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54.お兄さんだよね
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SK's eyes
私は目の前の事に驚いている。
助けを求めに彷徨って、ふらふらになって倒れてしまったはずなんだけど。
そこを親切な人に助けてもらったみたいな感じ。
と、思うんだけど。
だって言葉が未だに分からないんだもの。なんでこんな世界に迷い込んでしまったんだろ。
同じ学校の人達とも意見の食い違いでバラバラになってしまうし。なんで協力できないのかしら!
も~、そんなんだから櫻が攫われてしまうのよ!
言葉の分からない私で疲れ果てた。その時・・。
気を失う前に懐かしい言葉を聞いて安心したのか、気を失ってしまって。
でも、あれってお兄さんじゃ?
う~ん。
気づいたら、洞穴?なのかしら?どこここ?
暖かい寝床はほんわりといい匂いがする。
慌てて着衣を確認する。こっち来てから油断していたつもりはなかったけど。わわわ。
・・・うん、大丈夫。
何もされていないと思う。
ホッとしたよ~。
あ~、よかった。私とりあえず助かったんだ。・・よね?
さてさて、助けてくれたのは誰なんだろ・・・?
しばらくポーっとしていたら、誰かが来た。むちむちしたプラチナブロンドのお姉さん。でもエロくない感じ。
やや垂目の綺麗な緑の瞳。いつも微笑んでそうな口元はぽってりとしているわ。この人が助けてくれた人?
でも、やっぱり言葉が分からない。今も話かけられているけど、さっぱりわからない。だからお礼も言えやしない。本当になんとかならないかしら。
ホラ、お姉さんも困った感じ。なんとなくだけど誰かを呼んでいるみたいだし。
あ~、どうなるんだろ?
これは監禁パターンかも。
助けて貰って申し訳ないけど、私ではなく櫻を助けて欲しいの。
どこかの邑にいって助けを求めないと。なんとなくだけど、この女性に助けを求める事は違うんじゃないかと思う。
だって洞穴みたいな所よ。邑の家じゃないもの。人がいないのはなんとなく想像がつくもの。
なんとか私の状況を知って欲しくて、寝起きだったけど喚いてしまったわ。
意味が伝わらないんだし。気持ちが伝わればって感じだった。
暫くたったら男女のカップルがやって来た。
ありゃ・・夫婦かもね。
あんなに密着していたらそう思うじゃない?それに女性のほうは男性を潤んだ瞳で見ているし。あの赤い瞳は卑怯よ。顔も体もモデルさんみたいだし。超美人よね。
男性は・・・細身だけとしっかりした体格。顔もなかなかのイケメン。
え?
あれ?
・・・この人って・・・お兄さん?・・・よね。
お兄さんと思われる人が私に分かる言葉で話しかけてきた。
やっぱり!と、思ったんだけど。何か変。私が分かっていないみたいな感じだ。え?え?
じっとお兄さんを見るけど反応は全く無し。結局こっちから話しかけたけど覚えていない。何度も確認するけど、やっぱり覚えていない?なんで?櫻も覚えていないなんて!
なんで?
言葉も分かるじゃん。なんで私が分からないの?
ええ?なんで?
・・・・。ちょっと見つめてみるけど。反応が無い。
・・・本当に、分からないの?
お兄さんは側にいる女性陣に何か説明をしているんだけど、そっちは私には分からない言葉だ。何を話をしているのか気になる。
それにしても許せない。いつの間に櫻以外で、こんな美女達を侍らしているのよ。勝手にいなくなって、綺麗な女性を見つけて暮らしているの?
信じられない!
なんかムカムカしてきた。こっちはどんな目にあっているのか知らないのか?
櫻にどういいつけてやろうかと、密かにぷんすかしていたら、驚きの事実が・・・・。
え?
記憶が無い?それって・・・・。
どういう事?
超信じられないんですけど。邑を勝手に出て行って、行方不明になって、そんで記憶喪失ですって?
何!それ?
お兄さんは困った顔。揶揄っているんだよね?
