤバい事になるな、ボスに伝えといてくれ…
谷口がわざわざ転属してまで調べてる時点で今回の捜査が組織にとって不味い事態だと言う事だが、その谷口がボスに連絡を頼むとはいよいよ本気でヤバいと理解する校長だが、谷口の要求を拒否する…
: まだいい、俺が直接動く…ボスにはその後だ…
: おい、もう店じまいの準備を始める頃合いだぞ…
: 何度も言わせるな…俺が動く…
校長は声で谷口を威圧して電話を切ると警察の捜査を自分で終わらそうと考えを巡らせる。
23:06
日本語学校 校長室
ドラッグマンは校長の指示で、欲に目が眩んだ馬鹿な男を殺して捨てた… 警察は薬物中毒のイザコザなど本気で調べない…
ドラッグマンを指名手配するが見付からず、未解決のまま終る事件…
校長はそう考えていた… ところが突如現れたハッカーの協力によって、組織の一角を崩されそうになる。
追い込まれた校長は自ら動いて解決を試みようとする。
校長
「お前には悪い事をしたな、こんな事になるとは…」
カルロ(ドラッグマン)
「どうするんだ…」
校長
「不測の事態だが、俺のミスだ…」
カルロ
「俺のって、現役の頃の言葉遣いだな…まさか?」
校長が麻薬の売買をカルロに任せる様になってから数年が経つ…その間に校長は言葉遣いから普通の学校長らしくふるまっていて闇の仕事からは手を引いていた。
校長
「あぁ、俺が動く」
腐ってもタイ、校長がその気になれば人間の一人や二人簡単に殺せるだろう。
カルロ
「フッ、無理するなオレがやるよ」
校長
「いや、俺の責任だからな…大丈夫だ、俺はまだまだ現役だからな」
カルロ
「…念のためだが、誰を殺るか教えといて貰えるかな」
校長
「俺の計算を狂わせた、城山リョウガだ」
カルロ
「珍しいな、感情的になるなんて…」
校長
「そうだな…だが警察が俺達にたどり着いたら組織もヤバい事になる、厄介な警視も現れたし悪いが城山には消えて貰う」
カルロ
「城山に同情するよ、まさか自分の才能が裏目に出るとはな…」
校長は、カルロを帰すとリョウガ殺害の準備を始めた。
0:51 校長室
ブリーフケースに揮発性の高い睡眠液をしまう校長はニット帽を被り伊達メガネとマスク、服は紺色のジャージを着ていて一見では誰も校長だと気付かない姿だ。
日本語学校が入ってる雑居ビルの裏口では谷口が車で待っている、変装した校長は無言で車に乗り込む。
谷口
「頼まれた物だ」
谷口はバックパックを渡して車を走らせた…
校長はリョウガのマンション近くで車を降りる、谷口は軽く手で挨拶して車を走らせた…
校長はリョウガの住んでるマンションのオートロックドアを紐のような物を差し込んで開けると防犯カメラに顔が映らないように非常階段に向かう。
階段の扉を谷口に用意させた合カギで開けるとリョウガの住む最上階ではなく屋上に行く…
屋上から校長は、リョウガの部屋の位置の確認を始めた…
今から1時間前…
こずえのマンション近くに戻って張り込みを再開する梶山、車のエンジンを切ってこずえの部屋に目を向けると遮光カーテンから僅かに灯りが漏れた…
梶山の読み通り情報を与えた事でこずえが動くようだ、その為に何か用意してるのだろう…冷静な梶山も興奮を隠せないでいる…
30分ほどすると窓の灯りが消える〝こずえが動く〟と梶山の勘がざわめく…マンションの出入口に神経を集中させる梶山、こずえは何らかの変装をしてると考えられるので見逃さない為だ…
しばらくしてこずえが出てきた黒のパンツに白のジャンパーを着てバックパックを背負っている…特に変装はしてないようだ、梶山はタクシーに乗り込んだこずえを尾行する。
こずえを乗せたタクシーが止まったのは関内の駅前だ。
タクシーから出たこずえは黒のニット帽を被る、丁寧に茶色い髪を隠すとリバーシブルのジャンパーを脱いで白から黒にして着た、この行動に梶山は何かこずえが犯罪を犯すと確信する…
もし何らかの捜査をされても、警察はニット帽を被った黒尽くめの人物を見たかと聞き込みをするから、タクシーの運転手から証言を引き出すことはまず出来ない…要するに警察に捜査されても困らないようにだんどってる
夜に溶け込む姿で駅には向かわず、深夜の繁華街に進むこずえ…梶山は細心の注意を払って尾行を続ける。
こずえが進む方向で目的地を予想するとその先には日本語学校がある警察が怪しいと考えた2つの内の1つだ。
案の定こずえは日本語学校のある雑居ビルに入った、梶山はビルに入るかこのまま車で待つか迷ったが車で待つことにした。
ビルに入ったこずえは非常階段から5階に向かう…
5階の日本語学校の扉は当然鍵が掛かっていた、こずえは赤外線カメラで辺りを観察するとピッキングで扉を開けた…中に入り静かに扉の鍵を掛ける。
繁華街の灯りを便りに教室を見渡すと、机が20個ほど黒板の前に並んでいる…
PCが5台置かれたスペースがパーテーションで区切られていて応接室らしき扉と校長室と書かれた扉がある…こずえはまた赤外線カメラを取り出し防犯装置のチェックをするが防犯らしい物はなかった。
こずえは校長室の扉に手を掛け開けようとしたが動かない…
