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第四章 母の前での演奏会
崩壊への序章
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真由美は暗がりの中で目をさました。瞳がゆっくりとひらく。あかりが目に入ってくる。少しばかり景色が歪んでいる。(頭をうったのだろうか?)軽く左右に真由美は頭を振ってみる。意識を取り戻す。体の具合に目がいく。薄暗がりで見えにくい。だが、体を起こそうとして、手足を拘束されていることにきづく。椅子に座らせている。(動けないということね。それにしても、だれが?)真由美は少し状況を理解したことに安堵して、そして、次なる疑問に目がゆく。
視界の中にうつる景色から巧の部屋だと理解する。
(何がおこったのか?)を思い出せない。
「なんとか思い出そう」と必死に眉をひそめた。
出棺後の家に巧と真由美は帰ってきたはずだった。二人だけでは、葬式の供物などの抱えきれないほどのものをもってきたために、真奈美が二人についてきたはずだ。さすがに疲れていていつものように食事を作る気力が沸かなかった真由美は寿司を出前した。最愛の男であり、息子の拓也が棺を出棺したその日に「お祝い事で食べるような寿司をとるのもどうか?」と思ったが、食べなければ死んでしまう。そう思って、寿司をとった。白木位牌と拓也の遺影を自分の寝室にもっていく。そこは、昔は夫婦の寝室であり、いつのまにか拓也との愛の巣になっていた寝室である。少年の太陽な笑みを浮かべた写真をみて少しばかり真由美は気持ちがなごむ。
(今頃、パパと向こうで話してるのかな?)真由美は微笑みながら語りかける。
(あなたは明るい子だから、向こうにいっても大人気ね。)
真由美には天国でたくさんの人に愛されている拓也のことが目に浮かぶ。
そこには、拓也の父親もいた。
(パパもあなたのことを大事にしてくれると思うわ。)
幼いころから利発だった拓也はとてもかわいがられた。それは、生まれたての赤ん坊のころの拓也を大事にしていた父親の様子を思い出しても想像しやすい。彼は愛されていた。
(パパとは何を話すのかな?)
真由美は不思議に思う。早くに死んだ父と何を拓也が話すのかに興味があるのである。真由美とは共有できない男同士の話もあるだろう。それが、真由美にはいささか不満である。もっとも、そういうことを考えていて真由美はあることにきづく。
(まさか、同じ女を愛したとはいえないわよね。)真由美は弱弱しく笑う。それは自嘲気味の笑みだった。
(パパにはママとのこと内緒にしてね。)遺影の拓也がいたずらっ子のように笑う。
(そういえば、パパもショパンが好きだったわね。)元々、クラシックの音楽が好きな共通点をもっていて、惹かれ合った真由美と元旦那である。いろんなクラシックの曲を二人でよくきいたが中でも好きなのがショパンだった。その影響を拓也は色濃く受け継いでいた。
不意に拓也がショパンの「別れの曲」を弾いたのを思い出す。それは、父親が好きだった曲であり、自分も愛した曲だ。そして、彼は、父親のように自分を残してはしなないといっていつもその曲を弾いてきた。しかしながら、運命はそうならない。まるで、べートヴェンの「運命」のようにである。
(別れの曲なんて二人して大事にして……)真由美は拓也の弾いている姿を思い出す。それは、流れるようなタッチでありはっかりと真由美の瞼の裏側によみがえる。
(ママより、早く二人ともいっちゃうなんて……)
(ひどい、二人ね……)
(ママもあなたのことを大事に思ってるからだいじょぶね。)
……
(ママのことを優しくむこうから見守ってね。)真由美はそう心で願い、そっと手を合わせた。
