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(18)胸騒ぎ
尽くんの香り、大好き
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「天莉が俺のモノでない時には好ましく思えていたキミのそう言う献身的なところが、天莉のことを本気で好きになった途端、他の人間には尽くして欲しくない、やめて欲しいとか思うようになったと言ったら……キミは引くかね?」
「え……っ?」
「なぁ、天莉。キミは俺の妻になる女性だ。他の人間になんて尽くさなくていい」
そんなことを言って、耳をペタッと寝かせた大型犬のような顔をした尽が、切なげに天莉の顔を見詰めて懇願するから、天莉は言葉に詰まってしまう。
「つ、尽くすって言ってもっ。会場にお食事や飲み物を運んだり……そう言うのをお手伝いするだけだよ?」
ややして、やっとの思いでそう告げた天莉だったのだけれど――。
「俺が贈った服で、下働きみたいな真似をするって言うの? 俺の目が届かないところで?」
拗ねたようにそう続けられてしまっては、確かにこの服でそれはないかも?と思わざるを得ない。
そう。
いつもならば天莉、それなりに小綺麗に見える黒のパンツスーツに、白のブラウスを合わせた、割と普段の仕事着に近い服装で親睦会に参加していたのだ。
けれど……。
今日は尽から贈られたくすみ感のあるローズベージュのクラシカルドレスを着ている。
過日ハイブランドのアパレルメーカーで尽からプレゼントされたその一着は、とても着心地の良いレースとシフォンの異素材ワンピースで、デコルテ周りが透け感のある仕様になっている。
肌を薄らと透けさせつつも、首元は低めのスタンドカラーで、胸元が開きすぎる心配もない。
加えてボリューム袖がさり気なく二の腕をカバーしてくれるのが、天莉的に嬉しいデザインだった。
確かに尽が言うように、この服で雑用係はちょっと違和感があるかな?と思った天莉だ。
それに。
(変に頑張りすぎて、汚したりしたら大変だもんね)
そう思いはしたものの、だったら何をして過ごせば?と、先程の〝話し相手が見つからないかも知れない問題〟に直面して、天莉は弱ってしまった。
その戸惑いを如実に感じ取ったらしい尽が、「今日は俺の手があいたらすぐにでも――」と何かを言おうとして「まぁ、それは本当に時間が出来てからの方がいいか」と言葉を濁す。
「えっ、なに、なに? 尽くんの手があいたら……何があるの?」
天莉は尽が何を言おうとしたのか、気になって仕方がない。
なのに――。
「おいおい分かるから楽しみにしておいで? それはさておき……」
――もう一度よく見せて?と話題を変えられて、尽の腕の中へ引き寄せられた天莉は、いつものことながら仕立てのよい尽のスーツからふわりと香る、幽かなコロンの芳香にうっとりと吐息を落とす。
「私、尽くんの香り、大好き……」
ポツンとそんな言葉を落とした天莉に、尽が「そうか」と嬉し気に微笑んで。
「だったら」と言って天莉から一旦離れてから、いつも自分が身に付けているブルガリの香水瓶を手に戻って来た。
「ちょっとだけ、ね?」
言って、尽が天莉のいる上空にシュッと瓶の中身を軽く一吹きするから。香り付きのミストがごく微量、天莉の全身に降り注いでくる。
「これでキミも、今日一日は俺と同じ匂いだ」
尽から艶っぽく微笑まれて、「マーキングしたよ」と言われたように感じた天莉は、何だか物凄く照れ臭くなってしまった。
「それと――」
「え……っ?」
「なぁ、天莉。キミは俺の妻になる女性だ。他の人間になんて尽くさなくていい」
そんなことを言って、耳をペタッと寝かせた大型犬のような顔をした尽が、切なげに天莉の顔を見詰めて懇願するから、天莉は言葉に詰まってしまう。
「つ、尽くすって言ってもっ。会場にお食事や飲み物を運んだり……そう言うのをお手伝いするだけだよ?」
ややして、やっとの思いでそう告げた天莉だったのだけれど――。
「俺が贈った服で、下働きみたいな真似をするって言うの? 俺の目が届かないところで?」
拗ねたようにそう続けられてしまっては、確かにこの服でそれはないかも?と思わざるを得ない。
そう。
いつもならば天莉、それなりに小綺麗に見える黒のパンツスーツに、白のブラウスを合わせた、割と普段の仕事着に近い服装で親睦会に参加していたのだ。
けれど……。
今日は尽から贈られたくすみ感のあるローズベージュのクラシカルドレスを着ている。
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肌を薄らと透けさせつつも、首元は低めのスタンドカラーで、胸元が開きすぎる心配もない。
加えてボリューム袖がさり気なく二の腕をカバーしてくれるのが、天莉的に嬉しいデザインだった。
確かに尽が言うように、この服で雑用係はちょっと違和感があるかな?と思った天莉だ。
それに。
(変に頑張りすぎて、汚したりしたら大変だもんね)
そう思いはしたものの、だったら何をして過ごせば?と、先程の〝話し相手が見つからないかも知れない問題〟に直面して、天莉は弱ってしまった。
その戸惑いを如実に感じ取ったらしい尽が、「今日は俺の手があいたらすぐにでも――」と何かを言おうとして「まぁ、それは本当に時間が出来てからの方がいいか」と言葉を濁す。
「えっ、なに、なに? 尽くんの手があいたら……何があるの?」
天莉は尽が何を言おうとしたのか、気になって仕方がない。
なのに――。
「おいおい分かるから楽しみにしておいで? それはさておき……」
――もう一度よく見せて?と話題を変えられて、尽の腕の中へ引き寄せられた天莉は、いつものことながら仕立てのよい尽のスーツからふわりと香る、幽かなコロンの芳香にうっとりと吐息を落とす。
「私、尽くんの香り、大好き……」
ポツンとそんな言葉を落とした天莉に、尽が「そうか」と嬉し気に微笑んで。
「だったら」と言って天莉から一旦離れてから、いつも自分が身に付けているブルガリの香水瓶を手に戻って来た。
「ちょっとだけ、ね?」
言って、尽が天莉のいる上空にシュッと瓶の中身を軽く一吹きするから。香り付きのミストがごく微量、天莉の全身に降り注いでくる。
「これでキミも、今日一日は俺と同じ匂いだ」
尽から艶っぽく微笑まれて、「マーキングしたよ」と言われたように感じた天莉は、何だか物凄く照れ臭くなってしまった。
「それと――」
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