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サンダーランド王国編

スケルトン襲来

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 スケルトンが兵に襲い掛かってくる。棍棒のようなものを出たらめに振り回す。棍棒に当たった兵は吹き飛ばされる。骨の腕の割には力が強いようだ。
 兵はダメージを受けたようだけど致命傷ではなさそうだ。攻撃を鎧で受け止めたようである。危なかったけど即死になる攻撃でなくて良かった。
 ともかく危険すぎる場所から離れさせないと。
 
「皆!下がれ!」

 ボクの声に前にいた兵は慌てて下がってくる。その後退をスケルトンは追ってこない。ゆっくりと後退し所定?の位置に戻る。
 湧き出したスケルトンは見える範囲で五体か?それにしてもこんなモノがいるなんて・・。初めて見たぞ。

「皆!アレは何者か知っているか?」

 スケルトンを警戒しつつ周囲に確認する。それぞれの反応をしている兵。どうやら知らないようだ。ボクを庇うように前に出た護衛の騎士が言う。

「次期様は知っているのですか?アレは骨だけで動く魔物なのですか?自分は初めて遭遇しました。あのような骨だけで動けるのが良く分かりません。良く見れば関節が殆ど無いように見えます。何者なんですか?」
「あ~、やっぱりそうなんだ。・・異常だよね。あり得ないよね」
「はい、あり得ません。人形だとしても先程の兵を吹き飛ばす力はどこから出てくるんです?・・信じられません」
「だよね・・。だけど見た通り実体があり、力もある。どうやら堰・・建造物を守るためにいるんじゃないかな」
「・・成程。そうしますとあの建造物に近づかない限り攻撃されないという事ですか?」
「と、思う。もう少し試してみないと分からないけどね。だけど近づかないと水の流れを止める事ができないからね。さて、どうしたらよいのか・・」
「如何します?」

 う~ん、そうかぁ。
 スケルトンは皆知らないようだ。
 そうなると魔法を使っている可能性が高い。魔法の存在を知る人は殆どいない。だから知られていないんだろう。
 現状のボクの魔法の知識でもスケルトンを呼び出す魔法は知らない。呼び出しているのか、作っているのかも分からないけどね。
 ボクがエイブラム爺に習った魔法は初歩だ。
 そこから工夫を重ねてボク独自の魔法を作っているんだ。習った魔法にはスケルトン関係は思い当たらない。エイブラム爺は知っているのだろうか?
 推測は後にしよう。どのみち今のボクにはその知識は無い。他の方法でスケルトンを無力化しないといけないんだ。

 どうする?
 
「少し確認したい事がある。一体を相手に試してみる。全員そこにいたまま待機していて」
「危険です。自分は次期様のための護衛です。何を試されたいのかわかりませんが自分を使ってください」

 う~ん、それはちょっと無理かな。前世の知識を元に対抗策を試してみたいんだ。

「大丈夫。無理はしないよ。それに聞いているでしょ?ボクはブラックバックベアを倒したんだ。無理なら下がるから信じて欲しい」
「・・そうでした。・・承知しました。次期様は大事な体です。本当に無理なさらないでください。何かあればすぐに飛び込みます」
「うん。無理いってすまないね」

 言いながら腰に挿した大剣を抜く。本当は背中の刀を使いたいけど今回は大剣で試さないといけない。
 兵達には下がって待機する事、建造物に近づかない事を指示する。
 五体のうち比較的前にいる一体のスケルトンをターゲットにする。
 まずはどう動くか確認だ。魔法を使わず自分の身体能力だけでスケルトンに向かう。

 スケルトンから半径二メートル程の距離に近づくと動き始める。指定範囲に入ると迎撃反応に入るのか。

 無造作に詰める。撃退対象と判定したのだろう、スケルトンは棍棒を振り下ろしてくる。早い・・けど躱せない速さじゃない。余裕を持って躱す。追撃は無い。動きは単純そうだ。
 すかさず武器を持っていない腕を大剣で叩き切る。

 ゴキ!

 重たいような軽いような不思議な感触が手に伝わる。スケルトンの腕はそのままだ。薄くヒビを入れる事はできたようだ。やはりボクには腕力が単純に無い。
 スケルトンの棍棒は単純な振り回しだ。すぐに追撃の攻撃はなかった。だけど体勢はくずれたまま次の攻撃をしてくる。人体であればあり得ない攻撃だ。
 この攻撃を想定していたボクはあっさりと躱す。スケルトンは防御無視の攻撃だ。素早く攻撃を入れた先程の腕を更に叩き切る。

 ボキッ!