・・・。
う~ん、これは本当みたいだね。私の知っているお兄さんならば、この顔をしている時は嘘を言っていない。私はそれを知っている。
ひとまず情報整理だ。
お兄さんはキュメネ邑の状況を知りたがっているみたい。聞くと会長達と敵対しているような雰囲気。記憶無くしても会長と敵対しているなんて。笑えないんですけど。
結局対立しているんだ。
つまり、私にとっては味方の立場だ。変わらないって事ね。私が交渉するにも、どのみち言葉が通じないのだから通訳できるお兄さんに同行してもらおう。
と、いうか私がついて行けばいいのか。櫻を助けるために時間は惜しいのだけどお兄さんが頼みの綱だもの。お兄さんだけじゃ荷が重いと思うし。
まずはお兄さんの質問に私が分かる範囲で答える。
この世界に来てしまった私達は同じ学校に通う高校生。お兄さんは朝の通学に櫻を送って来たから巻き込まれたのよ、と言ったら、驚いていた。
学校の生徒全員が来てしまったわけじゃなく、三十人位がこっちの世界に来てしまった事。それで目の前に邑があって、邑人にすぐ捕まってしまった事。そこがキュメネ邑で酷い扱いを受けていた事。
何人かはこっちの言葉が聞き取れて話せる人がいて、そんな彼らは不思議な能力にも目覚めたみたい。こっちでは異能と呼んでいるようなんだけど。
生徒会役員が会話できたので窓口となって交渉して貰っていたけど、交渉の詳細は私達には公表されなかった事。その間はずっと倉庫みたいな所に全員閉じ込められたんだよね。なんか臭かったから困りもんだった。
私達の中で会話が出来て異能を持っているのは十一人、お兄さんは含まずね。お兄さんも異能持っていたのよ、と言ったらこれまた驚いていた。でも異能の詳細は私は知らないわと言っておいた。
そもそも生徒会役員の異能の詳細は私は知らない。櫻だけは私にこっそり教えてくれたけど。
あ、でも会長の異能はなんとなく分かる範囲で伝えたの。会長の異能は「異能持ちを作る能力」じゃないかしらと。だって異能無しの四人を異能持ちにしていたもの。絶対そういう能力よ。でも異能持ちとなった四人は会長に忠誠を誓ったみたいなのよね。いきなり態度が変わっていたから。あれ見たら誰も異能を欲しがらなくなったわね。
そんな事を話してから、何故お兄さんは勝手にいなくなったのか詰問する。
そうしたらびっくりする事をまた言ってくる。本人曰く推測だという事だけども。あ、記憶ないんだっけ。
お兄さんは会長に二回殺されたらしい。話を聞くと一度目は私達の前からいなくなった日だと思う。会長本人がお兄さんに言ったそうだ。「何故生きている」と。
うそでしょ。会長はそんな事を言う人じゃないわ。ましてや殺す事を実行するなんて。
二回目が数日前なんだって。私を助ける前にキュメネ邑の様子を伺いに来ていたそうだ。そこで会長に襲撃されたみたい。その時に一回目の殺人?を告白されたようなんだけど。やっぱり会長もお兄さんと認識しているって事よね。
でも会長がそんな事をするなんて。少なくても全校生徒が知る”生徒会長 諏訪 秋人”の態度では無いわ。そういえば櫻は会長の事を警戒してた。もっと言えば怖がっていたわね。理由はいくら聞いても話してくれなかったけど。
私は会長より不破兄妹の話を信じる事にする。櫻はお兄さん以外の男性を怖がる事がある。気にし過ぎと思っていたのだけど。
会長がお兄さんに取っている態度を考えると、学校の模範的な生活態度は善人の皮を被っているだけなのかもね。
それは会長達から距離を取った私達の判断が間違いでは無い証にもなるかも。
記憶をすっかり無くしたお兄さんに一応これまでの事を認識してもらった。でも結局何も思い出してくれなかった。
お兄さんはこの世界の人では無いんだ。私の親友でもある不破櫻のお兄さんだよ。
あなた達兄妹はとても仲が良いと伝えた。仲が良いという表現には色々含みがあるんだけど、記憶ないお兄さんにはこの程度でいいかな。