リビングに服を着替えて降りると、巧と真奈美が話していた。広いリビングにはピアノがおいてある。その上に、生前の拓也がお気に入りだったショパンの楽譜がある。楽譜はもはやなんの音も発さない。持ち主をうしなったスコアがただそこに存在している。真由美はそんな楽譜を拾ってみるて、「別れの曲」を開いてみる。とても難しいショパンの曲である。だが、ショパンの曲を彼は情熱的に弾きこなしていた。消して、全音符や二分音符などの長い音が存在しないショパンの「別れの曲」は、拓也そのもののいきいそいだ人生を象徴しているようだと思った。指先で、メロディーラインをなぞっていると、真由美は拓也の鍵盤への指使いを思い出した。
リビングの食卓の上は、綺麗に片づけられていて、出前でとった寿司がならべられている。巧と真奈美がお腹がへったとばかりに、先に食べている。そんな家族である二人をみて、安心感がほっとわいた真由美は食べて二人と話し始める。
巧がトイレに席を外した。
「姉さんは……そのこれから、どうするの?」
真奈美が「困った。やれやれ。」という表情を浮かべながら、テーブルに肘をついて姉の顔を眺めている。
「どうもこうもないわ。ただ、単純に四十九日までいって……」
真由美は淡々と自分に言い聞かせるように自分に言う。カレンダーにはそのために、赤いボールペンで四十九日に印がつけてある。
真奈美「うん。」
真奈美は神妙に聞く。
真由美「一回忌、三回忌、七回忌、十三回忌までいくわ。」
真由美は事実をつげる。あまり、感情がよめない。
真奈美「あーやだやだ。姉さん。そこまで、誰ともしない気?」
真奈美はうんざりしているとでも言うようにかぶりをふる。
真由美「どういうこと?」
真由美は冷静に疑問の声をあげる。
真奈美「あれよ。言わなくてもわかるでしょ?」
真由美が少しばかり口の端をにやりとあげて笑う。
真由美「?」
真由美は不可思議そうな表情になる。
真奈美「エッチよ。」
真奈美はずばりそう告げる。
真由美「!」
真由美は想定外の突然の言葉にたじろぐ。
真由美「それは……だいたい私はだいぶ前に主人をなくして……」
真由美は左右に視線をさまよわせながら、弱弱しくつぶやく。
真奈美「見ちゃったのよ。私……」
真奈美がそんな姉を見て何か秘密の告白でもするようにささやく。
真由美「何を?」
真由美は弱弱しい小動物の瞳を浮かべて妹をみる。
真奈美「姉さんが、拓也とラブホに入っていくところ。」
真奈美はにやにや笑いながらいう。
真由美「そんなこと……」
真奈美「写真だってあるのよ。ほら。」
スマホを取り出すとそこにはばっちりと腕を搦めている拓也と真由美がうつっている。真奈美は桃色に上気した肌をさらしながら嬉しそうに拓也の顔をみつめている。
真由美「それは……」
真奈美「してないとは言わせないわよ。それにほら、私やってる最中の声もきいちゃったし……」
そういうとスマホの録音の再生機能のボタンを押した。そこからは男女のくぐもった愛情の交換が再生された。
真由美「そうね。あなたの言う通り、私と拓也は男女の関係だったわ。」
真由美はここにいたって進退きわまったという感じで真実を口にする。
真奈美「だったら、姉さん。」
真奈美が真実をつげた姉をみて、もう一言口にしようとする。
真由美「それとこれとは別問題。それにね。誰でもいいってわけではないの。それはわかるでしょ。」
真由美が珍しく強くでる。姉しては芯の強い魂のこもった響きに、真奈美は少しばかりひかなければいけないことを悟る。
真奈美「そうね。」
真奈美は一時的に共感しているふりをした。
真由美「女の人がそういうことをする相手は愛情をもってる相手だわ……」
真由美は真由美なりの信条を口にした。それは、事実であり、真由美が拓也を愛していたという真実を告げている。おそらくは、今も愛しているのだろう。
真奈美「確かにそうね。私も、それはわかるわ。でも」
