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(20)罠にハメられた天莉
おしゃべりはこのくらいにして、お楽しみタイムと行こうか
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「ああ、風見課長。べ、別に僕たちは彼女に変なことをしていたわけじゃなくてですね――」
「そう。ちょ、調子悪そうにしてらしたからここへお運びして……ふ、服を緩めて差し上げていただけなんです」
ザキの言い訳に、沖村が乗っかる形で苦し紛れの弁明をする。
そうしながら、沖村が天莉を撮影していたはずのスマートフォンをスーツのポケットへ無造作に突っ込むのをぼんやり眺めながら、天莉は泣きたくなった。
途中経過までとはいえ、あの中には自分の恥ずかしい姿が残されている。
今すぐにでも奪い取ってデータを抹消してしまいたいのに――。
それに、天莉にとってはザキもオッキーも……それからたったいまこの部屋へ入ってきたばかりの風見課長も、皆等しく自分にとって嬉しくない存在に変わりはなくて、現状が打開出来たようには到底思えないのだ。
何故風見斗利彦が天莉を庇うような物言いをしながらここへ乱入してきたのか、それが分からなくて余計に怖い。
ワンピースの下には下着を身に着けた状態とは言え、かつて自分のことをいやらしい目で見てきた風見課長に、こんな無防備な姿をさらすことは絶対に避けたかったのに。
(尽くん……!)
確かに今自分を苦しめている薬は、尽が作ったものかも知れない。
でも――。
他のことが何ひとつ分からない状況のなか、天莉は尽を信じることしか出来ない、と思って。
現状を打開出来たなら……その時ゆっくり説明してもらえばいい。
今はとにかく何とかしてこの場を逃げ出すことが先決だとそう思ったのだけれど。
天莉の焦りとは裏腹。
ザキと沖村は「とりあえず後で連絡するから帰らず待機しているように」と風見に告げられて部屋を出て行って。
天莉は身動きの出来ないまま、今度は風見斗利彦と二人きりにされてしまった。
「さぁ邪魔者は排除したよ、玉木くん」
そう告げるなりむき出しにされたままの肩にツツツ……と指先を這わされた天莉は気持ち悪くて全身が粟立った。
「や……っ」
懸命に身じろいで風見の手から逃れようと頑張る天莉に、風見が言い募る。
「ホント、江根見部長も人が悪いよね。そう思わない?」
髪を一房掴み上げられる気配に、天莉はうつ伏せの状態のまま、風見が次にどこへ触れてくるのか分からなくて不安でたまらない。
これ以上もう、誰にも触れられたくなんてないのに。
「さ、……わら、な……ぃで」
か細い声で拒絶の言葉を懸命に吐き出すけれど、風見は天莉の言葉を黙殺して話し続けた。
「江根見部長が言ったんだよ。今回の計画では私にキミの味見をさせてやるって。なのに――あの小娘め! 薬を盛るだけの役割のくせに勝手に順番を入れ替えやがって! 貢献度から言って……あいつらは私の後だろう!」
ひどく憤った様子で話す風見に、天莉は懸命に活路を見出そうと頑張ったのだけれど。
「ああ、キミがあいつらの毒牙にかかる前に助けられて本当によかった。怖かったね」
ススッと耳殻を撫でられた天莉は、助けられただなんて思っていないと、動けないなりにも懸命にイヤイヤをした。
「何だ、その反抗的な態度は。キミは本当に私を苛立たせるのがうまいよね。――けど、どうだね、玉木くん。婚約者の作った薬でこんなことになってる気分は?」
突然ぐるっと身体をひっくり返されて仰向けにされた天莉は、自分の上に馬乗りになって間近から天莉を見下ろしてくる風見課長の顔に激しい嫌悪感を覚えた。
「高嶺常務のこと、恨んでもいいんだよ? あの男がこんな薬を作らなければ、キミも今こんな目には遭っていないのだし……もっと言えば江根見部長や私に目を付けられることもなかったんだからね。――自分のせいで婚約者が酷い目に遭わされたと知った時の高嶺の心中を考えると、愉快で笑いが止まらなくなりそうだ」
どうやらそれこそが、眼前の下劣男の目的らしく――。
「さぁ、おしゃべりはこのくらいにして、お楽しみタイムと行こうか」
風見がいやらしく口角を上げたのと同時。
扉が壊れんばかりの勢いで開けられて、天莉は今度こそ恋焦がれた尽の声で「天莉!」と名を呼ばれた。
「そう。ちょ、調子悪そうにしてらしたからここへお運びして……ふ、服を緩めて差し上げていただけなんです」
ザキの言い訳に、沖村が乗っかる形で苦し紛れの弁明をする。
そうしながら、沖村が天莉を撮影していたはずのスマートフォンをスーツのポケットへ無造作に突っ込むのをぼんやり眺めながら、天莉は泣きたくなった。
途中経過までとはいえ、あの中には自分の恥ずかしい姿が残されている。
今すぐにでも奪い取ってデータを抹消してしまいたいのに――。
それに、天莉にとってはザキもオッキーも……それからたったいまこの部屋へ入ってきたばかりの風見課長も、皆等しく自分にとって嬉しくない存在に変わりはなくて、現状が打開出来たようには到底思えないのだ。
何故風見斗利彦が天莉を庇うような物言いをしながらここへ乱入してきたのか、それが分からなくて余計に怖い。
ワンピースの下には下着を身に着けた状態とは言え、かつて自分のことをいやらしい目で見てきた風見課長に、こんな無防備な姿をさらすことは絶対に避けたかったのに。
(尽くん……!)