私は四條・エリカ・佳奈と伝えた。分かってはいたけど反応全く無し。めげずに櫻の唯一の大親友だと伝える。私はお兄さんとも交流があったんだよと伝えるんだけど、やっぱり全く覚えていないらしい。
仕方ないのかもしれないけど、がっかりよ。こんな心細い状況で顔見知りに会ったのよ。その人が私の事を覚えていないのよ。そう思っても仕方ないわよね。
そう。私達は突然にこの世界に来てしまった。なんでそうなったか全く分からない。この世界に来てすぐにキュメネ邑に酷い扱いを受けたし。そこで奴隷の首輪をされそうになったし。それにキレた生徒会長が、異能を使って邑を占拠するし。お兄さんは占拠前に行方不明になるし。本当に心配したんだよ。
占拠したから当然なのかキュメネ邑の主となった生徒会長だ。
その生徒会長に従う生徒達をまとめて「自由騎士団」という恥ずかしい呼称をつけたんだよね。どこのヤツラですか?ほんと恥ずかしい。
それでも何人かの生徒達は方針に従えないとかで立ち去ったのよね。私達も同じだ。私を含めた櫻と他一名で逃げたんだけど、自由騎士団の一員に追いかけられて櫻が捕まった事を話す。
助けを呼ぶために櫻は私を逃がしてくれた。私が一番足が速いという理由なんだけど。でも、逃げた私は疲れ果てて倒れて、結果的にお兄さん達に助けて貰ったんだけど。
私は櫻を助けたい事を話す。もう一人友人はいるけど、そっちはついでで構わないわとも言うと複雑な顔をするお兄さん。そんな所は変わらないのね。
色々話をしたのだけど、お兄さんは全く覚えていないのが結構ショック。本当に覚えていないのね。嘘を言っている顔じゃないもの。話した事については驚きながらも納得してくれたみたいだけど。
聞き取った内容を一緒の女性達に説明するから少し時間が欲しいと言われたわ。ま、そこは仕方ないか。
でも気になるから聞いてみた。なんでハーレムみたいな状態になっているのかってね。
だってさ女性ばっかりじゃん。名前は教えてもらって簡単に挨拶だけはした。言葉通じないからアクションでの挨拶だけどね。四人の女性達に。
エリナさん。この人は絶対にお兄さんに気があるわ!お兄さんは強く否定していたけど、それは絶対無い!相変わらず鈍いんだから。こんな超美人に見染められるってば・・・。櫻も負けていない・・と思うけど。・・・はぁ。
アイナさん。こちらもお兄さんをロックオンしているわね。うん、間違いない。確実に狙っている。体も心も包容力がある人で安心感が半端ない、と私ですらと思う美人さんだ。
ロッタちゃん。美少女。この一言に尽きるわね。超お兄ちゃんっ子だ。すっごい懐かれているわよ。将来油断できないわ。
アイナさん、ロッタちゃんの母親であるうエッラさん。こちらは分を弁えているのか控えているみたい。けど・・・こっちも油断大敵ね。少なくても好意はあるわね。
やっぱしハーレムじゃん!どういう事よ!と、心の中で突っ込むしかない私。
本当にお兄さんはここ十数日で何があったの?
なんらかの理由で会長に殺されて・・(実際には生きていたんだけど)、記憶を無くして、こっちの人達に助けられて・・・こんな状態になったの?
へ~。
・・・・・・。
や~っぱり、わかんない!
記憶ないから経緯を聞けないしさ。あ~、なんか釈然としない。
だけどあれこれ振り返っても仕方ないか。
とりあえずお兄さんは一応生きている!
これから協力して行動できればいいんだから。少なくても私は受け入れてくれたみたいだし。
こちらの女性陣が協力してくれるといいのだけど。上手く話がまとまるのかしら?
私はすぐにでも櫻を助けたい。
櫻はお兄さんの妹。大事な櫻をお兄さんは助ける義務がある。
うん、つじつまは合いまくっている。
だけど、あいつ等強いからな~。
ちらりと視線をお兄さんに送る。なんか少し呆けている感じがする。大丈夫かしら?
ねぇ、分かっているよね?
櫻を助けるのよ!
・・・・わりとすぐに視線そらしたわね。そこも変わらないか。
ちゃんと伝わっているよね?