真奈美は意味深な笑みをうかべる。それはベッドの上での真奈美にとって最愛の男である巧のことを想像したからである。と同時に、疑問を口にする。それは、真奈美から真由美に対する第二の毒針だった。
真奈美「巧じゃだめなの?」
真奈美は努めて冷静にだが、悪魔が天使に堕天を誘うような気持ちで話しかける。
真由美「え?」
真由美は一瞬何をいわれたのかとっさの判断ができなかった。無防備なまるで交差点の影から子供が飛び出してきて自分が会話という車を運転していて、ひいてしまったような気分になる。
真奈美「だから、巧じゃだめなの?」
真奈美は二度目の毒針を打ち込む。まるで、さそりが相手にとどめをさそうとしているかのようだ。
真由美「それは……」
真由美は戸惑いの言葉を口にする。
真奈美「たしかに巧は拓也の弟だけど、一卵性双生児だからそっくりよ。彼……姉さんが誘えば愛してくれるんじゃない?」
真奈美は微笑さえ浮かべながら歌うようにいう。
真由美「そういうことじゃないのよ。」
真由美は否定をした。
真奈美「じゃあ、どういうことなの?」
真奈美は首をかしげながら疑問を口にする。
真由美「それは……」
真由美は妹のその言葉から逃れられないと悟ると必死に違う次元の言葉を探す。明確な違いをここで真由美は表現しなければならないとおもった。しかしながら、それをどういえばいいのわからない。
真奈美「それは?」
真奈美は姉と同じ言葉を口にするが、ここからは逃がさないとばかりに冷たく追い込む。
真由美「少しばかり、違うのよ。彼と拓也では……」
真由美はどういいっていいのかわからないが、これで理解してくれといわんばかりにため息を吐きながら言う。
真奈美「一緒だったら、愛するの?」
真奈美は今までで一番冷たい表情でかつ、冷たい声音で姉の表情をみてつぶやく。
真由美「そっ……そんなことは……」
突然、自分の醜さを叱責されたように感じた真由美はどう受け止めていいのかわからないという気持ちに気づく。
真奈美「姉さんの愛は偽善ね。」
真奈美は震えるほど優し気に微笑んだ。
そのあとのことをあまり真由美は覚えてない。頭をふって、
真由美はおぼろげながらに思い出そうとした。
たしか、巧が戻ってくる前に視界がゆれたのだ。そして、「どうなったのだろう?」と、もう一度視界を凝らす。どうやら、巧の部屋らしい。物理の教科書などが部屋に飾ってあることからわかる。しかし、これから何がおこるのだろう。一抹の不安が胸をよぎる。
視界の中にうつる景色から巧の部屋だと理解する。
(何がおこったのか?)を思い出せない。
「なんとか思い出そう」と必死に眉をひそめた。
出棺後の家に巧と真由美は帰ってきたはずだった。二人だけでは、葬式の供物などの抱えきれないほどのものをもってきたために、真奈美が二人についてきたはずだ。さすがに疲れていていつものように食事を作る気力が沸かなかった真由美は寿司を出前した。最愛の男であり、息子の拓也が棺を出棺したその日に「お祝い事で食べるような寿司をとるのもどうか?」と思ったが、食べなければ死んでしまう。そう思って、寿司をとった。白木位牌と拓也の遺影を自分の寝室にもっていく。そこは、昔は夫婦の寝室であり、いつのまにか拓也との愛の巣になっていた寝室である。少年の太陽な笑みを浮かべた写真をみて少しばかり真由美は気持ちがなごむ。
(今頃、パパと向こうで話してるのかな?)真由美は微笑みながら語りかける。
(あなたは明るい子だから、向こうにいっても大人気ね。)
真由美には天国でたくさんの人に愛されている拓也のことが目に浮かぶ。
そこには、拓也の父親もいた。
(パパもあなたのことを大事にしてくれると思うわ。)
幼いころから利発だった拓也はとてもかわいがられた。それは、生まれたての赤ん坊のころの拓也を大事にしていた父親の様子を思い出しても想像しやすい。彼は愛されていた。
(パパとは何を話すのかな?)
