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0。婚約破棄、上等です!

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「なあ、ライアン。お前本当にあの“魔女様“と結婚するつもりか?」


王宮の中庭を通り抜けようとしていた私ーーシルヴィアーナ・ラミレスはピタリと脚を止めた。

今の“魔女様”と言うのは、私の通り名だった。
そしてライアンというのは私の婚約者様の名前でーー彼はこの国の王太子でもある。


ーーこれは、何だか面白そうな話が聞けそう?

私は自分に気配遮断の魔法と透明化の魔法を重ね掛けしてから、声が聞こえた方に近づいていった。

中庭のほぼ中央、綺麗に整備されたガゼボの中で、少年四人が雑談に興じている。


「そうそう、あーんなデカ女、殿下にはふさわしくないだろ!」
「取り柄といえば魔法だけ。しかもおっちょこちょいすぎてお得意の魔法もしょっちゅう暴発させてるしな……側に置くのは危険じゃないか?」
「婚約っていっても、正式なお披露目は成人後でしょ? 今なら内々に処理できるんじゃないかな~」


……出たな、三バカトリオ。

こんな普通に目立つ場所で、堂々と王太子に婚約破棄を唆してちゃダメでしょうよ。

というか、ライアン殿下もライアン殿下だ。何でコイツらを止めないの。
わざと誰かに聞かせて、この三バカを失脚でもさせたいのかしらね。でも、なんだかんだ仲良しだったよねこの四人って。

ならまた別の思惑でもあるのかしら? と同じガゼボのベンチに堂々と腰掛けながら、私は首を傾げた。


「あの魔女はなぁー。顔がいいのは認めるけど、なーんかこっちのこと小馬鹿にしたように見下ろしてくるし、性格だって絶対悪いって!」
「殿下の奥方ってことは、未来の国母だからな……あんな魔法しか頭にないような者より、もっと慈愛に満ちた方が良いと俺は思う」
「あ、なら魔女様の妹は? 同じラミレス公爵家の娘なら、政治的にも問題ないんじゃないかな~」


……見下ろされるのは、アンタらの背が低いせいでしょ!

さすがに声を出すとバレてしまうので胸の内だけで悪態をついていると、殿下からびっくり仰天な発言が飛び出した。


「そうだな、実は僕もそう思っていたんだ。シルヴィアーナ嬢にはおよそ王太子妃としての気品や淑やかさというものが欠けている。僕の妃には、同じラミレス家の娘でもニルヴァーナ嬢の方が相応しい。」


……はぁ? この王子、バカなの? というかバカだよね?

王家から打診してきた婚約を破棄するってことは、その決定をした陛下に楯突くということだ。

しかも、この案件は確実にラミレス家ウチの人間をーーもっと言えば、私を溺愛するお父様とお兄様を敵に回す。

自殺願望があるとしか思えないけどーーああ、なるほど。つまり死にたいのかな?

それか、そういうこと言っちゃう俺カッケー! なんて思ってるのかもしれない。確かにそういうお年頃だし。




ーーでも、待って。

今の三バカの案、確かに良い手かもしれない。


そうよ、これって千載一遇のチャンスなのでは? ーー婚約破棄、上等じゃない!

私だって、あのバカ殿下の奥さんなんて願い下げなんだからっ!!
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