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13。いきなり遭難とか聞いてない
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異世界生活、今日でちょうど十日目。
私シーナ、今も絶賛漂流中です!
ーーはぁ、もう。どうしてこうなった。
魔法で風を起こせば行きたい方向には進めるけど、そもそも現在地点も分からないし陸地の方向も不明。
ってなると自然の潮の流れに任せて放っておいても変わらないので、船の操縦は早々に諦めた。
こんな予定ではなかったんだけど、今さら言っても仕方がない。
ユリウスってば、あれから呼んでも全然来てくれないし。打つ手なしってやつですよ。
で、代わりに何をしているかというと。
「んー、やっぱり周囲の魔素を利用する系は全滅かぁ~。逆に自分の魔力のみで発動させる魔法は普通に使えるね」
この世界での魔法の検証に精を出していました。
できることとできないことは早めにはっきりさせた方がいいからね。
とりあえず分かったこととして、
・大気中の魔素は薄いが、ゼロではない
・よって“探索魔法“などの魔法も一応使えるが、効果が激減する
・生活魔法や回復魔法の効果は元の世界と同等
・その他、自身の魔力のみで影響を生み出す系統の魔法の効果はおそらくそのまま
という感じ。
それ以上はこんな何もない、誰もいない海の上では試しようがない。
特に攻撃魔法系は万が一ここで暴発させたら乗ってる船すら失うことになるので、試したい気持ちはあるもののグッと堪えるしかないわけで。
結果どうなるかというと。
「……暇だなぁ~~……」
やれることが限られている中、異世界生活十日目にして、私は退屈で死にそうになっていたのだ。
◇
死ぬほどヒマ、ということを除けば、実は漂流生活は意外と快適だったりする。
なんせこれから遠い国へ向けて出航したばかりの船だったから、水や食料などの物資も豊富。積み荷も中身は果物だったし、今となっては船の持ち主もこの世界にはいないのでこれもありがたく頂戴した。
そもそも無限収納の中には元の世界で調達した物資が大量に入っているので食べる物が不足するとかはあり得ない。
生活魔法も問題なく使えたから、浄化魔法で衛生面も完璧。
おまけに空間魔法を駆使して丸ごと取り込んだコテージの一室だけを取り出すことで、居住空間もばっちり! ベッドだってふっかふかだよ!
なのでこのまま何ヶ月漂流したままだろうと、とりあえず死ぬことはないのだけど……。
「うー……やっぱり耐えられない! 魔法を好きに試せないのも辛いし、このまま誰とも話せないとかホント無理ーーっふぎゃっ!?」
急に船に大きな衝撃と振動が加わり、船体が一気に傾ぐ。
咄嗟にマストに掴まって落下は回避したけど、転覆するんじゃないかって勢いで右に左にぐわんぐわん揺れ、なす術なくしがみつくこと数分。
ようやく揺れが収まって、私は詰めていた息を吐きつつ、周りを確認しようと顔を上げた。
「な、何、今の。ひょっとして地震ってやつかしらーーっうぉわぁあッ?!!?!?」
はっ、いけない。さっきも今も、貴族令嬢どころか女の子として出してはいけない声を出してしまった。
でっ、でもでもコレはさすがにしょーがないでしょ?
ーー目の前にいたのは、怪鳥。
私など一飲みにできるだろう巨大な鳥型の魔物だった。
『ウルサイわねこの子。可愛らしいお人形さんだと思って拾いに来たの二、興醒めだわァ~』
「な、なんでこんなとこに魔物がいるの? 危なくない場所だと思ってたのに!?」
急に目の前にモンスターが出てきたら、誰だって焦って奇声の一つや二つ上げちゃうもんだよね?!
普段なら攻撃魔法をぶっ放して追い払うところだけど、この船の上でそんなことできないし……。
ひとまず結界を張って防御に専念しようとしていたら、上から不満そうな声が降ってきた。
『まっ、なんて失礼なノ! アタクシのように美しいウミネコをつかまえテ、言うに事欠いて魔物ですッて?! 信じられないワっ!』
「……はい? ウミネコ?」
『ウミネコってのはカモメの仲間ヨ。何ヨアンタ、まさかカモメも見たことないって言うノ?』
「いえ、カモメは見たことあるけど……動物がしゃべるとか聞いたことないし……?」
え、本当に魔物じゃないの? このサイズで?
『そう言えば、不思議ネ。なんで人形と普通に会話が出来てるのかしラ?』
異世界生活十日目。
私はここに来て初めて出会った異世界の生き物ーー自称ウミネコの巨大鳥と一緒に首をひねり、お互いに見つめ合うことになった。
私シーナ、今も絶賛漂流中です!
