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(26)このまま……いい?*
あの二人はどうなりそうなのかな?
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***
話を聞き終わるなり、確かに天莉がそれを気にしないわけがなかったのだと尽は今更のように気付かされて。
そのことを天莉にハッキリと告げることを避けていた自分の愚かさに溜め息を吐きたくなった。
まるでモード変更をするみたいにスッと片手で猫耳カチューシャを外してテーブルに載せると、尽は天莉をじっと見つめた。
「親睦会の日、天莉に酷いことをしようとした我が社の男達……。彼らは営業部の沖村三好と、品質管理部の伊崎不二男と言う」
尽がそう言ったら、尽と同じように頭からカチューシャを取った天莉が「沖村さんと伊崎さん……」とつぶやいて。
「奴らがオッキーとザキと名乗っていたのは天莉も覚えているよね?」
尽が天莉の反応を探るように恐る恐る言ったら、天莉の身体がびくっと小さく跳ねた。
「天莉。これ以上話しても平気? 辛いようならまた日を改めてからでも」
尽が天莉の手を優しく撫でると、天莉がフルフルと首を振った。
「……日常が戻る前にちゃんと聞いておかないと駄目なの。でないと私……」
「不安でたまらない?」
尽の言葉に天莉が小さくうなずいた。
天莉はアスマモル薬品に転職してからずっと、尽のそば――副社長室からほとんど出ない環境で働いている。
室外に出る時も、尽や直樹とともに動くから、全く一人にはしていないし、残業をさせないため先に帰らせる時でさえ、必ず会社を出るところまでは見届けるようにしている尽だ。
過保護なくらいの対応だけれど、それには実は理由があって、天莉が秘書課で行われた歓迎会を境に、社内でひとりになるのを極端に怯える素振りを見せるようになったと気付いたからだ。
無資格・未経験で副社長秘書へ大抜擢されたことを負い目に感じるようなことを、秘書課の誰かから言われたのだろうかと懸念していた尽だったけれど、もしかするとそれは大きな思い違いだったのかも知れない。
「あの……その二人は……どう、なりそう……なの、かな?」
天莉の不安に呼応したみたいに、タピオカ入りスパークリングアイスティーに入った氷が、カランと乾いた音を立てた。
こんなファンシーな雰囲気の店内で話すにはおよそ場違いな会話だけれど、だからこそ家や会社で話すよりも天莉の心を落ち着けてくれるのかも知れない。
ミライの面々と同様、沖村と伊崎が服役することになったと言うのは天莉にもさらりと話してあったはずだ。
沖村と伊崎はアスマモルの機密情報を、系列会社とはいえ外部の人間――江根見則夫らに漏洩していたのだ。
加えて、その見返りに定期的にその薬で身動きが出来なくなった女性たちを何人も食い物にしていたという、悪質な不同意性交罪も犯している。
江根見たちはあの薬の効き目を沖村と伊崎の行為を撮影することで確かなものとし、裏ルートで良くない人間たちに横流しするための宣伝材料にしていたらしい。
沖村も伊崎も、初犯とはいえ被害者の数が多過ぎる。
量刑が重くなることは免れないし、実際に彼らはほぼ確実に実刑判決を受けることになるだろうと顧問弁護士の桃坂先生も言っていた。
話を聞き終わるなり、確かに天莉がそれを気にしないわけがなかったのだと尽は今更のように気付かされて。
そのことを天莉にハッキリと告げることを避けていた自分の愚かさに溜め息を吐きたくなった。
まるでモード変更をするみたいにスッと片手で猫耳カチューシャを外してテーブルに載せると、尽は天莉をじっと見つめた。
「親睦会の日、天莉に酷いことをしようとした我が社の男達……。彼らは営業部の沖村三好と、品質管理部の伊崎不二男と言う」
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尽が天莉の手を優しく撫でると、天莉がフルフルと首を振った。
「……日常が戻る前にちゃんと聞いておかないと駄目なの。でないと私……」
「不安でたまらない?」
尽の言葉に天莉が小さくうなずいた。
天莉はアスマモル薬品に転職してからずっと、尽のそば――副社長室からほとんど出ない環境で働いている。
室外に出る時も、尽や直樹とともに動くから、全く一人にはしていないし、残業をさせないため先に帰らせる時でさえ、必ず会社を出るところまでは見届けるようにしている尽だ。
過保護なくらいの対応だけれど、それには実は理由があって、天莉が秘書課で行われた歓迎会を境に、社内でひとりになるのを極端に怯える素振りを見せるようになったと気付いたからだ。
無資格・未経験で副社長秘書へ大抜擢されたことを負い目に感じるようなことを、秘書課の誰かから言われたのだろうかと懸念していた尽だったけれど、もしかするとそれは大きな思い違いだったのかも知れない。
「あの……その二人は……どう、なりそう……なの、かな?」
天莉の不安に呼応したみたいに、タピオカ入りスパークリングアイスティーに入った氷が、カランと乾いた音を立てた。
こんなファンシーな雰囲気の店内で話すにはおよそ場違いな会話だけれど、だからこそ家や会社で話すよりも天莉の心を落ち着けてくれるのかも知れない。
ミライの面々と同様、沖村と伊崎が服役することになったと言うのは天莉にもさらりと話してあったはずだ。
沖村と伊崎はアスマモルの機密情報を、系列会社とはいえ外部の人間――江根見則夫らに漏洩していたのだ。
加えて、その見返りに定期的にその薬で身動きが出来なくなった女性たちを何人も食い物にしていたという、悪質な不同意性交罪も犯している。
江根見たちはあの薬の効き目を沖村と伊崎の行為を撮影することで確かなものとし、裏ルートで良くない人間たちに横流しするための宣伝材料にしていたらしい。
沖村も伊崎も、初犯とはいえ被害者の数が多過ぎる。
量刑が重くなることは免れないし、実際に彼らはほぼ確実に実刑判決を受けることになるだろうと顧問弁護士の桃坂先生も言っていた。
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