確かに今自分を苦しめている薬は、尽が作ったものかも知れない。
でも――。
他のことが何ひとつ分からない状況のなか、天莉は尽を信じることしか出来ない、と思って。
現状を打開出来たなら……その時ゆっくり説明してもらえばいい。
今はとにかく何とかしてこの場を逃げ出すことが先決だとそう思ったのだけれど。
天莉の焦りとは裏腹。
ザキと沖村は「とりあえず後で連絡するから帰らず待機しているように」と風見に告げられて部屋を出て行って。
天莉は身動きの出来ないまま、今度は風見斗利彦と二人きりにされてしまった。
「さぁ邪魔者は排除したよ、玉木くん」
そう告げるなりむき出しにされたままの肩にツツツ……と指先を這わされた天莉は気持ち悪くて全身が粟立った。
「や……っ」
懸命に身じろいで風見の手から逃れようと頑張る天莉に、風見が言い募る。
「ホント、江根見部長も人が悪いよね。そう思わない?」
髪を一房掴み上げられる気配に、天莉はうつ伏せの状態のまま、風見が次にどこへ触れてくるのか分からなくて不安でたまらない。
これ以上もう、誰にも触れられたくなんてないのに。
「さ、……わら、な……ぃで」
か細い声で拒絶の言葉を懸命に吐き出すけれど、風見は天莉の言葉を黙殺して話し続けた。
「江根見部長が言ったんだよ。今回の計画では私にキミの味見をさせてやるって。なのに――あの小娘め! 薬を盛るだけの役割のくせに勝手に順番を入れ替えやがって! 貢献度から言って……あいつらは私の後だろう!」
ひどく憤った様子で話す風見に、天莉は懸命に活路を見出そうと頑張ったのだけれど。
「ああ、キミがあいつらの毒牙にかかる前に助けられて本当によかった。怖かったね」
ススッと耳殻を撫でられた天莉は、助けられただなんて思っていないと、動けないなりにも懸命にイヤイヤをした。
「何だ、その反抗的な態度は。キミは本当に私を苛立たせるのがうまいよね。――けど、どうだね、玉木くん。婚約者の作った薬でこんなことになってる気分は?」
突然ぐるっと身体をひっくり返されて仰向けにされた天莉は、自分の上に馬乗りになって間近から天莉を見下ろしてくる風見課長の顔に激しい嫌悪感を覚えた。
「高嶺常務のこと、恨んでもいいんだよ? あの男がこんな薬を作らなければ、キミも今こんな目には遭っていないのだし……もっと言えば江根見部長や私に目を付けられることもなかったんだからね。――自分のせいで婚約者が酷い目に遭わされたと知った時の高嶺の心中を考えると、愉快で笑いが止まらなくなりそうだ」
どうやらそれこそが、眼前の下劣男の目的らしく――。
「さぁ、おしゃべりはこのくらいにして、お楽しみタイムと行こうか」
風見がいやらしく口角を上げたのと同時。
扉が壊れんばかりの勢いで開けられて、天莉は今度こそ恋焦がれた尽の声で「天莉!」と名を呼ばれた。
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