助けてくれるよね?
信じているぞ。お兄さん!
私は目の前の事に驚いている。
助けを求めに彷徨って、ふらふらになって倒れてしまったはずなんだけど。
そこを親切な人に助けてもらったみたいな感じ。
と、思うんだけど。
だって言葉が未だに分からないんだもの。なんでこんな世界に迷い込んでしまったんだろ。
同じ学校の人達とも意見の食い違いでバラバラになってしまうし。なんで協力できないのかしら!
も~、そんなんだから櫻が攫われてしまうのよ!
言葉の分からない私で疲れ果てた。その時・・。
気を失う前に懐かしい言葉を聞いて安心したのか、気を失ってしまって。
でも、あれってお兄さんじゃ?
う~ん。
気づいたら、洞穴?なのかしら?どこここ?
暖かい寝床はほんわりといい匂いがする。
慌てて着衣を確認する。こっち来てから油断していたつもりはなかったけど。わわわ。
・・・うん、大丈夫。
何もされていないと思う。
ホッとしたよ~。
あ~、よかった。私とりあえず助かったんだ。・・よね?
さてさて、助けてくれたのは誰なんだろ・・・?
しばらくポーっとしていたら、誰かが来た。むちむちしたプラチナブロンドのお姉さん。でもエロくない感じ。
やや垂目の綺麗な緑の瞳。いつも微笑んでそうな口元はぽってりとしているわ。この人が助けてくれた人?
でも、やっぱり言葉が分からない。今も話かけられているけど、さっぱりわからない。だからお礼も言えやしない。本当になんとかならないかしら。
ホラ、お姉さんも困った感じ。なんとなくだけど誰かを呼んでいるみたいだし。
あ~、どうなるんだろ?
これは監禁パターンかも。
助けて貰って申し訳ないけど、私ではなく櫻を助けて欲しいの。
どこかの邑にいって助けを求めないと。なんとなくだけど、この女性に助けを求める事は違うんじゃないかと思う。
だって洞穴みたいな所よ。邑の家じゃないもの。人がいないのはなんとなく想像がつくもの。
なんとか私の状況を知って欲しくて、寝起きだったけど喚いてしまったわ。
意味が伝わらないんだし。気持ちが伝わればって感じだった。
暫くたったら男女のカップルがやって来た。
ありゃ・・夫婦かもね。
あんなに密着していたらそう思うじゃない?それに女性のほうは男性を潤んだ瞳で見ているし。あの赤い瞳は卑怯よ。顔も体もモデルさんみたいだし。超美人よね。
男性は・・・細身だけとしっかりした体格。顔もなかなかのイケメン。
え?
あれ?
・・・この人って・・・お兄さん?・・・よね。
お兄さんと思われる人が私に分かる言葉で話しかけてきた。
やっぱり!と、思ったんだけど。何か変。私が分かっていないみたいな感じだ。え?え?
じっとお兄さんを見るけど反応は全く無し。結局こっちから話しかけたけど覚えていない。何度も確認するけど、やっぱり覚えていない?なんで?櫻も覚えていないなんて!
なんで?
言葉も分かるじゃん。なんで私が分からないの?
ええ?なんで?
・・・・。ちょっと見つめてみるけど。反応が無い。
・・・本当に、分からないの?
お兄さんは側にいる女性陣に何か説明をしているんだけど、そっちは私には分からない言葉だ。何を話をしているのか気になる。
それにしても許せない。いつの間に櫻以外で、こんな美女達を侍らしているのよ。勝手にいなくなって、綺麗な女性を見つけて暮らしているの?
信じられない!
なんかムカムカしてきた。こっちはどんな目にあっているのか知らないのか?
櫻にどういいつけてやろうかと、密かにぷんすかしていたら、驚きの事実が・・・・。
え?
記憶が無い?それって・・・・。
どういう事?
超信じられないんですけど。邑を勝手に出て行って、行方不明になって、そんで記憶喪失ですって?
何!それ?
お兄さんは困った顔。揶揄っているんだよね?
