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第一章、双子の兄と実母と……
第一章、双子の兄と実母と……
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第一章、双子の兄と実母と……
かちゃかちゃ
斜陽の光が差し込むダイニングテーブルの上に小さなひまわりがいけてある。
それは母親である真由美の習慣だった。
何とはなしに、掌でいじる弟の巧と、母親の料理を手伝う拓也。
拓也にしろ。巧にしろ。同じ顔をした美少年だった。
それは、母親である真由美の血を色濃く受け継いだことを主張している。
一般的に男の子は母親に似るというが、こうして見ていると仲のいい姉妹のようだった。
均整の取れた上腕二頭筋、ほっそりとした指先、すらりとのびた肢。
スタイルの良さは両方とも母親譲りである。
ほこりひとつない清潔なキッチン。
雑然としてなくあるべきところに道具がおさまっている様子は
母親の性格を表しているようだ。
「ちょっと、そこの皿をとってくれる。拓也」
そういうと母親の真由美が少女のように笑う。
明るい太陽の様な笑みを浮かべるその母は、
生活感の匂いというよりは洗い立てのシャツの様な匂いがした。
普通これぐらいの年になると生活感の匂いが擦り切れたように女性を押しつぶして
女であることをわすれさせるのだが、彼女はどう保っているのか、
息子たちにも女であることを自覚させるような姿をしていた。
その理由は、化粧をしているためだ。
素顔でも十分美しいのに、化粧をすると真由美の美しさは
また一層際立ったものになる。
しかし、誰のために?父親はもう早くに死んでいる。
エプロンを押し上げる双乳、首元の下には白い丘が豊かに実っている。
ピンク色に血色よくある母の唇は母というよりは同年代の少女のものを思わせる。
口紅を塗っているのか、それとも、すっぴんなのかはわからないが湿っている。
舌の先で少しちらりと濡らすと、母の唇がきらきら光ってセクシーだった。
女性として相応の年齢を感じさせる妖齢な色気と少女の様な瑞々しさが彼女の魅力だった。
それは、同一の人物にきれいに備わるにはあまりにもかけ離れた魅力だ。
一つは年齢をくわえなければいけない芳醇なワインの様な味わいのあるもの。
もう一つは、もぎたての果実が放つ甘くきわどい健康な良質な匂いだった。
そのくせ、うなじからほつれた髪が背中に無造作に放り出されている。
美しい背姿の中を滝に葉が沈むように母の臀部に髪が落ち込む。
もう三十路も後半にさしかかるというのに、同年代の子たちにも母親じゃなくて
姉だと言っても通じるほどこの母親の見た目は若い。
若いだけじゃなくて、体は成熟していた。
巧は母親の後姿の中に奮い立つような牝の匂いをかぎ取っていた。
もっとも、そんなことを考えていることはおくびにも出さない。
豊かに実った臀部を左右にふりながら真由美は料理にいそしんでいる。
母の美しい上腕を支える大腿部はすらっと長く足が伸びており、
真由美の脚線美がいやがうえでも目につく。
つま先立ちで、棚の上部にある皿を手に取る。
そうすると、足首がキュッとあがり、臀部が母の肉でよじれる。
それは服の上からでもわかる母の下腹部の筋肉と脂肪の変化だった。
もっとも、そういう風に見つめているのは巧だけだとこのとき巧は思っていた。
「どうしたの?巧?」と真由美はいう。
柔和な笑みで巧の存在をすべて受け入れているというような優しさがみてとれた。
そして、細く白く長い指で、ナイフとフォークを拓也に渡す。
「今夜の夕食はステーキよ」と真由美はいう。
「おいしそうだね」
と、拓也が言う。
「そうだね」
と、おどおどと伏し目がちに巧が言う。
「それじゃ、いただいちゃいましょうか?」と真由美は
天使の様な声で鈴のようにコロコロと言う。拓也も巧もステーキは好きだった。
