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1章
27。お買い物をしましょう
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現在、私はマヤさんと洋服屋さんに来ている。
お近づきの印に夕食でもと言われたのを、まだ買い物に行かないといけないのでと断ったのだがーー
「なら一緒に買い物に行きましょう!」
オススメのお店も教えてあげるわ!とあっさり押し切られたのだった。
シアンとマゼンタはと言うと、その会話の間も茫然自失といった感じで、何も口を挟むことがなかった。
……?二人ともどうしちゃったんだろう?
何かショックな事でもあったのだろうか。
とにかく「文句がないのは了承ってことよ!」と、そのままマヤさんに買い物に連れ出されて現在に至っている。
「ごめんなさいねぇ~私の服を貸してあげられたら良かったのだけど……」
マヤさんが様々な服を物色しながら、申し訳なさそうに眉を下げる。
……ええ、サイズが合いませんよね。分かっていますとも。
主に胸周りの布地が余っちゃいますよね。
あるともないとも言いづらい中途半端サイズの自分の胸を見下ろし、軽くため息をつく。
ほんと昨日からため息ばっかりだなぁ……。
夢の中でまで劣等感を刺激されたくないのだけど。
どうかどうか、早く目が覚めますように!
気を取り直して目の前に掛かっている服を順番に見て、いくつかを手に取る。
この世界の服にはサイズ表記がないのが不便だ。目視である程度分かるにせよ、最終的には実際に着てみるしかない。
「試着室はこっちよ!着たら呼んで見せて頂戴ね!」
あと、コレとかコレなんかも似合うと思うわ!と言われて山のように服が追加される。
洗浄魔法がある世界なんだからこんなには必要ないと思うのだけど……2、3着サイズが合うのを選んで、残りは後で戻しておこう。
ひとまずダークグリーンの膝丈ワンピースを試着する。袖はレースで今の時期でも涼しそう。
うん、少しウエストが緩いけど、リボンがついてるから結べばきっと大丈夫。
ちなみに持ち込んだのは全てワンピース。コーディネートを考えなくていいって良いよね!
マヤさんに見せると「似合うわ!」「女神様みたいよ!」とこれまた大絶賛。
思わず乾いた笑いが出てしまうが、彼女にしたらこれが普段通りのテンションらしい。
ーー慣れるかなぁ、これ。
聞けば多少大きいくらいはお店の人に言えば布を詰めてくれるらしいので、着心地重視で選ぶ。
他に五部袖のネイビーのワンピースと、オフホワイトのノースリーブのリネンワンピ。
朝晩冷えることもあるから羽織り物もあった方が良いと言われ、サマーイエローのカーディガンとオフホワイトのロングカーデも追加した。色はマヤさんに指定された。
花柄とかフリル付きとかも推されたけど固辞しておく。
あとは日避け用のつば広ストローハット、下着に肌着、パジャマが3セットずつ。ハンカチとハンドタオル、中くらいサイズの手提げバッグ。
靴は売っていないらしく、また後日別の店で探すことになった。
全部まとめると結構な荷物になってしまったが、後で不動産屋さんに届けてくれるらしい。帽子とハンカチはすぐ使いたかったので、手提げバッグに入れてもらってその場で受け取る。
支払いはマヤさんが立て替えてくれた。
バイトしたいと話を出した時に、マゼンタから金貨を一枚渡されていたので、当初はそれを使うつもりだったのだけど。
マヤさんに見せると此処だと遣いづらいからやめておくよう言われたのだ。
遣えない、でなく遣いづらいと言われたのがちょっと引っかかる。
多分だけど、金額が大きすぎて、とかそっち方向のニュアンスを感じた。
確かにこの金貨、なんだか大きめなのよね……
……後でちゃんと確認しておこう。
「気にしないで!家の手続き費用と一緒に、あとで猫共にバッチリ請求しておくから!」
遠慮なく貢がせておけばいいのよっ!と言われる。なんだかどこぞの悪女になった気分。
この世界だとペットにタカるのって普通なのかしら?
確かに、必要なものは出すとは言われていたけど。なんだか申し訳なさが否めない。
二匹揃って放ったらかしにした上、手続き丸投げして出てきちゃったし。
何も手伝わずに買い物に出掛けて自分の物だけ買うってどうなのよ。
ーー何よりシアンとマゼンタの、出掛ける時の心此処にあらずといった様子が気になっていた。
……私は全然気づかなかったけど、きっと二人にとって凹むような何かがあったんだろう。
二人を元気付けられるものとか、何かあるといいのだけど。あんなんじゃこちらまで調子が狂ってしまうし、早く立ち直ってほしい。
「あの、マヤさん。猫にあげて喜ばれるおみやげとかって、何かないですか?」
「あら?ひょっとしてソフィアさん……あの二人にプレゼントを!?」
キャーッと黄色い声を上げながらマヤさんが自分の頬に両手をあげて悶えている。
これが麗しの主従愛ってヤツね!それともひょっとして恋?恋なの!?と意味不明な事を呟いて盛大に勘違いなされているが……うん、訂正するのも面倒だから放っておこう。
訂正したところで聞き入れてもらえない気もするし。
「ええと、なんだかさっき凹んでる感じっていうか……元気なかった気がするので。猫の気分が上がるものってありませんかね?」
「んんー?定番だとオヤツかオモチャよね。でもオモチャは足りてると思うわ」
貴女が居るんだものね、と続けられてゲンナリする。
……他所様から見ても、私って二人のオモチャなのか。
「オヤツなら、ちょうどそこの屋台に良いのが売ってるわよ!」
そう言ってマヤさんが指した先にはポップコーンの屋台。
ーーえ、猫にポップコーン?