・・・。
う~ん、これは本当みたいだね。私の知っているお兄さんならば、この顔をしている時は嘘を言っていない。私はそれを知っている。
ひとまず情報整理だ。
お兄さんはキュメネ邑の状況を知りたがっているみたい。聞くと会長達と敵対しているような雰囲気。記憶無くしても会長と敵対しているなんて。笑えないんですけど。
結局対立しているんだ。
つまり、私にとっては味方の立場だ。変わらないって事ね。私が交渉するにも、どのみち言葉が通じないのだから通訳できるお兄さんに同行してもらおう。
と、いうか私がついて行けばいいのか。櫻を助けるために時間は惜しいのだけどお兄さんが頼みの綱だもの。お兄さんだけじゃ荷が重いと思うし。
まずはお兄さんの質問に私が分かる範囲で答える。
この世界に来てしまった私達は同じ学校に通う高校生。お兄さんは朝の通学に櫻を送って来たから巻き込まれたのよ、と言ったら、驚いていた。
学校の生徒全員が来てしまったわけじゃなく、三十人位がこっちの世界に来てしまった事。それで目の前に邑があって、邑人にすぐ捕まってしまった事。そこがキュメネ邑で酷い扱いを受けていた事。
何人かはこっちの言葉が聞き取れて話せる人がいて、そんな彼らは不思議な能力にも目覚めたみたい。こっちでは異能と呼んでいるようなんだけど。
生徒会役員が会話できたので窓口となって交渉して貰っていたけど、交渉の詳細は私達には公表されなかった事。その間はずっと倉庫みたいな所に全員閉じ込められたんだよね。なんか臭かったから困りもんだった。
私達の中で会話が出来て異能を持っているのは十一人、お兄さんは含まずね。お兄さんも異能持っていたのよ、と言ったらこれまた驚いていた。でも異能の詳細は私は知らないわと言っておいた。
そもそも生徒会役員の異能の詳細は私は知らない。櫻だけは私にこっそり教えてくれたけど。
あ、でも会長の異能はなんとなく分かる範囲で伝えたの。会長の異能は「異能持ちを作る能力」じゃないかしらと。だって異能無しの四人を異能持ちにしていたもの。絶対そういう能力よ。でも異能持ちとなった四人は会長に忠誠を誓ったみたいなのよね。いきなり態度が変わっていたから。あれ見たら誰も異能を欲しがらなくなったわね。
そんな事を話してから、何故お兄さんは勝手にいなくなったのか詰問する。
そうしたらびっくりする事をまた言ってくる。本人曰く推測だという事だけども。あ、記憶ないんだっけ。
お兄さんは会長に二回殺されたらしい。話を聞くと一度目は私達の前からいなくなった日だと思う。会長本人がお兄さんに言ったそうだ。「何故生きている」と。
うそでしょ。会長はそんな事を言う人じゃないわ。ましてや殺す事を実行するなんて。
二回目が数日前なんだって。私を助ける前にキュメネ邑の様子を伺いに来ていたそうだ。そこで会長に襲撃されたみたい。その時に一回目の殺人?を告白されたようなんだけど。やっぱり会長もお兄さんと認識しているって事よね。
でも会長がそんな事をするなんて。少なくても全校生徒が知る”生徒会長 諏訪 秋人”の態度では無いわ。そういえば櫻は会長の事を警戒してた。もっと言えば怖がっていたわね。理由はいくら聞いても話してくれなかったけど。
私は会長より不破兄妹の話を信じる事にする。櫻はお兄さん以外の男性を怖がる事がある。気にし過ぎと思っていたのだけど。
会長がお兄さんに取っている態度を考えると、学校の模範的な生活態度は善人の皮を被っているだけなのかもね。
それは会長達から距離を取った私達の判断が間違いでは無い証にもなるかも。
記憶をすっかり無くしたお兄さんに一応これまでの事を認識してもらった。でも結局何も思い出してくれなかった。
お兄さんはこの世界の人では無いんだ。私の親友でもある不破櫻のお兄さんだよ。
あなた達兄妹はとても仲が良いと伝えた。仲が良いという表現には色々含みがあるんだけど、記憶ないお兄さんにはこの程度でいいかな。