肉も滴るステーキを鉄板にのせて、ナイフをいれる。
拓也は上手に左からきりわけ、肉をほおばっている。
母親の真由美に冗談など振っている。巧は細切れにした肉を黙って食べている。
静かに、獰猛な怒りをおさえた獣がそれをおさえるように静かにだが的確に手を動かす。
夕食が終わると母はいつも通りピアノを弾き始めた。
ショパンが母のお気に入りである。ピアノの詩人であるショパンを愛する母、
真由美はどこかロマンチックなことを愛する情熱的な母であった。
ピアノで自分の感情を爆発させるのは母の趣味である。
普段はおしとやかを地で行くような母がこの時だけは豹変する。それが拓也も巧もすきだった。
指が鍵盤の上を飛ぶ。情熱的にいろんな曲を弾く母。
それはいつもピアノリサイタルのようだった。
唯一、真由美が開放的になれる場なのかもしれない。
不意に、真由美の横に座ると拓也が連弾を始める。
サスティーンペダルが優しく踏み込まれたり、
離されたりしながら、二人の連弾は続く。
それは会話をしているようだった。
巧ももちろん、ピアノは弾ける。小さいころからの母の教育のたまものだったが、
巧はそこに入っていけない言いようのない何かを感じ取っていた。
二人の連弾が終わる。
「巧?何かひいてくれない?」朗らかに笑う母。
無邪気な母親の中には善意以外の何物もつまっていないように笑う。
「そうだよ。巧。母さんのためになにか弾いてくれないか?」
兄の拓也がしずかにニコニコしながら笑う。
巧は少し肩頬をにやりとあげて笑うと、ピアノの前にすわって一気に弾き始める。
リストの「魔王」である。激しい指使いは鍵盤の魔術師という異名をリストがとっていただけあって
難しい曲なのに巧はどうだと言わんばかりにひく。
それは、怒っているようでもあり、己の満たされない何かをうめているようであり、
その何かをうめるのは技術以外の何物でもないと言わんばかりに、
腕がちぎれるのではないかと思うほどの猛烈な弾き方である。
「すごいわね。拓也も巧も二人とも上手になって……」真由美は目を細める。
二人の少年はもうすぐ大人といえる階段を登り切るところなのに、
真由美にとってはまだ生まれたてのよちよち歩きをしていたころのように思える。
二人をみている真由美に柔和な笑みがうかぶ。
「巧?ママと連弾しない?」思いついたように手をたたいた真由美はそう誘ってくる。巧はその母親に「いいよ……」と小さく否定をして答えると、テーブルに戻ってしまう。
「巧。お風呂に入りなさい」そう真由美が言う。
「わかりました。お風呂に入ります」
そういうと巧は風呂のドアをあける。けして小さくない湯船につかって母が使った湯船の匂いを嗅ぐ。
それは母の恥部がつかった湯であり、どんな匂いも逃すまいと巧はくんくんと匂いをかいでいた。
(ああ……母さんの……いい匂いだ……)巧はうっとりする。
母のいい匂いがした。それが、束の間巧の薄暗い気持ちを明るくする。
少年の中に母親の後姿が思い浮かぶ。食器をかたずけるときに左右にぷりぷりと触れていた豊かな臀部。
ピアノのサスティーンペダルを微妙なタッチで踏む足首。
エプロンを押し上げる紡錘形のバスト。どれもこれもが巧を誘惑する。
そうすると、一物が不覚にも反応し始める。
(まただ……)少年は熱くねっする肉棒を操縦かんのように握りしめる。
(母さんの体を思い出すといつもこうだ……)巧は自分の体とよこしまな願望にいつも悩んでいた。
「母親を思い浮かべてするなんて異常じゃないか?」という思いで、
「いつも辞めなければいけない」と思うが、真由美の微笑を思い浮かべるだけで少年の道具はいきりたっていた。
同年代の彼女を見つけようとしたこともあった。また、母親だけに縛られるのはおかしいから
他の美人な女性を思い浮かべようとしたこともあった。だが、いずれも真由美ほど少年には美しく映らなかった。
それは、母親だからなのか真由美だからなのかわからない。ただ、一つわかっていたのは、他の人ではあまり反応しない自分が母親の匂いに触れるだけで狂ったけだもののように反応してしまい。
