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1章
42★悪意と拒絶に満ちた攻防
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ほぼ同じ時刻、二階の奥の部屋にて。
一人と二匹がそれぞれ悪意と拒絶に満ちた眼差しで相対していた。
「ほぉーら、おチビちゃん達~。マヤさんが看病に来てあげたわよっ!」
ダンッと氷水の桶を床に置いてから、高らかに宣言するマヤ。
「……アンタの看病とか嫌がらせでしかないのでお断りします」
「てか絶対マジメに診る気ねえだろ……」
「何よぅ、ホンっと可愛くないチビ助達ねっ!黙ってありがたく受け取りなさいよ!」
そう言ってバシャ!バシャ!と絞りの甘い濡れタオルを投げつけるマヤ。
「冷たッ?!」「……やっぱり嫌がらせ……」と文句を言いつつ器用にタオルを受け取り額に当てる猫二匹は、相変わらずぐでんぐでんの脱力モードではあったが、呼吸に関しては先程に比べると随分マシな感じになっていた。
「ふうん?思ったよりは大丈夫そうねぇ~?グッタリはしてるケド、全然興奮してるって感じじゃないし?ーー猫にとってはアレは媚薬って聞いてたんだけど、噂って当てにならないのねぇ?」
期待ハズレだわぁ、もっと苦しんでのたうち回ってると思ったのに残念ねぇ、と愉しげに笑うマヤを見て、オマエいっぺん死んでこいと毒づくマゼンタ。
一方のシアンは憮然とした顔で
「アンタ相手に興奮とかあり得ないだけですよ。さっきまでどれだけガマンしたと……それで、気は済みましたか。どうせアンタが彼女を唆したんでしょう」
とため息をついた。
「あらあらあら~相変わらず勘が良いわねえ、感心しちゃう♪……でもハズレ。唆すも何も、ソフィアさんには猫の好きなハーブとしか伝えてないわぁ~」
あの子は100%善意でやったのよ!勘違いしないでよねっ!と何故だか得意げなマヤに対し「じゃあ100%悪いのオマエじゃんよ……」とマゼンタは頭を抱えた。
マヤはさらに「ちなみにハーブを寄越したのはガイよ♪」とあっさり告げ口し、「アイツも今度シメてやらないと……」と呻くシアンも同じように頭を抱えている。
「うふふふ~。ほーんとイイ気味だわぁ。……純情なソフィアさんを謀った罰よ、甘んじて受けなさいな」
聡いお猫様なら、これがなんの罰だかも分かっているのかしらぁ?とマヤが歌うように問うた。かなり言い方にトゲがある。
「……オマエ何処まで知ってんだよ」
マゼンタが疎ましげな目でジトっと見つめながら、低い声で尋ねた。
しっぽはパタパタと忙しなく動き、不快感を露わにしている。
「そうねえ~。彼女がおそらく迷い子でぇー。アンタ達に騙されて血の宣誓までさせられてる、ってくらいかしらぁ」
ホントあの子が知らないのを良いことに、とんでもない事に巻き込んだものね?と全く笑っていない目で二匹を睨みつけた。
「だって欲しかったんだよ、仕方ないだろー?」
「何よその我儘な理由?!そんなオモチャが欲しかった、くらいのノリでいたいけな女の子に手を出してんじゃないわよッ!」
「猫はワガママなんですよ、知らなかったんですか?」
馬鹿にした様にフッと笑みを零したシアンに向かって濡れタオルがいくつも投げつけられたが、全て綺麗にキャッチされるーーろくに絞ってなかったので、飛び散った滴でシーツはべっちゃべちゃだったが。
「ああもう本ッ当ーにムカつくわ!一発くらい大人しく当たっときなさいよぉ!」
「誰がすき好んで濡れ鼠になりたいっていうんですか。お断りします」
「……いや、もう十分濡れちまってると思うケド?」
湿った髪を摘んでマゼンタがあーあ、と項垂れた。
「ふっふーんだ、ざまぁないわねっ!今日はこのくらいにしてあげるわぁ~」
「……なんだか負け惜しみみた「うっさい、お黙りバカ猫!」……」
一向に終わらない嫌味と悪態の応酬にいい加減疲れてきたのか、二匹が黙る。
それに満足気な笑みを浮かべたマヤが「ああそうだ、アンタ達今日此処に泊める事にしたから」と追い討ちをかけた。
「ーー!なんでだよ!もう家借りたんだからココに泊まる必要ねえだろ?!」
「契約金を受け取る前だもの、まだあの家は貸してないわよぅ?それに、ソフィアさんに今日はウチに泊まりたいってお願いされちゃったもの~」
