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8。“魔女”のギフトは特別だそうです

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「えー、神様なんだからこれくらいのお願い聞いてくれるかと思ったのに。ひょっとして、いきなり呼び出したの怒ってる?」
「それは別にいつものことでしょ? 腹いせで教えてあげないんじゃなくて、ないものはないの。あのね、君の持ってる“魔女”のギフトは特別なんだよ」
「お昼間、全く同じことをウォルターに言われたけど。特別って言っても人より魔力量が多いくらいじゃない」

子狼ユリウスのフワフワほっぺをむにむにっとつまみながら文句を言うと、くすぐったいからやめてと逃げられた。
そのまま、人間の男の子の姿になってしまう。ああ、もっともふもふを堪能したかった……。

でも幻影魔法ホログラムでなく本物の変化を一瞬で完成させるユリウスってすごい。
これと同じこと、魔法でもできないかな? 今度研究してみよっと。


その後人間になったユリウスは、ちょっとこっち来て座ろうか? と船の縁に腰掛けて手招きしてきた。

あれ、ひょっとしてお話長くなる感じ? ユリウスにまでお説教されるのはイヤだなぁ。

でも、うん。相手は神様だし。しかも呼んだの私の方だし。
断るわけにもいかないので、渋々隣に腰を下ろした。

「前にも一回説明したはずだけど、もう一度言うよ? この星にはかなり濃く魔素が満ちていて、おかげでこの世界は魔法が発達している。ただ幾ら魔素が豊富でも普通の人の魔力量ーー体に貯めておける魔素の量は大したことがないから、どんな上級魔法でも威力はそれなりだ。でもシーナの容量は底無しだから、使うのが初級魔法であってもその威力は桁違いのものになってしまう。ここまでは理解してるよね?」
「でもでも、実際に底無しってわけじゃないし。言ってもそこまで違わないでしょ?」
「違うよ。水風船が割れるのと、ダムが決壊するくらいの差はあるね」

いい加減自覚して? とにっこりするユリウスの顔が怖い。多分ちょっぴり怒ってる。

人間バージョンのユリウスは喜怒哀楽が顔にしっかり出るんだけど、なぜだか笑っててもどことなーく怖くって、その笑顔を向けられるとヒェェってなっちゃうの。
うぅっ、ほんの数分前なのにもふもふが恋しい……。


「それに“魔女”のギフトの恩恵は魔力容量の拡張だけじゃないでしょ。魔法攻撃はもちろん物理攻撃にも状態異常にも耐性があるし、無詠唱での魔法の発動も可能。おまけにどんな種類の魔法でも難易度の差を感じることなく使えてしまう。それこそ失われた古代魔法だろうとね」
「戦うことなんてないから耐性があるって言われても実感ないんだけど……詠唱だって一応してるし、古代魔法なんてものも知らないよ?」
「今はね。でも取っ掛かりがあれば、君はそういうものでもできてしまうんじゃないかな? それこそ“魔女”のギフト持ちだからね」

ユリウスは一つ一つ丁寧に説明してくれる。
それ自体はとてもありがたいのだけど、言われてる内容は受け入れがたいものだった。
だって今の、私が普通じゃない、オカシイって話だよね?

不満が顔に出ていたのだろう、ユリウスは苦笑いで「そんな顔しないのー」と言いながら、頭を撫でてくれた。
んぅー、手、気持ちいい……って誤魔化されちゃダメよシーナ!

ジトリと睨むとユリウスの苦笑いが返ってくる。

「だからね、君みたいな子がぽんぽん魔法を使うのは危険なの。主にこの世界の方がね」
「ユリウス大げさ。それに、だからこそ誰にもバレずに、かつ魔法が暴発しても被害が出ない場所を教えて欲しいのに」


ラミレス家の訓練所は見渡す限り何もないような場所だから土地への被害は気にしなくていいけど、他に誰かいる場合は私は使っちゃダメって言われてる。

でも魔法大好きラミレス家の一族には訓練バカと呼ばれる系統の人たちがいっぱいいて、訓練所が無人ってことはあんまりない。だから、結局私は魔法の練習がほとんどできないのだ。

練習ができないから魔法の練度も上がらず、結果暴走しやすい。悪循環である。

「被害が出ないってだけなら砂漠とかも手だけど、それでも君が手加減なくやっちゃうと生態系ごと変わっちゃうかもだしねぇ。っていうかどこに逃げたとしても、そこで君が一度でも派手な魔法を使った時点で潜伏先はバレちゃうと思うけど?」
「えぇー、そんなぁ~!」


なにその残念すぎるお知らせ!?

思う存分魔法が使ってみたいから家出をするのに、一回使っただけで居場所がバレちゃうの?
それって何回も使いたかったらその度に逃げ出さなきゃってこと?

うぅっ、私、ラミレス家の人間なのに……。魔法が好きに使えないとか辛すぎるよー。
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