下半身を熱くしてしまうということだ。それを母親に知られることはとても巧にとって恐ろしいことだった。
母親に軽蔑の目で見られたくないという思いが少年を支配していた。
それでも、巧は母親のことを思ってする自慰を辞められない。
特に風呂に入ってする自慰は格別だった。処理もすぐにできるし、なにより母親の匂いを独占できるのだ。
何の気兼ねもなく。
(ああ……母さん……母さん……)巧は風呂場で母親の匂いを吸い込みながら一心に手で肉棒を扱き始める。
(すごい。気持ちいいよ。母さん……もっとして、もっとして)
巧の頭の中で描かれる真由美はいつも笑顔であり天使のように優しく自分のわがままをきいてくれた。
気持ちよかった。堕落していく味は格別のものだった。
それが母親とならひとしおだった。巧は巧なりに母親を愛しているのは間違いなかった。
それははばかられる愛し方ではあったが、とにもかくにも少年は母を愛していた。
巧は風呂から上がると、タオルで頭をふきながら二階の自室に戻ろうとした。
そうすると部屋の奥のほうで何やら囁き声がする。
いぶかしく思った巧は奥の部屋へと足を這わす。それが始まりだと知らずに……
そこは母親の寝室だった。
「ああん……拓也……はあ、はあ、もっともっと……」
と実母の何か獣のような喘ぎ声が家の廊下中にこだまする。
「母さん、もう少し声をさげて、ね……」と橘拓也は息をとぎれとぎれに囁いた。
そういうとほっそりとした、しかし、筋肉質なしなやか腕を差し出して、拓也は母親を抱えこむ。
拓也の指さきが母親の髪の毛をすくう。30代も後半だというのに、それを思わせないシルクの様な肌がむき出しになっている。肉付きの良い腹部はへそのあたりで筋がはいっており、
陰部へと常人の男なら垂直に目が下がってしまう。そして、その女の源泉にクチュリと指を
拓也は這わせていた。黒い飾りの下のあけび口の上部には愛の突起が鎮座し、
あけびの実がその下でナメクジのようにじくじくと湿っている。
「ああ……だって……あなたの……この……若々しい……牡茎が待てないのだもの…………」
母はそういうと、童女のようにかんむりをイヤイヤとふる。
拓也の細いながらもたくましい胸元に真由美は息を吹きかける。
生暖かい微熱と湿度を含んだ吐息が拓也の首筋をかすめる。
母の刺激から拓也の欲棒がびくりと体の中を走る。
「真由美、だめだよ。いつも言っているじゃないか。巧のいるときは、もう少し慎重にしようって」
そういう風に、少し困った赤ん坊の様な母親をあやしながら拓也はつぶやく。
母親が子供にかえり、息子が男にかえる。何かあべこべだ。
「だいじょうぶ」と真由美は少しほほを膨らます。
普通こう言うことを、30代のおばさんがやると浮くのだが、
まだ20代後半といっても通用する真由美はどこかかわいらしく微笑む。
ヒマワリが咲いたような明るさである。
「巧が気づいちゃうよ」そう拓也はうそぶく。
真由美は少し困った顔を浮かべるが内心では笑みを浮かべる。
「ああ、知ってるでしょ。私には、拓也。あなただけよ。大事なものは?」
真由美は拓也の手をとると、その大きく実る乳丘に重ねる。
「また、また冗談を言ってるの?母さん。双子の弟の巧が可愛そうだよ」拓也は笑いながら言う。
だが、本気で言ってないことはまるわかりだ。声が本気ではない。
どこか冗談でちゃかすように言っている。
「だって、あの子の前ではこんなことできないんだもの?」そういうと真由美は鼻白んだ。
鼻孔がいやらしく膨らんではしぼむ。それは興奮と憤怒を表してた。
「そうだね?ママは……巧が嫌いなの?」
少年はどこか悪魔のように囁く。それはイエスといえというかのような言葉を裏に隠していた。
甘いマスクが歪むとそれは、甘いがゆえにやたらに醜悪であり、また鬼気迫るものがあった。
「嫌いじゃないけど?」
