上 下
50 / 174
2章

2。親切心100%?

しおりを挟む
「あ、ソフィア起きてるー!おっはよー!」


ーーーードアを開けた瞬間に、飼い猫にもの凄い勢いで飛びつかれて床に押し倒されました。


爽やかな朝、とは言い難いわね……。


これが本物リアルの猫だったら、頭の中にピンクのお花が咲き乱れるくらいの多幸感を味わって、もう今日一日頑張れるわっ!て感じでギューって抱きしめ返す処なのだけど……。


「マゼンタ……さっさとどいてくれるかしら?」
スンッとした顔で抑揚なく指示を出す。

前も言ったが、猫耳つきのお兄さんは対象外である。

コレに関してはイケメン無罪も認めない。


「ひっどッ!オレ体重掛けてないじゃん!」
「……そういう問題じゃないって分かって言ってる?」

体重をかけないように腕を突っ張っている事も、色々ぶつけない様にコケた時に後頭部と腰に手を回してくれたのも気付いてはいるが。

ーー大事なことだから二回言おう。そういう問題じゃあないのである。

「アンタね……前にも言ったかもだけど、スキンシップが過剰すぎんのよ。ちょっとは自重してくれない?」

ちょっとどころかゼロにしてくれたって良いのだけど……あ、でも転移の後は掴まらせては欲しいから完全にゼロは困るわ。
起きてる時にヤラレると、本気で立てなくなるし。


ああ、そういえば。ひとつ確認しておかないとだった。

「ねえ、マゼンタ。私、どうしてこっちの家にいるのかしら」
立ち上がるのに手を貸してもらいながら、ジト目で見上げる。

「え、そりゃモチロン転移してだよ!朝になってから動くより時間を有効に使えるだろ?」
「……そう。それで、どちらが考えてどちらが実行したのかしら?」
主犯も実行犯も有罪だが、どっちかと言えば主犯が問題だ。

「考えたのはオレ!初日に気を失ってる間に転移した時は、ソフィアしんどくなさそうだったじゃん?だから今回も、寝ている間に転移させとけば身体ラクだろうって思って!」
なっ、イイコト気づいただろ?オレすごくね?!ってコイツ……全く悪いことしたって思ってないわね?
キラキラした目で真っ直ぐ見つめて、褒めて褒めてってするのやめてほしい。

悪意があってやるのはもってのほかだが、悪意がなくてもやって良いわけじゃないのだ。
ここはちゃんと釘を刺さないといけないわね。

ーーうっ、でもとっても怒りづらい……猫耳ピコピコさせながら見つめるなんてズルすぎるわよっ……!

褒めるでも叱るでもなくただ見ていると、どうしたのって顔でコテッ、と首を傾げられた。
当然、頭についた猫耳もぐりん、っと動く。

くっ、なんて事……猫耳の破壊力が凄すぎるわっ!
今すぐわしゃわしゃって撫で回して、あのビロードの様な手触りを堪能したい……!!

ああでもどうしよう、ここで圧に屈して褒めたら、次もきっと同じ事するわよね。

飼い主として、躾をするのは義務なのよ。しっかりしなさいソフィア……!


自分を叱咤して、マゼンタの方をキッと睨む。

「マゼンタ……夜中に女性の部屋に勝手に入るのは犯罪よ」
人間の男女で考えれば夜這いそのものだ。同意がないなら警察が呼ばれる。

「そもそも夜中じゃなくても、鍵のかかっている部屋に無断で入るのはしちゃいけない事なの」
何を当たり前な、って話だが、相手は猫だ。ヒトの常識は持っていないものと思わなきゃ。

「えー、だってノックなんかしたらソフィア起きちゃうじゃん。寝てる間に転移しとこーとしてたのに、それじゃ意味ねえだろ?」
音を立てないようにピッキングの時だってめっちゃ気を遣ったんだぜ?!と不満そうな顔。
いや、だから問題は……ってもういいわ。

「はあ、もう……とにかく、夜中に女の人の部屋にノックもしないで入っちゃダメなの!これ絶対!用事があったとしても、寝てそうだったらまた時間を改めなさい」
「ちぇっ、分かったよ。気をつける」
「気をつけるじゃないの。もうヤらないって約束してっ」
「あーもー!わーったって!もうしない!!」

迷い子の感覚ってほんと分かんねーなあと文句を言いつつ、とりあえずごめんな?と謝ってくれた。
一応怒っていることは伝わったらしい。

よしよし。あんまり納得はしていなさそうだけど、約束して謝ってくれたなら一歩前進だわ!
これからちょっとずつ、お互いの感覚の違いを理解してもらえれば良いわよね。



ーーあれ、そういえば。


私、昨日のハーブの件、まだ二人に謝ってなかったわ……。




しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜

流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。 偶然にも居合わせてしまったのだ。 学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。 そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。 「君を女性として見ることが出来ない」 幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。 その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。 「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」 大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。 そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。 ※ ゆるふわ設定です。 完結しました。

愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた

迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」  待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。 「え……あの、どうし……て?」  あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。  彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。 ーーーーーーーーーーーーー  侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。  吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。  自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。  だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。  婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。 ※基本的にゆるふわ設定です。 ※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます ※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。 ※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。

処理中です...