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 当然だが、学生寮は男女別だった。いくら軍では男女平等だとは言え、その辺りは身分差と同じ理由なのだろう。

「いやしかし、いくらなんでも遠くない? 10分は歩いたような……」

「士官学校だからね」

「制服がそんなにかわいくないのも?」

「士官学校だからね」

「アンリの乳袋が大きいのも?」

「それは神様の贈り物」

「神様の贈り物は神聖なので触るとご利益が」

「神罰の前に私刑が味わいたいのかな?」

「……」

 とまぁ、こんな感じで軽口を言い合える程度には仲良くなった。

 ちなみに、胸を触りたいというのは軽口なんかじゃない。まぎれもない私の本音だ。

「それにしても、大きいなぁ」

「ん? なにが?」

「胸……じゃなくて寮が。こんなに大きな建物が必要なほどに女子生徒がいるの? 士官学校なのに?」

 高さはない。せいぜい2,3階建てといったところだろう。ただ、広さが途方もない。これが校舎だといわれても信じられるほどに大きい。

「まぁ、貴族の人も使うからね。一応みんな四人部屋なんだけど、平民の部屋と貴族の部屋では倍じゃきかないくらいの広さらしいよ」

「それってメイドとかを入れるために?」

 よく言うもんね。お嬢様は着替えも一人では満足にこなせないって。入浴なんてもってのほかって。

「ところで大浴場はあるの? すごくまじめな質問なんだけど」

 これに関しては割とガチ。いやらしい気持ちは二割しかない。

「あるにはあるけど、私たちは深夜じゃないと使えないよ。貴族と鉢合わせないように使える時間が決まってるから」

「お嬢様にラッキースケベはできないのか……無念」

「それ、発言だけでも不敬罪だから気を付けたほうがいいよ」

「承知」

 というか、お金あるんだろうから平民用の大浴場くらい作ればいいのに。まぁ、そのお金も多分貴族からのお金だから貴族に使うのが当たり前なんだけどさ。

「というか、いい加減受付済まして寮に入ろうよ。なんだかんだ言って疲れたし」

「それはそうなんだけど……その……」

 いや、現実から目を背けるにも限界があることはわかっているよ? でもさ、もう少し気持ちを落ち着かせる時間というか……ねぇ?

「私、コミュニケーション障害という重い障害を抱えてるんだよ」

「さ、いくよー」

「待って担ぎ上げないで力強いな! アンリはゴリラだった!?」

「受付に一人置き去りにしようか?」

「待ってやめて一人にしないでお願いぃ」

 なんて言いながらも担がれた拍子に私の手が不可抗力でぽよんぽよんしたので、いうほどいやな気持にはなっていない私であった、まる。
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