真由美は左右に視線を這わせる。迷っていた。言うべきか言わざるべきか迷っていた。
それは、「女としての幸せを選ぶか」、それとも、「母親としているべきか?」だった。
もちろん、こんな裸体をさらして拓也の前で母親でいつづけることは、
もはや真由美にはできないことになっているのだが。
「その割には邪険に扱うね」
少年は快活に笑いながら言う。母親である真由美の長くのびた髪の端をいじる。
湿り気をおびはじめた真由美の髪は母性の匂いを感じさせたが、
今真由美は母であることを裏切ろうとしていた。
「気持ち悪いのよ」
真由美は一思いに告げる。ため息と一緒に何かを吐き出すように、
暗い瞳の真由美の瞳孔は時が止まった古い懐中時計をおもわせた。
ただ、動かず。じっと時の流れの中で呆然としている。
そんな母親の顔をみることは少年はあまりない。
「へー」
拓也のその声はぞっとするほど冷たいものだった。
普段の快活な少年である拓也の面影からはまったく想像もできない意外な一面だった。
誰にだって複雑な顔はある。そして、この時の少年の顔は牡が牝を支配するときにみせる料理人の冷静さだ
ともいえる。少年はこの霜降り肉の様な脂ののった大腿部をさらす母親の心に
火をつけようとしていた。
「それに……そうね。正直言うわね」
髪を悩まし気にかきあげる真由美がいった。
「母親としては失格だけど……女としては嫌いね」
それは、後半はすぼまるような大胆な告白だった。
「そんなことよりもねえ……」
媚態を媚びた牝の声が部屋にこだまする。
ここにその声を呆然と聞いている男がいた。巧だった。
(母さんは僕を嫌っている…………)それは扉の隙間から覗いていた巧にはショックだった。
かちゃかちゃ
斜陽の光が差し込むダイニングテーブルの上に小さなひまわりがいけてある。
それは母親である真由美の習慣だった。
何とはなしに、掌でいじる弟の巧と、母親の料理を手伝う拓也。
拓也にしろ。巧にしろ。同じ顔をした美少年だった。
それは、母親である真由美の血を色濃く受け継いだことを主張している。
一般的に男の子は母親に似るというが、こうして見ていると仲のいい姉妹のようだった。
均整の取れた上腕二頭筋、ほっそりとした指先、すらりとのびた肢。
スタイルの良さは両方とも母親譲りである。
ほこりひとつない清潔なキッチン。
雑然としてなくあるべきところに道具がおさまっている様子は
母親の性格を表しているようだ。
「ちょっと、そこの皿をとってくれる。拓也」
そういうと母親の真由美が少女のように笑う。
明るい太陽の様な笑みを浮かべるその母は、
生活感の匂いというよりは洗い立てのシャツの様な匂いがした。
普通これぐらいの年になると生活感の匂いが擦り切れたように女性を押しつぶして
女であることをわすれさせるのだが、彼女はどう保っているのか、
息子たちにも女であることを自覚させるような姿をしていた。
その理由は、化粧をしているためだ。
素顔でも十分美しいのに、化粧をすると真由美の美しさは
また一層際立ったものになる。
しかし、誰のために?父親はもう早くに死んでいる。
エプロンを押し上げる双乳、首元の下には白い丘が豊かに実っている。
ピンク色に血色よくある母の唇は母というよりは同年代の少女のものを思わせる。
口紅を塗っているのか、それとも、すっぴんなのかはわからないが湿っている。
舌の先で少しちらりと濡らすと、母の唇がきらきら光ってセクシーだった。
女性として相応の年齢を感じさせる妖齢な色気と少女の様な瑞々しさが彼女の魅力だった。
それは、同一の人物にきれいに備わるにはあまりにもかけ離れた魅力だ。
一つは年齢をくわえなければいけない芳醇なワインの様な味わいのあるもの。
もう一つは、もぎたての果実が放つ甘くきわどい健康な良質な匂いだった。
そのくせ、うなじからほつれた髪が背中に無造作に放り出されている。
美しい背姿の中を滝に葉が沈むように母の臀部に髪が落ち込む。
