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3章
5。飼い猫に道連れにされました
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「おっ、シアンおっかえりー。で、首尾は?」
「上々ですよ」
二人でそんな会話をしながら、シアンが取り出したのは畳まれた服のような物だった。
手渡されるままにそのうちの一枚を広げてみると、それは大きなフード付きのローブのような服で。
見た目の印象で言えば、よくRPGなんかのゲームで黒魔道士とかが着ているあれ。それが三着。
んん? ーー三着?
「これって、皆んなで仮装する流れなの?」
「変装って言って欲しかったですけど、まあ正解です」
「フィア冴えてんなー! じゃ、早速羽織ってみよっかー」
「え、今から?」
「そっ、今スグ!」
反論するまもなく、あれよあれよと言う間に着せられてしまった。
呆気に取られているうちにマゼンタとシアンもローブを羽織って前をしっかり留め、頭から深くフードを被っている。
「おお、フィアすっげー可愛いーー!」
「本当ですね、似合ってますよソフィー」
「はいはい、ありがと。それより、結局なんで今変装することになってるのよ?」
仮装用の衣装かとも思ったがペラペラした生地ではなく、しっかりと目の詰まった上質な布地で艶やかな黒が美しい。
縁取りには鈍く光る金糸が使われており、フードの部分には何やら獣を象ったような刺繍がされていた。これ、狼の図案かな?
「それはフェンリルです。隣国で使われている紋章ですよ」
「へぇそうなのーーってそうじゃなくて」
「はいはい、変装の理由な。ーー目には目を、ってヤツだよ」
「ーーは?」
「ソフィーの世界ではそう言うのでしょう?目には目を、歯には歯をーー噂には噂を、ですよ」
「いや、そんな説明の仕方をされてもさっぱりなんだけど……」
急にハンムラビ法典を使って喩えられても、全く何がなんだか分からない。
「分からないなら後で説明してやっから! とりあえずさっさと行こーぜ!」
「それがいいですね。では先に注意事項を三つほど。今からしばらくはお喋り禁止、いいと言うまでフードは絶対脱がないこと。あとはーー舌を噛まないように気をつけてくださいね?」
「え、一体何をーー」
する気なのか、と訊こうとしたところで。
シアンにサッとフードを目深に被らされ横抱きに抱きかかえられたと思えば、そのままドアと反対側に走り出された。
ーーえっ、えっっ?
ちょっと待って、そっちはーー
「ーーおっ先ッ! ィヤッホーーー!!」
マゼンタが飛び出したのは、開いたままの窓から見える青い空。
その光景に目を見開いた次の瞬間、内臓が迫り上がってくるような浮遊感に襲われる。
「いっ……やああああああぁぁーーーーーーー‼︎‼︎」
ーーお、落ちるっ!
まさかの紐なしバンジー!?
さっきの注意事項なんて頭からすっぽ抜けて、私はお姫様抱っこの体勢でシアンの首にしがみつきながら大絶叫したのだった。
「上々ですよ」
二人でそんな会話をしながら、シアンが取り出したのは畳まれた服のような物だった。
手渡されるままにそのうちの一枚を広げてみると、それは大きなフード付きのローブのような服で。
見た目の印象で言えば、よくRPGなんかのゲームで黒魔道士とかが着ているあれ。それが三着。
んん? ーー三着?
「これって、皆んなで仮装する流れなの?」
「変装って言って欲しかったですけど、まあ正解です」
「フィア冴えてんなー! じゃ、早速羽織ってみよっかー」
「え、今から?」
「そっ、今スグ!」
反論するまもなく、あれよあれよと言う間に着せられてしまった。
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「おお、フィアすっげー可愛いーー!」
「本当ですね、似合ってますよソフィー」
「はいはい、ありがと。それより、結局なんで今変装することになってるのよ?」
仮装用の衣装かとも思ったがペラペラした生地ではなく、しっかりと目の詰まった上質な布地で艶やかな黒が美しい。
縁取りには鈍く光る金糸が使われており、フードの部分には何やら獣を象ったような刺繍がされていた。これ、狼の図案かな?
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「へぇそうなのーーってそうじゃなくて」
「はいはい、変装の理由な。ーー目には目を、ってヤツだよ」
「ーーは?」
「ソフィーの世界ではそう言うのでしょう?目には目を、歯には歯をーー噂には噂を、ですよ」
「いや、そんな説明の仕方をされてもさっぱりなんだけど……」
急にハンムラビ法典を使って喩えられても、全く何がなんだか分からない。
「分からないなら後で説明してやっから! とりあえずさっさと行こーぜ!」
「それがいいですね。では先に注意事項を三つほど。今からしばらくはお喋り禁止、いいと言うまでフードは絶対脱がないこと。あとはーー舌を噛まないように気をつけてくださいね?」
「え、一体何をーー」
する気なのか、と訊こうとしたところで。
シアンにサッとフードを目深に被らされ横抱きに抱きかかえられたと思えば、そのままドアと反対側に走り出された。
ーーえっ、えっっ?
ちょっと待って、そっちはーー
「ーーおっ先ッ! ィヤッホーーー!!」
マゼンタが飛び出したのは、開いたままの窓から見える青い空。
その光景に目を見開いた次の瞬間、内臓が迫り上がってくるような浮遊感に襲われる。
「いっ……やああああああぁぁーーーーーーー‼︎‼︎」
ーーお、落ちるっ!
まさかの紐なしバンジー!?
さっきの注意事項なんて頭からすっぽ抜けて、私はお姫様抱っこの体勢でシアンの首にしがみつきながら大絶叫したのだった。
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