開かないではなく動かないと言うのが感想だ、その扉の異常な違和感にこずえは驚いた、普通カギが掛かっていても多少は動いてガチャガチャする…なのにこの扉は微動だにしない…カギ云々の前に扉が特殊だ、そこまで厳重にするのは秘密がある証だが今は中に入る手立てが無い…
校長室を諦めたこずえは応接室の扉に手を掛ける、カギが掛かって要るが校長室とは違い普通のシリンダー錠だ器用にピッキングで開けると中に入る。
こずえは室内を調べる…特に気になる物は無かったようだが部屋のPCを調べだすとリョウガの事件の閲覧履歴があった、暫く何かを考えるとこずえは潜入の痕跡を残さないように日本語学校を出る。
交差点まで歩くとタクシーに乗り込む、梶山はこずえが乗ったタクシーを尾行する…
タクシーはリョウガのマンション近くで止まり、タクシーを降りたこずえはリョウガの部屋辺りを物陰から眺めている…
梶山は、ドラッグマンが居そうな日本語学校を探ってからこずえがリョウガを張り込むのは何故か考えた…
ドラッグマンとリョウガに繋がりはない、リョウガを見張る事はドラッグマンと何か関係があるのか?それともこずえは何らかの理由でもともとリョウガを見張っていたのか?
梶山にはこずえがリョウガを見張る理由が分からない…なのに梶山の心の中には得たいの知れない不安が広がる…
嫌な予感しかしない梶山は矢野口に電話を掛けた。
: 良かった、出てくれましたね…
: 私は刑事ですからね…
刑事ですからね、と言う不可解な返しはスルーして梶山はこずえを張り込んでからの出来事を矢野口に説明して助言を求めた。
: ドラッグマンを追って日本語学校に潜入…そしてドラッグマンの情報を日本語学校で見付けた…
: 私は嫌な予感しかしないのですが、このままこずえを見張るだけで良いものか…
こずえはドラッグマンを探している…なのに、リョウガのマンションを見張るのはドラッグマンが現れると言う何かを日本語学校で見付けたのではと矢野口は考えた…
しかし、ドラッグマンがリョウガに会う目的は何か? リョウガに何故興味があるのか?
ドラッグマン捜索が急激に進展してるのでそれを阻止する為にリョウガに接触しようとしてるとは考えられるが、そうなると警察内部にスパイが居ることになる…なんにしても憶測に過ぎない、しかし間違いなく今すべきはリョウガの保護だと矢野口は考えた。
: 直ぐに、リョウガ君を保護して下さい!
: 了解!
梶山は返事と同時に車を出てマンションに走った。
矢野口は佐藤に連絡して現場に向かうように指示をした。
梶山は走りながらリョウガに電話をする…
: リョウガ君!良かった起きてたか、今マンションの下に居るロックを解除してくれ!
: はい、でもどうしたんですかこんな時間に?
: 君が狙われてる可能性が高い…
: あたしが!?
: 今、エレベーターに着いた…
: あれえ? 何か…めまいが…
: どうした…? おい!リョウガ君どうした!
エレベーターがリョウガの住む12階に着くとドアをこじ開けるようにエレベーターから飛び出しリョウガの部屋のドアを開けようとしたがカギが掛かっている…
インターホンを鳴らしても、ドア越しに怒鳴っても何の反応もない。
「くそっ! 何が起きてる…」
いら立つ梶山のスマホが鳴った着信は矢野口だ。
: 警視!襲われてる可能性が高いが部屋に入れない!
: 落ち着いて下さい! 今、佐藤が合カギを持って向かってます…
: 分かりました…
電話を切った梶山の心を不安が締め付ける…佐藤を待つ1秒がとてつもなく長く感じる。
リョウガが危険に巻き込まれる可能性は最初からあった筈だ彼に何かあれば責任は自分にあると自責の念にかられながら佐藤を待った。
「梶山さん!」
佐藤が合カギを持って走って来た梶山はカギを奪い取るとドアを開け中に飛び込んだ!
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葉羽
ミステリー
山奥の豪邸で発見された、異様に捻じ曲がった天才科学者の死体。密室となった実験室、消えた異形の培養物、そして囁かれる怪物の噂。現場に臨場した天才高校生探偵・神藤葉羽は、科学とオカルトが交錯する迷宮に挑む。幼馴染の彩由美と共に謎を追う葉羽を嘲笑うかのように、不可解な現象が次々と発生する。深淵に潜む真実を解き明かした時、彼らを待ち受けるのは、想像を絶する恐怖だった。科学の暴走が生み出した禁断の存在が、人間存在の根源を問いかける、戦慄の知的興奮体験。
後悔と快感の中で
なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私
快感に溺れてしまってる私
なつきの体験談かも知れないです
もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう
もっと後悔して
もっと溺れてしまうかも
※感想を聞かせてもらえたらうれしいです
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