もう三十路も後半にさしかかるというのに、同年代の子たちにも母親じゃなくて
姉だと言っても通じるほどこの母親の見た目は若い。
若いだけじゃなくて、体は成熟していた。
巧は母親の後姿の中に奮い立つような牝の匂いをかぎ取っていた。
もっとも、そんなことを考えていることはおくびにも出さない。
豊かに実った臀部を左右にふりながら真由美は料理にいそしんでいる。
母の美しい上腕を支える大腿部はすらっと長く足が伸びており、
真由美の脚線美がいやがうえでも目につく。
つま先立ちで、棚の上部にある皿を手に取る。
そうすると、足首がキュッとあがり、臀部が母の肉でよじれる。
それは服の上からでもわかる母の下腹部の筋肉と脂肪の変化だった。
もっとも、そういう風に見つめているのは巧だけだとこのとき巧は思っていた。
「どうしたの?巧?」と真由美はいう。
柔和な笑みで巧の存在をすべて受け入れているというような優しさがみてとれた。
そして、細く白く長い指で、ナイフとフォークを拓也に渡す。
「今夜の夕食はステーキよ」と真由美はいう。
「おいしそうだね」
と、拓也が言う。
「そうだね」
と、おどおどと伏し目がちに巧が言う。
「それじゃ、いただいちゃいましょうか?」と真由美は
天使の様な声で鈴のようにコロコロと言う。拓也も巧もステーキは好きだった。
肉も滴るステーキを鉄板にのせて、ナイフをいれる。
拓也は上手に左からきりわけ、肉をほおばっている。
母親の真由美に冗談など振っている。巧は細切れにした肉を黙って食べている。
静かに、獰猛な怒りをおさえた獣がそれをおさえるように静かにだが的確に手を動かす。
夕食が終わると母はいつも通りピアノを弾き始めた。
ショパンが母のお気に入りである。ピアノの詩人であるショパンを愛する母、
真由美はどこかロマンチックなことを愛する情熱的な母であった。
ピアノで自分の感情を爆発させるのは母の趣味である。
普段はおしとやかを地で行くような母がこの時だけは豹変する。それが拓也も巧もすきだった。
指が鍵盤の上を飛ぶ。情熱的にいろんな曲を弾く母。
それはいつもピアノリサイタルのようだった。
唯一、真由美が開放的になれる場なのかもしれない。
不意に、真由美の横に座ると拓也が連弾を始める。
サスティーンペダルが優しく踏み込まれたり、
離されたりしながら、二人の連弾は続く。
それは会話をしているようだった。
巧ももちろん、ピアノは弾ける。小さいころからの母の教育のたまものだったが、
巧はそこに入っていけない言いようのない何かを感じ取っていた。
二人の連弾が終わる。
「巧?何かひいてくれない?」朗らかに笑う母。
無邪気な母親の中には善意以外の何物もつまっていないように笑う。
「そうだよ。巧。母さんのためになにか弾いてくれないか?」
兄の拓也がしずかにニコニコしながら笑う。
巧は少し肩頬をにやりとあげて笑うと、ピアノの前にすわって一気に弾き始める。
リストの「魔王」である。激しい指使いは鍵盤の魔術師という異名をリストがとっていただけあって
難しい曲なのに巧はどうだと言わんばかりにひく。
それは、怒っているようでもあり、己の満たされない何かをうめているようであり、
その何かをうめるのは技術以外の何物でもないと言わんばかりに、
腕がちぎれるのではないかと思うほどの猛烈な弾き方である。
「すごいわね。拓也も巧も二人とも上手になって……」真由美は目を細める。
二人の少年はもうすぐ大人といえる階段を登り切るところなのに、
真由美にとってはまだ生まれたてのよちよち歩きをしていたころのように思える。
二人をみている真由美に柔和な笑みがうかぶ。
「巧?ママと連弾しない?」思いついたように手をたたいた真由美はそう誘ってくる。巧はその母親に「いいよ……」と小さく否定をして答えると、テーブルに戻ってしまう。
「巧。お風呂に入りなさい」そう真由美が言う。
「わかりました。お風呂に入ります」