真由美は不思議に思う。早くに死んだ父と何を拓也が話すのかに興味があるのである。真由美とは共有できない男同士の話もあるだろう。それが、真由美にはいささか不満である。もっとも、そういうことを考えていて真由美はあることにきづく。
(まさか、同じ女を愛したとはいえないわよね。)真由美は弱弱しく笑う。それは自嘲気味の笑みだった。
(パパにはママとのこと内緒にしてね。)遺影の拓也がいたずらっ子のように笑う。
(そういえば、パパもショパンが好きだったわね。)元々、クラシックの音楽が好きな共通点をもっていて、惹かれ合った真由美と元旦那である。いろんなクラシックの曲を二人でよくきいたが中でも好きなのがショパンだった。その影響を拓也は色濃く受け継いでいた。
不意に拓也がショパンの「別れの曲」を弾いたのを思い出す。それは、父親が好きだった曲であり、自分も愛した曲だ。そして、彼は、父親のように自分を残してはしなないといっていつもその曲を弾いてきた。しかしながら、運命はそうならない。まるで、べートヴェンの「運命」のようにである。
(別れの曲なんて二人して大事にして……)真由美は拓也の弾いている姿を思い出す。それは、流れるようなタッチでありはっかりと真由美の瞼の裏側によみがえる。
(ママより、早く二人ともいっちゃうなんて……)
(ひどい、二人ね……)
(ママもあなたのことを大事に思ってるからだいじょぶね。)
……
(ママのことを優しくむこうから見守ってね。)真由美はそう心で願い、そっと手を合わせた。
リビングに服を着替えて降りると、巧と真奈美が話していた。広いリビングにはピアノがおいてある。その上に、生前の拓也がお気に入りだったショパンの楽譜がある。楽譜はもはやなんの音も発さない。持ち主をうしなったスコアがただそこに存在している。真由美はそんな楽譜を拾ってみるて、「別れの曲」を開いてみる。とても難しいショパンの曲である。だが、ショパンの曲を彼は情熱的に弾きこなしていた。消して、全音符や二分音符などの長い音が存在しないショパンの「別れの曲」は、拓也そのもののいきいそいだ人生を象徴しているようだと思った。指先で、メロディーラインをなぞっていると、真由美は拓也の鍵盤への指使いを思い出した。
リビングの食卓の上は、綺麗に片づけられていて、出前でとった寿司がならべられている。巧と真奈美がお腹がへったとばかりに、先に食べている。そんな家族である二人をみて、安心感がほっとわいた真由美は食べて二人と話し始める。
巧がトイレに席を外した。
「姉さんは……そのこれから、どうするの?」
真奈美が「困った。やれやれ。」という表情を浮かべながら、テーブルに肘をついて姉の顔を眺めている。
「どうもこうもないわ。ただ、単純に四十九日までいって……」
真由美は淡々と自分に言い聞かせるように自分に言う。カレンダーにはそのために、赤いボールペンで四十九日に印がつけてある。
真奈美「うん。」
真奈美は神妙に聞く。
真由美「一回忌、三回忌、七回忌、十三回忌までいくわ。」
真由美は事実をつげる。あまり、感情がよめない。
真奈美「あーやだやだ。姉さん。そこまで、誰ともしない気?」
真奈美はうんざりしているとでも言うようにかぶりをふる。
真由美「どういうこと?」
真由美は冷静に疑問の声をあげる。
真奈美「あれよ。言わなくてもわかるでしょ?」
真由美が少しばかり口の端をにやりとあげて笑う。
真由美「?」
真由美は不可思議そうな表情になる。
真奈美「エッチよ。」
真奈美はずばりそう告げる。
真由美「!」
真由美は想定外の突然の言葉にたじろぐ。
真由美「それは……だいたい私はだいぶ前に主人をなくして……」
真由美は左右に視線をさまよわせながら、弱弱しくつぶやく。
真奈美「見ちゃったのよ。私……」
真奈美がそんな姉を見て何か秘密の告白でもするようにささやく。
真由美「何を?」
真由美は弱弱しい小動物の瞳を浮かべて妹をみる。
真奈美「姉さんが、拓也とラブホに入っていくところ。」
真奈美はにやにや笑いながらいう。