私は四條・エリカ・佳奈と伝えた。分かってはいたけど反応全く無し。めげずに櫻の唯一の大親友だと伝える。私はお兄さんとも交流があったんだよと伝えるんだけど、やっぱり全く覚えていないらしい。
仕方ないのかもしれないけど、がっかりよ。こんな心細い状況で顔見知りに会ったのよ。その人が私の事を覚えていないのよ。そう思っても仕方ないわよね。
そう。私達は突然にこの世界に来てしまった。なんでそうなったか全く分からない。この世界に来てすぐにキュメネ邑に酷い扱いを受けたし。そこで奴隷の首輪をされそうになったし。それにキレた生徒会長が、異能を使って邑を占拠するし。お兄さんは占拠前に行方不明になるし。本当に心配したんだよ。
占拠したから当然なのかキュメネ邑の主となった生徒会長だ。
その生徒会長に従う生徒達をまとめて「自由騎士団」という恥ずかしい呼称をつけたんだよね。どこのヤツラですか?ほんと恥ずかしい。
それでも何人かの生徒達は方針に従えないとかで立ち去ったのよね。私達も同じだ。私を含めた櫻と他一名で逃げたんだけど、自由騎士団の一員に追いかけられて櫻が捕まった事を話す。
助けを呼ぶために櫻は私を逃がしてくれた。私が一番足が速いという理由なんだけど。でも、逃げた私は疲れ果てて倒れて、結果的にお兄さん達に助けて貰ったんだけど。
私は櫻を助けたい事を話す。もう一人友人はいるけど、そっちはついでで構わないわとも言うと複雑な顔をするお兄さん。そんな所は変わらないのね。
色々話をしたのだけど、お兄さんは全く覚えていないのが結構ショック。本当に覚えていないのね。嘘を言っている顔じゃないもの。話した事については驚きながらも納得してくれたみたいだけど。
聞き取った内容を一緒の女性達に説明するから少し時間が欲しいと言われたわ。ま、そこは仕方ないか。
でも気になるから聞いてみた。なんでハーレムみたいな状態になっているのかってね。
だってさ女性ばっかりじゃん。名前は教えてもらって簡単に挨拶だけはした。言葉通じないからアクションでの挨拶だけどね。四人の女性達に。
エリナさん。この人は絶対にお兄さんに気があるわ!お兄さんは強く否定していたけど、それは絶対無い!相変わらず鈍いんだから。こんな超美人に見染められるってば・・・。櫻も負けていない・・と思うけど。・・・はぁ。
アイナさん。こちらもお兄さんをロックオンしているわね。うん、間違いない。確実に狙っている。体も心も包容力がある人で安心感が半端ない、と私ですらと思う美人さんだ。
ロッタちゃん。美少女。この一言に尽きるわね。超お兄ちゃんっ子だ。すっごい懐かれているわよ。将来油断できないわ。
アイナさん、ロッタちゃんの母親であるうエッラさん。こちらは分を弁えているのか控えているみたい。けど・・・こっちも油断大敵ね。少なくても好意はあるわね。
やっぱしハーレムじゃん!どういう事よ!と、心の中で突っ込むしかない私。
本当にお兄さんはここ十数日で何があったの?
なんらかの理由で会長に殺されて・・(実際には生きていたんだけど)、記憶を無くして、こっちの人達に助けられて・・・こんな状態になったの?
へ~。
・・・・・・。
や~っぱり、わかんない!
記憶ないから経緯を聞けないしさ。あ~、なんか釈然としない。
だけどあれこれ振り返っても仕方ないか。
とりあえずお兄さんは一応生きている!
これから協力して行動できればいいんだから。少なくても私は受け入れてくれたみたいだし。
こちらの女性陣が協力してくれるといいのだけど。上手く話がまとまるのかしら?
私はすぐにでも櫻を助けたい。
櫻はお兄さんの妹。大事な櫻をお兄さんは助ける義務がある。
うん、つじつまは合いまくっている。
だけど、あいつ等強いからな~。
ちらりと視線をお兄さんに送る。なんか少し呆けている感じがする。大丈夫かしら?
ねぇ、分かっているよね?
櫻を助けるのよ!
・・・・わりとすぐに視線そらしたわね。そこも変わらないか。
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