そういうと巧は風呂のドアをあける。けして小さくない湯船につかって母が使った湯船の匂いを嗅ぐ。
それは母の恥部がつかった湯であり、どんな匂いも逃すまいと巧はくんくんと匂いをかいでいた。
(ああ……母さんの……いい匂いだ……)巧はうっとりする。
母のいい匂いがした。それが、束の間巧の薄暗い気持ちを明るくする。
少年の中に母親の後姿が思い浮かぶ。食器をかたずけるときに左右にぷりぷりと触れていた豊かな臀部。
ピアノのサスティーンペダルを微妙なタッチで踏む足首。
エプロンを押し上げる紡錘形のバスト。どれもこれもが巧を誘惑する。
そうすると、一物が不覚にも反応し始める。
(まただ……)少年は熱くねっする肉棒を操縦かんのように握りしめる。
(母さんの体を思い出すといつもこうだ……)巧は自分の体とよこしまな願望にいつも悩んでいた。
「母親を思い浮かべてするなんて異常じゃないか?」という思いで、
「いつも辞めなければいけない」と思うが、真由美の微笑を思い浮かべるだけで少年の道具はいきりたっていた。
同年代の彼女を見つけようとしたこともあった。また、母親だけに縛られるのはおかしいから
他の美人な女性を思い浮かべようとしたこともあった。だが、いずれも真由美ほど少年には美しく映らなかった。
それは、母親だからなのか真由美だからなのかわからない。ただ、一つわかっていたのは、他の人ではあまり反応しない自分が母親の匂いに触れるだけで狂ったけだもののように反応してしまい。
下半身を熱くしてしまうということだ。それを母親に知られることはとても巧にとって恐ろしいことだった。
母親に軽蔑の目で見られたくないという思いが少年を支配していた。
それでも、巧は母親のことを思ってする自慰を辞められない。
特に風呂に入ってする自慰は格別だった。処理もすぐにできるし、なにより母親の匂いを独占できるのだ。
何の気兼ねもなく。
(ああ……母さん……母さん……)巧は風呂場で母親の匂いを吸い込みながら一心に手で肉棒を扱き始める。
(すごい。気持ちいいよ。母さん……もっとして、もっとして)
巧の頭の中で描かれる真由美はいつも笑顔であり天使のように優しく自分のわがままをきいてくれた。
気持ちよかった。堕落していく味は格別のものだった。
それが母親とならひとしおだった。巧は巧なりに母親を愛しているのは間違いなかった。
それははばかられる愛し方ではあったが、とにもかくにも少年は母を愛していた。
巧は風呂から上がると、タオルで頭をふきながら二階の自室に戻ろうとした。
そうすると部屋の奥のほうで何やら囁き声がする。
いぶかしく思った巧は奥の部屋へと足を這わす。それが始まりだと知らずに……
そこは母親の寝室だった。
「ああん……拓也……はあ、はあ、もっともっと……」
と実母の何か獣のような喘ぎ声が家の廊下中にこだまする。
「母さん、もう少し声をさげて、ね……」と橘拓也は息をとぎれとぎれに囁いた。
そういうとほっそりとした、しかし、筋肉質なしなやか腕を差し出して、拓也は母親を抱えこむ。
拓也の指さきが母親の髪の毛をすくう。30代も後半だというのに、それを思わせないシルクの様な肌がむき出しになっている。肉付きの良い腹部はへそのあたりで筋がはいっており、
陰部へと常人の男なら垂直に目が下がってしまう。そして、その女の源泉にクチュリと指を
拓也は這わせていた。黒い飾りの下のあけび口の上部には愛の突起が鎮座し、
あけびの実がその下でナメクジのようにじくじくと湿っている。
「ああ……だって……あなたの……この……若々しい……牡茎が待てないのだもの…………」
母はそういうと、童女のようにかんむりをイヤイヤとふる。
拓也の細いながらもたくましい胸元に真由美は息を吹きかける。
生暖かい微熱と湿度を含んだ吐息が拓也の首筋をかすめる。
母の刺激から拓也の欲棒がびくりと体の中を走る。
「真由美、だめだよ。いつも言っているじゃないか。巧のいるときは、もう少し慎重にしようって」