真由美「そんなこと……」
真奈美「写真だってあるのよ。ほら。」
スマホを取り出すとそこにはばっちりと腕を搦めている拓也と真由美がうつっている。真奈美は桃色に上気した肌をさらしながら嬉しそうに拓也の顔をみつめている。
真由美「それは……」
真奈美「してないとは言わせないわよ。それにほら、私やってる最中の声もきいちゃったし……」
そういうとスマホの録音の再生機能のボタンを押した。そこからは男女のくぐもった愛情の交換が再生された。
真由美「そうね。あなたの言う通り、私と拓也は男女の関係だったわ。」
真由美はここにいたって進退きわまったという感じで真実を口にする。
真奈美「だったら、姉さん。」
真奈美が真実をつげた姉をみて、もう一言口にしようとする。
真由美「それとこれとは別問題。それにね。誰でもいいってわけではないの。それはわかるでしょ。」
真由美が珍しく強くでる。姉しては芯の強い魂のこもった響きに、真奈美は少しばかりひかなければいけないことを悟る。
真奈美「そうね。」
真奈美は一時的に共感しているふりをした。
真由美「女の人がそういうことをする相手は愛情をもってる相手だわ……」
真由美は真由美なりの信条を口にした。それは、事実であり、真由美が拓也を愛していたという真実を告げている。おそらくは、今も愛しているのだろう。
真奈美「確かにそうね。私も、それはわかるわ。でも」
真奈美は意味深な笑みをうかべる。それはベッドの上での真奈美にとって最愛の男である巧のことを想像したからである。と同時に、疑問を口にする。それは、真奈美から真由美に対する第二の毒針だった。
真奈美「巧じゃだめなの?」
真奈美は努めて冷静にだが、悪魔が天使に堕天を誘うような気持ちで話しかける。
真由美「え?」
真由美は一瞬何をいわれたのかとっさの判断ができなかった。無防備なまるで交差点の影から子供が飛び出してきて自分が会話という車を運転していて、ひいてしまったような気分になる。
真奈美「だから、巧じゃだめなの?」
真奈美は二度目の毒針を打ち込む。まるで、さそりが相手にとどめをさそうとしているかのようだ。
真由美「それは……」
真由美は戸惑いの言葉を口にする。
真奈美「たしかに巧は拓也の弟だけど、一卵性双生児だからそっくりよ。彼……姉さんが誘えば愛してくれるんじゃない?」
真奈美は微笑さえ浮かべながら歌うようにいう。
真由美「そういうことじゃないのよ。」
真由美は否定をした。
真奈美「じゃあ、どういうことなの?」
真奈美は首をかしげながら疑問を口にする。
真由美「それは……」
真由美は妹のその言葉から逃れられないと悟ると必死に違う次元の言葉を探す。明確な違いをここで真由美は表現しなければならないとおもった。しかしながら、それをどういえばいいのわからない。
真奈美「それは?」
真奈美は姉と同じ言葉を口にするが、ここからは逃がさないとばかりに冷たく追い込む。
真由美「少しばかり、違うのよ。彼と拓也では……」
真由美はどういいっていいのかわからないが、これで理解してくれといわんばかりにため息を吐きながら言う。
真奈美「一緒だったら、愛するの?」
真奈美は今までで一番冷たい表情でかつ、冷たい声音で姉の表情をみてつぶやく。
真由美「そっ……そんなことは……」
突然、自分の醜さを叱責されたように感じた真由美はどう受け止めていいのかわからないという気持ちに気づく。
真奈美「姉さんの愛は偽善ね。」
真奈美は震えるほど優し気に微笑んだ。
そのあとのことをあまり真由美は覚えてない。頭をふって、
真由美はおぼろげながらに思い出そうとした。
たしか、巧が戻ってくる前に視界がゆれたのだ。そして、「どうなったのだろう?」と、もう一度視界を凝らす。どうやら、巧の部屋らしい。物理の教科書などが部屋に飾ってあることからわかる。しかし、これから何がおこるのだろう。一抹の不安が胸をよぎる。
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