アンタ達、今日何回も転移に付き合わせたらしいわねぇ?とトドメを刺され、拒否権がないと理解した二匹はすごすごと、文字通りしっぽを巻いて会話から逃げ出すしかなかった。
一人と二匹がそれぞれ悪意と拒絶に満ちた眼差しで相対していた。
「ほぉーら、おチビちゃん達~。マヤさんが看病に来てあげたわよっ!」
ダンッと氷水の桶を床に置いてから、高らかに宣言するマヤ。
「……アンタの看病とか嫌がらせでしかないのでお断りします」
「てか絶対マジメに診る気ねえだろ……」
「何よぅ、ホンっと可愛くないチビ助達ねっ!黙ってありがたく受け取りなさいよ!」
そう言ってバシャ!バシャ!と絞りの甘い濡れタオルを投げつけるマヤ。
「冷たッ?!」「……やっぱり嫌がらせ……」と文句を言いつつ器用にタオルを受け取り額に当てる猫二匹は、相変わらずぐでんぐでんの脱力モードではあったが、呼吸に関しては先程に比べると随分マシな感じになっていた。
「ふうん?思ったよりは大丈夫そうねぇ~?グッタリはしてるケド、全然興奮してるって感じじゃないし?ーー猫にとってはアレは媚薬って聞いてたんだけど、噂って当てにならないのねぇ?」
期待ハズレだわぁ、もっと苦しんでのたうち回ってると思ったのに残念ねぇ、と愉しげに笑うマヤを見て、オマエいっぺん死んでこいと毒づくマゼンタ。
一方のシアンは憮然とした顔で
「アンタ相手に興奮とかあり得ないだけですよ。さっきまでどれだけガマンしたと……それで、気は済みましたか。どうせアンタが彼女を唆したんでしょう」
とため息をついた。
「あらあらあら~相変わらず勘が良いわねえ、感心しちゃう♪……でもハズレ。唆すも何も、ソフィアさんには猫の好きなハーブとしか伝えてないわぁ~」
あの子は100%善意でやったのよ!勘違いしないでよねっ!と何故だか得意げなマヤに対し「じゃあ100%悪いのオマエじゃんよ……」とマゼンタは頭を抱えた。
マヤはさらに「ちなみにハーブを寄越したのはガイよ♪」とあっさり告げ口し、「アイツも今度シメてやらないと……」と呻くシアンも同じように頭を抱えている。
「うふふふ~。ほーんとイイ気味だわぁ。……純情なソフィアさんを謀った罰よ、甘んじて受けなさいな」
聡いお猫様なら、これがなんの罰だかも分かっているのかしらぁ?とマヤが歌うように問うた。かなり言い方にトゲがある。
「……オマエ何処まで知ってんだよ」
マゼンタが疎ましげな目でジトっと見つめながら、低い声で尋ねた。
しっぽはパタパタと忙しなく動き、不快感を露わにしている。
「そうねえ~。彼女がおそらく迷い子でぇー。アンタ達に騙されて血の宣誓までさせられてる、ってくらいかしらぁ」
ホントあの子が知らないのを良いことに、とんでもない事に巻き込んだものね?と全く笑っていない目で二匹を睨みつけた。
「だって欲しかったんだよ、仕方ないだろー?」
「何よその我儘な理由?!そんなオモチャが欲しかった、くらいのノリでいたいけな女の子に手を出してんじゃないわよッ!」
「猫はワガママなんですよ、知らなかったんですか?」
馬鹿にした様にフッと笑みを零したシアンに向かって濡れタオルがいくつも投げつけられたが、全て綺麗にキャッチされるーーろくに絞ってなかったので、飛び散った滴でシーツはべっちゃべちゃだったが。
「ああもう本ッ当ーにムカつくわ!一発くらい大人しく当たっときなさいよぉ!」
「誰がすき好んで濡れ鼠になりたいっていうんですか。お断りします」
「……いや、もう十分濡れちまってると思うケド?」
湿った髪を摘んでマゼンタがあーあ、と項垂れた。
「ふっふーんだ、ざまぁないわねっ!今日はこのくらいにしてあげるわぁ~」
「……なんだか負け惜しみみた「うっさい、お黙りバカ猫!」……」
一向に終わらない嫌味と悪態の応酬にいい加減疲れてきたのか、二匹が黙る。
それに満足気な笑みを浮かべたマヤが「ああそうだ、アンタ達今日此処に泊める事にしたから」と追い討ちをかけた。
「ーー!なんでだよ!もう家借りたんだからココに泊まる必要ねえだろ?!」
「契約金を受け取る前だもの、まだあの家は貸してないわよぅ?それに、ソフィアさんに今日はウチに泊まりたいってお願いされちゃったもの~」
アンタ達、今日何回も転移に付き合わせたらしいわねぇ?とトドメを刺され、拒否権がないと理解した二匹はすごすごと、文字通りしっぽを巻いて会話から逃げ出すしかなかった。
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