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2章
17。資料を探してもらいました
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メイドさんに促され、本棚と本棚の間に置かれた椅子に座って待たせてもらう。
書庫という話の通りここにあるのは本ばかりで、机もなければ座る場所もほとんどなかった。
適当に近くの棚から本を取り、パラパラと捲ってみる。
それは近隣国家の特産品や風土に触れた書籍で、食文化についても詳しく載っていた。
読んでみると、周りの国々の食事事情はあまり芳しくないようだ。
この国のように和食やピザなどのバラエティーに飛んだ多国籍料理といった物ではなく、パンに肉や魚といったタンパク源、野菜に乳製品が、素材を活かした形で供されるらしい…要はシンプルに煮たり焼いたりしただけみたいだ。
その土地土地の特産品によって、メインに肉が多いのか魚が多いのか、くらいの違いでどこも似たり寄ったり。
つまり…この国が、特殊なのね。
何も知らなければなんでだと首を捻るところではあるが、ソフィアはもうこの国のトップに会っている。
上がアレだから、きっと神様だか迷い子達だかから好き放題情報を仕入れ、権力や魔力を使えるだけ使って、自国の文化レベルを爆上げしてるのだろう。
おかげで彩り豊かな食文化と綺麗な水や空気を享受できるので、それについては全然文句はない。
むしろもっとやってくださいお願いします!とエリザを拝み倒したいくらいだもの。
快適な生活ってスバラシイ。
「…何ニヤついてんの」
「え、いや、この国の女王様は神だなぁーと思って?」
「……うぇ、アレの信奉者とかキモチ悪い」
心の中でエリザに感謝を捧げていたら、ウサギさんが戻ってるのに気づかなかった。
考えてた事をそのまま口に出すと、虫を見るような目を向けられたのだけど…そこまで嫌がらなくてもいいじゃない。
「迷い子についての資料、ひとまずここ最近の分を持ってきた。今持ってきていない本もあるし一日で読める量じゃないから、何冊か見繕って持っていけばいい」
そう言って、抱えていた分厚いファイルや本を適当に棚に置いていく。
「借りちゃっていいの?貴重な資料でしょう?」
エリザだって、持ち出しは禁止だと言っていたと思うけど。
そう言ったが、首を横に振られる。
「持ち出し禁止は、城の外が対象。城の中で読むならここじゃなくてもいい」
それにここは飲食禁止。時間が掛かるだろうから、別の部屋でお茶でも飲みながら読むといいと言ってくれた。
…そうは言っても、お茶を飲みながら借りた本を読むっていいのかしら。
万が一汚したら、買って弁償とはいかないのがこの手の資料だ。
「ああそれならーー」
手に持った一冊を抱えて、ウサギさんが何やら呪文を唱える。
表面が薄く光ったと思ったらすぐにその光は消え、あとは特に変わった様子もない本を渡される。
「防水の魔法を掛けた。万が一汚したとしても、洗浄水を霧吹きででも掛ければ、汚れは落ちるから」
これで気にせず読める?と聞かれて感動しながら高速で頷く。
それを見て、ウサギさんは持ってきた本やファイルに次々と魔法をかけてくれた。
はあ、やっぱり魔法って便利ね。
「とっても助かります!ありがとう!」
にっこり笑ってお礼を言うと、少し怯んだ顔をされた。
あれーーひょっとして、この子軽くコミュ障なの?
口も悪いし愛想も悪いと思ったけど、人との会話が苦手、とか?
「私、ソフィアって言うの。あなたは?」
「……クレイ」
「クレイね。ありがとうクレイ!」
別に…と言ってそっぽを向いてしまった。ふふ、照れてるのかしら。
「クレイって、誰かのペットなの?」
「…それ、お前に関係ある?」
「ないけど、名前があるってことは誰かに飼われてるのかなって」
そう聞くと、クレイは心底嫌そうにため息をついた。
「ボクは城で雇われている。飼われているわけではないよ。名前はーー陛下につけられた」
「女王様に?」
「そう。…ボクを見て最初に”粘土みたいな色味の毛皮じゃの”って言って、そのせいでクレイって言われてる」
ーーーエリザ、そういえば貴女ってヒトの気にしてる事をザクザクと抉るところあったわよね…。
子供にも同じ事をしたら、そりゃ嫌われるわよ。
「…それは、エリザが悪いわね。こんな綺麗な銀色の毛並みに対して酷いことを言ったものだわ」
青味を感じさせる銀髪はヒトだとまずあり得ない色で、とても目を惹かれる。
室内でも十分に綺麗だけど…お日様の光に透かしたら、キラキラ輝いてさらに綺麗に見えるんじゃないだろうか。
そんな風に思ったことを話していたら、垂れ耳が片方ピクリ、と動いて視線がこちらに戻ってきた。
「ウサギでこの色の毛並みは、ブルーシルバーって言われる」
まあ銀髪って言い方でも、粘土よりはかなりマシだけど。といじけたように言われて、慌てて謝る。
自分の色に相当こだわりがあるみたいね。言い間違えないように気をつけないと。
私は、自分の髪色も瞳の色もあまり好きではないけど…クレイは、自分の色にきっと誇りがあるんだろう。