ーーはぁ、もう。どうしてこうなった。
魔法で風を起こせば行きたい方向には進めるけど、そもそも現在地点も分からないし陸地の方向も不明。
ってなると自然の潮の流れに任せて放っておいても変わらないので、船の操縦は早々に諦めた。
こんな予定ではなかったんだけど、今さら言っても仕方がない。
ユリウスってば、あれから呼んでも全然来てくれないし。打つ手なしってやつですよ。
で、代わりに何をしているかというと。
「んー、やっぱり周囲の魔素を利用する系は全滅かぁ~。逆に自分の魔力のみで発動させる魔法は普通に使えるね」
この世界での魔法の検証に精を出していました。
できることとできないことは早めにはっきりさせた方がいいからね。
とりあえず分かったこととして、
・大気中の魔素は薄いが、ゼロではない
・よって“探索魔法“などの魔法も一応使えるが、効果が激減する
・生活魔法や回復魔法の効果は元の世界と同等
・その他、自身の魔力のみで影響を生み出す系統の魔法の効果はおそらくそのまま
という感じ。
それ以上はこんな何もない、誰もいない海の上では試しようがない。
特に攻撃魔法系は万が一ここで暴発させたら乗ってる船すら失うことになるので、試したい気持ちはあるもののグッと堪えるしかないわけで。
結果どうなるかというと。
「……暇だなぁ~~……」
やれることが限られている中、異世界生活十日目にして、私は退屈で死にそうになっていたのだ。
◇
死ぬほどヒマ、ということを除けば、実は漂流生活は意外と快適だったりする。
なんせこれから遠い国へ向けて出航したばかりの船だったから、水や食料などの物資も豊富。積み荷も中身は果物だったし、今となっては船の持ち主もこの世界にはいないのでこれもありがたく頂戴した。
そもそも無限収納の中には元の世界で調達した物資が大量に入っているので食べる物が不足するとかはあり得ない。
生活魔法も問題なく使えたから、浄化魔法で衛生面も完璧。
おまけに空間魔法を駆使して丸ごと取り込んだコテージの一室だけを取り出すことで、居住空間もばっちり! ベッドだってふっかふかだよ!
なのでこのまま何ヶ月漂流したままだろうと、とりあえず死ぬことはないのだけど……。
「うー……やっぱり耐えられない! 魔法を好きに試せないのも辛いし、このまま誰とも話せないとかホント無理ーーっふぎゃっ!?」
急に船に大きな衝撃と振動が加わり、船体が一気に傾ぐ。
咄嗟にマストに掴まって落下は回避したけど、転覆するんじゃないかって勢いで右に左にぐわんぐわん揺れ、なす術なくしがみつくこと数分。
ようやく揺れが収まって、私は詰めていた息を吐きつつ、周りを確認しようと顔を上げた。
「な、何、今の。ひょっとして地震ってやつかしらーーっうぉわぁあッ?!!?!?」
はっ、いけない。さっきも今も、貴族令嬢どころか女の子として出してはいけない声を出してしまった。
でっ、でもでもコレはさすがにしょーがないでしょ?
ーー目の前にいたのは、怪鳥。
私など一飲みにできるだろう巨大な鳥型の魔物だった。
『ウルサイわねこの子。可愛らしいお人形さんだと思って拾いに来たの二、興醒めだわァ~』
「な、なんでこんなとこに魔物がいるの? 危なくない場所だと思ってたのに!?」
急に目の前にモンスターが出てきたら、誰だって焦って奇声の一つや二つ上げちゃうもんだよね?!
普段なら攻撃魔法をぶっ放して追い払うところだけど、この船の上でそんなことできないし……。
ひとまず結界を張って防御に専念しようとしていたら、上から不満そうな声が降ってきた。
『まっ、なんて失礼なノ! アタクシのように美しいウミネコをつかまえテ、言うに事欠いて魔物ですッて?! 信じられないワっ!』
「……はい? ウミネコ?」
『ウミネコってのはカモメの仲間ヨ。何ヨアンタ、まさかカモメも見たことないって言うノ?』
「いえ、カモメは見たことあるけど……動物がしゃべるとか聞いたことないし……?」
え、本当に魔物じゃないの? このサイズで?
『そう言えば、不思議ネ。なんで人形と普通に会話が出来てるのかしラ?』
異世界生活十日目。
私はここに来て初めて出会った異世界の生き物ーー自称ウミネコの巨大鳥と一緒に首をひねり、お互いに見つめ合うことになった。
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