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2章

閑話3★ 興味深いオモチャ③

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 時系列として1章12話-37話の間になります。
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«マゼンタ視点»



最初はどうやって飼い主になるよう言いくるめようかと思ったけど、どうも彼女はこの世界を夢だと勘違いしたらしい。
意外とあっさり了承をもらえて拍子抜けした。
ま、それもこれも詳しいことを何も話していないからだろうな。

けどどうせ短い付き合いなら、一から十まで説明する必要なんてないよな?


その後街に出て首輪の調達や家探しなんかをしながら、三人で一緒に過ごした。

赤くなったり、青くなったり。笑ったり、怒ったり。
オレらにとって当たり前のことでも感動してはしゃいだり。
転移するとフラフラになってしまって、不本意そうな顔をしながらもオレにしがみついてきたり。

何より少し揶揄からかうだけで面白いように反応して、くるくる変わる表情は見ていて全然飽きなかった。

たまに目の前のオレらじゃない何かを見るような様子で苦しそうにして、泣きそうな顔もしていた。

ーーそういうのは、見ていてもあんまり面白くなかった。

結果として、無理やり手に入れた新しく飼い主オモチャはかなりの拾い物だった。


オレもシアンもうっかり名前を聞きそびれていて、珍しくたまたま店に居たマヤに最初に飼い主ソフィアの名前を呼ばれてしまう、なんて失敗もしたけど。
そのせいで勝手に落ち込んでたオレらに、ソフィアはわざわざおみやげを探して買ってきてくれた。

別に自分のせいで凹んでるわけでもないのに気にしてくれたんだよな。
誰かに気を遣われるのなんて鬱陶しいって思ってたけど、なんだか普通に嬉しかった。

そのせいでテンション上がっちまって、キャットニップ入りのお茶を飲み過ぎてしまったのはまあご愛敬?ってことでーーうん、やっぱりこれも失敗だったな。
飲み過ぎで結局潰れちゃったし。やっちまった。


ちょっと息が苦しくなってベッドに突っ伏してたら、ソフィアが嬉しそうにオレの頭を撫でてきた。
あー、昨日からすっげー耳気にしてたもんな。触るのずっと狙ってたのか。

まあ飼い主に触られるならいいか、とそのままにしていたらビックリする程気持ち良くて、触られるたび気の抜けた声が出てしまう。
ゴロゴロしながらもっとと強請ねだって、さらに頭を撫でてもらった。


ーーこれヤバい、クセになりそう。
いつまででも触ってほしくなる。

髪の中を滑る指のくすぐったいような感触も。

いつもの睨みつけてくる顔も、心配そうに覗き込む顔も。

どれもすごくゾクゾクするし…できることならずっとオレだけ構ってほしい。


けど、彼女はオレ達二人の飼い主だから。勝手に独り占めするわけにはいかないよな。
もちろんオレのでもあるけど、兄弟シアンのでもあるし。

何より先に欲しいと言ったのはシアンだから、オレが後から横取りするのは子供っぽいと思うんだ。


そう思って我慢してたのに、オレのことを撫でてくれてたソフィアの手をシアンが止めた。
なんだよイイトコだったのにーーと思いつつ倒れたまま横目で見上げると、シアンの様子がおかしかった。

なんかもう、セリフも手つきもいちいちヤラシい。
……アイツまさか欲情してサカッテんじゃないだろうな?

確かにキャットニップにはソッチの効果もあるとは言われているけど、飼い主相手にだぞ?


それはさすがにマズいんじゃねーの?と思っている内に悲鳴が上がって慌てて顔を上げれば、シアンがソフィアの顔や耳をペロペロと舐めていた。
ぱっと見は揶揄うのが楽しくて仕方ない、というようなとてもいい笑顔だったがーーその目は怖いくらい真剣マジで、全く笑っていなかった。

え、マジで?シアンとっては人間もに含まれてたのか?

吃驚してシアンを見ていると、目線がオレの方に向けられた。

“ーーキミに彼女ソフィアはあげませんよ?”

捕まえたソフィアの上で口の端を二ッと引き上げ、声を出さずに話してくる。



ーーーまさか、一目惚れって言ったのは冗談じゃなかったのか?

一緒になって飼い主を揶揄っているつもりだったけど、ひょっとしたらシアンは最初から揶揄っているつもりじゃなくて、本気で狙ってた?

嘘だろ。あの兄弟シアンが、そんな。



でも、もしそうなら。
コイツがハナから二人のでなく、飼い主を自分だけのものにするつもりで動いてるなら。


ーーオレが遠慮してやる理由なんてない、よな?

そっちがそのつもりなら、オレだって全力でりにいくけど。
世にも珍しい飼い主オモチャを、何もせずむざむざ渡してやるなんてオレらしくないし。


…どっちの手に落ちるか、楽しい楽しい競争ゲームといこうか? なあ兄弟シアン
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