そういう風に、少し困った赤ん坊の様な母親をあやしながら拓也はつぶやく。
母親が子供にかえり、息子が男にかえる。何かあべこべだ。
「だいじょうぶ」と真由美は少しほほを膨らます。
普通こう言うことを、30代のおばさんがやると浮くのだが、
まだ20代後半といっても通用する真由美はどこかかわいらしく微笑む。
ヒマワリが咲いたような明るさである。
「巧が気づいちゃうよ」そう拓也はうそぶく。
真由美は少し困った顔を浮かべるが内心では笑みを浮かべる。
「ああ、知ってるでしょ。私には、拓也。あなただけよ。大事なものは?」
真由美は拓也の手をとると、その大きく実る乳丘に重ねる。
「また、また冗談を言ってるの?母さん。双子の弟の巧が可愛そうだよ」拓也は笑いながら言う。
だが、本気で言ってないことはまるわかりだ。声が本気ではない。
どこか冗談でちゃかすように言っている。
「だって、あの子の前ではこんなことできないんだもの?」そういうと真由美は鼻白んだ。
鼻孔がいやらしく膨らんではしぼむ。それは興奮と憤怒を表してた。
「そうだね?ママは……巧が嫌いなの?」
少年はどこか悪魔のように囁く。それはイエスといえというかのような言葉を裏に隠していた。
甘いマスクが歪むとそれは、甘いがゆえにやたらに醜悪であり、また鬼気迫るものがあった。
「嫌いじゃないけど?」
真由美は左右に視線を這わせる。迷っていた。言うべきか言わざるべきか迷っていた。
それは、「女としての幸せを選ぶか」、それとも、「母親としているべきか?」だった。
もちろん、こんな裸体をさらして拓也の前で母親でいつづけることは、
もはや真由美にはできないことになっているのだが。
「その割には邪険に扱うね」
少年は快活に笑いながら言う。母親である真由美の長くのびた髪の端をいじる。
湿り気をおびはじめた真由美の髪は母性の匂いを感じさせたが、
今真由美は母であることを裏切ろうとしていた。
「気持ち悪いのよ」
真由美は一思いに告げる。ため息と一緒に何かを吐き出すように、
暗い瞳の真由美の瞳孔は時が止まった古い懐中時計をおもわせた。
ただ、動かず。じっと時の流れの中で呆然としている。
そんな母親の顔をみることは少年はあまりない。
「へー」
拓也のその声はぞっとするほど冷たいものだった。
普段の快活な少年である拓也の面影からはまったく想像もできない意外な一面だった。
誰にだって複雑な顔はある。そして、この時の少年の顔は牡が牝を支配するときにみせる料理人の冷静さだ
ともいえる。少年はこの霜降り肉の様な脂ののった大腿部をさらす母親の心に
火をつけようとしていた。
「それに……そうね。正直言うわね」
髪を悩まし気にかきあげる真由美がいった。
「母親としては失格だけど……女としては嫌いね」
それは、後半はすぼまるような大胆な告白だった。
「そんなことよりもねえ……」
媚態を媚びた牝の声が部屋にこだまする。
ここにその声を呆然と聞いている男がいた。巧だった。
(母さんは僕を嫌っている…………)それは扉の隙間から覗いていた巧にはショックだった。
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結婚してから数年、夫婦円満で仲良く生活している。
しかし、私のお家事情で仕事が忙しい日々が続き、旦那様とはすれ違いの日々を重ねて、私は仕事の疲れからセックスレスになっていた。
ある日、さり気なく旦那様と一緒にお風呂に入った。久しぶりに裸の対面だった。
男と女が、裸で狭く密閉された場所にいるのだから、自然的にせっくすに発展する。
私は久しぶりに頭の中をグラグラする刺激の快感を覚え、えっちの素晴らしさに目覚め、セックスレスから脱却する。
その日のHをきっかけに、私はえっちに好奇心が湧き、次第に普通のえっちから人に言えないえっちに覚醒していく。
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