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11。場所選びはお好みで
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私の返事を聞いたユリウスは何故だかとても上機嫌だった。
「そうこなくっちゃね! じゃ、場所は結構選び放題なんだけど、希望ある? 何でもいいって意外と困るからさー」
空中に透明なパネルを出してポチポチと操作しながら、とびきりの笑顔でそんなことを聞いてくる。
希望、希望かぁ。どこがいいだろう。
「言葉は通じるところがいいけど」
「それはボクが翻訳スキルつけてあげるから、気にしなくていいよ」
「四季がある方が楽しいけど、暑すぎるのも寒すぎるのも嫌かな」
「君んとこの魔道士の制服、耐熱耐寒効果ついてたよね? まっ、いいけど。……他は?」
「治安が悪過ぎるのはちょっと……魔物に滅ぼされかけてるとか、国同士が戦争真っ最中とかもパスで」
「じゃ、そこそこ平和なとこね。シーナは危ない場所の方が重宝されそうだけど」
「利用されるとかは勘弁して。魔法が使いたいだけで、戦闘したいわけじゃないからね? 冒険とかは確かにちょっと憧れるけど」
力説したらハイハイって流された。え、信用ないの私?
「うーん、まだ全然絞り切れないな。もうちょっと何かないの?」
「そう言われても……」
価値観や常識が似ている方が馴染みやすいけど、多少の違いは旅の醍醐味だとも思うからこれは必須じゃない。
それ以外だとーー
「あ、じゃあ人種的に、大きい人が多いとこ!」
「はぁ? なにそれ?」
「言ったでしょ、デカブツ女って馬鹿にされたってーー身体的特徴でからかわれるのはこりごりなの」
「そんなの、からかう方が悪いんじゃない。気にすることないーーって言っても気になるのか。ーーああ、だったらちょうどいい場所があるよ!」
ユリウスはにこにこ笑いながら、地図のようなものを表示させたパネルを見せてくれる。
「ほら、ここーー“テラベリル“って世界なんだけど、ここがシーナの希望にぴったりだと思うんだよね」
「……って言われても、説明っぽい文字のとこ、全く読めないんだけど?」
「ん? あ、それもそっかー。でもシーナの希望はちゃんと全部満たした世界だから!」
さっき言ってた翻訳スキルってのを今くれれば読めるのに、それは転移した後じゃないともらえないんだって。
チートがどうとか言ってたけどーー神様にも色々制約があるらしい。
まあユリウスは神様だけあって有能だし、たまに誤魔化されることはあるけど嘘をつかれたことは一度もない。
なので今回も彼の判断を信用しても大丈夫、なはず。たぶん。
……大丈夫よね? 信じるからね?
「じゃあそこにする。あと、お父様達への伝言頼めない? さすがに異世界に行った娘を無駄に探し回らせるのは忍びないから」
「神様をパシリにしようとか、シーナは相変わらず無茶苦茶だねー。ま、手紙くらいなら転送してあげるよ」
そう請け負ってくれたことにひとまず安心し、私はユリウスお薦めの"テラベリル"という世界に転移することにしたのだった。
「そうこなくっちゃね! じゃ、場所は結構選び放題なんだけど、希望ある? 何でもいいって意外と困るからさー」
空中に透明なパネルを出してポチポチと操作しながら、とびきりの笑顔でそんなことを聞いてくる。
希望、希望かぁ。どこがいいだろう。
「言葉は通じるところがいいけど」
「それはボクが翻訳スキルつけてあげるから、気にしなくていいよ」
「四季がある方が楽しいけど、暑すぎるのも寒すぎるのも嫌かな」
「君んとこの魔道士の制服、耐熱耐寒効果ついてたよね? まっ、いいけど。……他は?」
「治安が悪過ぎるのはちょっと……魔物に滅ぼされかけてるとか、国同士が戦争真っ最中とかもパスで」
「じゃ、そこそこ平和なとこね。シーナは危ない場所の方が重宝されそうだけど」
「利用されるとかは勘弁して。魔法が使いたいだけで、戦闘したいわけじゃないからね? 冒険とかは確かにちょっと憧れるけど」
力説したらハイハイって流された。え、信用ないの私?
「うーん、まだ全然絞り切れないな。もうちょっと何かないの?」
「そう言われても……」
価値観や常識が似ている方が馴染みやすいけど、多少の違いは旅の醍醐味だとも思うからこれは必須じゃない。
それ以外だとーー
「あ、じゃあ人種的に、大きい人が多いとこ!」
「はぁ? なにそれ?」
「言ったでしょ、デカブツ女って馬鹿にされたってーー身体的特徴でからかわれるのはこりごりなの」
「そんなの、からかう方が悪いんじゃない。気にすることないーーって言っても気になるのか。ーーああ、だったらちょうどいい場所があるよ!」
ユリウスはにこにこ笑いながら、地図のようなものを表示させたパネルを見せてくれる。
「ほら、ここーー“テラベリル“って世界なんだけど、ここがシーナの希望にぴったりだと思うんだよね」
「……って言われても、説明っぽい文字のとこ、全く読めないんだけど?」
「ん? あ、それもそっかー。でもシーナの希望はちゃんと全部満たした世界だから!」
さっき言ってた翻訳スキルってのを今くれれば読めるのに、それは転移した後じゃないともらえないんだって。
チートがどうとか言ってたけどーー神様にも色々制約があるらしい。
まあユリウスは神様だけあって有能だし、たまに誤魔化されることはあるけど嘘をつかれたことは一度もない。
なので今回も彼の判断を信用しても大丈夫、なはず。たぶん。
……大丈夫よね? 信じるからね?
「じゃあそこにする。あと、お父様達への伝言頼めない? さすがに異世界に行った娘を無駄に探し回らせるのは忍びないから」
「神様をパシリにしようとか、シーナは相変わらず無茶苦茶だねー。ま、手紙くらいなら転送してあげるよ」
そう請け負ってくれたことにひとまず安心し、私はユリウスお薦めの"テラベリル"という世界に転移することにしたのだった。
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