…ふと、マゼンタとシアンは自分たちの色をどう思っているのかな?と気になった。
書庫という話の通りここにあるのは本ばかりで、机もなければ座る場所もほとんどなかった。
適当に近くの棚から本を取り、パラパラと捲ってみる。
それは近隣国家の特産品や風土に触れた書籍で、食文化についても詳しく載っていた。
読んでみると、周りの国々の食事事情はあまり芳しくないようだ。
この国のように和食やピザなどのバラエティーに飛んだ多国籍料理といった物ではなく、パンに肉や魚といったタンパク源、野菜に乳製品が、素材を活かした形で供されるらしい…要はシンプルに煮たり焼いたりしただけみたいだ。
その土地土地の特産品によって、メインに肉が多いのか魚が多いのか、くらいの違いでどこも似たり寄ったり。
つまり…この国が、特殊なのね。
何も知らなければなんでだと首を捻るところではあるが、ソフィアはもうこの国のトップに会っている。
上がアレだから、きっと神様だか迷い子達だかから好き放題情報を仕入れ、権力や魔力を使えるだけ使って、自国の文化レベルを爆上げしてるのだろう。
おかげで彩り豊かな食文化と綺麗な水や空気を享受できるので、それについては全然文句はない。
むしろもっとやってくださいお願いします!とエリザを拝み倒したいくらいだもの。
快適な生活ってスバラシイ。
「…何ニヤついてんの」
「え、いや、この国の女王様は神だなぁーと思って?」
「……うぇ、アレの信奉者とかキモチ悪い」
心の中でエリザに感謝を捧げていたら、ウサギさんが戻ってるのに気づかなかった。
考えてた事をそのまま口に出すと、虫を見るような目を向けられたのだけど…そこまで嫌がらなくてもいいじゃない。
「迷い子についての資料、ひとまずここ最近の分を持ってきた。今持ってきていない本もあるし一日で読める量じゃないから、何冊か見繕って持っていけばいい」
そう言って、抱えていた分厚いファイルや本を適当に棚に置いていく。
「借りちゃっていいの?貴重な資料でしょう?」
エリザだって、持ち出しは禁止だと言っていたと思うけど。
そう言ったが、首を横に振られる。
「持ち出し禁止は、城の外が対象。城の中で読むならここじゃなくてもいい」
それにここは飲食禁止。時間が掛かるだろうから、別の部屋でお茶でも飲みながら読むといいと言ってくれた。
…そうは言っても、お茶を飲みながら借りた本を読むっていいのかしら。
万が一汚したら、買って弁償とはいかないのがこの手の資料だ。
「ああそれならーー」
手に持った一冊を抱えて、ウサギさんが何やら呪文を唱える。
表面が薄く光ったと思ったらすぐにその光は消え、あとは特に変わった様子もない本を渡される。
「防水の魔法を掛けた。万が一汚したとしても、洗浄水を霧吹きででも掛ければ、汚れは落ちるから」
これで気にせず読める?と聞かれて感動しながら高速で頷く。
それを見て、ウサギさんは持ってきた本やファイルに次々と魔法をかけてくれた。
はあ、やっぱり魔法って便利ね。
「とっても助かります!ありがとう!」
にっこり笑ってお礼を言うと、少し怯んだ顔をされた。
あれーーひょっとして、この子軽くコミュ障なの?
口も悪いし愛想も悪いと思ったけど、人との会話が苦手、とか?
「私、ソフィアって言うの。あなたは?」
「……クレイ」
「クレイね。ありがとうクレイ!」
別に…と言ってそっぽを向いてしまった。ふふ、照れてるのかしら。
「クレイって、誰かのペットなの?」
「…それ、お前に関係ある?」
「ないけど、名前があるってことは誰かに飼われてるのかなって」
そう聞くと、クレイは心底嫌そうにため息をついた。
「ボクは城で雇われている。飼われているわけではないよ。名前はーー陛下につけられた」
「女王様に?」
「そう。…ボクを見て最初に”粘土みたいな色味の毛皮じゃの”って言って、そのせいでクレイって言われてる」
ーーーエリザ、そういえば貴女ってヒトの気にしてる事をザクザクと抉るところあったわよね…。
子供にも同じ事をしたら、そりゃ嫌われるわよ。
「…それは、エリザが悪いわね。こんな綺麗な銀色の毛並みに対して酷いことを言ったものだわ」
青味を感じさせる銀髪はヒトだとまずあり得ない色で、とても目を惹かれる。
室内でも十分に綺麗だけど…お日様の光に透かしたら、キラキラ輝いてさらに綺麗に見えるんじゃないだろうか。
そんな風に思ったことを話していたら、垂れ耳が片方ピクリ、と動いて視線がこちらに戻ってきた。
「ウサギでこの色の毛並みは、ブルーシルバーって言われる」
まあ銀髪って言い方でも、粘土よりはかなりマシだけど。といじけたように言われて、慌てて謝る。
自分の色に相当こだわりがあるみたいね。言い間違えないように気をつけないと。
私は、自分の髪色も瞳の色もあまり好きではないけど…クレイは、自分の色にきっと誇りがあるんだろう。
…ふと、マゼンタとシアンは自分たちの色をどう思っているのかな?と気になった。
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