お近づきの印に夕食でもと言われたのを、まだ買い物に行かないといけないのでと断ったのだがーー
「なら一緒に買い物に行きましょう!」
オススメのお店も教えてあげるわ!とあっさり押し切られたのだった。
シアンとマゼンタはと言うと、その会話の間も茫然自失といった感じで、何も口を挟むことがなかった。
……?二人ともどうしちゃったんだろう?
何かショックな事でもあったのだろうか。
とにかく「文句がないのは了承ってことよ!」と、そのままマヤさんに買い物に連れ出されて現在に至っている。
「ごめんなさいねぇ~私の服を貸してあげられたら良かったのだけど……」
マヤさんが様々な服を物色しながら、申し訳なさそうに眉を下げる。
……ええ、サイズが合いませんよね。分かっていますとも。
主に胸周りの布地が余っちゃいますよね。
あるともないとも言いづらい中途半端サイズの自分の胸を見下ろし、軽くため息をつく。
ほんと昨日からため息ばっかりだなぁ……。
夢の中でまで劣等感を刺激されたくないのだけど。
どうかどうか、早く目が覚めますように!
気を取り直して目の前に掛かっている服を順番に見て、いくつかを手に取る。
この世界の服にはサイズ表記がないのが不便だ。目視である程度分かるにせよ、最終的には実際に着てみるしかない。
「試着室はこっちよ!着たら呼んで見せて頂戴ね!」
あと、コレとかコレなんかも似合うと思うわ!と言われて山のように服が追加される。
洗浄魔法がある世界なんだからこんなには必要ないと思うのだけど……2、3着サイズが合うのを選んで、残りは後で戻しておこう。
ひとまずダークグリーンの膝丈ワンピースを試着する。袖はレースで今の時期でも涼しそう。
うん、少しウエストが緩いけど、リボンがついてるから結べばきっと大丈夫。
ちなみに持ち込んだのは全てワンピース。コーディネートを考えなくていいって良いよね!
マヤさんに見せると「似合うわ!」「女神様みたいよ!」とこれまた大絶賛。
思わず乾いた笑いが出てしまうが、彼女にしたらこれが普段通りのテンションらしい。
ーー慣れるかなぁ、これ。
聞けば多少大きいくらいはお店の人に言えば布を詰めてくれるらしいので、着心地重視で選ぶ。
他に五部袖のネイビーのワンピースと、オフホワイトのノースリーブのリネンワンピ。
朝晩冷えることもあるから羽織り物もあった方が良いと言われ、サマーイエローのカーディガンとオフホワイトのロングカーデも追加した。色はマヤさんに指定された。
花柄とかフリル付きとかも推されたけど固辞しておく。
あとは日避け用のつば広ストローハット、下着に肌着、パジャマが3セットずつ。ハンカチとハンドタオル、中くらいサイズの手提げバッグ。
靴は売っていないらしく、また後日別の店で探すことになった。
全部まとめると結構な荷物になってしまったが、後で不動産屋さんに届けてくれるらしい。帽子とハンカチはすぐ使いたかったので、手提げバッグに入れてもらってその場で受け取る。
支払いはマヤさんが立て替えてくれた。
バイトしたいと話を出した時に、マゼンタから金貨を一枚渡されていたので、当初はそれを使うつもりだったのだけど。
マヤさんに見せると此処だと遣いづらいからやめておくよう言われたのだ。
遣えない、でなく遣いづらいと言われたのがちょっと引っかかる。
多分だけど、金額が大きすぎて、とかそっち方向のニュアンスを感じた。
確かにこの金貨、なんだか大きめなのよね……
……後でちゃんと確認しておこう。
「気にしないで!家の手続き費用と一緒に、あとで猫共にバッチリ請求しておくから!」
遠慮なく貢がせておけばいいのよっ!と言われる。なんだかどこぞの悪女になった気分。
この世界だとペットにタカるのって普通なのかしら?
確かに、必要なものは出すとは言われていたけど。なんだか申し訳なさが否めない。
二匹揃って放ったらかしにした上、手続き丸投げして出てきちゃったし。
何も手伝わずに買い物に出掛けて自分の物だけ買うってどうなのよ。
ーー何よりシアンとマゼンタの、出掛ける時の心此処にあらずといった様子が気になっていた。
……私は全然気づかなかったけど、きっと二人にとって凹むような何かがあったんだろう。
二人を元気付けられるものとか、何かあるといいのだけど。あんなんじゃこちらまで調子が狂ってしまうし、早く立ち直ってほしい。
「あの、マヤさん。猫にあげて喜ばれるおみやげとかって、何かないですか?」
「あら?ひょっとしてソフィアさん……あの二人にプレゼントを!?」
キャーッと黄色い声を上げながらマヤさんが自分の頬に両手をあげて悶えている。
これが麗しの主従愛ってヤツね!それともひょっとして恋?恋なの!?と意味不明な事を呟いて盛大に勘違いなされているが……うん、訂正するのも面倒だから放っておこう。
訂正したところで聞き入れてもらえない気もするし。
「ええと、なんだかさっき凹んでる感じっていうか……元気なかった気がするので。猫の気分が上がるものってありませんかね?」
「んんー?定番だとオヤツかオモチャよね。でもオモチャは足りてると思うわ」
貴女が居るんだものね、と続けられてゲンナリする。
……他所様から見ても、私って二人のオモチャなのか。
「オヤツなら、ちょうどそこの屋台に良いのが売ってるわよ!」
そう言ってマヤさんが指した先にはポップコーンの屋台。
ーーえ、猫にポップコーン?
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