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辺境の街8
しおりを挟む「アリアーヌ。そろそろ交代の時間だよ」
お?もうそんな時間なの?随分と考え事していたみたい。
隣にきた同僚のクレアが座ってくる。クレアも私と同じく時間限定の冒険者ギルドの事務員だ。
そっか、交代の時間か。
「もう、そんな時間なんだね。じゃあ、引継ぎだね」
「そうね~。昨日聞いた感じだとそんなに依頼を受けては無い感じかな?」
「年少組チームが薬草採取とかスライム退治で出ているくらい。シェリー達が引率しているから問題は無いと思う。予定通りならそろそろ帰ってくるかな。あ、これその手続き書類ね」
「了解。確認するね」
「何組かCランク依頼で街から出ているけど、早くても明日戻り予定だね。今日は大丈夫だと思うわ」
「了解~。問題が無いのはいい事だね~」
「そうね。他は事務手続き書類だけど。こっちに片づけているから、今日の積み残しは今の所ないかな。あと、あっちで酒盛りしているけど仕事の話じゃないから。気にしないで放置でいいわ」
「フフフ。ギルマス飲み仲間できて楽しそう~。あれば、フリッツさんね。・・・ねぇ、フリッツさんってこっち来てから依頼受けていないよね?あちこち出歩いて何か聞いて回っているみたいだけど。知ってる?」
「知っている。私のお手伝い先にも来たもの。田舎が珍しいのかな?」
クレアの耳にも届ているかぁ。これは結構な範囲で聞き取りしている。何が目的なのやら。
「え~、そうかなぁ。ねぇ、理由とか聞いてみた?」
「別に。興味無いし」
「え~、アリアーヌっていっつもそうよね~。あんなにイケメンなのに。興味ないの?」
じとっとした目で私を見てくる。だが本当に興味が無い。これは本当にホントだ。恋愛系の対象ではないな。だいたい、あんただってそうでしょうに。
「そう言うクレアだって同じでしょ?私に気にせずキャーキャー騒いでもいいのよ」
「へ?いやいやアリアーヌだって分かっているでしょ。アレはわたしのタイプじゃないから。それとも姿形だけで惹かれないといけないもの?」
アレっすか。イケメンをアレというのはクレアあんただけだよ。やっぱりあんたはなかなかのツワモノね。
「いいえ、見た目で騙されないのは本当に立派よ。これほんとよ」
「うふふ。ありがと~」
どうやら書類のチェックに意識を向けてくれたようだ。
でもね、クレア・・・。あんたも十分変よ。
付き合っている男の趣味がアレだからね。
だから本当にこっちには興味がないクレアなのだ。
でもクレアがいるからギルドは安泰なんだよね。昼酒で酔っぱらっているギルマスは事務作業は全くできない。これは事務員の共通認識。
私もクレアに色々教わった。だから、もう少しクレアを評価すべきだと思う。そのお酒代をクレアの報酬に回して欲しい。
「は~い。確認したわ~。うん、大丈夫だよ。あがっていいわよ~。でも、お昼から出かけるなんて珍しいわね。もしかしてデート?」
「違うわい!分かっているクセに言うもんね。クレアとは違うのだよ」
「え~、そんな事ないでしょ。アリアーヌは性格もいいし、綺麗だし。男達はほっとかないと思うんだけどな~」
おま・・・目は大丈夫か。いや・・大丈夫じゃないからアレと付き合っているのか。
私はお世辞にも綺麗な見た目じゃない。整った顔やでっかい胸とかクレアに敵わない所ばかりだぞ。
・・・グスン。
ま、世辞と受け取っておこう。落ち込んでいられない。
「そう言ってくれるのはクレアだけよ。それじゃあとお願いね」
「ん~、なんだか躱された気がするんだけど・・・。ま~、いっか。お疲れさま~」
本日のギルド業務は終了!
今日は捕まる前に逃げないとね。
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