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異端児
しおりを挟む2人の会話を盗聴している警部も事の展開に驚いていたがリョウガの声のテンションに、もしかするとこずえに共感して全て話してしまうかもと言う不安に駆られ慌ててリョウガに電話を掛けた。
スマホの画面を見て警部だと分かると然り気無くこずえから離れて電話に出るリョウガ。
: もしもし…
: いいか、何も話さないで私の話だけ聞いてくれ…返事は〝はい〟だけだ良いね…
: はい…
: よし、この電話は警察からあきら君殺害の捜査協力の依頼で明日警察に行くと言う事だけをこずえには話すんだ… 返事は…
: あっ、はい…
: 間違っても、今までの事を話してはいけない…
: はい …
: それじゃぁ、後は早めに切り上げて帰ってくれ…
: はい…
電話を切って呆然としてるリョウガにこずえが声を掛ける…
「どうしたの…誰から?」
「あっ、ビックリしちゃって…だってこんな話してたら急に警察から電話だから…」
「警察から…しっかりして、何て言われたの?」
「それが…あきらの…事件の協力をしてくれって」
「えっ、何でリョウガに?」
「あたしだって分かんない…」
「…警察はリョウガのハッキング事件であなたのハッカーとしての能力を知ってる…その力を利用したいのかも…チャンスよ! 神様が私達に犯人を捕まえろって言ってるのよ」
リョウガが明日の午後1時に警察署に行くことを話すと、こずえはじゃあ酒を控えて今日は解散しようと言って来た。
「分かった、そうするわ」
「何か分かったら連絡して」
「うん」
明日に備えると言うテイで、こずえのマンションを後にしたリョウガが暫く歩いていると見知らぬ車にパッシングされる、車内に居るのは梶山だった、安心したリョウガが車に乗り込む。
車に乗ったリョウガが、低いテンションで話し出した。
「あたし達の話し聞いてましたよね?」
「あぁ…リョウガ君が動揺するのも無理はないと思うよ…」
「最初は、ふざけた女だと思ってたけど…だんだん分からなくなって来て…」
「私もだよ、何故か分からないがドラッグマンを捕まえたいのは本気のようだ…」
「そうです、だからあたし…もしかしたらこずえは何も悪くないかもって」
「確かにあんな事を言われたらそう感じるだろう…だが、こずえは何人もに偽りの自分で接して信用される様な女だ… 仮にこずえがあきら君殺害には関係無いとしても間違いなく言えるのは信用してはいけない女と言う事だ」
「でもこずえはあたしを…あきらを好きになった女同士って言ってくれた」
人たらしのこずえにリョウガを抱き込ませる訳には行かない警部は感情に流されず現実のこずえを見るように促す。
「いいか、冷静に考えるんだ…こずえは会社の社長の愛人でその奥さんを母親だとあきら君に紹介する様な女なんだぞ」
「そう…ですけど…」
「そうだ、もし…本当に良い奴なら何でリョウガ君はこずえを疑った…それを思い出すんだ」
「……」
「その時の自分を信じるんだ…」
「はい…」
警部の早い対応が、理解者の少ないLGBTの心を揺さぶるこずえの巧妙な手口を何とかしのいだが、リョウガの心はまだ揺れているようだ。
「…実は前に、こずえからハッカーを紹介すると言われた事がある…」
「えっ、それって?」
「…名前は出してないがリョウガ君の事だと思う」
「それじゃあ、こずえは最初からあきらの仇を…」
「おいおい、こずえに対する考え方は疑う事から入るんだ…懐柔されるぞ」
「……はい」
「こずえは最初あきら何か関係ないただの友達って言ってたが、暫く経って捜査が進んでないと言うと優秀なハッカーを紹介すると言って来た、最初は捜査状況が気になるのかと思ったが…どうやら捜査を進めたい見たいだな」
「進める…早く犯人を捕まえたい」
「そうなると最初に言っていた、〝あきら何か関係ない〟と矛盾してないか?」
「はい…」
「…あきら君に興味は無いが、事件には興味がある…そして事件前からドラッグマンの名前は知ってた」
「こずえはドラッグマンを捕まえたい…その為にあきらを近付けた…」
「何かしらドラッグマンと因縁があるんじゃないかな…こずえの謎が少しは見えてきたな…」
こずえの真意は2人には分からないが、梶山はリョウガに絶対に信じてはいけない女がこずえだと強く諭し納得させると自宅へ送り届けた。
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