 鈍い音がするが大剣はなんの抵抗もなく通る。果たして腕は切り落とせた。攻撃結果を確認するために素早く距離を取る。二メートル離れれば攻撃は無い。

 うん。追撃は無い。
 腕を落としたままスケルトンは持ち場に戻る。切り落とした腕は・・・動いていない。それどころか徐々に変色していき・・最後には粉々になっていったようだ。

 再度スケルトンに近づく。片腕が落ちても動くスケルトンは単調な攻撃をしてくる。躱した後に、今度は足に大剣を叩き込む。何度か叩き込んで足を砕く。すぐに二メートル離れる。
 スケルトンは持ち場に戻る。片足でもスムーズに歩いている?・・足で歩いているわけじゃないのか。道理で足場が悪いのにスムーズに動いていると思った。なんとなくだけど宙に浮いているんだな。

 これだと頭骨を破壊しても意味はないだろうな。そうなるとあの弱点か・・。ボクは力が無いから何度か攻撃しないと効果ないだろうけど。

 大きく深呼吸して体をリラックスさせる。剣を握りなおしスケルトンに飛び込む。
 スケルトンが反応して攻撃をしてくる前に攻撃をする。腰と背骨を繋ぐ仙骨だ。大剣で突いての攻撃になる。ボクの身長だと丁度いい高さかもしれない。

 一撃入れるとスケルトンの動きが鈍くなる。振り下ろしの攻撃が緩やかになる。攻撃が来る前に連撃で仙骨に突きを入れる。
 何度か攻撃をいれると仙骨を砕く事が出来た。成果を確認する前に二メートルの距離を確保する。スケルトンからの攻撃はなかった。やはりここが弱点か。
 スケルトンは持ち場に戻ることなく、ゆらゆらと揺れている。やがて色が変わる。そしてボロボロと崩れていく。

 よし!倒せた。背後から歓声が聞こえる。次は君達の番だよ。頑張ろうな。
 
 それにしても・・こういう弱点はどの世界でも変わらないものなんだろうか。いずれにしても倒す手段は見つかった。
 
 大剣を仕舞い皆の待機している場所に戻る。笑みを浮かべながら成果を報告する。護衛の騎士含めて皆が驚いている顔をしているが気にしない。まずはスケルトンの一掃だ。

「皆見ていたかな?見ての通り倒してみたよ。アレは・・呼称が必要かな?とりあえず、あの骨の化け物をスケルトンと呼ぶ。見ての通りだけどスケルトンは二メートルの範囲に侵入したら現れ攻撃してくる。力はありそうだけど攻撃方法は単純だ。良く見れば躱せるよ。そこまではいいかな?」

 ゆっくりと全員を見る。ボクが何を言いたいのか分かってきたのだろう。何名か引き攣った顔のままだ。これも気にしない。どうしても動けない兵は倒木の運搬をしてもらう事にしよう。

「腕や足を切ってもあまり意味が無い。弱点は背骨と腰を繋ぐ骨を破壊する事だ。この弱点を攻撃する方法になる。破壊できれば見ていた通り崩れて塵になるようだ。この手順を守れば皆もスケルトンを退治できる」

 誰にでもできる事を伝える。そして倒すパターンを伝える。頑張れるよね?

 スケルトンは、あの構造物のあちこちに潜っているはずである事。
 近づけば現れて攻撃を開始する。
 攻撃は慌てなけれは躱せる。
 弱点をひたすら攻撃して塵にする事。
 スケルトン一体に必ず複数人で倒す事。攻撃と防御を分担して対処した方がよい事。

 等々。先程の戦いの感触を伝える。恐怖で足がすくんだり攻撃を臆する者は無理して倒す必要が無い事も伝える。生理的にダメな場合もあるからね。
 
 意外にも全員がスケルトン攻撃を志願してくれた。
 
 最初の攻撃は戸惑いもあったようだけど。戦い方を理解できたら早かった。さすがフレーザー家の兵だ。
 スケルトンが現れない事を確認した後に討伐完了宣言をする。全員の歓声があがる。
 うん。士気は上がってきたようだ。さっきまで散々だったからね。

 それ程時間をかけずボク達は破壊された堰の確保をする事ができた。再度倒木を突っ込んで水の流出を防ぐ作業に入る。

 う~ん。なんでも知識って大事だな。まさか役に立つとは思ってなかったけどね。
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